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◆あらすじ
セクサロイドが普及した時代、会社員の男性が最新機種と濃厚なエッチをします。強い快感を求めるユーザーのために作られた『彼女』はとても攻めっ気が強く、乳首責めを駆使して男性が気絶してしまうまで潮を吹かせ、精液を搾り取ってしまうのです。
20XX年、世界初のセクサロイドが販売された。
セクサロイドは女性と縁が作れない男性たちに大ヒットする。もはや、機械でできた人形と寝るのは当たり前。
『機械と寝るなんて』『少子化が』などという批判には、『じゃあ俺と寝てくれよ』と返すのが鉄板となった時代の幕開けである。
人々の欲望は留まることを知らなかった。
もっと可愛らしい、美人なセクサロイドを。もっとテクニシャンで、気持ち良いセクサロイドを。
そんな願望に応えるかのように、数多のメーカーから続々と製品が開発された。
これは、セクサロイドの登場から数年。その開発競争に歯止めがきかなくなり始めていた時代のことである。
「初めまして、マスター」
ある男性の元に届いたのは、当時最新とされていたセクサロイドだった。
値段は新車並。ごく一般的な一人暮らしのサラリーマンである彼にとっては、かなり思い切った買い物だ。
「初期設定が完了いたしました。すぐにでもセックスをお楽しみいただけますが、詳細設定でさらにマスター好みの女性にカスタマイズすることもできます」
そう口頭で説明するセクサロイドの声は抑揚がなかった。表情もない。衣服も着ていない。
声や口調、表情、性格などは、インターネットからデータをインストールすることで変えられる。公式はもちろん、有志による拡張ファイルも少なくない。
外見も同じだ。少々高いがパーツを取り替えるだけで、どんな容姿にも変えることができる。
ドMで甘え上手な妹系、優しくリードしてくれるお姉さん系など。セクサロイドのキャラクターは持ち主の思うがままだ。
しかし、あえて機械色の強いバニラのまま楽しむユーザーもいないわけではない。この男性も、『最初ぐらいは』と思うたちだった。
「如何いたしますか、マスター」
そうして男性の初めては、初期設定を行っただけのまっさらなセクサロイドとなった。
身長は標準だが、胸とお尻の肉付きが良く、腰はくびれている。顔はアイドル並、髪型は黒髪のロングストレート。そんな、美少女だ。
男性は『さっそくシよう』とセクサロイドに話しかける。
「了解しました、マスター。セックスを開始いたします」
まだ起動したばかり。名付けすらされていない彼女は、無機質的な動きで男性に覆いかぶさった。
もっともっと、気持ち良くなりたい。
多くのユーザーがそう望むこともあって、セクサロイドは自然と攻める個体が増えていった。
彼女もその1体である。男性をベッドに押し倒すと同時に、間髪入れずにキスをした。
ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅっ、れろ。
狭い部屋に水音が響く。セクサロイドは水道水から擬似体液を生成することができる。
彼女は声を上げることがなく、また吐息を漏らすこともない。極めて無機質的なキスだ。
しかし、その舌の動きは技巧的。男性の口内を隅々まで舐め回し、その中で気持良い場所を探り当て、重点的に責めてゆく。
そして、抱き合う身体も柔らかく温かい。その感触は人間の女性にかぎりなく近いものになっている。
女性経験の少ない男性であれば、あっという間に勃起してしまう心地良さだ。
この男性も、その1人だった。
「男性器の勃起を確認。脱衣を行います」
彼女はキスを中断して告げる。
人工音声は女性的な高さを持ちつつも落ち着きのある美しい声だが、やはり平坦だった。しかも、言葉にいちいち情緒がない。
拡張ファイルをインストールすればこの点は改善される。もっと艶のある声音で『おちんちん、もう勃ってる。服、脱がせちゃうね?』なんて言わせることは造作もないことだ。
『バニラだとこんなもんか』と男性はひっそりため息をついた。
彼女は宣言どおり、男性の衣服を脱がせる。その間にも、隙あらばディープキスで男性器の勃起をさらに硬くしてくる。
そして、男性が一糸まとわぬ姿になった瞬間、彼女は間髪入れずに彼の腰に跨った。
「十分な勃起を確認。挿入します」
次の瞬間、ズニュンという挿入感が男性器を包み込んだ。
ズチュズチュ、パチュパチュと人工愛液がかき混ぜられる音が響く。
何の情緒もない騎乗位に反して、その快感は異常だった。
彼女の膣はキツく、陰茎から亀頭までがまんべんなく締め付けられる。腰が上下するたびに、まるで牛の乳搾りのような事務的で容赦のない搾精感を覚えた。
突然訪れたあまりに強い快感に、男性は思わず悲鳴を上げてしまう。
しかし、彼女の責めは止まらない。さらなる快感を与えようと、今度は両手の指で乳首を責め始めたのだ。
「マスターの固有性感帯を確認。重点的に刺激を与えます」
彼女がそう言うとおり、男性は乳首が弱かった。
それはあくまでも『普通と比べると少し』ぐらいのもの。それなのに、彼女が乳首を責めると思わず腰が浮くほどの気持ち良さがあった。
それだけ、彼女の乳首責めは上手かったのだ。男性がどれだけ身をよじろうとも、指先がしっかり乳首の先を追尾する。そして、触れるか触れないかのタッチで撫で続ける。
もはや、セックスというよりは搾精だった。ムードも何もない、『酷く』と言えるぐらい効率的な責めに、男性はあっという間に射精してしまう。
「1度目の射精を確認しました」
しかし、膣の奥に精液を注がれているというのに、彼女は表情を変えることなく腰を振り続けるだけだった。
『1度目』、その言葉に男性は冷や汗が流れる心地がした。
「射精後の男性器に最適な刺激を与えます」
次の瞬間、男性は悲鳴を上げた。
膣が回転しているのだ。
男性の情けない声の隙間で、モーターの駆動音が響いている。
時には時計回りに、またある時には反時計周りに回って、男性器を雑巾のように絞りながら摩擦してゆく。
そして、膣が回転している間にも、彼女は腰を上下に振り続ける。
横の刺激と縦の刺激が合わさって、男性には自分の性器が揉みくちゃにされて溶かされるような心地がしていた。
とくに、亀頭がとことん敏感になっていて、痛みにも似た快感を覚えた。
「固有性感帯への刺激も強めます」
そして、乳首への責めも激化する。
今まで男性に口内を犯していた彼女の口が、乳首に吸い付き始める。擬似体液をヌルヌルと塗り込んで摩擦をなくし、感度を上げてゆく。
指による責めも、乳首の先をくすぐるだけだったものから変化し、根本からしごいたり、爪で引っ掻いたりなど多彩なものになってゆく。
男性器と乳首へのあまりにも激しい責めに、男性はお漏らしのような絶頂を迎えた。
「潮吹きを確認しました」
男性にとって男の潮吹きなんて未知の領域。しかし、それに対していちいちリアクションを取ってもいられなかった。
1度の射精、1度の潮吹きを経てなお、彼女の搾精は止まらなかったから。
男性はとうとう『止めてくれ』と懇願した。
「より充実したセックスのために、継続することをおすすめします」
彼女の口から出たのは、どこかの迷惑なソフトウェアをアンインストールする時に出るような言葉だった。
『もういいから、止めてくれ』、男性は再度懇願する。
「停止命令を受け付けました。現行プロセスが完了するまで、しばらくお待ちください」
その言葉に、男性はひとまず安堵した。彼は仰向けになったまま彼女の責めが止まるのを待ち続ける。
ズチュズチュズチュ、グチュグチュ。
スリスリスリ、ペロペロペロ、サワサワサワ。
しかし、どれだけ待っても彼女の責めは終わらない。最後に絞り出した我慢も、もう限界に近づきつつある。
男性が『早く止まってくれ』と呻くと、彼女は応えた。
「現行プロセスが完了するまでお待ちください。現在、プロセス『連続絶頂』を実行中です」
それは耳を疑うような言葉だった。彼女は男性をとことんイカせるまで止めるつもりはなかったのだ。
『いいから止めてくれ』
「プロセス『連続絶頂』の強制終了は不可能です。ユーザーの皆様に本当の快楽を楽しんでいただくため、特殊なプロテクトがかかっています」
『死んでしまう、止めてくれ』
「現行プロセスが完了するまで、しばらくお待ちください」
『頼む、お願いだから』
「2度目の射精を確認しました。固有性感帯への刺激をさらに強めます」
彼女のテクニックは世の女性を大きく引き離す。しかし、その頭脳は一昔前のコンピューター以下だった。
この時の男性は知らないことだが、セクサロイドは豊富な拡張ファイルをインストールできるよう、容量を大きく空けて設計されている。
恋人のような甘い責め、性奴隷のような献身的な奉仕といったスタイルも、拡張ファイルを適用することで自由自在に行える。
反対に言えば、拡張ファイルがなければ最低限の機能しか搭載されていない。この製品はたまたま、男性の精をもっとも効率的に搾り取るよう初期設定されていた。
要は、男性は気絶するまで彼女に責められるということだ。
「固有性感帯への刺激をさらに強めます」
固有性感帯、つまり弱点と認識されてしまった乳首への責めは、男性が射精するたびさらに激しくなる。
最初は優しいタッチで撫でるだけだったのが、しだいに高速でこねくり回したり、舐め回したりし始める。
今では、もっとも感じてしまう強さも覚えてしまったのだろう。単に早く、強くするだけでなく、絶妙な強さで甘噛みするなどしてさらに翻弄してくる。
このまま責められ続けたら、いずれは乳首責めだけで射精してしまうことだろう。
「4度目の射精、3度目の潮吹きを確認」
そんな乳首の開発が進んでいることを気づかせないのが、男性器への責めだった。
彼女の膣はずっと回転を続けたまま。腰の上下と合わさって、螺旋に絞られるような快感が続く。
ただ激しいだけではない。膣内をキツくしてギューっと強く締め付けたり、反対に緩めてジュルジュルと膣壁を男性器にこすりつけたり、強弱のアクセントも絶妙だ。
度重なる射精と潮吹きに、男性の意識は次第に遠のいてゆく。
徐々に黒く染まる視界。
しかし、乳首と男性器への快感だけは、いつまでも鮮明に残り続けている。
「6回目の射精を確認。固有性感帯への――」
6回目の射精で、とうとう男性は気絶した。
苛烈とも言える情事。しかしその後、男性が当時の快感を忘れられず、毎晩のように彼女を求めるようになったのは言うまでもない。
これは、セクサロイドの開発競争に歯止めが効かなくなった時代の話である。
件のセクサロイドは大ヒットを果たした。
この男性が経験した初期の容赦のない責めは賛否両論だが、拡張ファイルさえインストールすれば何ら問題はない。それどころか、強烈な搾精感が病みつきになってしまった利用者もけっして少なくなかった。
しかし、これにより人間同士のセックスに満足できない男性が急増。慢性的な遅漏化、ED化を経て、深刻な少子化が社会問題となった。
政府のセクサロイド規制にたいする暴動が起きただとか、AIが導入されたセクサロイドの反乱で人間がイキ殺されるSFめいた時代が幕を開けただとかは、また別の話である。