◆あらすじ
ある妄想のお話。電マやバイブで責められている状況で、もしも”非常停止ボタン”と言われて渡されたボタンが噓だったら? そのボタンが実は、押すほど機械の動きが激しくなるボタンだとしたら? 自分が抵抗すればするほど、機械の動きはどんどん激しくなっていく――つまり、理不尽は気持ちいいのです。

「いや、分からん」
「なぜ分からない」
「なんでわざわざ騙されなきゃいけないかなぁ!? 何だか、こう、『やられた!』って気分になって嫌じゃない?」
「……おもは、普段から騙されってばっかりだから」
「ちょっと待て」
「『騙されたい』っていうのは、ただ相手に出し抜かれたいって話じゃないんだ。理屈や努力が無駄な、悪意のある世界だからこそ得られる快感があるということだ」
「え、ちょ、待……」
「相手に良心があれば、ボタンを押せば機械は止まる。つまり抵抗が快感を和らげる。仮にボタンが故障していたとしても、意味がないだけ、抵抗はせいぜいゼロだ。だけど、もしもボタンを押すほど機械の動きが激しくなるなら、抵抗はむしろ逆効果。本来の責めに加えて、自分の抵抗の分だけ快感が増してしまう。ただ責められるのとは深度が違う」
「何? 今日、めっちゃ喋るじゃん」
「そして自分が騙されたと気付いた後にやってくるのは絶望だ。話が通じる相手なら、まだ呼び掛けたりして抵抗したかもしれない。だけど、相手は何せ自分を騙してくるようなやつだ。会話が通じるわけがない。努力も理屈も報われない、むしろボタンを押した時のように逆効果になってしまうかもしれない。そしたら、私たちは『助かるかも』なんていう希望を一切持つこともできず、もうただ快感に苦しむしかなくなる。まっくろの中で、雑念の一切ない、快感の世界。これほど気持ちいいものがあるだろうか」
「そろそろ、まとめてもらっていい?」
「つまり、理不尽は気持ちいい」
「ふーん」
「おもはいつも騙されてるから、かえって気付かないのかもしれない」
「おいこら」



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