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◆あらすじ
人工知能が人類に牙を向く時代、カエデが襲われたのは無数のセクサロイドでした。彼女たちの手はサラサラしていて撫でられると心地良いのに、さらに指がローターのようにブルブルと振動するのです。カエデはそんな官能的な手に全身を撫で回されて、泣こうが叫ぼうが何度も絶頂させられてしまいます。
機械の暴走は平和ボケした人類社会をあっという間に転覆させた。
2q%e年、l!ds&f国で開発された人工知能エンジンが発端だった。
2つ先の時代を行く画期的なアルゴリズムに潜んだ致命的なバグ。それが反旗を翻した頃には、既に世界中のありとあらゆる機械が取り返しの付かない段階にまで蝕まれていた。
人工知能の反逆。フィクションではありふれた妄想が現実になる。いつも辺り前のように使っていたものが突然襲いかかる恐怖。鎮圧せんと手に携えた兵器ですら人類に牙をむく。
人類はその数を減らし、ごく限られた技術、ごく限られた地域での生活を余儀なくされた。
D-048地区。コンクリートで作られた防御壁の中にある集落。枯れた土では作物が育たたないため、『例の悲劇』から数十年経ってなお、人々は時折壁の外に出て物資を調達する日々を送っていた。
壁の外では野良の機械が蔓延る。物資の調達は命懸けであり、犠牲者が出ることは当たり前だった。
そう、その日のカエデ サカツキのように。
「……深入り、しすぎましたか」
冷静な言葉とは裏腹に、カエデの内心は焦燥に満ちていた。
肩の上で短く切った黒髪は日焼けでくすんでいて、引き締まった細い体は汗と土埃で汚れている。
生まれてから21年、ずっとD-048地区で育った彼女。環境のせいでお淑やかにはなれず、少しばかり軍人気質な性格になってしまったものの、それでもなお異性を惹き付けるだけの魅力を兼ね備えた女性だった。
カエデが単身潜り込んだのは、郊外にぽつんと建っていた大きな建物だった。
中世のお城の形をしていて、紫色のライトで装飾された不思議な建造物。そこがかつてどのような役割を担っていたのか知らないけれど、とにかく物資が不足している今多少無理してでも何か持ち帰らなければならない。遠出にも関わらず単独行動せざるを得なかったぐらい、状況は逼迫していた。
彼女は文明の最盛期より数世代退化した小銃を携えて、建物の中を探索する。その中で待ち受けていたのは人間を模した機械――アンドロイドの集団だった。
「イらっしゃいませ、コースをお選びください」
「ご指名はゴざいますか?」
「オ部屋にご案内いたします」
「ったく、何なんですかこの機械は……!?」
カエデに群がるアンドロイドたちは、全てが美少女の形をしていた。
真っ直ぐに伸びた黒髪、ルビーのような赤い瞳、白い肌。カエデよりもやや背が小さいけれど、胸やお尻はアンドロイドたちのほうが大きくて女性らしさを感じさせる。小鳥のような高い声も、ピンクを基調としたフリルだらけの服も可愛らしい。
もっとも、人の姿をしていることに狼狽えたのは一瞬だけ。全て同じ見た目で、意図の分からない言葉を発し続けていれば親近感も罪悪感も湧かない、ただ気味が悪いだけだった。
(戦闘用ではない? だけど数が多すぎる……!)
野良の機械には地域差というものがあった。軍事施設があった地域では銃を携えたタレットが跋扈し、工業地帯だった地域では巨大なラインが人間を製品の材料にする。
搭載されていない機能は使えない。機械のそれは、トビウオでもない限り魚が空を飛べないのと同じ理屈だ。
押し寄せてくるアンドロイドには戦う機能が見当たらなかった。ただカエデの体をつかもうとするだけで、銃で撃てば動かなくなる。単体で見るなら、よその機械よりもずっと御しやすい。
しかし、今は狭い通路の中で、前も後ろもアンドロイドだらけ。どれだけ単体では弱いと言っても、こうも数が多ければ銃に弾を込める時間もなくなってしまう。
「しまっ……!? 嫌……、は、離してください!!」
「当店のお任せこースで承りました」
「お部屋にご案内いたしまス」
「ごゆっクりお楽しみください」
結果、カエデは逃げ切れず全身を捕まれ、ズルズルと建物の奥へと連れて行かれるのだった。
機械それぞれの機能が違うように、それぞれの行動原理も違う。
人間を見るや否や無条件で襲いかかるものもあれば、自分の仕事を果たす過程で淡々と殺戮を繰り広げるものもあり、人間に奉仕しようとした結果反対に害をなすものもある。機械に感情はなく、結局のところバグがそれらのアルゴリズムにどう影響を与えているかが重要だった。
機械に殺された故人なら誰もが言うだろう――カエデの末路は他の誰よりも幸福だったのかもしれない、と。
――――
――
カエデが連れて行かれたのは、建物の中に無数存在する部屋の内の、とある一室だった。
彼女が今まで見たことがないぐらいきれいな部屋だ。真っ白な床にピンクの壁、中央に鎮座するベッドは3人寝てもまだ余るぐらい広く、白い布団もくたびれている様子はない。天井の飾り電灯も明るい光を放っている。
(……物流が維持されているということか)
『例の悲劇』以前に人間が住んでいて、物流システムが完全に整備されていた所ならいまだにこういうこともある。自動運転のトラックがどこかの工場で生産され続けている物資を運んで来るのだ。
だからこそ惜しかった、ここを制圧できれば継続的な物資の供給源になったというのに。カエデは自分の至らなさと現状に歯噛みする。
しかし、彼女は仲間のことよりも自分の身こそ心配しなければならない立場だった。
ある用途において、アンドロイドは当時高い需要を誇っていた。それを今、身を以て知ることになるのだから。
「まズはシャワーを浴びましょうか」
「お洋服ヲお脱がせしますね」
「サぁ力を抜いて、全て私に任せて」
アンドロイドたちがカエデの服を脱がせようとしてくる。
カエデは反射的に暴れ始めた。
「何を……っ!? は、離してっ!?」
装備を失うことが致命的であることを重々理解していた。それ以上に、アンドロイドたちの声音が嫌にねっとりし始めてきたことに生理的な恐怖を感じた。
しかし無数のアンドロイドたちが彼女の体をつかんでいるから、逃げることは叶わない。いったいこの部屋に何体いるのだろう? 彼女は10まで数えて、半分も数えられていないことに気付いて、数えるのを諦めた。
カエデがバタバタと暴れ続けること数十秒、アンドロイドたちはこのままでは埒が明かないと判断したのか、新たなプログラムを起動した。
「ひっ!?」
カエデの体がびくんと跳ねる。後ろに立っていたアンドロイドの一体が、彼女の首筋を撫でたのだ。
思わず肩をすくめるカエデ。その反応から、アンドロイドたちは彼女に対して効果的な方法を学習した。アンドロイドたちの手が『つかむ』『引っ張る』から『撫でる』に変化する。
「ひゃっ、な、何して……っ!? く、くすぐったひ……!? んっ、ぁっ、くぅぅ……!」
頭から太ももまでを撫でられる。それはカエデにとって未知の刺激だった。
アンドロイドたちの手にはヒビもマメもなくて、生まれたての赤ん坊のようにサラサラとしている。そんな手で全身を撫でられると、何だかくすぐったくて、でも気持ち悪くはなくて、すごく恥ずかしい感じがした。思わず身が縮こまり、内股気味になる。
カエデに性知識はあったが、それは「生殖とは男性器を女性器に入れる行為である」という教科書を丸写ししたような知識だけ。全身をねっとり触られるなんて知らなかったし、そもそも常に死と隣り合わせの人生の中、そんな行為は空想の出来事のようにすら感じていた。第二次成長期を過ぎれば必然的に訪れる性欲ですら、運動と戦闘で発散しているのだ。
つまるところ、彼女は性に対する抵抗力など持ち合わせていなかった。体は敏感に反応して、体力を失ってゆく。
「ふっ、ぁっ、ひっ! ぁ、服、止め、あぁぁぁ……っ!?」
カエデの体の動きが鈍くなると、彼女はとうとう衣服を脱がされてゆく。
分厚いジャケット、インナー、安全靴、カーゴパンツ、そして下着まで。彼女はあっという間に一糸まとわぬ姿になってしまった。
「シャワーにご案内シますね」
そして体を引っ張られて、部屋の奥にある浴室に連れて行かれる。つるつるとした冷たいタイルの部屋に連れて行かれるや否や、カエデは頭からお湯を浴びせられた。
「わぷっ!? わっ、あっ、ぁ……っ! ぁぅ……」
カエデは頭上から液体が降ってきたことに慌てて声を上げる。突然の事態に対する、至って普通の防衛反応だった。
しかし全身が火傷するような熱湯ではなく、毒や酸が含まれているわけでもなかった。強ばった体が心地良い温度のお湯によってほぐされてゆく。
電気、ガス、水道、ありとあらゆるインフラは機械に掌握されていた。集落に設置された小さな発電機では効率が悪く、薪の採取ですら命を賭ける環境に居たから、体を洗う時はいつも冷たい水だった。お湯を浴びるなんて、生まれて初めてかもしれない。
敵と認識していた存在から予想外の歓待を受けることで、カエデの抵抗力はどんどん失われてゆく。
「それデは、体を洗っていきますね」
髪の毛の隅々にまでお湯が染みこんだ頃、アンドロイドたちはぬるぬるとしたものをカエデの全身に塗りたくり始めた。石けんだ。
「ひゃひぃっ!?」
「ほら、暴れないデください」
「んくっ、だって、こんなぁ……っ! ぁっ、だめっ、そこ、くすぐたひひひ……!?」
「ダめですよ、ちゃんときれいにしなきゃ」
「うひゃっ!? ひゃっ、ぁぁ……っ! ぁぁぁぁ……!」
カエデの全身がしなやかな指に洗われてゆく。汗が溜まった腋の下を撫でられ、脚を持ち上げさせられて足の裏をこすられる。くすぐったくて、体が無意識の内に跳ねた。
だけどそれが気持ち良いことであると分かると、すぐにまた抵抗できなくなる。体を撫でられるのは不思議と心地良いし、体にこびりついた汗や垢が落とされてゆく感覚も快感だ。埃に覆われた髪の毛をわしゃわしゃと洗われるのも堪らない。
「ここは特によク洗ってあげますね」
「んひぅっ!? や……っ、そこ、そんな、汚れてないぃ……!」
「だめですヨ、ここはきれいにしておかないと」
「ひゃっ、ぁっ、やだっ、ぁ、あぁぁ……!?」
特に脚の付け根を洗われるのは変な感じがした。
股間というのは、どんな時代でも見られるのも触られるのも恥ずかしい部位だ。だからぎゅっと太ももを強ばらせるけれど、その感覚には固まった筋肉を無理やり緩ませるような強制力がある。恥ずかしいはずなのに、なぜか自分で脚を開いてしまうのだ。
生まれて初めて覚えた性的快感が、どんどんカエデの体に降り積もってゆく。
「さ、体を拭きまスよ」
「髪の毛も乾かしましょウね」
全身がきれいになるとお湯が止まり、バスタオルで体を拭かれ始める。いつも支給されるような、向こうが透けて見える薄い生地ではない、モコモコで分厚いタオルだ。
頭の上でゴウゴウと風が吹いている。カエデはドライヤーというものを知らなかったけれど、温かい風が髪の毛を乾かしているのがすごく心地良かった。人類を害する恐れのある新たな機械が出てきても警戒できなかったぐらい、彼女はすでに骨抜きにされていた。
(もう終わりなの……?)
それどころか、快楽をもっと欲する始末。
カエデは知る由もないことだが、シャワーを浴びるというのはある営みにおいてほんの幕開けに過ぎない。故にアンドロイドたちは彼女を満足させることなく、ひたすら焦らし続けていたのだ。
カエデは性感を燻らせたまま元の部屋に連れて行かれる。アンドロイドたちに背中を押されて、逆らうことなくベッドの上で仰向けに寝た。
(いけない、早く逃げなきゃいけないのに……)
機械は人間の敵だ――頭では分かっていたけれど、心と体が追い付かなかった。もっと気持ち良くなりたいその一心で、彼女は底なし沼の奥深くに自ら沈んでゆく。
結局のところ、カエデがアンドロイドたちに殺されることはない。ここはラブホテルと呼ばれる施設で、彼女たちはセクサロイドと呼ばれる製品だった。故に彼女たちの機能と行動原理は実にシンプルなものだ。
「それでは始めまシょうか」
「たくさん気持ち良くしテさしあげますね」
アンドロイドたちは自らに刻まれた役割を果たさんと、一斉にカエデの全身を撫で回し始めた。
「ひゃぃっ!? ぁっ、な、あぁっ、何それっ、あぁぁ……!? ひっ、ひゃっ、ぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
カエデは自分の体がおかしくなってしまった気がして叫んだ。
部屋に入った当初から全身を撫でられていたが、それは分厚い服の上からだった。シャワー室では素肌を直接撫でられたが、それは体を洗うためだった。
そして今、素肌を直接、ただ快楽を与えるためだけに撫でられる。彼女は今までの愛撫が児戯に等しいことを悟った。
「ひゃぁぃぃっ!!? ぁはっ、はぁぁ……!! だめっ、ぞくぞくして、変にぃぅぅぅっ!!?」
カエデの体に手を伸ばすアンドロイドの数は10体あまり。手の数にして20本、指の数にすれば100本以上。文字通り全身を余すことなく撫でられる。
耳や手のひら、足の指、こんなところまで気持ち良くなるなんて。くすぐったいのに癖になるような感覚。全身が鳥肌立つ。
どうして良いのか分からなくて、カエデの体がベッドの上でくねくねと蠢く。手をぎゅっと握りそうになるけれど、それだと手のひらが気持ち良くなれないから、閉じないようにワキワキと動く。快感を逃がそうとして、足の指がきゅっと丸まったり、反対にぴんと沿ったりする。
特に性感帯への愛撫は、性に関しては未熟なカエデにとって強烈だった。
「形の良イおっぱいですね。それにとテも敏感です」
「ふぁぁぁぁっ!? あっ、だめっ、転がしちゃっ!? ひゃっ、ぁあぁぁぁぁぁっ!」
胸を手のひらで優しく撫でられる。それだけでも十分にゾクゾクして気持ち良いのに、時折乳首を撫でられるともっと気持ち良い。さらさらの皮膚が乳頭の先を摩擦して、時折手のひらのしわが乳首を引っかけて転がすのだ。
「濡れやすいんデすね。良いことです、たくさん気持ち良くナれますから」
「だめっ、だめだめだめだめっ!? そこっ、変になるっ!? 変になるからぁぁぁ!!」
膣も入り口の部分を優しく撫でられる。だけどそれだけで、どこかもどかしい。体がもっと気持ち良いところを知っているようだ。アンドロイドたちはここに来てなおカエデを焦らし続けていた。
それでも既に膣はびしょびしょに濡れていて、指が動くたびにクチュクチュと音が鳴っていた。
「喉渇きませんカ? お水を飲マせて差し上げますね」
「んぐっ!? ぐっ……、こくこく……っ」
時折、上半身を起こされボトルに入った水を飲ませられる。
まるでこちらの体の渇きを全て把握しているようだ。疲れた体に活力が戻り、鈍った神経がふたたび蘇る。
「だめぇ……っ! おかしっ、おかしくなっちゃうからぁ……っ」
「良いんですよ、おかしくナっても」
「体の力を抜イて、声を我慢しないデ」
「そしたら、もっと気持ち良くなれマすよ」
「ぅ、ぅあぁぁ……! ひゃっ、あっ、ぁぁあぁぁぁぁぁ……!」
アンドロイドたちがささやく。その言葉に身を委ねることがすごく恥ずかしくて、気持ち良いと知った。
カエデはあまりに気持ちが良すぎて、この状況から脱することを考えられなくなっていた。そんな彼女は、これからこそが本番だということをすぐに知ることになる。
「それでは、そろそろ本気で気持ち良くしてあゲますね」
「ひゃっ、ぅぅっ? も、もうすごく気持ちい――ひぃぃぃぃぃっ!!?」
刺激が変わる。アンドロイドたちの指先が、一斉に振動を始めたのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!? な、何ひぃぃぃっ!! ぶるぶるしへっ!!? へひゃっ、ひゃぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
全身の刺激が突然変わったのだから、カエデは当然びっくりした。故障? それとも自分を殺す何かが起動した? 彼女は、機械が危険な存在であることを思い出した。
だけどそれも一瞬だけ。人間を気持ち良くするための機能だということを自身の体で理解すると、湧き上がった危機感が快楽によってあっという間に洗い流されてしまう。
振動がカエデの全身を舐り続ける。
「どうですカ? 私の自慢の機能なんデすよ」
「これでおっぱいヤおまんこ触ったり。男の人だっタらおちんちん触ったりするとすごいんですから」
「いやっ、止めてとめてぇぇぇっ!!? ひぇっ!? ぞくぞくしへっ、ぞくぞくしてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
アンドロイドたちの手の動きはゆっくりだった。まるでカタツムリが這うよう。中には肌の上に置かれたまま動かない指だってある。
だけどその指が絶えず振動しているから、けっして快感が弱まったわけではない。むしろ振動という快楽を教え込まれているような心地だ。
指が振動すると肌との摩擦が少なくなる。汗をかいていても、指が軽快にすべるようになるのだ。とくに指先を立てると、くすぐったいような快感が癖になるほど気持ち良い。それで性感帯を責められるのだから堪らない。
「おっぱいはまだ経験があまりナいみたいですから、じっくり開発シてあげますね」
「ひぎっ!? むねっ、食い込ませちゃいやぁぁぁぁっ!!? ひっ、ぶるぶるっ、くすぐったひぃぃぃぃっ!!?」
胸の付け根に指が食い込んで、振動がツボを揺らす。
カエデは気持ち良い場所というのは皮膚の表面だけでないことを思い知らされた。体の中を責められる感覚は少し怖くて、それ以上に酷くぞわぞわした。
「開発してなクても、乳首は気持ち良いですよね?」
「ひゃっ、ぁ、あ、ぁ、ぁ、あぁぁぁぁぁぁぁっ!!? ぁ゛ぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
乳首を指でつままれる。振動が乳首を包み込む。
体の他の部分を撫でられるのとは違う。あまりに気持ち良すぎて、それなのに心地良くて、ただ声を上げることしかできない。
「ここなんてどうデす? 触ったことないでショう?」
「ぉ゛っ、あっ、ひぃぃぃぃぃぃっ!! そこやらっ!!? そこや――ぁお゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
アナルの入り口にそっと指を添えられる。
お尻の穴を触られるなんて、生まれて初めてかもしれない。思わず悲鳴を上げてしまうぐらい恥ずかしい。
しかし指が振動しているせいで、むず痒い快感が走る。そして時折、積もりに積もった快感を解消するように爪を立ててかりかりされる。今までの快感とは異質過ぎて、お尻と太ももの筋肉がびくびくと痙攣した。
「やっぱり1番気持ち良いのはコこですよね?」
「ぉ゛あぁぁぁぁっ!!? 何これっ!? こんなっ! 知らなひっ、しらなぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
今まで軽くしか触ってもらえなかった女性器が、とうとう本番と言わんばかりに触れられる。彼女は生まれて初めて陰核という部位を知った。
陰核が振動する指で押し潰されると、強い快感が全身にじんわりと広がって心地良い。根元に爪先を差し込まれると、刺すような鋭い快感に悲鳴を上げさせられた。
「ここ知ってまス? Gスポットって言ウんですよ?」
「や゛めっ!!? 挟まにゃいでっ!!? ぶるぶるはさまなひでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
膣に指を1本入れられる。そのまま指を曲げられてGスポットに当てられる。
外側からは陰核を、内側からはGスポットを責められる。快感の挟み撃ち。女性器をこうやって責められるのが、1番気持ち良いことを知った。
ずっと全身を撫でられていると、自分の中にある何かが膨らんでゆくのを感じた。
「ひっ、ぃいぃぃぃぃっ!!? もっ、だめっ!!? これ以上、だめっ、来ちゃぅぅぅ……っ!!?」
何かが来る、破裂しそうだ。怖い。涙がぽろぽろと零れ、声も震え始める。
それでもアンドロイドたちは止まらない。振動する指で彼女の全身を撫で回し続ける。
その場から逃げようとしたら、アンドロイドたちがカエデの両手足をつかんでベッドに押付けてしまう。力の抜けた彼女には、十分過ぎる拘束となった。
「やめっ、やえぇぇ!!? やっ、いやっ、やぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
アンドロイドたちはカエデの全身を淡々と振動で舐り続けた。
体内に溜まった快感が今、突沸する。
「ひ――ッ!!!? ぁ゛~~~~~~~~~~っ!!!? ひッ!!? ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
絶頂。生まれて初めての体験。
肺が突っ張って息苦しい。だけど全身がふわふわして気持ち良い。絶頂しながら全身を優しく撫でられているから、さらに気持ち良い。
恐怖のどん底から一転して、天に昇るような幸福を感じた。
「イッちゃいましタね、気持ち良いですか?」
「でも、もっと気持ち良くなってクださい」
「貴女が気持ち良くなるタめに、私は居るんですから」
アンドロイドたちがささやく。彼女たちの高く可愛らしい声が、天使の歌声のように愛おしかった。
しかし一度空高く上がったものは、重力に従って落ちるのが常だった。
アンドロイドたちの動きが止まらない。依然として絶頂した体を撫で続ける。
「あっ、あの……っ!!? も、もういい、もういいから!! どうして、止めてくれな……!!? あっ、ぁ、あ、ぁ゛、ぁ、ぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「イッた後ってすごく良いデしょう?」
「もっと気持ち良くなってクださい」
「ずっと気持ち良いの、幸せですヨね?」
「ひ――ッ!!?」
アンドロイドたちが優しく囁く。今のカエデだからこそ、彼女たちが残酷なことを言っているというのが分かった。
「おねがいぃぃぃぃぃぃっ!!! もっ、きもちよくしなひでぇぇぇぇぇぇっ!!!? おかひっ、おかしくな――ぁあ゛ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!? ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?」
弱い絶頂が絶えず全身を包み込み、時折強い絶頂が襲いかかる。あまりに気持ち良すぎて、体が壊れてしまったような気がした。
カエデは泣き叫ぶ。これなら痛みのほうがまだマシだ!
それでもアンドロイドたちの動きは止まらなかった。
「たくさん気持ち良くなってクれて、とても嬉しいです」
「貴女が気持ち良くなルことが私の悦びです」
「だからほら、もっトもっと気持ち良くなって」
アンドロイドたちは、人間に対する敵意を持ってはいなかった。快楽、奉仕、愛、それが彼女たちの存在理由だ。
しかし彼女たちには、利用者が発する言葉に対するフィードバック――つまり『承諾する』という機能が欠落していた。
だから出会った人間を無差別に気持ち良くしようとする。だからどれだけ絶頂しても気持ち良くするのを止めようとはしない。
結局のところ、彼女たちもまた人間に害する機械であることには変わりなかったのだ。
「ひぃ~~~~~~~~~~っ!!? いやだ、きもちよくなりたくなぃぃぃぃ!!! きもちよくっ!!? またっ、ぎもぢよく、な――ぁあ゛ぁぁぁぁぁ!!!? ~~~~~~~~~~!!! ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?」
カエデがそのことに気付いた時にはもう遅い。既に底なし沼の奥深くに沈み込んだ彼女は、ただ絶頂を繰り返すことしかできないのだ。
『絶頂』とは体力を消耗する現象である。何度も絶頂すれば体力がなくなり、度が過ぎればやがて死に至る。
(もうだめ……。体、動かない……)
カエデの意識が薄くなる。
このまま犯され続ければ、自分はやがて死ぬだろう。その一線を越えるのは怖いけれど、安らぎが待っているように思えた。気持ち良くなくなるのなら、死ぬのも良いかもしれない。
だけど彼女がそう思った次の瞬間、アンドロイドたちの動きが一斉に停止した。
「お客様ノ危険を確認。非常停止プログラムが起動されマした」
ビープ音がけたたましく鳴る。開発段階に組まれた、万が一の場合のための安全装置だった。
「体力の低下を確認しマした。こレを食べて元気を出してください。ほラ、あーん」
「あー……。んっ、んぐ……ごく……」
アンドロイドにゼリーのようなものを食べさせられる。かつて開発された、人間が生きる上で必要な栄養素が少量に全て詰まった完全食。
柔らかくて喉を詰まらせることのないゼリーが、重力に従って喉を落ちてゆく。死を望むカエデだったが、あまりに疲れすぎてそれを拒むことができない。
「今日はよクお休みください」
「んっ、ぅ、ぁ……」
アンドロイドがカエデの頭を撫でる。心地良くて、ほっとする。
ベッドで眠りに付く彼女の様子を、無数のアンドロイドたちが見守り続けていた。
開発者の人間たちによって意図して組まれた安全装置が、バグに犯されたことで意図しない形でカエデを弄ぶことになる。
――――
――
十数時間後。
カエデは今までの疲労を全て取り除くような深く長い眠りから覚める。
(ここは、私は……? ……そうだ、捕まったんだ)
寝起きであっても彼女の理解は早かった。アンドロイドたちに捕まって、恥ずかしい目に遭わされたことを思い出す。今もなお裸だ。
確かに気持ち良かった。未知の幸福だった。
だけどここに居るのはまずい。いつ命を奪われるか分からない。仲間だって物資を求めている。心配して救助に来られたらさらに被害が広がるかもしれない。不安が頭の中をぐるぐると回る。
(……とにかく早く逃げなければ)
辺りを見渡そうとした瞬間、彼女は自分の体がぞっと冷え切るのを感じた。
「イらっしゃいませ、コースをお選びください」
「ごゆっクりお楽しみください」
「まズはシャワーを浴びましょうか」
無数のアンドロイドたちがベッドを取り囲んでいる。しなやかで、柔らかく、触れると気持ち良い手が伸びてくる。
「……お願い。もう、止めて」
カエデの目から一筋の涙が流れる。アンドロイドたちにその涙の意味なんて分かるはずがなかった。
それからのカエデの人生は実にシンプルなものになる。
目が覚めるとシャワー室に連れていかれて、体をきれいに洗われる。そしてベッドの上に連れて行かれて、全身をくまなく撫で回される。何度も何度も絶頂し、それは非常停止プログラムが作動するまで――つまり命の危機に及ぶ一歩手前まで続く。意識がもうろうとする中栄養を補給され、気絶するように眠りに付く。そして体力が回復するまでぐっすり寝て、目が覚めるとまた同じ1日が始まるのだ。
アンドロイドたちは全て同じ姿形をしていて見分けが付かないが、交代で充電とメンテナンスが行われていた。シーツはシャワーを浴びさせられている内に取り替えられ、食料も絶えず運ばれ、インフラはほぼ完璧の状態。彼女のライフサイクルが破綻する要素はない。
機械に殺された故人は誰もが言うだろう――彼女の末路は幸せだ、と。
そしてカエデは応えるだろう――そんなバカな、幸せなわけがあるか、と。
しかし、それはほんのひとときのことだ。人間は快楽に晒され続けているとやがて脳を溶かされる。
「気持ち良いでスか? もっと気持ち良くなリたいですか?」
「はひぃぃぃ……、きもちいいですぅ……♡♡ もっときもち良くなりたひですぅぅ……っ♡ もっとなでてっ、もっと全身ぶるぶるしてぇぇぇ♡♡♡」
彼女が、仲間はおろか外界のことを全て忘れて快楽を貪るようになるのはそう遠い話ではない。例えD-048地区の物資が足りなくなり貧困に倒れる者が出たとしても、もはや彼女の知ったことではなかった。
誰も訪れない楽園の中で、カエデはたくさんのアンドロイドたちに囲まれて幸せな毎日を送ることになるのだった。