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◆あらすじ
ちょっとマンネリ気味な男女の、特殊なプレイ。『その機械を使うと、思ったことを全部喋ってしまう』という設定。しかし、視覚と聴覚を封じられた上で、してほしいことを言葉にすればまるでご褒美のようにしてくれる状況に、羞恥心はどんどん溶けていきます。大きな声で淫語おねだりをしまくるその姿は、まるで本当に洗脳を受けたかのようでした。
「――ククク。これを付けるとお前は思ったことを全部喋ってしまうのだ」
「は?」
ラブホテルにて。お互い全裸で『さあヤるぞ』というまさにその時に、彼はかばんからおもちゃを取り出して、突然棒読みでそんなことを言い出した。アメコミか戦隊モノか、そんな感じの仮面は、紛れもなく大人のおもちゃではなくて、子どものおもちゃ。こんな状況を目の当たりにした私の反応なんて、『は?』に決まっている。
「まあまあ、いいから。少し付き合ってよ」
「いや、あの、何この仮面。何か光ってるんだけど」
私と彼の関係を少し述べておこう。
付き合い始めてからそれなりにたって、もう初々しいなんて言える仲ではない。それこそ、セックスというものが少しマンネリ気味になるぐらい。伝えたことはないけれど、それで彼がいろいろと工夫してくれているのが、私はとてもうれしい。
……だけど、こういう工夫の仕方はどうなの? 私は、電池でぴかぴかと光る謎の仮面を付けさせられた。
「はい、いい? ククク。これを付けるとお前は思ったことを全部喋ってしまうのだ」
「繰り返さなくていいから。シュールだよ」
「あと、このヘッドホンもね」
「あぅわっ!? ちょっ、これ、音量大きっ、っていうか何この曲!?」
仮面に続いて、電子音の喧しい不思議な曲が垂れ流されたヘッドホンを付けさせられる。仮面のせいで前が見えず、ヘッドホンのせいで音も聞こえない。
彼は私を床に立たせて、私の胸を下から持ち上げた。
「うあぅ!? ちょ、え、このままするつもりぃ!?」
私は抗議の声を上げるけれど、彼は手を止めない。両手で私の胸を持ち上げるようにしてもみしだき始める(彼は私の胸が大好きだ)。
こういう時の彼は止まってくれない。私は『はあ』とため息を付いてから、仕方なく彼の謎プレイに付き合ってやることにした。
ええと、何だっけ? 『ククク。これを付けるとお前は思ったことを全部喋ってしまうのだ』だっけ? 二度も言うから一言一句覚えてしまった。
「んくっ、ぅ……! ぁ、あー、そ、そこじ、焦らされるの、やだなあ。は、早く、乳首触ってほしいなあ」
決して気持ちよさのせいじゃあない、別の理由で顔が真っ赤に染まりそうだ。
だけど私がそう言うと、彼は真っすぐに、私の乳首を指の腹ですりすりとなでてくれた。
「ふぁっ♡ あっ、それ、いい……♡ それ、そこで焦らされるのっ。胸の他のとこじゃなくて、乳首で焦らされるの、好きぃっ♡」
彼は、私が口にしたことをそのまま実現してくれた。乳首に指の腹を軽く当てて、すりすり、すりすり。まるで、私の素直な言葉に対する報酬のようだ。私が言葉にすればするほど、彼はその通りにしてくれて、私はもっと気持ちよくなる。
そして、大音量の音楽を耳元で流されているという状況は、彼の声はおろか、自分の声すら聞き取りにくい。現実離れした視覚と聴覚も相まって、だんだんと私の声は無意識のうちに大きくなっていくんだ。
――――
――
30分ぐらいがたった。
――――
――
それからまた30分後。
――――
――
それから。
「最後は、結局いつも通りだったね」
「ひっ、ひぃ……ッ♡ ほんと、だよ……っ!!」
「でも、案外良かったでしょ?」
「っ……!!」
私は真っ赤な顔のままそっぽを向いたけれど、たぶん彼は分かっている。
素直じゃない私が否定しないということは、そういうことだということ。
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