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目次
表紙
#簡単なご案内など
第1話 読心 -ノンバーバル-
#クリ責め #電マ #ローションガーゼ
第2話 自声愛撫 -ジメツ-
#くすぐり #声我慢 #超音波
第3話 非接触絶頂 -ムッツリ-
#ささやき #見せつけ #脳イキ
第4話 絶頂引延 -トワノマタタキ-
#シリコンチェーンソー #ブラシ責め #体感時間操作
第5話 はじめての
#クンニ #寸止め
第6話 感覚遮断 -カイカンノサキオクリ-
#乳首責め #ニップルドーム #クリ責め #電マ #くすぐり #感覚遮断
最終話 伝心 -ワタシノココロ-
#キス #胸揉み #電マ #くすぐり #ブラシ責め #感覚共有
おまけ
#キャラクターのちょっとした紹介
第3話 非接触絶頂 -ムッツリ-
#ささやき #見せつけ #脳イキ
ウルツアが傭兵会社に勤め始めてから、1週間がたつ。彼女の生活は規則正しいものだった。
彼女は会社から与えられた社員寮に住む。小さな、飾り気のないワンルームだ。朝6時に起きると、1時間かけて身支度と洗濯をする。ウルツアは、自分をしっかりした人間だとは思っていない。それでも、彼女が着る服はしっかり手入れをしなければすぐ駄目になってしまう。
「……っどくせー」
毎朝のように独り悪態をつきながらも、見た目を整えることだけは怠れなかった。
7時になると、寮の食堂で食事をとる。その時間は5分と極めて短い。彼女は元々小食だから、それに習慣として、今までのんびりと食事をとっていられなかったから。理由はいろいろあるが、最大の理由は他にあった――食堂には、あまり長居したくないから。この食堂は、アイツも使う。
7時半には会社に行く。小さなビル、1階はエントランスと応接室、2階はオフィス、3階以上は他のテナント。傭兵会社が入っているビルのテナントは、万が一の時ひどいことになるからという理由で割引されるらしい。
ウルツアは2階には行かず、すぐに地下1階に行く。ここには、装備を整える小さなロッカールームと、その中に備え付けられたシャワールーム、そして彼女の目的である訓練場がある。戦闘部門の、さらには新人であるウルツアに雑多とした業務は与えられておらず、ただ強くなることが求められていた。
「何だい、ウルツア。随分と早起きじゃないか」
「……ッス」
たまたま社内を散歩していた社長のViに、ウルツアは頭を下げた。相手が社長だから……ではない。自分を拾ってくれた恩人だからだ。
「励みな。アンタには期待してんだ」
Viはそれだけ言って、さっさとオフィスに行ってしまった。
それから、ウルツアは訓練場でひたすら武器を振るう。全力ではない。筋肉を温め、体捌きと太刀筋を確かめるよう。それは長い長い準備運動。彼女の1日は、午前のたった数時間に凝縮されていた。
「おはよう、ウルツア」
「……来やがったか」
9時になると、憎き宿敵もとい指導係の灰咲フランがやってくるのだ。
――――
――
「今日の稽古はここまで」
「っざけんな……! オレはまだ、やれるぞ……っ」
「息が切れてるじゃないか。それに、もう正午になるよ」
昼になるまでには、フランとの訓練が終わる。彼女は訓練場の隅に放っておいたジャケットを拾いながら、ため息を付いた。
結果はいつも同じだった。ウルツアが殺意を持って当たるも、フランは攻撃の全てを木刀でいなす。ウルツアが立つのもやっとという時、フランはジョギングでもしたかのように軽く息を切らせるだけ。体力の差ではない、ただひたすらに実力の差だ。
「頭を使いなさい。やみくもに武器を振っても、筋トレにしかならない」
「……バカだって言いてーのか」
「違う」
フランはきっぱりと否定した。
「君の頭は、決して悪いほうではない。理解力があるし、改善や工夫をしようという意思もある。今日だって、新しい技を持ってきたはずだ。だけど、君は準備してきたものを全て出し切ると、頭が真っ白になって猪突猛進になる。君が苦手なのは、リアルタイムの思考だ。そこを意識しなさい」
「……チッ」
何気なく吐いた一の恨み言に、十の懇切丁寧な指導が返ってくる。
もしもフランという人物が人を見下すような糞野郎なら、ウルツアは思い付く限りの罵詈雑言を吐き散らし、不意でも何でも突いて土の下に埋めてやったことだろう。だけど、向けられた目があまりに真っすぐだから、結局ウルツアは舌打ちをしながら、もやもやとした気分を胸にしまい込むしかない。
「テメェ、いつまで木刀使ってやがんだ。武器はメンテナンスに出したって」
「だって、これで十分なんだもの。わざわざ武器を損耗させたくない、メンテナンスだってお金が掛かるんだよ」
「クソが」
……というほど分別があるわけでもなく、毎日のように恨み言を吐き続けるのだった。
いつもと変わらない、腹立たしい日常。しかしウルツアは最近、一つ気付いたことがある。
自分の指導係に当たる灰咲フランは、年が三つか四つ程度しか変わらないはず。それなのに、彼女に対して頭を下げる社員が多いのだ。
訓練場から出る時、2人はいかにも強そうな大男と鉢合わせた。
「おう、フランさん。お疲れっす」
「お疲れさまです、御守さん。その右腕のけがは?」
「何、かすり傷っすよ。最近ニコ社の件であちこち忙しいっすから、休んでられねえや」
「お大事になさってください。稼ぎ頭が長期欠勤になったら、会社が傾きますよ」
大男の年は30代ぐらいだろうか、フランよりも明らかに年上であるはずなのに、彼はフランに対して敬語を使っていた。フランのほうも敬語を使うものだから、どちらが目上なのか分からない。お互いに敬語ではあるが、よそよそしさはなく、案外親しげだ。
大男の視線が、ウルツアのほうに移った。
「ところで、その子は?」
「そのうち戦闘部門に入る、新人のウルツアです。ウルツア、こちらは君の先輩にあたる御守コウガさんだ」
「……ッス」
フランが背中を軽く小突くから、ウルツアは仕方なく御守と呼ばれる男に頭を下げた。
「おうそうか、そりゃ心強い! 一緒に仕事することになったらよろしくな!」
御守がそう快活に笑って、会話が終わる。『自分に対してはタメ口だよな』と、ウルツアは思った。
この傭兵会社における戦闘部門の人間は、自由時間が多い。依頼をこなす以外は、基本的にほぼ自由時間と言ってもいいだろう。その分、いざという時は命を賭けて戦わなければならないのだから、釣り合いが取れているとも言える。
しかし、研修中のウルツアまで同じ待遇だと、少し時間を持て余し気味だった。フランとの訓練は、午前中のほんの2~3時間程度で、それ以外はひたすらの自主鍛錬。
ウルツアは決して怠惰な人間ではない。しかし、いかに傭兵といえども、四六時中ずっと武器を振り続けられるわけではない。休憩もとるし、他の社員が訓練場を使うなら、場所を譲らなければならないこともある。
「オレは何やってんだか」
会社の2階にある休憩室で、ウルツアはベンチに寄り掛かりながら呟いた。今の境遇に後悔しているわけではない。ただ、あまりにも不思議な時間で戸惑っていた。
「ふ抜けたつもりはねーんだがな……」
彼女が思い出すのは、ほんの数週間前までの生活。
《能力》という存在が明るみになってから、この国は本当にひどくなった。《能力者》による犯罪は多くの血を流し、暴力、ドラッグ、売春――あらゆる悪意の呼び水となる。治安組織の対応なんてとうに追い付いておらず、地域によってはもはや『法』という存在すらおぼろげだ。
運悪く、そんな場所での生活を余儀なくされた独りぼっちの小娘の人生なんて、碌でもないとしか言いようがなかった。暴力と欺瞞に満ちた、今日を生きられるかも分からない毎日。昨晩隣で笑い合っていた仲間が、朝になったら死んでいたなんてことも珍しくない。心をすり減らしながら、必死に生き延びた。
それが何の縁かViに見いだされて、拾われて、その結果が今だ。出来たての飯を食って、温かな布団の中で眠り、ただ目標に向かって突き進むだけ。まるで青春のような毎日が、ウルツアには何だかおかしくて笑ってしまう。
――そう、目標だ。ムカつくアイツをいつか負かしてやる。ああだから、早く明日になってくれないだろうか。アイツがいない時間は退屈で仕方ない。
「……恋する乙女かよ、オレは」
暇な時にいつも思い浮かぶのは、アイツのこと。
『勝つために』と網膜に焼き付けたその一挙一動を、頭の中で何度も何度も再生していることに気付き、ウルツアは憎々しげに呟くのだった。
――――
――
この傭兵会社は、地上が2階、地下が1階の合計3階構造ということになっている。表向きには知られていない4階層目の地下2階に、性拷問師であるフランとルグがいた。
「最近、面倒な案件ばかり増えてないかな」
「ですねぇ。ニコ社との争いが激しくなってるってことですかね」
「今日は、特に気が重い案件だな」
この会社における拷問の仕事は、毎日行うような定型のものではない。依頼が来たときに、決められた期日までにこなす。会社の人間が対象を連れてくることもあれば、よその人間が依頼してくることもある。
最近、後者の仕事が増えつつあった。
「ひえ、ええ、ええええ~~~~」
フランが目を向けるだけで背筋を震え上がらせる対象は、まるで小動物のような女性だった。
名前は宇佐木リコ。もっさりとしたロングヘア、ぱっつんと切りそろえられた前髪。その下にあるのはまん丸の目。背は小さく、体も細い。見た目も態度も、小動物そのものだ。
そんな彼女は、この拷問室に入れられる者たち全員と同じように、全裸で拘束されていた。金属の椅子に座らされて、両腕は背もたれの後ろで、両脚は椅子の脚に縛り付けられている。
「そういうわけで、あなたが黙秘することなければ、私たちもひどいことをせずに済むのですが」
「ひええええ~~~~!?」
リコは『どうしてこんなことになったの!?』という気持ちでいっぱいだった。いつものように会社のオフィスで独り残業していたら、突然男の人たちが何人もやってきて、自分のことを攫っていったのだ。
いろいろと質問された。取引先のことについて、いつ連絡が来たとか、どういう指示を受けたとか。リコがそれらを黙秘した理由は、単純明快だ――だって『くれぐれも外部に漏らさないように』って上司に念押しされたんだもん!
この会社の性拷問においては、いくつかのルールが存在する。だいたいはフランが決めたものだ。例えば、本番をしてはいけない。例えば、拷問した相手を想像して自慰をしてはいけない。
例えば、今回の場合、フランとルグの2人で対応しなければならない。
「せんぱい。この人って、《能力者》で間違いないんですよね? 何だか、あまりそういう雰囲気がないっていうか」
「わ、わわわわ私の《能力》なんてほんとに大したことないんです! ほ、ほほほほほほほんとに、ごごごごごゴミクソみたいな《能力》で!?」
ルグが問うと、リコが首をぶんぶんと振り乱して返す。
あまりにも卑屈な態度だから、フランはフォローすることにした。
「《能力》を得た者が全員、戦場に出て戦うわけではない。後方での支援のほうが適正だと判断されたら、そちらに専念する場合もある」
『私たちだってそうじゃないか。ルグ』――フランがそう言って、ルグがフランのことを少し見つめてから『そですね』と返した。フランの『後方での支援のほうが適正』とは随分とオブラートに包んだ言い方ではあったが、要するにリコは『戦闘では役立たず』と判断された《能力者》だった。
リコは臆病な性格だった。それが嫌で、物語に出てくるような主人公に憧れて、傭兵を目指した。小さな女の子が魔法少女に憧れるのと同じだ。
しかし結局、幾ばくかの金を払って《能力》を得ても夢がかなうことはなく、オフィスで事務仕事に忙殺される毎日を過ごしている。
「何にせよ、《能力者》であるなら君が出たほうがいい。悪いね、ルグ。君に負担が掛かって」
「いえいえ、よろこんで♡ 最近金欠だったので、お仕事が増えるのは良いことです」
「君が事務仕事を手伝ってくれれば、そちらの給料も出せるんだけどね」
「あーあー聞こえませーん」
心を読むことができるフランは、拷問に最適な人材である。しかし、《能力》を封じ思うがままに改ざんしてしまうルグは、《能力者》を拷問するのにさらにこの上ない人材だった。
2人は手元の資料に目を通していく。
「どうして政府って、《能力者》一人一人のデータを記録してるんです? こうやって、こっそり提供してもらってる私たちとしては助かりますけど」
「未知の犯罪を防止するためだよ。《能力》とは、すなわち手口だ」
「……犯罪防止、できてます? しかもこれって、自己申告でしょ?」
「言わないお約束。しかしまあ、彼女は項目に虚偽も抜けもなくて助かる。……なるほど、《感覚強化》ね」
《感覚強化》――数ある《能力》の中でも、特にオーソドックスなほうだろう。もっとも、その詳細はやはり各人による。目が良くなるのか、あるいは耳が良くなるのか、はたまた鼻が良くなるのか。
そこまでの詳細は資料に書かれていないが、すぐに分かることだ。《魔改造》という異能を持つルグは早速、ふんすと気合を入れた。
「まあとりあえずは、《能力》を捕まえるところからですねー♡」
「はぎゃっ!? な、なななな何ですか!? 何だかっ、もやっと!? もやっとした!?」
「お? 私の《能力》を感じ取れちゃうなんて珍しいですねぇ♡ こうですか? こうすると効くんですかぁ♡」
「ふぉぉぉぉおっ!? 何か変、何か変んんんんんん!?」
お互いに触れることもなく、指をわきわきさせながら悦に入るルグと、身悶えするリコ。それは端から見ればさぞ異様な光景だろう。
ルグは相手の《能力》を支配するとき、『捕まえる』という表現をする。フランが以前聞いた話によると、相手のどこかにある《能力》を虫取り網か何かで捕まえて、その顔を、その羽根を、その節足を――その《能力》の生態を観察するイメージらしい。そして捕まえたそれを《魔改造》する段階については……フランは聞くのをやめていた。
事前に聞いた話からすると、目の前で実際に行われていることは案外狂気的で、猟奇的だ。
「ふんふん、なるほどですねー」
「遊んでただけの成果はあったろうね?」
「もっちろんです♡ ええと、一口に感覚が鋭いと言っても、いろいろあってですねー。この子の場合は《感受性》ってところですね」
「《感受性》?」
それはフランにとって、あまりぴんと来ない話だった。
「そです。『いきなり視力が10.0になったー!』とかではなく。視力はそのままですけど、他の人が気付かない刺激にもすぐ気付くようになるって感じです」
「……なかなか、戦場において有用そうな《能力》に聞こえるけど」
「どうでしょ。それだけ影響されやすいってことですから、ちょっとした刺激でもストレスになっちゃうんですよね」
『なるほど』とフランは頷いた。テレビか本か、どこかで聞きかじった話だが、光や音に敏感すぎて日常生活が困難な人もいるらしい。
とすると、何となく想像は付く。ほのかに漂う血の臭い、刃と土埃がこすれる音、背後から忍び寄る殺意をまとった空気の流れ――ありとあらゆる刺激に気付くことができれば、さぞ戦場で役立つだろう。しかし彼女にとってそれは、全てが耐え難いストレスなのだ。彼女にとって気付くということは、イコール怯えると言い換えられるかもしれない。
本人の性格を鑑みても、戦いに不向きと判断されても仕方ない、《感受性》とはまさに小動物のようと言って差し支えない異能だ。
「カナリアにならなくて良かったと、心底思うよ」
「カナリア?」
「昔の炭鉱夫は、毒ガスがないか調べるために、鉱山にカナリアを連れていったらしいよ」
「うげぇ」
毒ガス探知機代わりにされたカナリアの末路なんて、言うまでもないだろう。
そういった使いつぶすような運用をされないあたり、彼女の所属する会社は比較的まともなのだろう。そしてこれから、そういった会社の人間を拷問にかけるのだ。
『やっぱり面倒な案件だ』と、フランは思った。
「何にせよ、現状脅威になりにくい《能力》だというのは分かった。ありがとう、ルグ。今日はもう対応する必要はないから、上がってもらっても」
「えー! この子の《能力》、すっごい楽しいんですよー!? 私もやりたいですー!」
「また勝手に何かしたのか……」
「いえいえ、今日のは本当にささやかですよぅ」
ルグはそう言って、椅子に拘束されているリコに近寄る。そして全身をぶるぶると震わせ続けている彼女の耳元に口を近づけて、ねっとりとした声音でささやくのだ。
「……あなたのこと、犯しちゃうぞぉ♡」
「ぴ――!!?」
耳元でささやいただけ。たったそれだけで、リコの全身が跳ねた。腰がびくん、びくんと前後に揺れるその動きからは、単に『ささやかれて驚いた』以上の意味を感じ取れる。
「そうだなぁ、例えば、指先でこうやって、乳首をころころころ♡ ころころころころぉ♡」
普段から甘ったるい声を出すルグだが、今日はより一層、まるで煮詰めた蜂蜜のように甘くて、熱い。『こうやって』と言ってはいるが、別にリコの乳首に触れているわけではない。ただ本当に、耳元でささやいているだけだ。
「ふぁぉぉぉっ♡♡♡ ぉほっ、ぉ゛――!!? 乳首っ、ちくびむずむじゅしへぇぇぇぇえっ♡♡♡」
それなのに、リコは薄らと盛り上がった胸を前に突き出しながら震え始めた。小さな胸にふさわしい小さな乳首が、見る見るうちに硬く尖っていく。まるで本当に、乳首を触られているかのような反応だ。
その反応に、ルグは驚くこともなく、満足げに笑った。
「えへー♡ 何だかASMRみたぁい♡」
「……感受性ってこと?」
「そです♡」
「なるほど、本当に難儀な人だ」
つまり、彼女は耳元で淫語をささやかれるだけで、自分が現在進行形で犯されているような錯覚に陥っているのだ。
『あまりにも影響されやすすぎる』と、フランは思った。今の彼女なら、いかがわしいビデオを観せるだけでも殊更に感じてしまうのではないだろうか。
「ささ、せんぱいもどうぞ♡」
「え、ええー……?」
「ほら、もう片方の耳、空いてますよ?」
フランは自分の仕事に関して生真面目だ。基本的に、自分の感情よりも仕事の遂行を優先する。だから今の状況を鑑みれば、自分も性拷問に加わることで効率を上げることは、合理的判断である。
だけど、その方法がよりにもよって相手の耳元で淫語をささやくことだなんて――フランにとってそれは、相手の性器を口淫で犯すよりも恥ずかしかった。
フランは口をへの字に歪ませて、頬を朱色に染めながらささやく。
「あ、あー。えっと。質問に答えてくれないようなら、ひぶ……、おまん……? ……じょ、女性器に触れますね」
「ほぉぉっ、何しょの低くへ透き通る声へっ♡♡♡ せいへきっ♡♡♡ 癖に刺しゃるぅぅぅうっ♡♡♡」
「あ、ああ、ど、どうも。親指と中指で開いて、人差し指で中をほじくるように……」
「ひぁぁぁぁあっ♡♡♡ 耳がっ、みみがはらみぃひぃぃっ♡♡♡」
『ハラミ……?』――そう呟くフランの言葉責めは、あまりにも稚拙。それでも、リコは敏感な反応を示す。
一方でルグのほうは随分とノリノリだった。
「それじゃあ、私はおっぱいをたくさん気持ちよくしたげますねぇ♡ ほうら、こりこりこり、こりこりこりこりぃっ♡」
「ひひゃっはっ♡♡♡ おっぱひっ、おっぱい敏感だからぁぁぁぁあっ♡♡♡」
「へぇ~敏感なんですかぁ♡ じゃあこんなのどうですかぁ? 小っちゃなおっぱいの膨らみを、指10本でこちょこちょこちょこちょーっ♡」
「ふひゃぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡ ぁはひゃっ、ひゃめっ、くしゅぐったはぁぁぁっはははははははははははははひゃぅぁぁぁあっ♡♡♡」
「そのまま乳首もこちょこちょこちょーっ♡♡♡」
「ふゃうゃぅぉぁやぁぁぁぁぁああっ♡♡♡ きひゃはっ♡♡♡ ぉ゛おっ、ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっ♡♡♡」
「ぁ゛ー、いいですねぇ♡ リコちゃんホントに敏感でいーですねぇ♡ ほらほら、おまんこからどんどんエッチなお汁が出てきてますよぉ♡」
「ほぉぉぉおおっ♡♡♡ そんにゃっ、ぉほぉぉぉぉぉぉぉおおおおっ♡♡♡」
ルグが秘所の状況を指摘すると、本当に愛液の量が増えていた。しかし果たしてそれは、体が先か、言葉が先か。
今まで性拷問にかけた相手の中でも極めて御しやすい相手だが、フランには思うことがあった。
(これで、どうやって情報を聞き出せばいいんだ?)
これが夜の営みなら、ただ相手に快感を与えるだけでいいだろう。しかしこれは性拷問だ。拷問であるからには、情報を聞き出さなければならない。そして情報を聞き出すには、快楽でもって苦痛を与えなければならない。これは単なる言葉遊びではなく、必要なことだ。
「あの、宇佐木さん。そろそろ情報を」
「ふぁぉぉぉおっ♡♡♡ その声っ、その声はツボなんでしゅってへぇぇえっ♡♡♡」
(だめだこれ)
もう言葉責めの必要すらなく、ただ耳元でささやくだけで喘ぐ始末。
そもそも、普通に犯せばそれで済む話なのでは? ――フランがその疑問に行き着くのは当然のことだった。
しかし彼女は同時に、もう一つの疑問を抱いていた。
宇佐木リコの《能力》とは、つまるところ『外部から与えられる刺激の影響を受けやすい』ということだ。ルグはそれを言葉責めという形で利用しているに過ぎず、本来は聴覚に限った話ではない。
それならば――。
「宇佐木さん」
「はぇ、へ――?」
フランは、言葉責めで蕩け切っているリコの目の前に、電動マッサージ器を差し出す。そしてリコがその物体をしっかりと認識したことを確かめてから、電源を入れたのだ。
電動マッサージ器がブゥンという音を立てて、激しく振動し始めた瞬間だった。
「ぃぎ――!!? ひ――♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
リコはまるでそれを自分の秘所に押し当てられたかのように腰を突き出し、悲鳴を上げながら絶頂を迎えた。あまりに強い《感受性》を持ったリコは、ただ動く道具を見るだけで、自分がそれで犯されているかのように錯覚したのだ。
「はわぁっ♡ せんぱい、天っ才~♡」
その時の、ルグの目の輝きようといったら、まるで新しいおもちゃを見つけた子どものよう。優しく蕩けるようなASMRが、激しく身を引き裂かれるような性拷問に変わった瞬間だった。
「ねぇねぇリコちゃん♡ 次、こういうのはどうですかぁ♡」
「ふぎぃぃぅぉぉぉおぉっ♡♡♡♡ なんですかっ、なんですかそのいぼいぼぉぉぉっ!!!? ほぉっ、ぉぉぉ゛ぉぉぉぉおおっ♡♡♡♡」
リコが天井からぶら下がったフックから取り外して持ってきたのは、無数のいぼが付いたバイブだった。まだバイブのスイッチは入ってもいないというのに、リコは濁った喘ぎ声を上げ、腰をかくかくと振り始める。
「すいっちおーん♡」
「ぉ゛ほぉ――ッ♡♡♡♡ ぉ゛ごっ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
そしてスイッチを入れると、まるで悲鳴のような喘ぎ声を上げるのだ。それはもはや、催眠術か何かに掛かっているかのようだ。
異能というものは、人々の常識を凌駕する。しかし世の中には、身に付けないほうがいい《能力》も存在するらしい。
「ちょっとぉ゛♡ 電源入れただけでイカないでくださいよぉ♡ このバイブは、こうやってぇ、いぼいぼを擦り付けるように動かしたほうが気持ちいいんですよぉ?」
「ぉごっ、ぉ゛ぉぉぉぉぉおおっ♡♡♡♡ 中っ、えぐれっ、えぐれる゛ぅぅぅぅぅ♡♡♡ ぅぉっ、お゛っ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
「あれあれぇ、またイッちゃいましたぁ? ぇ゛へへへへー♡ それじゃあ、中にたまったお汁をかき出してあげますねぇ♡」
「ふぎぁっ♡♡♡♡ はげしひっ、ひぎっ、ぎっ♡♡♡♡ ぃ゛あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡」
ルグがまた興に乗り始めたから、フランは一歩下がって現状を考察した。
「意外と、成立しているな」
当初のフランは、『感受性が強い』と言われてもまだぴんと来ていない部分があった。
物理的な刺激を与えずとも、視覚や聴覚、そして想像によって絶頂する――それは一見すると、現実よりも快感量が減ってしまいそうな印象がある。しかし、目の前の光景を見ていると、必ずしもそうとは言えないのかもしれない。
「ねえねえ、今度はこんなバイブなんてどうですぅ♡」
「太ぉ゛ぉぉぉぉぉおおおっ♡♡♡♡ そんなふどいのっ♡♡♡♡ あしょこ壊れ゛――♡♡♡♡ スイッチ入れぢゃやだぁ゛ぁぁあああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡」
「次は、これにしますぅ? こっちはお尻の穴用なんですよぉ♡」
「わたし、おしりでなんてしたことな゛――♡♡♡♡ なにごれ゛――♡♡♡♡ なにごれ新感覚っ♡♡♡♡ ぅぐおっ♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
想像の良さとは、自由である。
たとえ明らかに膣に入らないであろう極太のバイブでも、たとえ初心者の大部分が性感を覚えるに至らないであろう尻穴を使ったプレイでも。想像であれば、現実の壁を越えていくらでも自由に気持ちよくなることができるのだ。下手をしなくても、実際に体で感じるよりも気持ちいい場合は多い。
もっとも、現実にこれほどまで《感受性》の強い女性はそういない。異能を持ちつつ、実際に触れずともいろいろな道具で『気持ちよさそう』と思ってしまうぐらいむっつりなリコと、彼女の異能を《魔改造》できるルグだけの特権だ。
「……1番のメリットは、私が恥ずかしい言葉責めなんかをせずに済むことかな」
「せんぱい、何してるんですか! ほらほら、せんぱいも手伝ってぇ♡」
「……はいはい」
そして、2人による非接触の性拷問が続けられる。
拷問室には、さまざまな道具が置いてあった。その一つ一つを手に取り、その快感を、肉体を介さずリコの脳内に直接たたき込んでいく。
「これは、見た目だと分かりにくいでしょうか? この小さな口がクリトリスを吸ってくれるやつなんですけど」
「ふぉぉぉぉおっ♡♡♡♡♡ それ見だこどあるっ♡♡♡♡♡ めちゃくちゃきもぢぃやつぅぅぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「ちょっとマンネリしてきましたねぇ。リコちゃんリコちゃん、これクリちゃんにどうですかぁ? 2本の金属の棒を近づけるとぉ、電気がばちっとっ♡」
「ぅぎゃっ♡♡♡♡♡ っぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ クリ壊れる゛っ♡♡♡♡♡ 壊れぇぅぁえぉぁ○%♭×!$☆#▲※~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「これなんてどうです? 今まで使ったことがないんですよぉ♡ ヤバすぎて」
「まあ、人間に使うにはちょっと、ね。下手すれば死ぬ。これは」
「なにぞれなにそれ゛な゛にそれぇぇぇぇぇえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡ ぃぎゃっ、ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
実際に行っていることは、ただ道具が動く様子を見せつけているだけ。しかしリコにとっては、無数の道具で犯されているのと同じだ。
下手な拷問よりもよほどきつい。少なくとも、意志の弱そうなリコのような女性に対して、いきなり行うようなことではない。
「もういや゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ ぜんぶっ、ぜんぶ話しますから゛ぁぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」
「え゛ー? でも、まだこの部屋にあるの、2割ぐらいしか試してないですよぉ?」
「もうやだっ、もうやだぁ゛ぁぁぁぁぁあああああああっ♡♡♡♡♡ いぐっ、またいぐっ、いぐいくいぐ――♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
今日の仕事はあっけなく終わるのだった。
――――
――
そうして全ての知りうる情報を吐いたリコは、気絶するように眠りにつく。
「せんぱい。拘束、解いちゃっていいんですか?」
「脅威にならないからいいでしょ。余計な負担は掛けるべきじゃない」
あとは、彼女をクライアントに引き渡して終わりだ。
フランは、先ほどリコから聞いた情報を、頭の中で反芻した。取引先のことについて、いつ連絡が来たとか、どういう指示を受けたとか。そして顔をしかめた。
「こんな端切れみたいな情報を集めて、表のやつらはどうしようって言うんだか」
『仕事は仕事だ。依頼があるなら、私たちはどんな相手でも拷問しなければならない』――それは以前、フラン自身が言ったことだが、それでも思うことはある。
――こんな情報のために、私たちは罪のない一般人を拷問しているのか。
フランがため息を付くと、側に立っていたルグが思い出したように声を上げた。
「あ、そだ」
「ん?」
「せんぱい。さっきの言葉責め、今度はこちらにどうぞ」
ルグの手に握られているのは、会社から支給されている携帯端末。
「……どうして?」
「私用です♡」
「絶対にお断りだよ!」
「あーん。朝のアラームに使おうと思ったのにー!」
――――
――
時間の都合だろうか。最近、フランとウルツアは休憩室でよく会う。
一日の業務の終わり際、スパートをかける夕方時。拷問以外の仕事を持っていないルグは、すぐに帰宅してしまう。この時間に休憩室を使うのは、既に仕事を終えたフランと、暇を持て余したウルツアだけだった。
「また死にそうな顔してやがる」
「む……」
足を組んでベンチにだらしなく座るウルツアにそう言われて、自販機からジュースを取り出したフランはまた自分の頬を右手で触れた。今日はより一層、表情筋を硬く引き締めていたはずだったのに。
「君は、エスパーか何か?」
「はぁ?」
フランの問いに、ウルツアは思わず噴き出しそうになった。《能力者》に対して『エスパーか?』と問うほど間抜けな質問があるだろうか。
「私、疲れてるかな……? いや、《能力》の影響? だけど、そんな現象、今まで起きたことは……」
「おい、何だよ」
「……この子がそんな、コミュニケーション能力に優れているようには思えないし」
「おーし分かった。ケンカ売ってんだな」
ウルツアはその言葉に少しムカついたけれど、それ以上の怒りや憎しみの感情はなかった。あんなにも気に食わない相手が、訳も分からず取り乱しているのが、少しおかしかったのだ。
ぶつぶつと呟いていたフランは、少したってからようやくウルツアのほうを向いた。
「あー、何だろう。いろいろと考える余地はあるけれど、一言で表すなら」
「何だよ」
「私と君は、案外ウマが合うのかもしれないね」
「はぁ!?」
くすりとも笑うことなく吐かれたその言葉に、ウルツアの顔があっという間に赤くなった。
「テメェ調子に乗ってんじゃねぇぞ!? 少しオレより強いからって、なれなれしいんだよッ!!」
「強さは関係ないし、あえて言うなら『少し』どころではないかな」
「いいか、テメェなんかすぐにノしてやるからな、覚悟しとけ!!」
「……君はどうしてそう、腕っ節でしか物事を考えられないんだ?」
ウルツアはそう言って、立ち上がりかけた体をどかりとベンチに落とす。その顔は真っ赤で不機嫌そうではあったが、フランと一緒にいる空間から出ようとはしない。
自販機のグアバ焼き芋ジュースを啜りながら、『何だよこのイカれた味……』と終始呟き続けるのだった。
目次
表紙
#簡単なご案内など
第1話 読心 -ノンバーバル-
#クリ責め #電マ #ローションガーゼ
第2話 自声愛撫 -ジメツ-
#くすぐり #声我慢 #超音波
第3話 非接触絶頂 -ムッツリ-
#ささやき #見せつけ #脳イキ
第4話 絶頂引延 -トワノマタタキ-
#シリコンチェーンソー #ブラシ責め #体感時間操作
第5話 はじめての
#クンニ #寸止め
第6話 感覚遮断 -カイカンノサキオクリ-
#乳首責め #ニップルドーム #クリ責め #電マ #くすぐり #感覚遮断
最終話 伝心 -ワタシノココロ-
#キス #胸揉み #電マ #くすぐり #ブラシ責め #感覚共有
おまけ
#キャラクターのちょっとした紹介