◆あらすじ
『どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店』というお店があります。すなわち、泣き叫ぶ程度ではイカせるのをやめてもらえないということです。そんなお店に訪れたのは、あまりにお胸が大きすぎる、おっとりとしたお嬢さま気質の”さゆり”。彼女の相手をしてくれたのは、おっぱい大好き女性の”ひなっち”さん。さゆりは体の大きな大きな部位を丸々弱点にされてしまう感覚に背筋を凍らせながら、しかし気絶するまで絶頂を止めることはできないのでした。
※この作品は、Pixivリクエストで頂いた有償リクエストの作品です。
※過去に書いた作品の関連作品です。
・快感至上主義のマッチング型風俗に行ってみたら集団電マ責めで気絶するまでイカされ続けた話
・どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店で全身に電マを押し当てられて後悔アクメをキメる話
自分のお胸を、誰かの欲望のままに、めちゃくちゃにされたい――そんな欲求に身を焦がしている女性は、きっと世界で私1人だけでしょう。
私、東雲 早百合は、裕福だけれども、その分だけ厳しい家庭で育ちました。その境遇には驕りも謙りもなく、客観的に周囲を見ていれば何となく分かることです。学友たちの思想や会話が、どこか私と違うということ。容姿も、同じはずなのにどこか質が違うということ。頻繁に美容室に行くことを言い付けられながら腰までの長さを維持している髪に、お母さまに渡された化粧水と乳液で整えた素肌。そして、あまりに大きすぎるお胸。椅子に座れば自然と学習机にお胸が乗ってしまい、もはや頭とどちらが大きいか分からなくなってしまうぐらい。
そんな私に対して、学友の視線は奇妙なものでした。嫌ってはいないけれども、お父さまやお母さまが向けるような愛情でもない。どこか湿度と粘性を感じさせて、目を背けたくなるような。
……お父さまも、お母さまも、知ればきっと『まさか』と思うでしょう。その視線が、私にとっての性の目覚めだということを。そういう小説はおろか、恋愛漫画すら読ませてもらえなかった私にとって、その性をむき出しにした視線こそが、私にとっての初めてだったのです。
成人して大学に入ってから、私はマンションの一室で一人暮らしをすることになりました。
別に、お父さまとお母さまのことは嫌いではありません。だけど、心の中のどこかで『解放された』と感じていたことは否定できませんでした。
私は気がおかしくなってしまったかのように、パーソナルコンピューターの画面にしがみつき続けました。幼いころから持っているスマートフォンは、フィルタリング?というものが掛かっていたから、大きなモニターの向こうにある光景が、まるではるか広大な別世界のように見えていたのです。そういう小説を読みあさり、そういう漫画を読みあさり、そういうアニメーションを観て……。のめり込みすぎて危うく大学の課題を提出し忘れそうになった時は、ひどく自省することになりました。
私の漠然としていた性のイメージは、段々と正しい形を帯びていきます。そういう行為をする時は、男性のそれを、女性のそこに挿入れて……。男性というのは、女性のお胸やお尻に性的興奮を覚えるもので……。女性のオーガズムというものは、男性のそれよりも精神的な要因に大きく左右されるもので……。
だけど、ごく当たり前の性知識を備えた後も、子どもの時に育て続けた色は、根深く残ったまま。自分のお胸に突き刺さる他人の視線というものが、私にとっての性癖として固着してしまったのを実感します。
そんな折に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス――SNSという場所で、ふと見つけたお店がありました。
「……『どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店』?」
きっと、それは運命というものなのでしょう。
何となく、本当に何となく、そのお店に、私が求めていたものがあるように感じてならなかったのです。
――――
――
「――以上で、当店の説明は以上となります。改めて、当店をご利用になりますか?」
「は、はいっ」
住んでいるマンションから鉄道を1回乗り換えた先の駅から、歩いてすぐの繁華街――私のお父さまは、こういった雰囲気の地域に住むことを許しはしないでしょう。そんな場所に夜出歩くなんて、いけないことをしているような気がしてお胸がどきどきと鳴ります。
だけど、繁華街の隅っこに建てられた清潔感あるビルの地下に入ってみると、喧噪とは無縁な落ち着いた雰囲気。私はそこで、男性の店員さんより説明を受けました。『いずみ』と書かれた名札を胸に付けた、線が細くて、男性特有の迫力もなければ、いつも自分に向けられるような湿度も粘性もまるで感じさせない、まるで空気のような方です。
・このお店は、マッチング型?のお店です。お客さんが『攻め側』と『受け側』に分かれて、相性のよさそうな人とそういうことをします。私はもちろん『受け側』です。
・性的快感を与えることについては、大抵のことが許容されます。ただし、暴力などは絶対にいけません。また、本番行為(男性のそれを、女性のそこに挿入れる行為)についてもいけないとのことです。
・このお店は、性的快感を突き詰めたお店。それこそ、『思わず泣き叫ぶぐらい気持ちよくなれるように』と。だからこそ、『どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店』。
そんな説明を受けている間にも、私の全身がそわそわとした緊張に包まれていきます。『もしかしたら、いきなりこのようなお店に来ることはなかったのかもしれない』『最初はもっとこう、恋人を作るとか、そういうところから始めるべきだったのかもしれない』――そんな不安があったけれども、ずっとずっと恋い焦がれ続けてきた欲求がもうすぐ満たされるんだと思うと、もう引き返す気も起こせません。
「それでは、ロッカールームにご案内いたします」
全部の説明が終わって、いよいよ甘美な深淵へと踏み込む――その瞬間でした。
「――こんばんはー! ズミちゃん、今日もよろしおほおお何その子ぉ!?」
こんな落ち着いた雰囲気のお店で、突然響く、女性の声。高くはないけれども、明るくて、そして大きい。私は思わず、全身をぴょんと跳ねさせてしまいます。
私の目の前で、店員さんがため息をつきました。
「……初めてのお客さまです。その、お手柔らかにお願いしますね」
「あはは、ごめんごめん。いやだって、こんな子見ちゃったら、おおお……!」
私は、自分のまぶたがぱちぱち大きく動いているのを感じながら、振り返って声の主を見つめます。
女性。年は私と同じか、少し上でしょうか。 背が高いそのプロポーションには、パリッとしたジャケットとタイトなジーンズがよく映えます。短い髪、キリッとした目鼻立ち、整った顔立ちだけれども、『美人』とか『かわいらしい』よりも先に『格好良い』という言葉が出てくるような。
「Fカップなんてものじゃない、G、H、I……! バカな、まだ上がるだと……!?」
「はあ……」
そんな格好良いはずの女性の視線は、ずっと私のお胸に釘付けです。確かに今までも、同性でもそういう目を向けてくる人はいたにはいましたが、これはあまりにも露骨というか……。
「ええと、東雲 早百合と申します。よろしくお願いいたします」
「ああ。えと、私は”ひなっち”。よろしくねっ」
「よろしくお願いいたします。ひなっちさん」
「じゃあ、今日からここでは”さゆ”ちゃんね」
「白湯……? はあ……」
そんなあいさつをしている最中も、ひなっちさんの視線はずっと私のお胸。何だか、私のお胸と会話しているみたい。もしも、これが最近読み始めた漫画の世界だったら、フキダシが私のお胸から伸びていないか心配になってしまいます。もしも時と場所が違えば、嫌悪感を催していたかもしれません。
けれども……私は少し震える口を開きました。
「あ、あの、ひなっちさん。もしよろしければ、今晩はお相手願えないでしょうか?」
「えっ、マジ!? いいの!?」
「その、私、お胸の、あれやそれに興味があって。だけど、そういう経験がなくて。ええと、ひなっちさんは私のお胸に、興味?がお有りのようにお見受けしましたので」
「うひょおおおっ♡ するする、絶対する! おおおお神さま仏様乳神様ありがとうございますううううっ♡」
何とも要領を得ない言葉に、私は自分でげんなりしてしまいます。これがスピーチの舞台なら、お父さまやお母さまに叱られてしまいそう。
だけど、私の内心に反して、ひなっちさんの反応はすこぶる良好だったみたいです。
「ささっ、ロッカールーム行こっ! 私が案内するから、ね」
「は、はい」
「うへへへ、うへへへへへへへっ♡」
「…………」
変な人――確かに、私はそう思いました。こんなにも包み隠さずに、私のお胸に欲望をぶつけてくるなんて。名前も……いえ、ご両親から頂いた大切なお名前に対して言うのも何ですが、『ひなっち』さんという名前もその……あまり聞くような感じではありませんし。
だけど今、この場においてなら、ひなっちさんは実に都合の良い相手だと思えたのです。
ひなっちさんは格好良いけれども女性です。私だって、少し世間知らずかもしれないけれども、男の人に安易に体を許すわけにはいかないという抵抗感があります。
そして、これは……ごまかしようがありません。『自分のお胸を、誰かの欲望のままに、めちゃくちゃにされたい』――私の体は確かに、彼女の欲望にほのかな悦びを覚えていて。
どこをどう切り取っても、都合の良い相手。きっと、この出会いも運命というものなのでしょう。
――――
――
それから私は、ロッカールームで衣服を脱いで、タオルで体の前を隠しながらプレイルームというお部屋に入ります。
「まだお客さんは少ないみたいだねー」
「そ、そうなのですか……」
広い空間、所々に配置されたソファとテーブル。お互いに多少ばかりの配慮がされた仕切り。その間取りは、学友と1度だけ行ったことがあるファミリーレストランに似ています。そこと比べれば、席が少なくまばらでしょうか。
開店して間もない時間に来たからでしょうか。人もまだ少なく、部屋の所々からか細い嬌声が聞こえてくるぐらい。
『ぁ……っ♡ ぅぁあ、ぁぁぁぁ……♡』
『ぅ、ぅう……♡ それ、気持ちいぃぃ……♡』
だけど、たったそれだけでも私には相応の刺激であって、またそれを見てしまうのは何か、これからの楽しみが損なわれてしまうような気がして(ネタバレ……と言うのでしたっけ)。私は真下を見ながら、ひなっちさんのかかとに付いていきます。
行き先は、広いお部屋の隅っこ。
「それじゃあ、ズミちゃんよろしく!」
「はいはい。それでは、ええと、さゆさま、お体失礼いたしますね」
それは、このお店に来た『受け側』にとっては、いつもの段取りのようです。
鉄パイプを縦横に組み合わせて作られたような拘束具(フレームバインダーというらしいです)に、体が拘束されていきます。両手首、両太もも、両足首、腰、首。両腕はガッツポーズ、両足はがに股――最初は『すごい道具だなあ』と関心して見ていたのですけれども、いつの間にかとても恥ずかしい姿勢になっていることに気付いて、私は自分のお顔がとても熱くなるのを感じました。
「ズミちゃん、高さ低くして! 今日はおっぱいデーなの!」
「心得ています。今日と言わず、貴女はいつもそうでしょう」
最後に、拘束具全体が、私の体ごとほんの少し上下します。私よりも背が高いはずのひなっちさんを、頭一つ分だけ見下ろす高さ。
それで、全部の準備がおしまい。店員さんは、『それではごゆっくり』とお辞儀をしてから、どこかへと行ってしまいます。
「う……」
人生で1度も取ったことでないであろう格好に、筋肉がおのずと矯正力を働かせます。だけど、元の格好に戻ろうとした手足は、きちりという音を鳴らすだけ。この拘束は頑強でした。
むき出し。無防備。逃げられない――私は自分の置かれた状況をようやく理解してきたみたいで、段々と、緊張と不安で全身がこわばっていきます。
だけどその時、ひなっちさんが私のこめかみの辺りに手を添えました。
「大丈夫だよ、心配しないで」
「っ……」
「今晩は、二人きりでしようか。大勢でする子もいるけど、ハードル高いだろうからさ」
広いお部屋を、私の視界から隠すような手のひら。部屋の所々からは相も変わらず喘ぎ声が聞こえるけれども、今私が見えるのは、ひなっちさん1人だけ。心のどこかで安心する一方、不思議とどぎまぎします。
「どうしたの?」
「い、いえ……。お願いします」
餌を前にしたワンちゃんのように、私のお胸を見てハアハアしていた様子はどこへやらでした。
拘束されている私の正面に立ったひなっちさんが、両手で私のお胸を持ち上げます。
「っ」
下から手のひらで支えて、左右に優しく揺らす。私のお胸が、お餅のように揺れる。私に性的快感を与えるためというよりは、何か具合を見るためのような手付き。
思えば、こうも他人にまじまじと自分のお胸を見られることなんて、生まれて初めてかもしれません。こんなにも珍しく大きなお胸ですから、醜いところがないだろうか不安になります。
「ううん、すごくきれいだよ。大きいのに張りがあって、シミもない」
「そう、ですか……」
「乳首大きいね。小さい頃から1人でシてた?」
「シた……マスターベーションのこと、ですか? ええと、実家が厳しかったので、あまり……」
「そっか。じゃあ元からだ」
「その、良くない、でしょうか?」
「ううん。触りやすくていいと思うよ」
うそはついていないけれども、少しだけ、本音は隠しました。小さい頃は習い事とか勉強とかで忙しくて、マスターベーションをしようなんて考えもしませんでした。だけど、成人して、こうして一人暮らしを始めた後は……。
そう言えば、私自身も、自分のお胸をしっかり観察することなんて、あまりなかったかもしれません。
お胸というのは決してまん丸ではなく、重力に従って滴の形になります。斜めに傾いた滴の底部には、ピンク色のつるつるした乳首。その大きさは、100円玉を3枚か4枚重ねたぐらいはあって、乳輪はさらにもう一回り外側に。お胸自体が大きいですから、あまり気にならないバランスでしたが、確かにこの乳首が小さなお胸に付いていたら、少々不釣り合いに見えるでしょう。どうやら私の乳首は大きいらしいです。そう思うと、何だか少しお顔が熱くなる気がします。
「それじゃあ、乳首に触ってみるね」
「んくっ……! っ、ん……」
ひなっちさんが、そんな大きな乳首に人差し指を添えました。すりすり、すりすり。細くて、柔らかい指です。
「ふーん。なるほど」
「あ、あの、どうでしょうか……?」
「くすくす、君が聞くの?」
「あ、いえ。その。私のお胸は、どうなのかな、って。その、感度とか……?」
また、たどたどしい言葉。
苦し紛れに出た言葉だけれども、気になる部分でもあります。人の体がどれだけ感じられるかは、個人差があると聞きます。私のお胸はどうなのでしょうか?
「感じやすいほうではないね」
「そう、ですか」
「大丈夫だよ。まだ、慣れてないだけだから、がっかりしないで。今日はたくさん気持ちよくしてあげる」
「っ……♡」
この人は、本当に先ほどのひなっちさんと同じ人物なのでしょうか。目の前でほほ笑む表情は本当に格好よくて、私はつい見とれてしまいます。
だけど、私の視線が彼女のお顔に釘付けになっている時、不意に異質な感覚がお胸を襲ったのです。
「――ひぁっ!? ぁくっ、ふふふふぁぁ……!」
それは、くすぐったさ。ひなっちさんが、両手を目いっぱい開いて、細い10本指を私のお胸に当てていました。そして、その指先をぞぞぞ、ぞぞぞと少しずつすぼめていくのです。学校で、学友たちがお膝をくすぐり合っているのを見たことがありますけれども、その時と同じ手付き。あの時は何となく『くすぐったそうだな』と思いましたけれども、まさか今、お胸にされるだなんて。
「あ、あの、これっ、くすぐった……!? ぁくぅっ、ふふふぅぁ……!」
「だめだよ、動かないで」
「そ、そんなこと言われてもぉ……! んぁっ、ひゃぁぁ……!?」
ぞくぞくぞく、ぞくぞくぞくぞく。全身が鳥肌立っていきます。
指先でお胸をぞわぞわさせるこの手付きは、とても厄介でした。ただくすぐったいだけではありません。段々とすぼめられていく指先は、だけど乳首には絶対に触れてくれないのです。1番触られたいはずの部位にちっとも触れてもらえなくて、とても焦れったい。
「まずは、おっぱいを隙間なく、ゾクゾクで埋めてあげる」
「それ、や……! 気持ちいいわけじゃ、な、ひゃぁぁ……!?」
「おっぱいが大きくて、手が届かないや」
「ぅひぅっ!? や、あっ、お胸の付け根、指先でくるくるしひゃらっ、ぁぁぁぁぁ……っ!」
「腋の下とかも、結構大事なんだよ?」
「んやはっ、あはははははははははっ! くすぐったいですっ、やめっ、やめてくださいぃぃっ!?」
ひなっちさんは、私をもてあそんでいるのでしょうか? だけど、その表情は真っすぐで、格好良くて、素敵だから、私は抵抗できません。そもそも、全身をぎちぎちに拘束されているのですから、私にできる抵抗なんてせいぜい、全身の筋肉をぎゅうぎゅうに絞って、上半身を頼りなくよじってお胸を小さく揺らすぐらいです。
「はっ、はぁ……! はぁぁ……!」
お胸を隙間なくくすぐられて、全身がすっかり鳥肌立った頃、ひなっちさんはようやく私から手を離しました。私ははあはあと荒立った息を整えます。想像と違う――何だか、少し背筋がじりじりする心地。
そんな私の心境を知ってか知らずか、ひなっちさんはどこからか箱を持ってきて、テーブルの上に置きます。片手で抱えるには少し大きめの、白いプラスチックでできた箱です。
「このお店は、こういう道具もそろえてるんだよ」
がさがさ。ひなっちさんが箱から取り出したのは、筆。私が目をぱちぱちさせても、それはやっぱり筆でした。お習字で使う、だけど使い古したように先がぼさぼさに開いた筆です。
今、この場で、お習字をするとは到底考えられず、私はその道具の用途にぴんと来ません。ひなっちさんはそんな私に、行動でもって答え合わせをしてくれます。
「ひぅっ!?」
お胸の膨らみを1周するように、筆先でさわり、さわり。なるほど、この筆はお胸を刺激するためのもののようで。だけどその道具は、私にとって、何というか……とても好ましくない選択のように思えました。
「っ、ぅぅ……! あ、あの、これ、刺激が弱すぎて……!? くっ、ぅぅぅ……!」
もしもこれが新品の筆で、先がぴんと尖っていれば、集中した毛先の強い刺激に悦ぶことができたかもしれません。だけど、ぼさぼさに開いた筆は、線維がまばら。1本1本の線維が気まぐれのようにお胸をこしょ、こしょとくすぐっていく刺激は、あまりにも中途半端。決して無視することはできず、だけど物足りないのです。
それは、ようやく乳首に触ってもらっても同じでした。
「ぁぐっ、ぅぅぅぅぅぅっ!? これ、気持ちよくない……!? 気持ちよくないです!?」
私はぎちぎちと全身を硬直させます。
ずっとずっと触ってほしかった乳首が、気持ちいいような、気持ちよくないような。その中途半端は、実に不快でした。いっそのこと、まったく触ってもらわないほうがまだ楽だったでしょうに。
もう限界! 私はとうとう叫びました。
「も、もうやめ――っ! どうしてっ、どうしてこんなことするんですかぁっ!?」
すると、ひなっちさんは手の動きを1度止めてから、キスができそうな距離でささやきました。
「せっかくだからさ、今日はさゆちゃんのおっぱいを開発してあげようかなって」
「か、かいは、つ……?」
「そ。今は我慢の時間だよ」
「ぁくっ、また、筆で――!? ぅぅぅぅ……!?」
ひなっちさんは私の頭をなでてから、また私の乳首を筆でなで始めます。
だけど、私は納得できていませんでした。その言葉に、ぴんと来ていなかったのです。知識としては知っています。女性の体というのは、然るべき処置をすれば、その分だけ敏感になれるのだそう。知っています、知っていますけれども、ひなっちさんはこんなにも優しい刺激で、私の神経を掘り起こそうと言うのでしょうか。もっと指ですりつぶすとか、爪を立てるとか……。
「っ、ふぁ、ぅ……!? も、もう、もう十分じゃないですかあっ!? もう、何時間も……!?」
「そんなに時間たってないよ? さっき始めたばかりじゃない」
「そ、そんなうそ――! ぅあっ、やめ、乳首の真ん中ほじくっちゃ、ぁぁぁ……!?」
「ああ、このお店、時計がないんだった。でも、うそじゃないよ」
それから、ひなっちさんはしばらく、私の乳首をまばらな筆でくすぐり続けます。私は拘束具をきしきしと鳴らしながら暴れるけれども、体はほとんど動きません。お胸がゆさゆさと揺れるだけでは、乳首がくすぐったい筆から逃がれることもできません。
元々大きい乳首が、満足することなく、どんどん硬く、大きくなっていく。女性器から愛液が垂れて、内股を伝っていく。まるで餌をずっとお預けにされているワンちゃんのようです。もしかして、出会った当初、心の中でひなっちさんのことをワンちゃんと称したのを恨んでいるのでしょうか。それにしたって、これはあんまりなのではないでしょうか?
「く、ぅぅぅ、ぅぅぅぅぅ……! っ、ぅ゛ぅぅ……!!」
まるでワンちゃんのうなり声のよう。不信感と焦燥感。私の口から、私の思いも寄らない暴言が吐き出されてしまいそうな……。
だけどそんな地獄のような時間は、突然終わります。
合図か兆候か、そんな何かがあったのか、なかったのか。不意に、本当に不意に、ひなっちさんは私の両乳首を指でこりっとつまんだのです。
「――ぉ゛ぉおぉぉぉッ♡♡♡」
私はその瞬間、拘束具をひときわ大きく、きしりと鳴らしました。驚きのあまり、みっともない声を上げてしまったことに恥じらうことすらできず、目をしぱしぱさせるだけ。何をされたのか、その瞬間では理解できなかったのです。
「開発、うまくいったね」
「ぉ゛、ぉ、お……ッ♡ な、ぉ……!?」
「よく頑張ったね。それじゃあ、これからはたっぷり気持ちよくなる時間だ」
「ぁぅあ゛っ♡♡♡ やっ、指、動かしたら、ぁ゛んんんんんんっ♡♡♡」
ふにふに、ふにふに。つまんだ指が、乳首をもみほぐします。
まるで、全身の神経が何倍、何十倍も太くされてしまったかのよう。乳首を押しつぶされる甘い感覚が脊髄を通って、声帯を震わせる。それではちっとも消費し切れない快感が女性器に流れて、少し遅れてじゅわ、じゅわと染み出していく。
心の中で沸々としていた不信感だとか焦燥感だとかが、あっという間に溶けていくのを感じました。
「さゆちゃんは、どんな触り方が好き? こうやって、ふにふにされるのは?」
「ぁ、ぁ゛ぁ、ぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡ 変、それ変ですうううっ!!?」
「次に、ちょっと強めに、きゅーっ」
「ん゛ぉぉぉぉぉおッ♡♡♡ ぉ゛、ぉぉぉお、お゛――ッ♡♡♡」
「すごく気持ちよさそう。それじゃあ、爪で乳首を優しくかりかりするのは?」
「ふわぅぉ゛ぉぉぉぉぉおッ♡♡♡ ぉ゛あッ!!? だめ、だめぅぁ゛ぁぁぁぁぁあッ♡♡♡」
「あれ? こっちが正解だったんだ」
「やめっ、1度、やめ――♡♡♡ かりかりだめっ、それ、乳首変になぁ゛ぁぁぁぁッ♡♡♡」
「まさか。せっかく気持ちよくなったんだから、たっぷりシてあげる」
「おかしいっ、おかじいですぅぅぅうっ!!? ど、しでっ、こんな乳首が敏感に、ぁ゛♡♡♡ ぉ゛、ぉぉぉぉぉおおおっ♡♡♡」
「それはね、さゆちゃんがエッチだからだよ。『気持ちよくなりたい、気持ちよくなりたい』――ずっとそう思ってたから、体がそれに応えちゃったんだ。……確かに、ものすごく簡単に開発されちゃったね。普通の子じゃあ、絶っ対にこうはならない」
「そんな、私、そんなのじゃ、あ゛――♡♡♡ あ゛、だめ、続けられたら、あ゛――♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡ ぉ゛――♡♡♡ ぉ゛ぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡」
しつこく乳首をかりかりされたせいで、気持ちよさがお胸でぱんと破裂して、全身をがたがたと震わせます。少し時間がたってから、私はそれが『オーガズム』であると理解しました。生まれて初めてのオーガズムに、まさかお胸だけで達してしまうなんて。女性器とは、一体何のためにあったのでしょうか。
そして、続けられる乳首かりかり攻撃。
「ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁッ♡♡♡ ちょっど、待――♡♡♡ 今、お゛ぉ、がずッ、ぅぉ゛♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉぉおッ♡♡♡」
「イッた後の乳首責められるの、すごく気持ちいいよね。私、このお店で会う子には必ずやってあげるって決めてるんだあ」
「待ってくださっ♡♡♡ これ、本当に――♡♡♡ ぅ゛ぁぁぁぁぁぁぁあッ♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああーーーー♡♡♡」
今日に至るまでずっとずっと恋い焦がれ続けて、今に至るまでずっとずっと焦らされ続けて、ようやくやってきた気持ちよさ。
そのはずなのに、私の反応は、私自身の想像とすら違っていました。
「やめ、いったんやめでくだざいぃぃぃぃぃッ♡♡♡ これ、つよすぎっ、乳首かりかり強すぎるがらぁぁぁぁぁぁ、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁあッ♡♡♡」
私はもっと、こう、うっとりと蕩けるような気持ちよさを想像していたのです。だけど、この気持ちよさはあまりに強すぎて、甘すぎて。
100円玉を3枚~4枚重ねたような大きさのぽっちに触れられるだけで、全身が否が応でも反応させられる。両手と両足の指がわきわきと忙しなくうごめいて、女性器の周りにある筋肉がポンプのように収縮する。口からは、お父さまとお母さまには絶対に聞かせられないような、汚く濁った声があふれるばかり。
「ぁ゛、あぁぁッ♡♡♡ また、来ちゃう――♡♡♡ きちゃいま――♡♡♡ ぁお゛ぉぉぉッ♡♡♡ ぉ゛ぉぉおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡」
1度目の絶頂から、ずっと乳首をかりかりされ続けて、休む間もなく2度目の絶頂。私は歯を食い縛りながら、全身を痙攣させます。不思議と、目から涙がぼろぼろとこぼれ始めました。泣いたなんて、いつ以来でしょう?
もう十分。私はそう思ったけれども、ひなっちさんが拘束具を解いてくれる気配は、ちっともありませんでした。
「はっ、ぁ゛ぁ……♡♡♡ はぁ゛ぁぁ……♡♡♡ もぉ、や゛め……ッ♡♡♡」
「せっかくの初めてなんだから、指だけじゃもったいないよね」
ひなっちさんが、白い箱の中から何かを取り出して、テーブルの上に並べていきます。
ああ、見たことがあります。私がインターネットを漁るようになってから知り、だけどついぞ買う勇気が出なかった、『大人のおもちゃ』というものです。私の人並みで拙い性知識では、どんな道具なのか分からないものもあります。このお店には、一体どれだけ、性感をもてあそぶ道具があるのでしょう。
その光景は、今夜という時間の永さを想像させるには十分なもの。じくり、じくりと、目からこぼれる涙が、量を増していきます。
「さゆちゃんのお気に入り、見つけてあげる」
「ぅぁ、ぁ、ぁ……!?」
ひなっちさんの優しく、だけど鋭いほほ笑みに、私は何も言えません。
ひなっちさんとの行為に夢中になっていたから、気付きませんでした。いつの間にかお店にはたくさんのお客さんが入っていて、プレイルームのあちこちから声が聞こえます。
『やめ゛でぐだざいぃぃぃぃぃぃぃいいッ♡♡♡♡♡ もういぎだぐなッ、いぎだぐないぃぃぃぃぁあ゛――♡♡♡♡♡ っぁ゛ぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡』
『ごめんなさいごめんなざいごべんなざいぃぃぃぃぃぁ゛ぁぁぁぁぁぁああああッ♡♡♡♡♡ あやまるがらッ、もうイがせるのやめ゛――♡♡♡♡♡ いやぁ゛ぁぁぁぁあああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡』
『どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店』――私もその悲鳴の一部になると思うと、体は熱いのに、がちがちと震えるようでした。
それから、ひなっちさんによる残酷な『大人のおもちゃ体験会』が始まりました。
最初はローター。
「ひゃぅぁ、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁああッ♡♡♡♡ 何これっ、何だかくすぐったひゃッ♡♡♡♡ んぁ゛ぁんんんっ、ひぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁああああッ♡♡♡♡」
これは私でも、インターネットで見たことがあります。親指ぐらいの大きさのおもちゃで、スマートフォンのバイブレーションのように小さく振動するのです。
たったそれだけのおもちゃだけれども、敏感になった乳首に当てられると、神経が振動にくすぐられるようです。口の奥がくすぐったくなって、歯がかちかちと鳴ります。
「手で持っていじめるのもいいんだけど。こうやってバンテージテープで乳首に固定するとね」
「なにしてッ♡♡♡♡ これ、外れな――♡♡♡♡ ろーたーが、ずっと乳首責めでッ♡♡♡♡ ぇ゛ぅぉぉぉぉおおおおッ♡♡♡♡」
「はい、できた。どう? もしも、私がこのままお手洗いに行っちゃったら……」
「ひ――ッ♡♡♡♡ やめ、行がないでくだざいぃぃぃぃぃッ♡♡♡♡ 私、このままッ♡♡♡♡ そんな、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁッ♡♡♡♡ ぁ゛ぐぅぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
「大丈夫、行かないよ。このまま見ててあげる」
「そ、ぉ゛ッ♡♡♡♡ それな゛ら、これ、外し――♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ぉ、ぉ゛ぉぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
私は、大人のおもちゃの恐ろしさというものを知りました。
人の力を必要とせず、電池さえあれば動き続ける。全身を拘束されるということが、この延々淡々と続く快感とどれだけ相性が良いことか。
ひなっちさんは、おもちゃにいじめられる私を助けてはくれず、じいっと見つめるだけ。その間に、私は2度、3度とオーガズムに達しました。
「次は、こーれっ」
「ひぁ――!!? ぅ、ぇ、ぇ――!!?」
乳首が隙間なくすっかり甘くなった後、ひなっちさんがバンテージテープを剥がして、次に取り付けたのは吸引機でした。理科の授業で使う試験管のような小さなシリンダーの先端に、ゴム製のポンプが付いているのです。
私は『ええ!?』と思いました。信じられませんでした。乳首を吸引する道具というものは知っています。だけどそれは、赤ちゃんに与える母乳を搾るためにあるものでしょう?
だけど、ひなっちさんがポンプを収縮させてシリンダーの空気圧が変わると、その変化に、私は悲鳴を我慢できなくなりました。
「んぐあ――♡♡♡♡ これ゛、きつ――♡♡♡♡ ぉ゛、ぉぉ、ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉッ♡♡♡♡」
強い力。それはもう、搾り上げるというよりは、縛り上げるかのような圧迫感。それによって、乳首の神経が浮き彫りになっていくような――。
「元々大きい乳首だから、膨らんだらシリンダーにすっぽり収まっちゃったね」
「っふ、ぅぅぅぅぅ、ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ――♡♡♡♡」
「吸われるだけじゃあ退屈かな? だけど、もうちょっと待ってね。次はすっごく気持ちいいから」
「んぅぁ゛ッ♡♡♡♡ やめっ、きゅーいんぎッ♡♡♡♡ 指で弾かないで♡♡♡♡ っ~~~~~~~~♡♡♡♡」
幸いにも、それだけでオーガズムに達することはありませんでした。だけど、乳首の神経を浮かせるような感覚は、吸引機を外しても元に戻りません。何だか、乳首の神経が室内のわずかな空気の流れすら感じ取れるようになってしまったような気がします。
そして、最後に取り出したのは……それはもう、私の性知識では何なのかまったく分かりませんでした。
二つのお椀のような、あるいはブラジャーのような機械。形状からして、きっとお胸にかぶせるようにして使うのでしょう。お椀の内側、お胸にかぶせたら乳首に当たるであろう部分には、シリコンの塊があります。丸みを帯びて湾曲したその形状は、まるで舌のよう。そして、その舌はピンク色の液体に濡れていて。
観察、想像、……そして、理解。
「ま、待って、くださ――ッ♡♡♡♡ そ、その機械、は――ッ♡♡♡♡」
声を上げるのが、あまりにも遅すぎました。その機械は、既に私のお胸にかぶせられた状態。次の瞬間、シリコンの舌が、乳首を舐るようにニュルニュルと回転し始めたのです。
「ふわぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおおおおッ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
「乳首をにゅるにゅるされるのが1番好き? じゃあ、これはしばらく付けといてあげるね」
「いやっ、いや゛ですぅぅぅぅぅぁ゛ぁぁぁぁああああッ♡♡♡♡ やめっ、やめでえッ♡♡♡♡ 外して、外しでくだざいぃぃぃぃぃぃぃぁ゛ぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
思った通りの動き、だけど予想以上の快感。
シリコンの舌を濡らしていたピンク色の液体は、ラブローションというものでした。乳首とシリコンの摩擦を極限まで減らすそのぬるぬるが、まるで本当に人の舌に舐められているかのような錯覚を生みました。直前まで吸引機で乳首を搾られていたこともあって、敏感になっていた私は4度、5度と立て続けにオーガズムに達してしまいます。
いつしか、私は泣きながらひなっちさんに『やめて』と懇願するようになっていました。不思議な感覚です。このお店に来た時は、あんなに『気持ちよくなりたい』と思っていたのに。今では、あまりに気持ちよすぎて、気持ちいいことが不快なのです。
だけど、どれだけ泣き叫んでも、ひなっちさんはやめてくれません。だって、『どれだけ泣き叫んでも許される快楽風俗店』では、女性が泣き叫ぶぐらいのことは日常茶飯事なのですから。言い換えるなら、『どれだけ泣き叫んでもやめてくれない快楽風俗店』。
「乳首だけじゃあ寂しいよね? おもちゃってね、こういう時に便利なんだあ」
「ぃ゛や――♡♡♡♡ お胸、触っちゃ――♡♡♡♡ これいじょっ、気持ちッ♡♡♡♡ ぁお゛っ、ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
それどころか、乳首を機械で舐られている間に、ひなっちさんがお胸全体をもてあそび始める始末。オーガズムに達すれば達するほど、乳首が、そしてお胸全体が敏感になっていくのを感じました。
お胸をなでる。
「ひぁ――♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁッ♡♡♡♡ ひゃっ、ぁ゛あっ、ぁ゛ぁぁぁぁぁああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
もむ。
「んぉ゛、ぉ゛ぉぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ぉごッ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
揺らす。
「ひぅあ゛っ♡♡♡♡ ぁ゛っ、あっあっぁっぁ゛ぁぁぁぁぁぁッ♡♡♡♡ ぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡」
くすぐる。
「ぃひひゃっははははははははははぁぁぁッ♡♡♡♡ ひゃぁ゛ッ♡♡♡♡ ぁひゃぁ゛ぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
最初は、何も感じなかったり、ただくすぐったいだけだったはずなのに。今では、その一つ一つが嫌になるぐらい気持ちいい。ひなっちさんの指の動き一つ一つに素直に反応してしまう私は、楽器か何かになったかのよう。私はどうやら本当に、お胸を丸ごと弱点にされてしまったみたいです。
私は、人の弱点というものは、小さくて、ひっそりしているものだと思っていたのです。それはまるで、竜の逆鱗のよう。女性の体だって、クリトリスという部位は1番敏感だと聞きますけれども、それは本当に小さいですし、誰かが触れることなんてまずあり得ない場所にあるでしょう?
こんな、体の前にある大きなものが丸ごと弱点になってしまうなんて、誰が信じられるでしょうか。
「ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁッ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ もぉ゛、いぎだぐなッ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
おもちゃも、指も、どれもこれも本当に気持ちがよくて、私は数え切れないぐらいオーガズムに達してしまいます。気持ちいいのがつらい、もう嫌だ、もうオーガズムに達したくない。
……それなのに、心の奥底が、まだ乾いている。何か、快感の深層に、薄いフィルムがぴちりと貼られているような。その違和感の正体は、私自身で気付くことはできず、ひなっちさんが教えてくれるのです。
――――
――
散々オーガズムに達して、身も心もへとへとで、だけど子宮はくるくるとうるさいぐらいうずいたまま。
「ひぁ、ぁ゛ぁ……♡♡♡♡ ぉ゛ぉ、ぉ……♡♡♡♡」
その時、ひなっちさんが私のお胸に付いたおもちゃをぺりりと剥がし始めます。そして、私の汗が付いたそれをテーブルの上に無造作に投げた後、私のお胸をじいっ。
終わり……? 安堵感半分、物足りなさ半分。
だけど、心と体がほんの少し落ち着いてくると、連続オーガズムのさなかでは気にも留めていなかった音を、私はようやく認識できるようになったのです。
「ふーっ、ふーーーーっ♡」
それは、目の前に立つひなっちさんの吐息。私がぐったりしていた自分の頭を持ち上げてみると、ひなっちさんのお顔は真っ赤で、その表情には興奮がありありと浮かんでいました。へとへとの私はびっくりするだけで、思考が追い付かないけれども、ひなっちさんが手に何か着せていることに気付きます。
グローブ――だけど、冬に着ける防寒具とも、野球部員が付けるものとも、あまりに見た目が違っていました。ビニール、いや、シリコン? 布とは明らかに違うつるつるした素材だけれども、手のひらから指先までにびっしりと毛が生えています。太さは2mmぐらい、長さは1cmにも満たないぷにぷにの毛が、何百本も生えているのです。そしてそれはみんな、ピンク色のラブローションに濡れていて――。
ひなっちさんは、そのまるでブラシのようなグローブを、私の胸にじょりりと擦り付けたのです。
「――ぅ゛あぉ゛ぉぉおッ♡♡♡♡」
じょり、じょり。
「ぉ゛お――♡♡♡♡ ぉ゛ッ、ぉっおっおっおっぉ゛ぉぉおおおッ♡♡♡♡」
じょりじょり、じょりじょりじょりじょり。
「ぉ゛ぉぉぉおおっ、ぉ゛ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおーーーーッ♡♡♡♡」
最初は遠慮がちに、恐る恐る。そして、段々と我慢できなくなるように、速く、強く。
ラブローションに濡れたシリコンが乳首を舐る感覚は、指とは明らかに違う。ローターとも、吸引機とも違う。最後のお椀状のおもちゃに少し似ているかもしれない。だけど、あれはもっと無機質的だった。規則正しかった。一定だった。
この感覚はもっと――私が言語化に至るよりも早く、声が聞こえました。
「……ほんと、かわいい」
ぼそりと呟いたひなっちさんの声は、びっくりするほどの湿度と粘性を帯びていて。
そこにいるのは、楽しそうにお話しする、ちょっと変なひなっちさんではありません。優しく導いてくれる、格好良くて素敵なひなっちさんでもない。もう、笑ったり、優しくしたりする余裕もないぐらい、興奮しているひなっちさん。
「――――それ、だめ、です――ッ♡♡♡♡♡」
そう、そうだ。ひなっちさんは、ただひたすらに、私のお胸に興奮しているんだ――それを実感した瞬間、私の中で、何かがぱんと花開くのを感じたのです。
「――それだめですッ♡♡♡♡♡ それだめですう゛ぅぅぅぅぁぁぁぁああああッ♡♡♡♡♡ それッ♡♡♡♡♡ それが1番きもぢひッ♡♡♡♡♡ 気持ぢいいがらぁ゛ぁぁぉぉぉおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
今までにない感覚が、私のお胸を襲いました。他のおもちゃでも得られるであろう強さの刺激のはずなのに、今まで受けたどの気持ちよさをも凌駕していました。私は、快感の深層にあった最後の障壁が何だったのかを知りました。
欲望。自分のお胸を、誰かの欲望のままめちゃくちゃにされたい――優しく私を導いてくれていたひなっちさんは、格好良かった、素敵だった、うれしかった。だけど、足りなかったのです。
今、ひなっちさんは取り繕う余裕もないぐらい、私に興奮してくれている。欲望のまま、私のお胸をめちゃくちゃにしてくれている!
「『1番気持ちいい』なんて言われちゃったら、私、もうやめられないじゃない……♡」
「ぁ゛ぁおッ♡♡♡♡♡ 手付きっ、もっとめぢゃぐぢゃになっでッ♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁあああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
自分のお胸を、誰かの欲望のままめちゃくちゃにされたい――このブラシ状のグローブは、その欲望を叶えるのにこの上ない道具だと気付きました。
そのグローブは、確かに人の手ではあり得ない感覚を生み出します。ラブローションでぬるぬるになった無数の毛が、皮膚の摩擦を無視して、神経を直接舐るよう。
だけど、その感覚の奥に、確かにひなっちさんの欲望が混じり込んでいるのです。柔らかな肉を揉みしだきたいという手のひらの力み、硬くなった乳首をもてあそびたいという指のうごめき、それらを丸ごと抱き締めたいという腕の締め付け。全部が全部伝わってきて、ひなっちさんが私のお胸にどれだけ興奮しているか分かってしまう。
それが、私を今までで1番気持ちよくしたのです。
「ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁあッ♡♡♡♡♡ やめで、やめでぐだざいぃぃぃぃぁ゛ぁぁぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡ づらいでず、ぉ゛ぉおッ、ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
気持ちいい、苦しい、気持ちいい、つらい。
やっと出会えた、私の理想の快感。だけど、私の体はもう、許容量をすっかり超えてしまっていました。私はその快感を受け入れることができず、ただ泣き叫びながらイキ続けるだけ。
「やだ、絶対にやめてあげない……♡」
「そんな゛、そんな゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッ♡♡♡♡♡ ぁぐぉ゛ッ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁあああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
私がこんなにも気持ちよさそうにするから、ひなっちさんの手付きはどんどん遠慮がなくなっていきます。いろいろなおもちゃを使って私のお気に入りを探し出したように、今度は手の動きで、私の反応を引き出していきます。
例えば、手を少し遠ざけて、手袋に生えたブラシの先端だけで、お胸の表面をなでる。
「ふぁ、ぉ゛♡♡♡♡♡ ひゃぅぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぞくぞくが、止まらにゃ――♡♡♡♡♡ ぁ゛ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」
最初は、焦らされるのがあんなに嫌いだったはずなのに。今はもう、そのくすぐったい刺激だけでオーガズムに達してしまう。
だけど、ひなっちさんのほうがきっと、焦れったい動きをするのに焦れてしまったのでしょう。すぐにがっつくように、両のお胸を激しくもみしだき始めます。
「んぐぉ゛♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおっ♡♡♡♡♡ おぐッ、奥に届かせるの゛、やめ゛♡♡♡♡♡ ッ゛ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
胸の奥に、何かつぼがあるような気がします。指を食い込ませてそのつぼを刺激されると、ぞぞぞぞという快感が背筋を上ってくるのです。
そして、ぐにぐにと揉みしだく動きは、段々と擦り付ける動きへ。胸の横から下の付け根をじょりじょりされるのは、くすぐったい。
「ぃひゃぁ゛はっはっはははははははぁぁぁぁぁぁああッ♡♡♡♡♡ なに゛ゃッ♡♡♡♡♡ ぐすぐっだひっ、はずなの、にぃ゛ぃぃぃいいッ♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ゃ゛ぅぁ゛ぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
少しだけ、ほんの少しだけ『おかしい』と思いました。だって、この動きは間違いなく、私のことをくすぐっています。普通なら、こんなことをされたら私はみっともなく笑い転げてしまうはず。それなのに気持ちいい。胸の付け根という微妙な部位が、くすぐったさで、何度も何度もイカされていく。
ああ、だけど、やっぱり乳首が1番気持ちいい。
「ぁ゛ぁぁぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛ぅおッ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉおお、ぉ゛ぉぉぉおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
じょりじょり、じょりじょりと腕を動かすたびに、無数のシリコンの毛が、不規則に乳首を舐っていきます。ほじくり、弾き、転がり、引っかかり――激しく、途切れず、飽きることのない快感。
私史上の快楽最大値が分かると、ひなっちさんはもう、あの手この手で私の反応を引き出そうとはしませんでした。手のひらから生えたシリコンのブラシを、ただひたすら私の乳首にじょりじょりと擦り付けるだけ。
「ぁ゛ぅお゛♡♡♡♡♡ ぉ゛っおっぉ゛ぉぉぉおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛おおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
『ねえ見て、あそこの2人。すっごく気持ちよさそう……♡』
『すごぉい……。おっぱいだけで、あんなにイクなんて……』
『邪魔しちゃいけないけどさ。でも、うわあ、ふわぁ……♡』
「ぉ゛ぉぉおおッ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉおッ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
周りのお客さんたちが、遠巻きに私のことを眺めているのに気付きました。
ここのお店の人たちは、みんなお行儀が良くて、紳士的です。それでも、その視線の湿度と粘性は隠しきれるものではありません。自分のお胸を、誰かの欲望のままに、めちゃくちゃにされながら、その痴態を大勢に見られる――それはまるで、私の性の目覚めが、そのまま昇華されたようなシチュエーション。
こんなにも苦しいはずなのに、つらいはずなのに。もうずっと、このままでいたい。
「おえがッ♡♡♡♡♡ もぉ゛やめッ♡♡♡♡♡ おむねが壊れぢゃうッ♡♡♡♡♡ しんじゃうッ♡♡♡♡♡ ぅ゛ぉぉぉおおおおおおッ、ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
その心とは裏腹に、肉体はただ拒絶反応を起こし続けるのです。
……段々と、眠くなってきました。
「ぅぁお゛……♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぉぐ、ぉ゛、ぉ゛ぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡」
私はいつも、22時に眠ります。夕方から開くこのお店に入って、今は何時なのか分かりません。だけど、この眠気は今の時刻とは関係がなさそうです。いつものそれとは違って、抗いようがなくて、深くて、まるで全てが沈んでいきそうな――ああ、そっか。これは『気絶』か。
「さゆちゃん、もう限界?」
「ぉ゛お、ぉ゛ぉぉぉおおお……♡♡♡♡♡」
ひなっちさんが、耳元で何かをささやいています。だけど、私はもう、それに応えることもできませんでした。口が思うように動かない。それ以前に、言葉を脳で解釈できず、まるで耳から入った声がそのまま反対の耳に通り抜けてしまっているかのよう。
お胸をめちゃくちゃにするブラシの動きが、段々と速くなっていく。
「最後に、思いっ切り気持ちよくしてあげるね」
「ぉ゛お――♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉおおお――……♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉおおおおおおお――……♡♡♡♡♡」
今にも気絶しそうな中で感じたのは、こんなにも意識がぼんやりしているのに、体が嫌になるぐらい感じているということ。そして、その快感が今にも爆発しそうだということ。……もうすぐ、今までにないオーガズムが来る。
その瞬間のことでした。
「――ぉ゛あ――――ッ♡♡♡♡♡」
ひなっちさんが自分のお顔を、私のお胸の谷間に埋めてきたのです。それは欲望を満たすというよりも、両手がふさがっている代わりに全身で私を抱き締めるかのよう。そして、愛情たっぷりのハグのさなか、シリコンの毛で埋め尽くされた親指と人差し指で、私の両乳首をぎゅー。
温もりと快感が、同時にやってきました。
「――ッッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉご、ぉ゛――ッ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
私の体は脊髄反射に従って、上半身をのけ反らせ、内股を思いっ切り筋張らせました。意識の隅っこで、びちゃびちゃという水音が聞こえます。これはたぶん、お潮……でしょうか。ほんの少しだけ、粗相をしていないか心配になったけれども、そんな雑念はすぐ洪水のような快感に押し流されてしまいます。
このオーガズムはそれだけ、強かったのです。
「ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
そして、まるで一生続くのではないかと錯覚してしまうほど、永い。
それもそうでしょう。乳首をひねり上げられる気持ちよさだけでも相当なもの。それだけで、乳首にどかどかと降り注いでくる気持ちよさを女性器から排出するのに、大層苦労するというのに。ひなっちさんのほんのわずかな指の動きで、乳首がブラシにじょりじょりと磨かれる。気持ちよさの排出が間に合わず、どんどん積み重なっていく。
吹き出すお潮が、まるで快感のバロメーターになっているかのようでした。
ぶしぶしぶしぶし、ぶしぶし、ぶし。
ぶし、ぶし。
……ぶし。
ちょろ、ちょろ。
「ぉ゛ぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぉ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぉ゛――」
永い時間を掛けて吹き出し続けたお潮が止まると、ようやくひなっちさんの指が乳首から離れます。そこで快感が止まるけれども、余韻で絶頂すること2回、3回。
それでようやく、全部が全部、終わったのでした。
「ぉ゛、ぉ゛お……♡♡♡♡♡ ぉ゛……♡♡♡♡♡ ぉ゛……♡♡♡♡♡」
後ろにのけ反らせていた首が、がくんと前に垂れます。
真っ暗な目の前でかすかに聞こえるのは、べちゃりという、グローブを脱ぎ捨てる音。ひなっちさんが、汗でべとべとになった私を抱き締めてくれました。
「頑張ったね。今日はありがとう、さゆちゃん」
「ん、ぁ゛、ぉ゛……♡♡♡♡♡ ぉ゛……♡♡♡♡♡」
温かい。今もまだ、お店には嬌声と叫び声が響き続けています。だけど、そんなものがちっとも気にならないぐらい、私とひなっちさんの周りは静寂でした。この空間が、何だか愛おしい。
……私も何か、お礼とか言ったほうがいいのでしょうか。それとも、こんなはしたない格好を晒したのだから、むしろ謝るべき?
口を開いて、息を吐き出して、だけど頭が働かなくて、言葉が出てきません。とにかく、頑張って口を開いて、息を吐き出して。
「…………へへ、えへへへへへぇ……♡」
結局、私は何も言えなかったと思います。ああもう、それどころか、眠くて何も聞こえません。
「……最後に、そのかわいいのは反則でしょ」
真っ暗な視界の中で、ひなっちさんの口が動いたような、動かなかったような。
そのまま、ほんの少しの名残惜しさを残したまま、私の意識は深く、深く沈んでいくのでした。
――――
――
それから。
気絶していた私は、かすかな物音で目が覚めます。私は拘束を解かれて、お店のソファで、毛布をかぶって眠っていました。周りを見渡すと同じように眠っていた女性のお客さんたちがいて、みんないそいそとシャワーを浴びて、服を着て外に出ていきます。
ひなっちさんは……探してもいませんでした。こういうお店は一期一会、分かっています。……分かっているんです、知識としては。
私もその流れに身を任せて外に出ると、東の空が明るくなった頃。朝の鉄道に乗ってマンションの最寄り駅まで来ると、現実感がわっと押し寄せてきました。
まるで、昨晩の出来事が夢の中で起きたかのよう。あれは幻想だったのでしょうか。
……そんな訳ありません。
あのお店に行ってから、私の生活は少しだけ変わりました。たった1回お店に行っただけで人生が変わるとか、そんな大げさなことではありません。少しだけの変化です。
その日、お夕飯を作ろうと、エプロンの紐を腰の後ろできゅっと締め付けた瞬間のことです。
「んぉ゛ぉおッ♡♡♡ ッ――!!?」
分厚い布に押しつぶされたお胸から、ぞわぞわとした気持ちよさが染み出してきて全身を駆け巡っていったのです。『余韻』という言葉では片付けられないほどの、強烈で鮮明な感覚。
それだけではありません。高い所にあるものを取ろうと手を伸ばした時、お風呂でボディソープを使ってお胸を洗う時、泡まみれになった乳首をシャワーで流す時、夜眠っていてふと寝返りを打った時。日常のさまざまな場面で、お胸がぞくり、ぞくり。私は本当に、お胸を丸ごと開発されてしまったみたいです。
「はぁぁ……♡ こんな、すごいぃ……♡」
もしかしたら、人によっては『とんでもないことをしてしまった』という絶望感を覚えるのかもしれません。だけど私はというと、『とてもすごいことをしてもらったんだ』という、むしろ恍惚感に満たされてしまうのでした。
だけど、体の前に大きな大きな弱点をぶら下げた状態というのは、何かと不便です。
『タキサイキア現象』というものがあるそうです。危機的な状況において、周囲の景色がスローモーションのように感じられる現象のことで、死の瞬間に体験する走馬灯もその一種だと聞きます。そんな大げさなものではない状況で、だけど私は確かに、まるで命の危機に瀕するような焦燥感に駆られる出来事に遭いました。
昼の大学、たくさんの学生が昼食をとろうとあちらこちらから移動を始めた人混みの中。私は誰かに背中を押されたか、バランスを崩してしまいます。横によろける私のお胸の前には、まさにすれ違おうとしていた見知らぬ男性の腕。こんな人混みの中で、お胸に強い圧迫感を与えられたら、私は一体どんな声を出してしまうでしょう?
だけど次の瞬間、別の方向から肩をぐっと抱き寄せられます。私の体は反対側によろけ、腕が当たりそうだった男性は『済みません』と言いながら、申し訳なさそうに歩き去ってしまいます。
肩を抱き寄せてきた腕は高いところから伸びていて、だけど細い。『大丈夫?』――聞き覚えのある声に、私は上を向きました。
「ひ、ひ……ひなっちさ――!?」
「おおっと、待ったあ! リアルでHNはタブーだよう」
「あ、え……? ど、どうして、ここに」
「いやあ、まさか同じ大学とは思わなかったなあ」
目をぱちぱちさせる私に、ひなっちさんは何だかとても気まずそうなお顔をしていました。
「ところで、お店の時と雰囲気が違います? あ、お目々が私のお胸じゃなくて、ちゃんとお顔に向いて……」
「う゛……! さすがに、外であんな態度は、ねえ」
「なるほど、欲求を隠さず発露すると、ああなってしまうと」
「ああなってしまうって……。それはお互いさまじゃないかなあ」
「う゛……! わ、私だって、普段からあんなことは、その」
「…………」
「…………」
「……はは」
「あははっ」
「お昼、一緒に食べにいこうか」
「はいっ」
たった1回お店に行っただけで人生が変わるとか、そんな大げさなことはありません。
蜂蜜のように甘い弱点が増えて、少し変な、だけど大切な友人ができて。その友人と、お父さまやお母さまには言えないような、そういうことを、たまにするようになっただけ。
だけど私は間違いなく、これは運命だと思ったのでした。




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