◆あらすじ
目覚まし時計のジリリという喧しい音が嫌いな方に朗報、クリボックス式の目覚まし時計が発売されました! 時間になるとマジックハンドが動き出して、封入されたクリトリスをしこしこ、かりかりと刺激してくれるのです。その通称『絶対に二度寝しない目覚まし時計』は、気絶してしまうぐらいに気持ちいいようで――。
「『絶対に二度寝しない目覚まし時計』……?」
雑貨屋に行ったら、そんなポップがあってふと足を止めた。
鼻で笑いたい気分だった。大言壮語、そんな簡単に二度寝をやめられたら苦労しない。
「う」
だけど、そのパッケージを見た瞬間、私の喉から変な声が出た。
分厚い紙の箱にプリントされているのは――モザイクはされているけれど、どう見てもこれは――女性の陰核で、それを小さな機械の手がしこしこ、かりかり……。おかしい、ここは何の変哲もない雑貨屋のはず。
箱の裏面に書かれた説明を見るに、つまるところ、こうだ。目覚まし時計に自分の陰核を封入して、時間になったら刺激される。そりゃ、誰でもびっくりして目覚めるに決まっている。
「……ごくり」
『寝起きの気分じゃない時にされても困るのでは?』『朝から下着を濡らしたら支度に余計時間が掛かるのでは?』『というかこれどういう仕組み?』――いろいろな疑問がまとわりつく頭を目いっぱい横に振って、私は周りに誰もいないことを十分確認してから、時計を買い物カゴの中にそっと丁寧に置くのだった。……適当に、興味のないアニメのクリアファイルを2~3枚、時計の上にかぶせながら。
――――
――

この話には誤算がある。
このクリボックス×マジックハンド式目覚まし時計には、『止め方』というものが存在しないことだ。
「いやこれっ、ボタンがない――ッ♡♡♡♡♡ ぃあ゛、ぁ゛ぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
今日ほど、”目覚まし時計を枕元から離して置く派”であったことを恨んだ日はない。私はベッドから這い出て、机の上に置かれた目覚まし時計にしがみ付く。
だけど、どこをどう触っても、マジックハンドの動きは止まらない。目覚まし時計というのは、普通ボタンが付いているものでは? 『音が鳴らないなら、近所迷惑にもならないから止めなくていいのでは』とでも思ったのだろうか? ああ確かに、それなら二度寝は絶対にしないだろう。感心している場合じゃない!
「ぁぐッ、ぁ゛♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁぁッ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
結局、静かに動き続ける目覚まし時計は、私が何度も何度もイカされてすっかり気絶してしまったころに止まるのだった。
……二度寝はしてないけどさあ。二度寝は。




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