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◆あらすじ
機械に丸呑みされる快感を愉しめるお店のお話。シリコンで作られた機械の内壁は、V字のぞりぞりとした溝で埋め尽くされており、生き物に丸呑みされるのとはひと味違った快感があります。しかしあまりに気持ちいいせいか、じわじわと呑み込まれている途中で『こんなお店に入るんじゃなかった』と後悔する女性も多いそうで……。
性欲に任せた勢いだけの行動は、大抵禄なものじゃない――そんな教訓を得た出来事でした。
最近、ちょっと話題になっていたエッチなお店があって、そこは人目を気にしないでいいらしく、安くて、何よりとても気持ちいいって。
だから、まあ、行ってみたんです。ちょっとむらむらしていましたし。3,000円を握りしめて。
開始からほんの10分。私は早くも後悔していました。だって、こんなに気持ちいいだなんて思わなかった!
「こぇっ、や゛っ♡♡♡♡ あしっ、全部っ、くすぐっだっ、きもぢ――♡♡♡♡ ぁ゛ひっ、ひ、ぁ゛、ぁぁぁぁぁぁああああっ♡♡♡♡」
呑み込まれた下半身が、絶え間なく愛撫されています。
ローションでぬるぬるになったぎざぎざの内壁が、皮膚表面を隈なく摩擦してくる――その感覚はどこかくすぐったくて、だけど全身が鳥肌立つ感覚が何だか悪くない。
一定のリズムでずちゅずちゅと締め付けられるたびに、何だかハグされているような気分になって、脳内から変な物質が分泌されているような気がします。ああ何だっけ、あのイルカみたいな名前のやつ、あれだ、β-エンドルフィンだ。
1mmの隙間なく気持ちよくされるそんな感覚が、つま先から始まって、ふくらはぎ、ひざ、太ももと、どんどん上ってくる。いや、私が呑み込まれていく。
「これいじょっ、吞まないで――!!!? ぅぐっ、ぁ――♡♡♡♡ ぅ゛ぅぅぅぅぅ、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁあああああ――♡♡♡♡」
このイカれた快感生成装置に呑み込まれないようにするためには、動いてはいけませんでした。もがけばもがくほど、シリコンと肌の間にローションが入り込んで、どんどん滑りが良くなってしまいます。まるで砂漠の流砂みたいです。
「だめ、イッだら――!!!? 吞むの、早くな゛――♡♡♡♡ っぐぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っぁ゛――♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
だけど、機械がずちゅり咀嚼たびに私の体は1mm呑み込まれて、アソコをぞりっとなでられて指の力が抜けるたびに私の体は10mm呑み込まれて、絶頂して全身がもがき痙攣するたびに私の体は100mm呑み込まれて。
呑み込まれれば呑み込まれるほど、絶頂すれば絶頂するほど、気持ちよさは加速度的に大きくなっていき、呑み込まれる速度も上がっていきます。
「やだっ、やだっ、やだぁぁあ゛――!!!!? も、腰――♡♡♡♡♡ 胸もっ、すぐ――!!!!? ぁぐっ♡♡♡♡♡ また、イ゛――♡♡♡♡♡ っぐぅぅぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
残酷な真実を突き付けられた気分でした――もう、絶対に逃げられないって。
結局、私は20分ぐらいで全身を呑み込まれてしまいます。
「っぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ やだっ、やだぁぁぁぁぁああああっ♡♡♡♡♡ 全部っ、きもぢひっ♡♡♡♡♡ ぃや゛ぁぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
全身をぐちゅぐちゅぞりぞりとされている私は、狂ったように叫び続けます。もう、動くのを我慢することもありません。めちゃくちゃに暴れて、だけど全然逃げられないことを知って、絶望します。
不思議なことに、機械に顔を呑み込まれても呼吸はできるようでした。だけど最後まで抵抗していたせいで、両腕が持ち上がったまま呑み込まれたのは良くありませんでした。
「んぎっひひひひひひぃぃぃいいいいっ♡♡♡♡♡ っぁ゛、つぼ入っだ――♡♡♡♡♡ くしゅぐっだっ♡♡♡♡♡ わきっ、おなかっ、むねぇぇぇえっ♡♡♡♡♡ くしゅぐっだぁぁっひゃっはははははははははぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
無防備になった脇腹とか、腋の下とか、胸とかが無遠慮にぞりぞりされて、訳が分からないぐらいくすぐった気持ちいい。いっそのこと、途中で諦めて上半身を守っておけばよかった。
「これ゛っ、いつぅ゛ぅぅぅぅううっ♡♡♡♡♡ いつになっだらっ、終わっで――♡♡♡♡♡ ぇひっひぃぃぃいっひぃぃぃぃぃぃいいいっ♡♡♡♡♡ っひッ♡♡♡♡♡ っぃ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
ばかみたいに全身を気持ちよくさせられている私は、単純な割り算ですら苦労します。お店で前払いしたのは3,000円で、このお店の料金システムは30分で500円。だから、ええと、3,000を500で割って、さらに2で割って――。
「3じかっ♡♡♡♡♡ 3時間んんんんんんんんんんん――♡♡♡♡♡ さんじかんってっ、うそっ、うそぉぉぉ゛ぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ♡♡♡♡♡ ぉ゛ぉぉぉぉぉおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
私は自分の愚かな行動があまりに信じられなくて、叫びました。
ああだけどそもそも、こんなお店に入るんじゃなかった――今日はもう後悔ばかりです。
「んひゃっ、ひっ、ひぃぃぃぃぃいっ♡♡♡♡♡ ごめんなひゃっ、ごめんなじゃいぃぃぃぃぃぃぃいいいっ♡♡♡♡♡ ごめんっ、ごめんって――♡♡♡♡♡ だからっ、赦じ――っ♡♡♡♡♡ っぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
私はもう自分で誰に言っているのか分からない、まったく意味のない謝罪を繰り返しながら3時間ずっとイキ続けるのでした。
――――
――
もう二度とこんな愚かなまねはしない――人間って、そんな風に後悔することってありますよね。例えば、食べすぎてお腹を痛くしたときとか、お酒を飲みすぎて二日酔いになったときとか。
そういう後悔って、だいたい長続きしないんです。『喉元過ぎれば熱さを忘れる』というか。散々後悔したはずなのに、また食べすぎたり、飲みすぎたり……人間なら誰しもこういう経験があるのだと思います。
――つまり、そういうことです。
「なんで来たの゛っ♡♡♡♡♡ なんで私またこのお店来だのぉぉぉぉぉおおおおっ♡♡♡♡♡ ぉひゃっ、ぁ゛ぁぁぁぁぁぁああああああっ♡♡♡♡♡ ぁぁぁぁぁぁぁあああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
私は一週間おきに、『もう二度とこんなことしない』と叫びながら、機械に丸呑みされてばかみたいにイカされるのでした。