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長編小説

【第5話】異能バトルものの性拷問師たち

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目次

表紙
 #簡単なご案内など
第1話 読心 -ノンバーバル-
 #クリ責め #電マ #ローションガーゼ
第2話 自声愛撫 -ジメツ-
 #くすぐり #声我慢 #超音波
第3話 非接触絶頂 -ムッツリ-
 #ささやき #見せつけ #脳イキ
第4話 絶頂引延 -トワノマタタキ-
 #シリコンチェーンソー #ブラシ責め #体感時間操作
第5話 はじめての
 #クンニ #寸止め
第6話 感覚遮断 -カイカンノサキオクリ-
 #乳首責め #ニップルドーム #クリ責め #電マ #くすぐり #感覚遮断
最終話 伝心 -ワタシノココロ-
 #キス #胸揉み #電マ #くすぐり #ブラシ責め #感覚共有
おまけ
 #キャラクターのちょっとした紹介

 

第5話 はじめての

#クンニ #寸止め

 

それは、まだこの小さな会社が、今よりもさらに小さかった時の話。

始まりは、Viが少し神妙な面持ちで言ったことだった。

「フラン。この仕事を続けていくなら、アンタもばかり見ちゃいられない」

フランはViに連れられて社内を歩いていく。

この会社にはいくつかの階層があった。1階はエントランスと応接室、2階はオフィス、3階以上は他のテナント、地下1階はロッカールームと訓練場。そして2人が行くのは、さらにその下の地下2階。フランが今まで、立ち入り禁止とされていた場所だった。

まるで刑務所の扉に使われているかのような、分厚い鉄の扉。それを開いた瞬間、フランの目に息を飲むような光景が飛び込んできたのだ。

「これ、は」
「拷問さ。ちょいと事情があってね、彼女から聞きたいことがある」

1人の女性が、裸のまま鎖につながれて、コンクリートの床に転がされていた。フランよりも明らかに年上の、立派な大人の女性だ。

そして3人の男たちが笑いながら、その1人の女性を殴り、蹴り、膣にイチモツを突っ込んで腰を振っている。女性の長い黒髪はぐしゃぐしゃに乱れ、肌はあざとすり傷だらけ。大きな胸には、特に男たちの欲望が群がるのだろう、歯で強くかんだような痕まである。

温められた体液の不快な臭いが、部屋の入り口にまで漂ってくる。

「ぐっ、ぅぅぅ……!! ぅ゛あ、ぁ……」

「なぁ、ちゃんよぉ。俺らも仕事だからさぁ、ホントはこんなことしたくねーんだよ」
「そーそー。あんたが俺らに犯されてるのも、全部あんたが悪いってわけ」
「あー、何だっけ? カドム社の社長? を、あんたが逃がして、かくまったんだっけか? その場所を早いところ教えてくれりゃ、こんなことしないで済むんだけど、な!」

「っ、ぐ、ぁ――っ!!? ぁ゛、ぁぁぁぁぁ……!!?」

男たちにトキと呼ばれた女性は、勢いよくイチモツを突き立てられ、苦悶の表情を浮かべていた。フランとて、性行為というもの自体は知っている。しかしその様子は、保健体育の教科書で見るものとは、あまりにもかけ離れていた。

フランは、自身の口を手で押さえた。Viの意識が、目の前の光景から逸れる。

「……大丈夫、少し、酔っただけ」

昔から、フランは他人の悪意に弱かった。彼女のいる場所は幸い居心地の良いところではあったが、ほんの少しでもをのぞき込む機会があれば、大抵具合を悪くする。

それは、彼女が持つ《能力》の影響が大きかった。

「あの男の人たちは、誰?」
「アタシらの会社の人間じゃない。拷問を専門に受け持っている会社に依頼した、いわゆる外注さね」

「拷問の、外注……」
「……しかし、こいつらはハズレだね」

『ウチの財布事情じゃあ、禄に仕事してくれるところなんてありゃしない』――Viは男たちに聞こえないように呟く。

「もう用は済んだ。行くよ、フラン」

そう言って、Viは早々にフランの手を引いて、その場を後にするのだった。

 

それからフランは、オフィスに戻ってもずっと黙り込んでいた。

手伝いがてらに行っていた事務作業は全く進んでいないし、Viが何か声を掛けても上の空。わずか数名ほどしかいない他の社員たちが、フランのことを遠巻きに、心配そうに眺めている。フランは、この会社にいる誰よりも年が若かった。

Viは、フランに見えないようにこっそりと自分の眉をかき、ため息を付いた――まだ見せるべきではなかった。年を鑑みても紙一重、《能力》を加味すれば……。

しかし、傭兵としての人生を歩むなら、は必要なことだ。

「フラン。ちょいとショッキングな光景だったのは分かるがね。アタシらがいるのはそういう世界だ。アンタがこの世界でやっていこうって言うんなら、これから慣れていかなきゃ――」

しかしフランの返答は、Viの予想とは大きくかけ離れたものだった。

「――あれじゃ、だめだよ。Vi」
「……何?」

「あれじゃあ、何も教えてくれない」

その静かな、しかし強い言葉に、オフィスにいた全員が黙った。パソコンのドライブが回転する音と、安物のエアコンがごうごうと鳴る音だけが聞こえる。

Viは数回のまばたきの後に問うた。

「どうして、そう言い切れる?」
「女の人の心、どんどん乾いて、硬くなってた。何か話すよりも早く、たぶん、そのうち死ぬ」

フランはずっと下を見ている。うつむいているわけではなかった。その視線は地下、今まさに性拷問が行われている部屋のほうにまっすぐ伸びていて。

「フラン」
「何? Vi」

「アンタ、彼女に情報を吐かせられるかい?」

オフィスにいた他の社員たちは一様にざわつき、自らの上司に反感の目を向けた。しかしViは、彼らを一瞥するだけで黙らせる。

「分からない……けど、よりは、上手にできる」
「やってみな。この際だ、期限は問わない。手段も問わない。全部アンタに任せる」

それは、まだ幼いとも言いかねない少女に告げるには、あまりに酷な命令だった。

 

――――
――

 

南雲なぐもトキは眠りながら、これまでの人生を顧みる。

かつての彼女は、ごく普通の少女だった。少し、両親との関係が芳しくなく、素行の悪いことを除けば。学校に通っている間は何度もけんかした。お花を持ってかわいこぶるよりも、自らの凶暴性に従うことを選択した。高校を出た後も『同じ調子でやっていけるだろう』と思っていた。

しかし世界は、世間を知らない小娘が抱く想像よりも、はるかに過酷だった。けんかに明け暮れた学生生活の中で、知人の血肉が弾け飛ぶのを見たことはなかったのだ。彼女は、自分が今までどれだけ両親に守られてきたかを知りながら、死に物狂いで生き延び続けた。いつの間にか、精神はぼろぼろにすり切れていた。

いつ死ぬか分からない、いつ死んでも仕方ない、そんな生活を送り続ける。も、その延長線上にあったに過ぎない。受けた依頼が、たまたま金払いが良く、そして危険だったというだけだ。企業間の争いがあって、過激化し、命を狙われた社長を逃がすという依頼。その社長は、人の命を何とも思っていないクズだった。そんなこと、傭兵の彼女には関係なかった。ただ金をもらって、依頼を遂行すればいい。

依頼は一応成功した。しかしその直後に捕まった。拷問を受け続けた彼女は、そのうち死ぬだろう。

――今更、後悔することもない。ただまっくろなこころで、死ぬのを待つだけ。ああ、命のろうそくというのは、自分が思っているよりも長いのだな。

 

そんなトキが目を覚ましたのは、傷口に走るひりひりとした痛みが原因だった。

「っ、ぅ……! ここ、は……」
「あ、おはようございます」

痛みのほうを振り向くと、少女が自分の手当をしていた。

トキは周囲を見渡しながら、記憶をさかのぼる――自分は先ほどまで、拷問を受けていたはずだ。それも、男たちがただ欲望のままにイチモツを突っ込んで犯してくる、三流以下の性拷問。そしてここは、その拷問を受けていた部屋で間違いないはず。

体は動かない。彼女は相変わらず鎖で拘束されていた。腕は後ろ手で壁の金具に、脚は開かされて床の金具に接続されている。

「君は、何を……」
「傷の手当てをしています」

そんなもの、見れば分かる――トキは今の状況に至るまでの経緯だとか、因果関係だとかを知りたかったのだ。どうして、こんな少女が傷薬と包帯を持ってここにいるのか。

「男たちは、どうした」
「Vi……ウチの者が帰らせました」

「帰らせた?」
「はい。いろいろともめたらしいですけど。もう、二度と来ません」

いかに死の覚悟をしていたとしても、その危険が遠のいたと分かると生に執着してしまうものだ。今までの凄惨な数日間からは考えられない穏やかな時間に、彼女の心が緩む。

しかしその瞬間、少女は困ったように目を背けた。

「……感謝しないでください」
「どういうことだ?」

「あの男の人たちに代わって、私が、あなたを拷問します」
「……何?」

「ええと、その、たぶん、相当きついと思います」

トキはその言葉を言語として理解できても、受け入れることができなかった。嫌悪感によるものではない、ただ信じられなかったのだ――こんな弱気な表情を浮かべる少女が、自分のことを拷問する? 何かの言葉遊びかと疑ってしまうぐらいだ。

怒るべきか、それとも笑うべきか、それすらも分からない。

「とにかく、傷口がふさがるまでは休んでください。ポビド社の薬ですので、すぐに治ると思います」

そう言って少女は、トキの全身を縛り付ける拘束具が緩んでいないかだけ確認して、部屋から出て行ってしまう。彼女が再び部屋に訪れたのは、体の下に敷く毛布を持ってきたのと、食事とトイレの世話ぐらいのもの。

本当に、あの男たちは二度と来なかったし、傷口がふさがるまでトキが何かされることもなかった。

 

――――
――

 

少女の名前はフランというらしい。フランがいつもより緊張した面持ちで部屋にやってきたのは、2日後のことだった。

「けがは、随分と良くなりましたね」
「……ああ」

フランは、トキの体を濡れタオルで拭きながら言う。2日で全てのけがが癒えるわけではないが、傭兵御用達の即効性ある薬を使ったおかげで、体は随分と楽になった。出血はなくなり、青あざも消えつつある。

つまり、いよいよ拷問する時間が訪れたということだ。

「……始めましょうか」

「本気、なのか?」
「……本気です。その前に、確認です。話していただくことは」

「悪いが、それはできない」

トキはこの2日間で、いろいろと頭の中を整理した。

拷問していた……というよりは、ただ欲望のままに犯してきた男たち。あれは言うまでもなくクズだ。それは間違いない。しかし目の前の少女は、あのクズたちと肩を並べるには、あまりに無垢。クズと、それ以外の者を仕分けていく。善良な者に敵意を向けるのは、トキでもはばかられる。

ならば、彼女に指示を出した者こそ、真に憎むべき相手なのかもしれない。しかしならば、そいつの思惑とは一体?

いろいろとふに落ちないことは多かったが、一つだけ確実なことがあった――傭兵である自分がいかなる拷問を受けようと、情報を漏らすわけにはいかない。

 

フランは、トキにも聞こえるぐらい唾をごくりと飲むと、裸にむかれたトキの胸に手を伸ばした。

「っ……、ん……」

控えめな手付きが少しくすぐったくて、トキは吐息を漏らした。

傷の手当てを受けていた時から、『体を痛め付けるような拷問をするつもりはないだろう』という想定をある程度していた。これまでされていたのが性拷問であったなら、これからされるのも性拷問であろうという連想もあった。

しかし彼女の行うそれは、性拷問ですらなかった。

「ん……、ぁ、っ……。ふっ、ぅ……」
(ただ、胸をもむだけか……)

何の変哲もない、ただの愛撫。

男たちのように、乳房が変形するほど力をこめてもみしだくわけでもなければ、乳首が取れてしまいそうなほど強くひねりつぶすわけでもない。その手付きは拙く、穏やかだ。この少女に性経験というものがあるのか疑わしい。

一生懸命に愛撫するその表情は健気で、まるで子どもが母親の家事を手伝っているかのよう。トキに同性愛の気はないが、これが風俗であれば存外に愉しめたかもしれない。

だからこそ、不可解だ。

「ぁ、ん……っ。んっ、ぅ……」
(本当に、これだけか?)

この少女の目的は何だ? 本当に自分のことを拷問しようとしているのか? ただがあって、自らの欲を満たそうとしているだけなのではないか?

やがて、フランの指はトキの乳首にまで及ぶ。

「っ……! ぁ、ん、ぁ……! ぅ……、ぁぁ……」

快感が少しだけ強くなるが、トキが焦ることはなかった。

「……その程度なら、んっ、私は何百時間拷問されても、喋らないぞ?」
「もう少し、時間をください」

「ふん……。んっ、ぁ……! っ……」

拷問対象に『時間をくれ』などと、普通は言うだろうか――どこの誰かは知らないが、この少女に拷問を指示した者よ。それは無意味だぞ――やがてトキの意識は、目の前の行為から逸れ始める。ここから脱出するための方法とか、脱出した後のこととか。

しかし彼女は、そう遠くないうちに後悔することになる。

 

ほんのわずかな時間の後、トキはに気付いた。

「っん……♡」

フランがトキに対して行っていることは変わらない。ただ、小さな両手で彼女の大きな胸をもみ、乳首を転がすだけだ。

それなのに、トキはそのに気付いた瞬間、自身の頬に冷や汗が流れるのを感じた。

「っ、ぅ、ぁ……! っ……♡ ちょ、ちょっと、待て……!」

「……痛くは、ありませんよね。何かありましたか」
「こ、これ……♡ っ、ぅ……!? ぁ、ぅ……!」

拷問を始めた当初は、一生懸命ながらもあまりに拙い愛撫だったはず。しかしほんの数分で、こちらの急所を的確に突いてくる。胸の付け根に親指を食い込ませて、奥のつぼを揺らす。少し大きめの乳首は、人差し指の爪で先端をほじくる。快感を搾り出すその手法、その上達具合は異常だ。

もしも風俗であれば、ただ『飲み込みが良いな』と悦ぶだけで済んだだろう。しかし、拷問を受けているという今の状況、そして彼女の上達具合を思うと、背筋が少し寒い。

やがてフランはその場に跪き、トキの腰を抱きかかえるようにして、既に愛液がにじむ秘所をなめ始めた。

じゅるっ、ぐち、ぐちり。

「ひぁ――っ♡♡ ぐ――!? っ――!」

……ぺとり。ずるり、ずるり、ずるり。

「ぁ……♡ ぅっ、あ♡♡ ぁぁぁぁ、ぁぁぁぁぁ……♡♡」

フランは最初に、舌先を尖らせて膣口をほじくった。しかしざらざらとした摩擦が強いせいでトキがうめき声を上げると、フランの舌はすぐに軟化する。舌の力を抜き、唾液をたっぷりと乗せて、しかしその上で舌表面の感触をしつこく擦り付けていく。優しくも濃厚なクンニリングスだ。

その巧みさは、速度を増していく。極限まで弛緩した舌先がクリトリスに触れた瞬間、トキは大きく腰を跳ねさせた。

「ぅぁあっ♡♡♡ っ、ぁ、ぅっ!!? ぁっ、ぁぁぁぁあっ♡♡♡」

ざらざらとした舌の表面が、クリトリスを下から上に、ぞりぞりとなめ上げてくる。ぞくぞくとしたものが脳すらも犯してくる心地がする。

それからすぐに、愛撫の動きが変わる。舌をほんの少しだけ尖らせてクリトリスの根元をほじくったり、先端をちろちろとなめたり、唇で吸ったり――しかしどれもほんの数回試すだけで終わり、すぐにぞりぞりとなめ上げる動きに戻った。

それはまるで、トキにとって1番気持ちいい触り方を確信したかのようだ。

「ぁっ、あっぁっあっ♡♡♡ ぁ――♡♡♡ やめっ、これ以上、は――!!? ぁっ、ぁぁぁあっ♡♡♡」
(どうして、こんなにうまい……!? 先ほどまで、確かに……!)

背筋に冷たい何かを感じつつも、性感は確実に上ってくる。あまりにもしつこい口淫を『我慢しろ』と言うのは、あまりに無理な話だった。

「ぁぐっ、ぁ――♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ っぁっ、あ゛――♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」

トキは絶頂した。

ここで性拷問を受けてから、彼女が絶頂することは多少なりともあった。しかし男たちにイカされるのはただ苦痛で、まるで何かが摩耗していくようだった。絶頂するたびに、自分の神経が死んでいくのを感じたのだ。しかし今の絶頂は違う。優しく、甘く、しかし全身の神経を無理やり覚醒させられるようだ。

そして一度絶頂して初めて、トキは現状の危険性を知る。

「ひゃぅぁぁぁぁぁあああああっ♡♡♡♡ な――!!!? ぁぐ――、ぁ、ぁぁぁぁあああっ!!!?」

一度絶頂してなおフランがトキのクリトリスをなめ続けた時、彼女は『本当に自分の声か?』と疑ってしまうほど甲高い悲鳴を上げた。

敏感になった性感帯クリトリスでは、先ほどまでと同じ愛撫がまるで金鑢に磨かれるような苦しさに変わる。しかしトキが顔をゆがめた瞬間に、フランの舌遣いがまた優しくなるのだ。

「ふぉっ、ぉぉぉぉぉおおっ♡♡♡♡ ぉ、ぉぉおおっ♡♡♡♡ んぐ――!!? ぁひ、ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」

トキは優しく甘い快感に間抜けな声を上げながら、明確に、『おかしい』と思った。目の前で必死に自分のことを犯している少女は、あまりに巧すぎる。

しかし、その異常さを分析する余裕などない。

「これ、待っ、ま――♡♡♡♡ ひぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ぉっ、ぉぉぉおおお――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」

二度目の絶頂はあまりにも早く、しかし深い。秘所にたまった快感が破裂して、体の中をめちゃくちゃに暴れ回っているかのようだ。あまりに気持ちがよすぎて、潮を吹いてしまう。一瞬だけ『少女の顔を汚してしまった』と思うが、なおも続く口淫が罪悪感を一欠片も残さずに洗い流してしまう。

そうしてトキは短時間のうちに、何度も何度も絶頂に追いやられることになる。

「やめ゛っ、やめぇぇぇえ――!!!? これっ、だめっ、だ――♡♡♡♡ っぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ひぁっ、ぁ゛――♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」

苦しい。トキは、男どもの性拷問とはまた違う苦痛を感じた。

欲望のままに犯されるのは、ただひたすらに苦痛だった。自分の心から潤いがどんどん抜けていき、乾き、硬くなり、いつか死んでいくのだろうという実感があった。

一方で、少女に優しくイカされるのは、ただひたすらに気持ちいい。しかしあまりに過剰なせいで、快であることが苦痛だった。心に甘い蜜を垂らされ、指でぐちゃぐちゃにもみほぐされるかのよう。

彼女は痛みに対する覚悟を持っていても、快感に対する覚悟は持ち得なかったのだ。

 

「ぁぐっ、もっ、もぉお――!!!? こえ゛――♡♡♡♡ っひ――!!!? げほっ、ごほ――!!! かはっ、ひ――!!?」

何度絶頂させられただろうか? あまりにも喘ぎすぎて、過剰に分泌した唾液が気道に入って咳込んでしまった時、フランの口淫はようやく止まった。

トキが何度も咳込んでようやく落ち着いたとき、フランが口を開いた。

「話して、いただけませんか」

トキは、フランに対する『人畜無害な少女』という認識を改めさせられた。確かに、彼女は自分より若い少女かもしれない、その人間性は無垢かもしれない。しかし、その実力は本物だ。

「こと、わる……ッ!!」

トキは歯を食い縛って、喉にありったけの力を込めて答えた。

方法こそ性的快感という奇態なものだが、この少女は間違いなく、自分の心をこじ開けて、言いたくないことを無理やり吐かせようとしている――トキの心からほんの少しの怒りと憎しみがにじみ出た瞬間、フランは肩を震わせた。

しかし彼女は、ややあった後に首を横に振るのだ。

「少し、を変えます」
「っ゛……!」

フランはまた、トキの秘所をなめ始める。何の変哲もないクンニリングス。しかしトキは、これが1番きついと思った。

「ぁひぁぁぁあっ♡♡♡♡ ひぐっ、ぅ――♡♡♡♡ ぁ、ぁっあっぁっぁあああっ♡♡♡♡ ぁぐっ、ぁ゛――♡♡♡♡ ぁぁぁぁぁぁぁぁああああ――♡♡♡♡」

トキは全身に力を込めて、快感をせき止めようとする。

しかし、それは全て無駄なあがきだ。岩をも砕かんばかりの力を込めても、砂糖菓子すら砕けない優しい舌遣いに蕩かされる。もう回数を数えることがおっくうになるぐらい絶頂したはずなのに、また絶頂しそうになる。力のこもった全身が徐々に弛緩し、代わりに痙攣し始める。

しかしその瞬間、フランの舌の動きがぴたりと止まったのだ。

「は、ぇ……♡ あ、え……?」

今まさに絶頂しようという瞬間に愛撫がぴたりと止まったのが、トキにとってはあまりに予想外だった。驚きのあまり、体をびくりと跳ねさせてしまうぐらいだ。

助かったと思った。しかし意図が分からなかった。コンクリートの床が痛いだとか、舌が疲れただとか、何か不都合があったのか? ――今のトキには、その程度の疑問しか浮かばない。

しかし快感の波が落ち着いてきたとき、フランがまたトキの秘所をなめ始める。

「ぁ――♡♡♡♡ くっ、ぐ――♡♡♡♡ ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁあ――♡♡♡♡」

一度絶頂の間際まで上り詰めたせいで、今度は一層。トキにはもう、できっこない『絶頂を我慢する』という選択肢なんて思いつきもしなかった。全身に力を込めて、絶頂の瞬間にやってくる浮遊感に似た衝撃に耐えようとする。

それがもうすぐ来る。

「ぐっ、も、もうっ♡♡♡♡ ぁぁぁぁぁあ、ぁ、ぁ――♡♡♡♡ あ――、え……?」

しかし、あと一なめで絶頂しそうになった瞬間、また舌の動きが止まるのだ。収縮しきった筋肉が、時間を置いて緩んでいく。

2回目の中止。トキは困惑する――まさか、これは意図的に行われているものなのか? それではなぜ? 連続絶頂に至らしめるのが彼女のではなかったのか?

そして快感の波が引いていくと、またフランがトキの秘所をなめ始める。

「ぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡ ぁ――♡♡♡♡ これ、は、もう、もぉぉ――♡♡♡♡」

二度も絶頂の寸前で中断されたせいで、体が勝手に快感を求めているようだ。そんな気はないはずなのに、腰が前に突き出され、くいくいと上下に揺れる。

しかし絶頂の直前、また舌の動きが止まるのだ。

3回目の中止。下腹部にを覚えて、を理解する。

「おい、まさか――」

フランは、トキの言葉に応えることなく、ふたたび彼女の秘所をなめ始めた。

 

「うそ、だろ――!!!? さっきまで、あんなにイカせ――♡♡♡♡ なんでっ、なんで今になってぇ――!!!?」

トキの推測は当たっていた。

フランは口淫でもってトキの性感をぎりぎりまで高めていく。しかし必ず、絶頂に至る直前にぴたりと寸止めする。そしてほんの十数秒程度の時間を置いて、絶頂の波が引くころになると、また口淫を再開するのだ。

「もっ、やめ、くれ゛――!!!!? これ、きづ――♡♡♡♡♡ ぁ゛ーーーーっ♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁもぉぉぉぉお゛ーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡」

絶頂を寸止めされるというのは、実に気持ちの悪い感覚だった。

痛くもなければ、熱くもない。大きな感覚に苛まれるわけでもなく、ただ内蔵を優しくねじられるような不快感がやってくる。こんなにもじんわりとした感覚なのに、背中が焦げ付きそうなほど熱くなって、大きな声を出さなければやっていられなくなる。

「どうして、こんな゛、分がる――♡♡♡♡♡ 私が、いぐの――!!!!? ぁぐっ、ぁ゛ーーーーっ♡♡♡♡♡ ぁ゛ーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡」

フランの寸止めは、回数を増すごとにどんどん正確になっていった。残り0.1mm、0.01mm、0.001mm……絶頂までの距離がぎりぎりに近づくほど、10倍、100倍、1000倍……寸止めされた時の苦痛が増していく。

いつしか、フランは口淫を止めることすらなくなっていた。舌の動きの遅速と圧力だけで、絶頂のぎりぎりを保ち続けるのだ。

「ぃやだっ、ぁ゛ぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡ どうしてっ、いげないの――!!!!? どうしでっ♡♡♡♡♡ ぁぐっ、あっぁっあっぁっ♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡」

トキは、『あまりにもひどい』と思った。

傭兵を始めた時からずっと、いや、始める前から、痛みの多い人生だった。故に、痛みに対してはそれなりに抵抗力を持っていると自負していた。それなのに、目の前の少女は快感を与えてくる。頭がおかしくなるぐらい気持ちよくした揚げ句、今度はその快感をお預けしてくるのだ。

いい加減、トキも気付いていた。少女は何かの異能を持っている。それも、相手を追い詰めることに長けた、を。

しかし気付いても、逆らうことはできない。トキは、自分を守る殻がぼろぼろと壊れていくのを感じた。

「も゛、やめて――♡♡♡♡♡ も、やだっ、いかせでっ、いかせでよぉ――ッ♡♡♡♡♡」

彼女はもう、ただ1人の女性として泣き叫ぶだけ。

これは南雲トキに限った話ではない。人間というものは本来、快楽に対する抵抗力は脆弱なものだ。性拷問を行えさえすれば、人間はあっという間に折れる。先に彼女のことを犯していた男たちのやっていたことは、そもそも性拷問ですらなかった。

しかし、その事実はこうとも解釈できる――性拷問を正しく行うこと、と。

自らの肉欲に負けることなく、しかし良心に負けることもなく、鋼よりも硬き理性でもってただ冷徹に相手を追い詰めることができる人間は、実に希有だ。そしてその人間が、もしも性拷問に最適な何らかの《能力》を持っている確率を求めるなら――。

「それなら、言うべきことがあるはずです」
「ぁぐっ、ぁ――!!!? それ、は――!!!!」

「……言わないなら、やめられません」
「ぁ゛ぁぁぁあ――!!!!? やだっ、もう、やだっ、なめないで――!!!!? ぁ゛っ♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁぁぁああああっ、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーーーーっ♡♡♡♡♡」

トキは、と出会うことは二度とないだろうと思った。

散々時間をかけさせられた拷問は、たった1人の少女によって、あっという間に終結させられたのだった。

 

――――
――

 

――――
――

 

――――
――

 

「――おしまい」

フランは両手を軽く挙げて、昔話を締めくくった。

休憩室。その場にいるのは、フランとウルツアの2人だけ。

「今考えれば、性拷問である必要なんてどこにもなかったね。ただ、最初に見たのがだったから、私も流されてしまった」
「……そうかよ」

「何にせよ、あの時の働きが評価されて、私は性拷問を専門で受け持つようになった。会社に部門もできた。それから少し後になって、ルグ――貴重な《能力》を持った後輩も入ってきた」
「テメェ、この会社に入ってどれぐらいなんだ」

「10年とちょっとかな、この会社ができて間もない時期らしい。おかげさまで、この年でほとんどの社員が後輩だ。ベテランの子役俳優にでもなった気分だよ」

ウルツアは納得したように『ああ』と相づちを打つ。道理で、会社にいるほとんどの人間が、年若いフランに対して敬語を使うのだ。

「満足かい。これが、君が『聞かせろ』って言ってきた話だよ。私はただの傭兵じゃない、れっきとした拷問師……の人間だ」
「そうか。テメェは、人の心が読めるのか」

「……ああ」

フランは、自分の手のひらがひどく汗をかいていくのを感じた。

ウルツアの心は、ぽっかりとした無色透明だった。だけど、その心に段々とがにじみ出てくる。ようやく、実感が湧いてきたのだろう――フランはそのから目を背けた。

初めて知った。あんなに嫌でも見せつけられ続けたものなのに。本当に、本当に、身を引き裂かれるほどに嫌になると、目を背けることぐらいは許されるらしい。

しかし、ウルツアから目を背けても、声は聞こえてくる。

「満足じゃねーよ」
「これ以上、何を聞きたいことがあるんだい? もう全部話したというのに。ひどいやつだな」

フランは、ウルツアから目を背けたまま、優しく微笑む。やがて耐えられなくなって、完全に背中を向けながら立ち上がった。

休憩室を出る間際、軽く咳払いをして、声が震えていないか確かめた。

「初仕事のことだけど、落ち込むことはない。失敗は誰でもする。そもそもあれは、初実践としては少し酷だ。君ならすぐに、私なんかよりもずっと強くなれるよ」

フランがその場から立ち去ろうとすると、背後で座ったままのウルツアは舌打ちをして、吐き捨てるように言うのだった。

「……よく分かったよ。テメェが、本当にムカつくやつだってな」

フランはもう、彼女の心を読もうともしない。だけどその声は、本当に、体が燃え尽きてしまいそうなぐらい本当に、怒っているように聞こえた。

 

――――
――

 

――――
――

 

――――
――

 

フランには、ウルツアにまだ話していないことがあった。

別に、隠していたわけではない。ただ、話しそびれただけだ。

 

初めての性拷問は成功した。

フランは、南雲トキから情報を聞き出した。自身の《能力》によって、それがうそでないことも分かっていた。フランの仕事は完了した。間もなく、の人間たちが、本来の仕事を遂行していくだろう。

しかし彼女は、拷問室から出ることはなかった。

「……約束は守ります」
「ひ――!!?」

フランは、トキの両脚の間に顔を潜り込ませた。

トキの全身が緊張する。先ほどまでの責め苦がフラッシュバックして、悲鳴を上げそうになる。しかし次の瞬間にやってきたのは、脳を蕩かされるような快感だったのだ。

「ぅぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ ぁ――!!!!? な、に――♡♡♡♡♡ ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ――♡♡♡♡♡」
「ちゅ……、じゅるっ、れろ……っ! れろれろ、れろぉ……!」

それは一切の加減がない口淫だった。

舌にたっぷりの唾液を乗せて、クリトリスをぞりぞりとなめ上げる。動きは一定、速度も一定。ただひたすらに、最も効率的な動きでもってトキの性感を高めていく。

「ぁひ、ぁ、ぁ゛、あ゛――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁぁぁあああ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

散々寸止めされてきたトキは、あっという間に絶頂した。

フランは、吹き出す潮と愛液で自分の顔が汚れてしまうのも気にせず、ひたすらトキを快楽に染めていく。秘所をなめている体勢では、トキの大きな胸が邪魔になって表情を見ることができない。それでも、たった一度の絶頂程度では全然満足していないことを、フランは自分の《能力》で知っていた。

「っぐっ、ぁ――♡♡♡♡♡ ぐすっ、ぅ、ぁ゛ぁぁぁああ――♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁぁああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぃ゛――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

トキは言語を発することもなく、ただ泣きじゃくるように喘ぎながらイキ続ける。

最悪の鞭と飴。体は間違いなく悦んでいるはずなのに、心には悦びと苦しみの両方が混在している。フランは、こんなにもぐちゃぐちゃになった心をのは、生まれて初めてだった。

嫌になるほど焦らされたせいで、トキは既に、心身共に限界を迎えていた。さらに激しく消耗する絶頂を強いられれば、体力と精神力が底を突くのは早い。

「ぁ゛――……♡♡♡♡♡ ひっ、ぁ――……♡♡♡♡♡ ぁぁ、ぁぁぁ――……♡♡♡♡♡」

フランは、トキの感情がだんだんといくのを感じた。

それは気絶の前触れ。フランはほんの一瞬だけ舌の動きを緩め、しかしトキの心をと、また舌の動きを速めていく。

「ぁひ、ぁ、あ゛――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡」

トキは全身を弱々しく痙攣させながら、最後の絶頂を迎えた。

声帯を震わせることすらおっくうになったのだろう、口から漏れるのはほとんど吐息だけの声。秘所からは、滴程度の潮がぴゅっと漏れるだけ。

そして秘所にまとわり付く優しい快感がやんでいくと、虚ろだったトキの目は、少しずつ閉じていく。

 

トキが気絶する間際、フランは彼女を抱き締めた。……否、腰に手を回し腹部に自分の頭を押し付けるそれは、抱き締めるというよりは、抱き付くに近い。

そして、フランは呟くのだ。

「……ごめんなさい」

最初は、言葉を発した自分自身ですら辛うじて聞こえるぐらいの、か細い声だった。しかし、雨漏りのようにほんの一滴だけ零れた言葉は、あっという間に心の堤防を破壊していく。

「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」
「ぅぁ、ぁ――……♡♡♡♡♡ ひ、ぁ――……♡♡♡♡♡」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「っ――……♡♡♡♡♡ っ――――…………♡♡♡♡♡」

嗚咽のような声で、何度も『ごめんなさい』という言葉が紡がれる。トキはもはや何も応えることもできず、手に持ったものを放すように、ふっと意識を閉ざしていくのだった。

 

――――
――

 

トキのことを数え切れないぐらい絶頂させて、気絶させて、彼女がまた目を覚ましたとき、フランはまだ拷問室にいた。

フランは、拘束されたままのトキに、ボトルに入った水を飲ませながら、頭を下げた。

「……本当に、済みませんでした」

「……もういい」
「でも」

「私は傭兵だ。死ぬことも、に遭うことも、覚悟していた」

どれだけ心をぼろぼろにされようとも、記憶は残る。

トキはずっと、フランの『ごめんなさい』を聞かされていたのだ。無垢な娘からの、あれだけの懺悔を聞かされたら、もう怒る気にもなれない。

「しかしまあ、下手するとクビだな」

トキが少し軽い口調でそう言った瞬間、フランはまた表情を暗くさせた。

 

「……君は」
「な、何ですか?」

トキの視線がフランに突き刺さる。しかしそこに敵意はない。

「君は、人の心を読めるな?」
「っ! どうして、それを」

「ただの推測だが、やはりか。どうやら、拷問を必要とする程度には制限があるようだが」

トキは合点が行った――それならば、この少女に拷問を命じた者の思惑も理解できる。戦いでも実に有用な《能力》だが、の適正はそれを凌駕するかもしれない。

……いや、これを指示した者からは、どうにも打算以外のを感じ取れる。先の男たちと、この少女の落差は異常だ。合理的に考えるなら、最初から彼女に拷問させるべきだった。が……。

――トキはそこまで思考して、『自分のあずかり知るところではないか』と、首を横に振った。

「覚えておけ。《能力》がなくとも、人の心を読むことはある程度できるんだ。特に君は、顔に出すぎる」

その言葉を聞いたフランはぽかんとした後、右手で自分の頬をつねった。そして指先でつつき、手のひらでこねくり回す。自分の表情筋を確かめるような行動に、トキは苦笑した。

「君は、拷問師にも傭兵にも向いていないな」
「私の《能力》は強いですよ?」

「知っている。性格の問題だ、君はお人好しすぎる」

フランの素養はあまりに高かった。《能力》は無論のこと、トキの知り及ばないところではあるが、勤勉故か事務処理能力は高く、戦闘力も途上だが悪くない。

しかしその感性はあまりに人並みだった。人を傷つける罪悪感、あるいは優越感、苦悩、悦び――その全てを、理性でもって押さえ付けているだけに過ぎない。このご時世の傭兵というのは、ある程度ネジが外れているか、擦れているほうがやりやすい。

「断言してもいい。君がこの道を進むなら、今後、間違いなく苦しむことになる」
「……かもしれません」

「ならば、どうして続けようとする? どうしてこんな汚れ仕事を引き受けた?」

フランも、考えたことは幾度となくあった。

傭兵とは、徴募兵の類では決してなく、数ある職業の一つに過ぎない。世情を考えれば社会的に比較的優位とも言える職業ではあるが、反面命の危機も多い。無理にしがみ付くよりも、他の仕事に就いたほうがいい場合も多いだろう。

しかしそのことを考えると、必ずの姿が、彼女の頭を過るのだ。

「……嫌な人がいるんです」
「嫌な人?」

「私を拾ったくせに、『さっさとこんな会社辞めちまいな』なんて言ってきて。だけど今度は『訓練だ』って言って私をぼこぼこにして。あの人は、私が通る道にいつも大きな岩を置いていくんです。私がいなくなったら寂しいくせに。私だって、私も……」

フランの日常には、どこをどう切り取ってもがいた。わがままで、意地悪で、厳しく優しい彼女がいた。彼女との日常を思い返すと、いつもいらいらしてくる。

『だから、つまり』――何を言いたかったのか分からなくなったフランは、今までの文脈をまったく無視して締めくくるのだ。

「あのをあっと言わせるまで、やめられません」
「……そうか」

トキを縛り付けている拘束具の右腕部分が、きちりと鳴った。もしも拘束されていなかったら、彼女はフランの小さな頭をなでていただろう。

「君は本当に、顔に出るな」

「……それと」
「それと?」

「――――」

最後に一つ、何か言葉を交わした。フランはもう、その言葉が何だったのか思い出すことができなかった――随分と昔のことだ、覚えていなくても仕方ない。すぐに忘れてしまうような、何気ない一言だったと思う。だけどを言った時、目の前の女性が泣きそうな表情を浮かべていたような気がする。

その会話の後、南雲トキは拷問室から連れて行かれた。Viが言うには、『丁重に扱う』とのことだった。その言葉に偽りがないことは、フランも分かっていた。

それから、フランが彼女と会うことは二度となかった。遠くに越したか、仕事を変えたか、あるいは死んだか――この時代、この業界においては、別段珍しいものではなかった。

 

――――
――

 

――――
――

 

――――
――

 

「……あの時の話を他人にしたのは、初めてだな」

深夜。帰り道にある小さな公園で、フランは独りベンチに座っていた。

仕事柄、そして《能力》の影響で、何かと精神的に参ることが多かった。そういう時彼女はいつも、独りになれる場所で頭を冷やすようにしていた。

とにかく理性的に、論理的に、自分の行動と思考を省みる。多少のほころびがあろうとも、無理やりつじつまを合わせて、『自分は大丈夫なんだ』と理由付けしていく。そうやって今まで生きてきた。

だけど今晩はうまくいかない。感情が思考を呑み込んでいく。

「やっぱり、私みたいなやつが、の人間と関わるべきじゃなかったよ。クソババア」

脳裏に浮かぶのはウルツアの姿。《読心》も、拷問も、この会社で仕事を続けていくなら、どうせそのうち知られることのはずなのに。不思議と、彼女に知られるのだけは嫌だった。

彼女も確かに、過酷な人生を送ってきただろう。その環境故か、礼儀がなっていないし、生意気で、口も悪い。しかし、その心は澄み渡るかのように無垢で、強い。まるでどこかののような、ただひたすらにまぶしい存在――どうして自分は、こんなにも淀んでしまったのだろう……?

「……こんな場所に長居してたら、通報されてしまうかもしれないな」

フランは無理やり思考をそらす。『こういう考えは良くない』と自分に言い聞かせる。今もまだ聞こえる心の軋みを無視する。

帰ろう――フランは立ち上がり、しかし歩き出すことなく呟くのだった。

 

「……誰ですか」

フランの視線は、物陰一点を正確に射抜いていた。……誰かいる。しかし会社の人間の気配ではない。

その物陰は、自分が見られていることに気付くと、もったいぶることなくがさりと動いた。

「おや、バレてた?」
「……あなたか。シアン」

肩の上で切りそろえた髪。丸顔で、やや垂れ目。童顔で背は低いが、体の女性的な艶は十分。その女性は、先日性拷問にかけた女性――シアンで相違ない。

シアンは童顔低身長の見た目には相応なかわいらしい服装で、驚くほど自然に、影に溶け込んでいた。フランが宵闇に混じった心を自然と感じ取らなければ、存在に気付くことはなかったかもしれない。

「あれ? 思ってたより淡泊な反応だね。もっと驚くと思ってたのに」
「護送中に脱走したとは、聞いていた」

「僕が逃げ出したのは、政府に引き渡した後だ。君や、君のいる会社に非はないよ」
「知っている」

『君たちと違って、政府の管理はずさんで助かったよ』――シアンはそう言うが、仕方ないだろう。彼女を生きたまま捕縛し続けるのは、極めて難しい。実力は元より、時が止まったかと他者に錯覚させるほど自身を《加速》する彼女の異能は、実に逃亡に適している。ほんのわずかな隙さえ作ろうものなら、あっという間だ。

フランは直立した姿勢を維持したまま、四肢に力を込めた。臨戦態勢――スーツの中に隠している特注の警棒ぶきに意識を向ける。

「まあ落ち着いてよ。僕が君に何かしようってつもりはないさ」
「…………」

「僕たち傭兵は、戦いが終わればノーサイド。それがルールだろう?」
「それでは、何の用だ」

とは違って、随分冷静だね」

『あの時』――苦い記憶だ。散々煽られたとはいえ、冷静さを失った。

故に、フランは頭を下げた。

「この前のは、礼を失する行為だった。済まなかった」
「……真面目だねぇ」

先ほどまで散々、目の前の相手を警戒していたというのに。目線をそらしてまで頭を下げるフランに、シアンは『やれやれ』と首を横に振った。

「君、このままじゃ壊れちゃうよ?」
「……壊れてるのは、あなただろ」

「くすくす、本当にそう思う?」

フランは何も言い返せなかった。

年齢、出身、経歴――シアンの情報は、そのほとんどが不明となっている。しかし不明ということ自体から、分かることもある。情報が分からなければ分からないほど、それだけのがあるということだ。ウルツアのように孤児だったか、ルグのように家庭に問題があったか、あるいは……。少なくとも、全てが健全というわけではない。

なればこそ、少しぐらい頭のネジが抜けていたとしても、彼女の人格を否定することはできない。それは心を真に壊さないための処世術なのだから――。

その瞬間、フランの眼前に、シオンがいつの間にか右手に持っていたナイフが突き付けられた。

「同情は要らないよ。そういうの、ウザい」
「……そう」

「だけどさ、君も君だよ。やってる癖に、心は潔癖症もいいとこ! そんな生き方が、いつまでできると思ってるの?」
「…………」

「さっさと僕みたいにになっちゃえばいいのに」

フランが果たして何の根拠をもって、シアンの言葉を否定できるだろうか。今まさに、彼女の心は壊れそうなぐらい、軋みを上げているというのに。

 

「それで、何の用だ。まさか、そんなつまらない忠告をしに来たのか」
「ううん、まさか」

フランは結局、シアンの言葉に応えることができなかった。だから、無理やり話題を変えた。

「僕ね、君とお友達になりたいなって」
「意味が分からないな」

「僕がただ、君のこと好きなだけだよ? こんなにシンプルな話もないね」
「……お断りだ」

「お友達じゃ嫌? 何ならセックスフレンドでもいいよ? 君とのえっち、すっごく気持ちよくって病み付きになっちゃうんだよねぇ♡ 何なら僕が、君に同じことしてあげても――」
「お断りだと言っているッ!!」

「ぷーん。君は、僕が壊れる一歩手前でやめてくれたくせに」
「あなたが、私の想定以上に頑丈だっただけだ」

「よく言うよ、そんな《能力》を持っておいてさ」

実際のところ、どうなったか分からない――もしもあの時ウルツアが誤って扉を開けなかったら、自分はシアンを壊さずにいられただろうか?

「まあいいさ。君がそのつもりだったにせよ、そうじゃなかったにせよ、結果的に、僕にとって1番良い落とし所を用意してくれた。これは秘密だけど、ウチの社長も、君には感謝してるんだよ? だから、お礼に一つ何でもしてあげる。もちろん、えっちなこともね♡」

シアンへの報復は既に執行された。表向きにシアンをどうにかしようという輩は、もう現れないだろう。そもそもあれ自体、表沙汰にできないことだ。何か一つ間違いがあれば到達しなかったであろう、本当に偶然の、これ以上ない着地点だった。

それは、フランが当初懸念していたことの一つではあったが、今となってはもうどうでもいいことだった。

 

「それなら、一つ聞きたい」
「うんうん、なになに?」

「……どうしてそんなに、私のことが分かる」

フランは問いは弱々しく、真剣なものだった。

しかし彼女の言葉に、シアンは目を見開き、そして大笑いした。

「それ、本気で言ってるの?」
「…………」

「まあいいよ。借りも返さなきゃだし、お友達の質問だもん。ちゃんと答えてあげる♪」

次の瞬間、シアンの姿が消える。シアンはまるで自分以外の時間が止まったかのようにフランに近づくと、両手のひらでフランの頬をふにふにと優しくもみほぐすのだ。

「君、すっごく顔に出やすいよ?」

フランは呆気に取られ、怒りの感情が湧き出る前に、シアンが離れていく。そして『今度は戦場で会おうね』とウインクして、さっさと歩き去ってしまうのだった。

「……くそ」

以前から、あの女の言動は、本当に自分をいらいらさせる――フランは、その理由が少し分かった気がした。

シアンのことを見ていると、フランは自身のぼろぼろになった心を、鏡で見せつけられているような気がした。一つの未来、一つの選択肢――もしもフランがもっと器用なら、シアンのようになっていたかもしれない。もしも彼女のようになれれば、どれだけ楽になれるだろうか。フランは、シアンの人格を否定しない、それどころかうらやましくすら感じる。

しかし現実に、フランはシアンのようにはなれなかった。

感情をぐちゃぐちゃにかき乱されたフランは、しばらく思考の整理が付かず、その場に立ち尽くすのだった。

 

目次

表紙
 #簡単なご案内など
第1話 読心 -ノンバーバル-
 #クリ責め #電マ #ローションガーゼ
第2話 自声愛撫 -ジメツ-
 #くすぐり #声我慢 #超音波
第3話 非接触絶頂 -ムッツリ-
 #ささやき #見せつけ #脳イキ
第4話 絶頂引延 -トワノマタタキ-
 #シリコンチェーンソー #ブラシ責め #体感時間操作
第5話 はじめての
 #クンニ #寸止め
第6話 感覚遮断 -カイカンノサキオクリ-
 #乳首責め #ニップルドーム #クリ責め #電マ #くすぐり #感覚遮断
最終話 伝心 -ワタシノココロ-
 #キス #胸揉み #電マ #くすぐり #ブラシ責め #感覚共有
おまけ
 #キャラクターのちょっとした紹介