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◆あらすじ
それは、まるで『処刑』でもされるかのように、足裏をひたすら激しくくすぐってイカせ続けるお店。指まで完全拘束されてさらにローションでどろどろになった足裏に、ヘアブラシやイボイボ手袋をこすり付け、とどめとばかりにアソコに電マをぐりぐりと押し当て続けるのです。30分500円。
私みたいな女性って、世の中に少なからずいると思うのです。
どういう人かって? それは、欲求不満な人。男性とシたことはそりゃないわけではないけれど、そんなに良かったわけではなくて。だからオナニーをするけれど、その後はいつも虚しい気分が胸を満たす。『いつか、全てを忘れて思いっ切り気持ちよくなってみたい』なんて思ったり。そして、くすぐられフェチ。
……えっ、いるでしょう? 体をくすぐられて笑わせられちゃうのが好きな人。くすぐったいのが気持ちいいのか、くすぐったい所が気持ちいいのか、くすぐられて小馬鹿にされちゃうのが気持ちいいのか――人によってちょっと差はあるけれど、私は全部好き。特に、弱点の足の裏を思いっ切りくすぐられた日にはもう……。
だからこそ、欲求不満は加速していく。だって、自分で自分をくすぐっても、あまり気持ちよくないから。
そんな私だからこそ、駅前に『足裏くすぐり処刑屋さん』なんてお店が立っていたら、『とうとう自分の欲求が幻覚として見えるようになるぐらいヤバくなったか』と自分の目を疑ってしまうわけです。
『足裏くすぐり』なんていう、他の人が見たら何だこれはと笑い飛ばすような字面。しかし、私にとってこれほどときめきを感じさせる言葉はありません。そして、『処刑』という物騒な文字が、そのときめきをさらに加速させます。このお店は一体どれぐらい、足の裏をくすぐったくさせるつもりなのでしょう。
私が周囲の目を気にしながらも、赤い旗を見つけた闘牛のようにお店に突っ込んでいったのは、言うまでもありませんでした。
……結論から言うと、私の認識は甘かったと言わざるを得ませんでした。
私自身への戒めの意味も込めて、世界中の欲求不満な女性に言っておきたい。きっと皆さん、『私ほどイケないことを考えている人なんて、この世にいないかも』なんて思っていることでしょう。そんなことはありません。普段は素知らぬ顔をしているくせに、決して人には言えない欲望を胸の内に滾らせている女性は、案外多いものです。
つまり、です――そんな普通な私たちの想像を超えるぐらい、気持ちよくて苦しいことなんて、この世にはたくさんあったのです。
――――
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同じ趣味でない女性にとってはどうか分かりませんが、足の裏をくすぐられるというのは確かに、私にとっては気持ちいいものでした。足の裏をざりざりと走るくすぐったさが、ふくらはぎ、膝、太ももを上って、子宮をずくずくと蝕んでいくのです。
だけど、それはやりすぎでした。たった一こすりで絶叫してしまうようなくすぐったさが、両足の裏を、満遍なく、休むことなく襲ってくる。口からは悲鳴が止まらず、涙はぼろぼろ。足の裏の神経はどろどろに蕩け、子宮はイキっぱなし。
『足裏くすぐり処刑屋さん』――そう、『処刑』です。まさか本当に殺してしまうわけではありませんし、払ったお金の分だけしかサービスは提供されません(30分500円で、お財布に入っていた5000円札を勢い余ってそのままばんと出してしまったから、ええと……5時間)。だけど、その強烈すぎる感覚は、まさしく『処刑』のよう。普通な女性である私なんかに、くすぐり処刑される気持ちよさなんて耐えられるわけがなかったのです。
私は自身の安易な選択を後悔しながら、だけど解放してもらうこともなく、気絶するまで足の裏をくすぐりイカせられ続けたのでした。
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