お知らせ(2024/06/07)

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長編小説

【付録1】擽園開発日記序章 ~悪い神さまの創る世界~

※当サイトにはプロモーションが含まれるページがあります。

⏱このページは26分ぐらいで読めます


目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》

 

付録1 渡り鳥の気ままな旅模様

繁栄を極めた国が、1年もたたずに落ちぶれて、跡形もなく滅ぶ。

それはこの《世界》では別に珍しくないことだ。突然暴れ回る勇者や魔王が大きな影響を与えていることは、学者でないでも分かった。彼らは強い。本当に私と同じ人間なのか疑ってしまうぐらい、《規格外》の存在だ。もしも、私たちが住む《世界》とは別の世界が存在したとしたら、もっと穏やかな世界なのだろう。

だけど、こんな《世界》だからこそ、私は旅が好きになった。

数奇な運命か、私が物心付いた時には、既に馬車の中にいた。西大陸も、東大陸も、何周したかもう片手では収まらない。それでも旅に飽きることはない。少し時間を置いてから同じ場所に行ってみると、前とはまったく違う景色が広がっているからだ。

だから、私は旅を続ける。自分の心を蝕むを少しでも潤すために、今日もを求め続ける。

 

「――して、よ。この屋敷の料理人が作る料理は、口に合ったかな?」

「ええ、とても。関所の通行証を融通していただけただけでなく、このような晩餐まで頂いて……感謝の言葉もございません。侯爵」
「ハハハ、旅人の話は、時に吟遊詩人の詩にも勝る。私のほうこそ楽しかったぞ」

は今、ある国で、ある貴族のお屋敷にいる。目の前にいるのは、がっしりとした体型で、ちょび髭の中年侯爵だ。

対する私は、年にして彼の半分前後しかない女だ。背中まである長さの橙色の髪に、自画自賛できるぐらいのイイ体。今は屋敷の侍女に渡された、そこそこな品質のドレスを着ている。

「順序が逆になってしまった気もするが、風呂の準備をさせている。旅の汗を流しておくといい」
「あら。しかし旅人に過ぎない私が、そこまでしていただくわけには……」

「星空を眺めながら湯に浸かるのも、悪くはないぞ? よそで土産話にもなろう」

私は内心、『来た!』と思った。だけど二つ返事で受け入れることはせず、上手な作り笑いを浮かべながら、公爵の目を盗み見る。

それは、誰よりも多くの人々と関わってきた私だからこその技術。その瞳の奥に潜むを見ると、相手がどんな人物なのか、何となく分かるのだ。一見穏やかそうな優男が、瞳の奥にものすごく邪悪な光を隠していることもある。寡黙でおっかなそうな大男が、穏やかな光を宿していることもある。

この男の瞳に宿った光は……どうやら、改めて見る必要もなさそうだ。

「……そうですね。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」

だ。

私は一度は断りかけたその厚意を受け取ることにした。

 

随分と上等な料理をごちそうになった後、私は使用人に案内されるがままに、屋敷の奥へと歩いていく。

服を脱ぎ、浴室の扉を開くと、思わずため息が漏れた。

「これはまた、すっごいなー……」

お風呂――ごく普通の家庭には、なかなか存在し得ないものだ。専用の部屋を作って、大量の水をくみ、薪をふんだんに燃やして温めるなんて、そうそうできることではない。大抵の人間は公衆の浴場に行く。運が悪いと他人のがこびり付いた木桶の中に入れられることもあって、なかなかに気がめいる話だ。

だから浴室を持つというだけでも随分なお金持ちなわけだけど、ここは特に豪華だった。

まず、大きい。寂れた村の公衆浴場にたくさん並べられている、2人入るだけでぎゅうぎゅうになる木桶風呂なんて目じゃない。5人入ってもまだ余る大きさだ。そして足の裏から伝わるすべすべとした感触。この浴室の床材、もしかしたら壁も、これは大理石か。部屋を灯すランプは必要最低限、大きな天窓からのぞく無数の星々が、浴室を照らしていた。

なるほど、確かにこれは良い――私は再びため息を付いた。思わず、を忘れてしまうぐらいだった。

「……ん?」

だけど、湯船に足先を沈めると、違和感に気付く。

最初に感じたのは、お湯のぬるさ、次にだった。明らかにただのお湯ではない、ただの井戸水と言うには無理があるぐらい、もったりとしていて、ぬるぬるとしていた。つま先から腰へと身体を沈めると、ねっとりとした水面が肌をぞぞぞとなで上げていく。

「ぁ、あぁぁ……っ。こ、これっ、ぇぇ……」

これは、スライムの粘液だ。

スライムは水に魔素が宿って魔物化したものだ。魔物とは言っても、人を襲うことはめったにないし、放っておけば魔素が抜けてぬるぬるの粘液体だけが残る。魔物の中でも珍しく、あまりに人畜無害。そして、残った粘液体はに使われる。

しかもこれは、つま先を付けるまでスライムの粘液であると気付かなかったぐらい、浴室の底が透けて見えるほどきれいだ。恐らく、そこらの泥が混じった水たまりから生まれたものではない。きれいな泉や湧き水などから生まれたスライムだけを使ったのだろう。

どうやら、私はずいぶんと歓迎されているらしい。

 

と、そこで浴室のドアを開く。

「よい湯であろう? ここは国王陛下へのご歓待にも使われたことがあるぐらいだ」
「……あら、侯爵」

入り口に立っていたのは、裸の侯爵だった。一目見た時に気付いたことだけど、侯爵は貴族の割に結構イイ体をしている。冒険者や騎士などと言われても納得してしまいそうなぐらいだ。

私は浴槽の中で立ったまま、右手で胸を、左手で秘所を隠しながら、侯爵のほうを振り返った。

「侯爵ったら、女性の湯浴みに入るなんていけませんわ」
「ふん、貴様も期待していた癖に」

その言葉は、女性を相手にするには随分と失礼かもしれない。だけど侯爵がどぷんという音を立てながら湯に入ってきても、私は体を隠した姿勢のまま動かない。

そして侯爵は私の背中に回り込んで、抱き締めるように片腕で押さえ込むと、残った手を私の腋の下に差し込んだのだ。

「ひぃうぅんっ!?」

浴室に私の声が反響する。

腋の下で、侯爵の指先がもぞりとうごめく。ぞくぞくした感覚が腋の下から全身に広がっていくけれど、私は腕を微妙に開いた姿勢のまま閉じることはない。

そんな私の態度を見ると、侯爵は少し粘着性を帯びた声音でささやくのだ。

「ほれ、貴様はこうされたかったのだろう?」
「ひゃぁあぁぁっはっははははははははははははははははっ!! こっ、こうしゃくぅっ!!? くすぐったひっ!!? くすぐったぁぁぁいっはっはっはっはっはははははははははははははははははははははっ!!!」

ごつごつとした指が、私の腋の下を無遠慮にくすぐってくる。

私たちはまだ浴室の中で立ち上がったままだけど、侯爵はきっと、浴槽に入る時にスライムのぬるぬるした粘液を手ですくい取ったのだろう。そのせいで指がよく滑る。私は腋の下を閉じてしまうけれど、それでも指の動きを防ぐことはできない。甘く蕩けるようなくすぐったさに、私は大きな声で笑い始めた。

「通行証など口実に過ぎないのだろう? 白状したらもっと凄いことをしてやるぞ、ん?」
「はひっ!!? はひぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひ!! そ、そうでしゅぅっふふふふふふふふふふ!! こ、侯爵にくしゅぐられたくて来まひたゃぁあぁぁぁっはははははははははははははははははははははは!!!」

どうやらお互いに、いろいろな思惑が透けて見えていたらしい。

この中年侯爵、ちまたでは好色家なことで有名な男だった。気に入った女性を屋敷に招いては、をしている。政治の腕は確かなものだが、裏では悪評が絶たない。

そんな彼と一晩を共にすることが、私の目的だった。どうして? 別にこんな節操のない男の伴侶になりたいわけではない。ただ、気持ちいいことをしたかっただけ。それこそが、私が旅をする一番のなのだから。

を求める貴族は、こうして適当な理由を付けて会いに行けば、意外とすんなり会うことができるものだ。少し堅苦しい礼節が必要だけど、私ならそれぐらいの使い分けは訳ない。

 

「ようし、褒美をやろうっ」
「ふひゃっ、ぁ――!!? ぁ――♡♡♡ 全身、ぬるぬるにぃ……!!?」

侯爵はそう言うと、湯船の中であぐらをかいて私を乗せた。肩から下が全て、ぬるぬるの粘液に満たされる。その感触を実感するだけで、私の胸がどくんどくんと高鳴っていく。

そして何の期待を裏切られることもなく、侯爵は私のぬるぬるになった腋の下から腰までを、往復するように両手でくすぐり始めるのだ。

「ぁひゃぁぁぁぁっはっはははははははははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡ くしゅぐったはっ!!!! くしゅぐったひですぅぅぅぁっはっははははははははははははははははぁぁぁあっ♡♡♡♡ ひゃはっ、ひゃわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡」

「当然だろう? くすぐっているのだから。それとも、やめてほしいか?」
「やめないでぇぇっへっへへへへへへへへぇぇぇぇえっ♡♡♡♡ くしゅぐったいのっ、もっとくだしゃひぃぃぃっひっひゃっはははははははははははははぁぁぁあんっ♡♡♡♡」

「ふふふ。素直でかわいいやつだ。どれ、今晩はたっぷりと楽しませてもらおうかっ」
「きゃはぁ~~っはっはははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡ すごひっ、ずっとくしゅぐったひっ!!!? ずっとくしゅぐったはぁぁぁっはっはははははははははははははははははははぁぁぁぁああああっ♡♡♡♡」

そうして私は、侯爵にそこそこ気に入られて、くすぐったい腋の下から腰までをたっぷりとくすぐられることになった。私が体を暴れさせるたびに粘液が全身に絡み付いてきて、何だか胴体以外もくすぐられているような気すらする。

スライムの粘液に満たされたお風呂でたっぷりくすぐられる――このぜいたくな快感は、単に『金が掛かっている』ということではないことに気付く。

「ふひゃはっ、ひゃはぁっはははははははぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡ ふへひっ♡♡♡♡ 体っ、ぬるぬるっ♡♡♡♡ ぬるぬるが落ちなひっ、乾かにゃはっ――!!!? ずっとぬるにゅるしてぅぅぁあっはっはっはははははははははははははははははははひゃぅぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」

スライムの粘液というのは、大半が水分である以上、時間がたてば蒸発するものだ。最初はぬるぬるでくすぐったくても、だんだんと乾いていくとベタついていき、くすぐったくなくなっていくのが悩みものだ。

だけど今は、たっぷりのお湯と共に、私の身体を余すことなく飲み込んでいる。だから、乾くこともなく、垂れて落ちることもない。常に最高のぬるぬるとくすぐったさが、私を包み込むのだ。

 

この侯爵は好色家で、ちまたで評判が悪い。しかし実際に付き合ってみないと分からないこともあるらしい。

に関しては、とても、とても優しいということだ。

「ふへぁっはっはははははははははははははひぃっ♡♡♡♡♡ ひひっ、ひっ、ひゃはっ♡♡♡♡♡ ぁはっ、っぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

「む、気をやったか。どれ、少し休ませてやろう」
「ふぁぉぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡ 何でひゅかっ、そのくしゅぐり方っ♡♡♡♡♡ やさしっ、優しひっ♡♡♡♡♡ ひひゃっ、ひゃははははははははっ♡♡♡♡♡ ひゃわっ♡♡♡♡♡ ひゃぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

一物を突っ込んで欲望の限りに腰を振るわけでもなく、ただひたすらに腋の下をいじめ続ける。

その手付きも、乱暴なものではない。皮膚がひりつかないように最大限の注意を払っているように感じられる。私がくすぐられるだけでイッた後は、神経が落ち着くまで優しくくすぐってくれる。だからこそ、私は長く、長く、このくすぐり責めを愉しむことができる。

「ぇひっ、ぇひっ、えっへへへへへぇぇぇぇえっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ひひっ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

ずっとずっと腋の下をくすぐられ続けていると、段々と脳が蕩けていくような気がした。まるでこのスライムの湯船と混じりあっているみたいだ。

「少々ぬるくなってきたか。寒くはないか?」
「はひ、はひぃぃぃっ♡♡♡♡♡ ちょうど、いいでひゅぁっ♡♡♡♡♡ ぁっははははははっ♡♡♡♡♡ ぁははははははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

そこで私は、この粘液のお湯が最初からぬるかった理由に気付いた。

もしも普通の湯浴みと同じ温度に浸かりながらこんなことをしていれば、あっという間にのぼせてしまっただろう。これはこの時間を長く愉しむことができるようにという、侯爵の気配りだ。

彼は好色家なんていう噂(本当のことなのだけど)が立っているせいか、中年でありながら未婚だ。だけど案外、この人が結婚したら、気配りのできるいい父親になるんじゃないかななんて思う。

「これほど美しく、官能的な女は久々だ。これまで百は抱いてきたが、貴様は五指に入るぞ。ノマよ」
「ぁへっへへへへへへへへへへぇぇぇぇえっ♡♡♡♡♡ ありがとごじゃいまっはっひゃはははははははぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁっ♡♡♡♡♡ ぁ゛ぁはぁ~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡」

……ああでも、浮気とかしそうだな、この男。やっぱり今の話はなし。

しかしこちらに危害を加えてくることさえなければ、彼がどんな人物であっても、ただ気持ちよくなるための相手としては悪くない。

「ひゃっははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ ひひっ、ひっ、ひっ♡♡♡♡♡ っひ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ へへ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

そんなことをぼんやりと思いながら、私は夢見心地に長く長くくすぐられるのだった。

 

――――
――

 

気持ちいいことをする――あまりに身も蓋もない言葉だけど、それこそが私が旅をする最大の目的だ。

侯爵は、私の乾きを心地よく満たしてくれた。だけど残念ながら、私はどうやら飽きっぽい性格のようで、1人とずっと愛し合うことはできそうにない(そもそもあの男自体、たった1人の相手として選ぶような人物でもない)。だからこそ、各地を渡り歩いて常に新しいを探し続けていた。

スライムに包まれたお風呂もぜいたく感があって良かったけど、侯爵の手付きは少し優しすぎただろうか。あれはあれで良いものだけど、その反動か、今の私はもっと刺激的な快楽を求め始めていた。

だからこれから、私はに捕まってみることにする。

 

魔物に捕まる時は、少し用心が要る。絶対にと関わってはいけないということだ。

どこかの学者の話によれば、『魔物』と『魔族』の違いははっきりしていないらしい。ひとくくりにするには見た目の個体差が大きすぎるし、その生態もさまざま。魔物が人語を話すことはないらしいけれど、だからといって全ての魔族が人語を話すというわけでもない。

それでも魔族――あいつらは別ものだ。あまりに突発的に、強大な力を持って生まれて、いたずらに《世界》を混沌に陥れて、いつの間にか死んでいく。まるであいつらは、私たちをはるかに超越した《何か》が生み出した、悪意そのものだ。

だから、いかに私が色狂いでも、魔族に関わってはいけない。関わるなら、必然性を持って発生した、比較的人畜無害な生き物――魔物がいい。

 

そんな理由があって、私はある町で十分な情報収集をした後、そこから半日ほど歩いた山の麓にある洞窟に赴いた。

「時々、近くに住む村娘が森の恵みを採りに近付いて、ひどいことになるんだよ」
「日の光を浴びれば死んじまうらしいから、洞窟の外に漏れることはないんだけどねぇ」
「近づきさえしなければ無害だからって、兵隊さんも冒険者さんも動いてくれないんです」

町の若い女性たちがそんな風にぼやくは、私も思わず喉をひゅっと鳴らす場所だった。

「これはまた、すごい見た目だなぁ……」

森の中で木々の隙間から聳える岩壁、そこにぽっかりと空いた、酒場の扉よりも一回り小さな洞穴の入り口。内部の地面から岩壁、天井までをびっしりと埋め尽くすのは、小指ぐらいの太さの触手テンタクルたちだった。

太さはあまりないけれど、長さは私の指先から肩ぐらいまでありそうだ。みみずをそのまま大きくしたような形のそれは、何とも卑猥な粘液をまとって、暗がりにいながらも赤紫色の体をぬらつかせている。

触手というものも、魔物や魔族と同じく個体差が大きい。この子たちに目や耳はなさそうだけど、空気の振動か何かを感じ取っているのだろうか、私が近付くと何匹かがぬらぬらとうごめきながら洞窟の外から這い出てくる。

だけど木々の隙間から差し込む日の光に当たると、段々と動きが鈍くなって、すぐにぴくりとも動かなくなってしまった。

「あらら、ごめんね」

なるほど。町で聞いた情報におよそ間違いはなさそうだ。

洞窟を覆い尽くす触手の群れを見ていると、段々と頭の働きが鈍くなっていくのを感じる。まるで酒場でエールを浴びるように飲んだ時みたいだ。

「ぅぁー♡ だってこれ、絶対すごいじゃんんん……」

洞窟は小さい。入り口は、私が屈まないでぎりぎりくぐれそうな大きさしかないし、外から奥の壁が見えるぐらいには深さもない。まるで女体を犯すためだけに生まれたみたいな、実に収まりのいい洞穴だ。

私はそんな洞穴をのぞくだけで、その感触、その快感を想像して発情していた。うん、だ。

私はそれを、想像だけで終わらせるつもりはなかった。洞窟にゆっくりと近付いて、触手で埋め尽くされた洞窟の地面を右足で踏みしめるのだ。

「ふぉぉ、すごぉ……。日の光に弱いだけで、結構元気じゃん……」

日の光に当たった瞬間に死んでしまうから、生命力という観点で少し不安があったのだけど、杞憂だったらしい。洞窟の陰に差し出されたブーツに、うぞうぞと触手が群がってくる。

そしてブーツの縁にまで触手が上ってきて素肌に直接触れ始めた時、とうとう望んでいた感覚がやってきた。

「んひんっ♡♡ ぁっ、やっぱり、ぬるぬるしてるぅぅぅ♡♡」

最初はのたうち回るように、不規則に。だけどたくさんの触手がブーツを上っていき、やがてこんもりとした山のように足先を覆っていくと、その動きは明らかにくすぐるものへと変わっていく。

「んひはっ、ぁはっ♡♡ ぁくっふふふふふふふぅぅっ、ふぁぁぁぁっ♡♡」

私は洞窟の陰に右足を差し込んだ姿勢のまま悶絶した。

右脚のふくらはぎから先が全部くすぐったい。太さは小指ほど、長さは腕ほど、そんな触手には関節がなかった。だからブーツの中をうぞうぞと潜り込んで、足の裏や指の股を器用にくすぐっていく。決められた場所しか曲げることのできない人間の指では不可能な芸当だ。

あまりにもくすぐったいから、私はつま先に力を入れて、ブーツと足の裏にしっかり隙間を作って、ついでに足の指も極力開いた。

すると触手たちはその意図を感じ取ったのか、もっとしつこく、足の裏をくすぐりたてていく。

「んひぁはっはっはっはははははははははひゃぁぁぁあっ♡♡♡ いいねっ、上手っ、上手ぅぅぁあっはっはははははははははははぁっ♡♡♡ ぁくっ、指の間っ、もっとぉぉぉっひっはっはははははははははははははははぁぁぁぁっ♡♡♡」

どうして魔物は人をくすぐるのだろうか? ――ある高名な学者が、そんな疑問を呈したことがあったっけ。

というのも、この『くすぐる』という行為には、何の生物学的意義もないのだそう。何らかのエネルギーを得ているわけでもなければ、むしろ食事で得たエネルギーを消費するような行為ですらある。また、この行為でもって生殖をしているわけでもない、それをやっているのは人間だ。

その疑問の結論は、何だったっけか。あまり学問に明るくない私には理解しがたい内容だった気がする。『本能すら超えた衝動』『《世界》は《毒》に侵されている』とか。結局、その学者の説は『ばかげている』と一蹴されていた。

私は『どうでもいいか』と思った。こんなに気持ちいいことをしてくれるなら、意義なんて何でもよかった。

「ぁひぁっひゃっははははははははははははははっ♡♡♡ ぁぁぁぁっ♡♡♡ くしゅぐったひのっ、増えてるっ、のぼってるぅぅっふふふふぅぅぅうっ♡♡♡ これっ、これぇぇぇっへっひゃっはっははははははははははははははははははぁぁぁあっ♡♡♡」

そんなことを思い出しながら足の裏をくすぐられていると、段々とくすぐったい部分が増えていく。ブーツの縁から始まった浸食は、ふくらはぎから膝、膝から太ももへと、どんどん広がっていくのだ。

まるで呑み込まれるかのようなこの感覚は、純粋な快感以上に私を興奮させた。

「きちゃう、来ひゃうぅぅぅぅぅうっ♡♡♡ これっ、まずいところ来ひゃぁぅぁぁあっはっははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡」

そしてとうとう、くすぐったさは内股までも包み込み、秘所へと到達する。

 

「ひきっ、ひ――ッ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ひゃうあ――♡♡♡ っは――♡♡♡ っひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡」

『とうとうこの瞬間が来た』というべきか、感無量というべきか。

ずるずると呑み込まれていくこの状況があまりにツボだったせいで、秘所の下のほうをちょっとなでられただけで、私はあっという間にイッた。

膝ががくがくと震えた私は、少し軽率に、その場で尻もちを付く。そしたらもう、触手に犯されるのは右脚だけじゃなくなる。

「ふぁぅぁっ♡♡♡♡ やばっ、全身っ、全身っ♡♡♡♡ 来ちゃうのっ、みんな来ひゃうのぉぉぉぁぁぁああっはっはっはははははははははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡」

尻もちを付いたお尻から始まって、腰や脇腹、胸へ。地面に付いた両手から始まって、肘や二の腕へ。そして双方から集まった触手が、一番くすぐったい腋の下へ。全身は、あっという間に触手に呑み込まれたんだ。

「っっっひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁ゛ぁぁぁぁああっはっはっははははははははははははははぅぁぁぁあああああっ♡♡♡♡♡ くしゅぐっだひっ、ぜんぶくしゅぐっだひぃぃぃぃぃっひっひゃっはっはははははははははぁぁぁぁあああああああっ♡♡♡♡♡」

全身をどろどろに蕩かされるようなくすぐったさがやってくる。

私は半ば強制的に脱力させられて、触手で作られたシーツの上で仰向けになって、じたばたと笑い悶え始めた。

触手に覆われた洞穴で寝転がるなんて、その末路は決まっている。地面にいる触手はどんどん私に這い上がっていき、天井からもぼたぼたと落ちてくる。こんなにも触手まみれなのに、呼吸は塞がれず、体も重みでつぶされないのは不思議だ。

ああ、だから先の学者も言っていたっけ――魔物に殺意はない、ただくすぐるために生まれた存在なのだ、って。

「最高ぉぉぉぁっはっはははははははははははははははははぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡ これっ、好きっ♡♡♡♡♡ ぜんぶくすぐっだくでしゅきぃぃぃぃっひっひゃっはっはははははははははははははぁぁぁぁぁあああああっ♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~っはっははははははははははははははぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡」

だから私は、安心してこのくすぐったさに乱れることができる。

触手の生態はさまざまだ。中には若い女性を永遠と閉じ込めるようなやつとか、後遺症が残る毒を使うようなやつもいるけど。町での情報収集で、ひどいことになった村娘たちはみんな一晩ほどで無事に解放されていることを知っている。

まあ、あまりにだったので、数週間は放心気味だったみたいだけど。

「ぁはっはははははははははひぃぃぃいっ♡♡♡♡♡ やばっ、これっ、イキっぱなしになっひゃっ♡♡♡♡♡ 気抜くとイキっぱにゃひにぃぃっひひひひひぃぃぃいっ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

ああもう、こんなにも全身がくすぐったいと、考え事もできやしない。

だけどそれでいい。小賢しいことを考えるのは私の性分だけど、それすらできなくなるこのくすぐったさを、私は愛しているんだ。

私の頭は自然と蕩けていき、やがて何も考えられなくなる。

「きひ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡ ひひゃはっ♡♡♡♡♡ ひゃはっ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡」

私は何度もイキながら、この至福の時間に没頭するのだった。

 

――――
――

 

「ぁはっひ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ きひっ、ひ――? っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ はぇ――? ぁはっはははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

あれからどれぐらいの時間、私は笑い、イッただろうか。どっぷりと沈んでいた思考が、だんだんと水面に浮かび上がるように鮮明になっていく。

私が気になったのは、全身のくすぐったさがどこかなっていることだ。

「ぁはっへ――♡♡♡♡♡ へっへへへへへへへへっ♡♡♡♡♡ 何だかみんな――。元気ない――? ひへはっ♡♡♡♡♡ ぁっははははははははははははははっ♡♡♡♡♡ ぁーーーー……♡♡♡♡♡」

仮説――『洞穴にいる触手たちが、私をくすぐるためだけに栄養を使い果たしてしまった』。普通の女性であれば、とっくに気絶して、洞窟の外に放り出されていただろう。だけど私はちょっとだけ他人よりも頑丈だから、触手たちが根負けしてしまった。日の光に弱いせいで外には禄に出られず、狭い洞窟の中で栄養を確保し生きなければならない――触手の生態を考えると、納得できる説だ。

今もまだ笑い声を止められないぐらいにはくすぐったいけれど。下り坂を感じさせるは何というか、この子たちには悪いけど、興醒めだ。

「ね、っへへへへへへっ♡♡♡ も、いいから――♡♡♡ はにゃはっははははははははっ♡♡♡ 放して、くれない、かな――♡♡♡ ぁは、ぁっははははははははははぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

触手の重みで体を動かせないから、私は触手たちに呼び掛ける。だけど触手たちは私の言うことに聞く耳なんて持たず、必死に、健気に私の肌に体をこすらせ続けている。まあ、この子たちに耳なんてないんだけど。魔物で遊ぶ時は、こういうのが厄介だ。基本的に話を聞いてくれない。

このままでは、触手たちはいずれ全ての栄養を使い果たして自滅してしまうだろう。そうすれば、私は自力で洞穴から這い出ることができる。だけどそれまで待つのも『ちょっとなあ』って思う。

「ぁは――♡♡♡ ぁっはははははぁぁぁあっ♡♡♡ んー♡♡♡ 仕方ない、なぁ――」

まあ、このままされるがままでいようがいまいが、この触手たちの結末はか――私はほんの少しだけ意識を切り替えて、体内の魔力をちょっとだけ解放する。

火の魔術。瞬間、轟音が鳴り響いた。

 

「……っふーー」

全身のくすぐったさが一瞬でやんで、腐った食べ物を燃やしたような、少し気持ちの悪い臭いが漂ってくる。

「あ、やば、洞窟、崩れっ!?」

がらがらという物騒な音が聞こえたから、私は慌てて洞窟の中から這い出た。いかに狭かろうと曲がりなりにも洞窟の中にいたのだから、別の魔術にすればよかっただろうに。そう思っても、もう後の祭りだ。

崩落した小さな洞穴を振り返ってみると、洞窟の中を埋め尽くしていた触手たちは全て真っ黒に焦げて死んでいた。

「ごめんね」

せっかくのいい相手がいなくなってしまったのは、ちょっと惜しい。だけどこうでもしなければ放してくれそうにないし。それに、町に住む若い女性たちも困っていたみたいだし。これでよしとしよう。

「……ぁー♡ もうちょっと、味わいたかったなぁ♡」

魔物らしい遠慮のない陵辱は、私をたくさん気持ちよくしてくれた。だけどどうしても、この快感は後を引くというか。味わえば味わうほど、どんどん欲しくなってしまう。

私は、せっかく潤った心が見る見るうちにまたいくのを感じながら、『ひとまず粘液を洗い流そう』と思って、あらかじめ見つけておいた泉に向かう。そのさなか、『洞穴に入る前に服を脱いでおけばよかったんじゃ……』と少し後悔するのだった。

 

――――
――

 

触手で遊んでから数日後、私は町中を歩きながら思案する。

次はどうしよう? このまま真っすぐ進むと、空の教国か。

「引き返し時かなぁ」

というのは、変わり映えしない土地を再び歩くということだ。それは何だかもったいない気分がするから、私はあまり好きではない。

だけど、に近付くという選択肢は、最初からないに等しかった。

上っ面だけを見れば教義を重んじる整然とした国だけど、実態はたぶん、他のどの国よりも。そこらの魔物なんて目じゃないし、下手をすれば命を落とすよりもひどいことになる。私だって気持ちいいことは好きだけど、人としての尊厳を捨てる気はさらさらなかった。

東か、南か。頭の中に焼き付いた地図に進路を描いていると、遠くから声が聞こえた。

「――本当なの! 《神さま》が出たのぉぉぉっ!」

幼い女の子の声だ。

何事だろう。私は特に急ぐこともなく、ただ歩く進路だけを変えた。すると町の大通りで、女の子が冒険者たちに喚き立てていたのだ。この辺りでは珍しい、鮮やかなピンク色の、だけどボサボサとした髪の女の子だ。

「《神さま》が、森で、森に!! 出たの!! それで、それで……!」

小さな女の子が冒険者たちといっしょにいるのも不思議だけど、話している内容はもっと不思議だった。『神さまが出た』とは、どういう意味だろう? そのまま解釈するのをためらわせる言葉だ。

「まーた、いつものか……。おい誰だよ、ミントをせっつきやがったの」
「わ、悪い。ちょっとからかってやったら、な……?」

「ちょっとアンタたち! ミントちゃんをいじめるんじゃないわよ!」
「こので腕っ節はピカイチなんだが。には困ったもんだ」

冒険者たちは彼女の話にまるで聞く耳を持たない。人通りの多いところで喚いているものだから、どこか迷惑そうでもある。そりゃそうだ。

「ともかく、今日は解散だ。カミサマの話はお友達にでも聞いてもらってくれ」

結局、ミントと呼ばれていた女の子は1人その場に残される。まるで話を聞いてもらえなかった彼女は、独り涙ぐんでいた。

 

そんな彼女に、私は声を掛ける。面白そうなことに首を突っ込むのは、私の性分だった。

「ねえ。私、ノマっていうの。よろしくね」
「……あによ」

「さっきの話、神さまだっけ? 私にも聞かせてくれない?」
「っ~~!」

ミントの顔がぱぁっと明るくなった。

私は通りをのんびり歩きながら、事のいきさつを教えてもらった。彼女はもともと盗賊として活動していたこと。そこで《神さま》に出会って、改心したこと。……その改心のが、なかなかのものだったこと。その話をする時の彼女は、本当に恥ずかしそうだ。

なるほど。自分で聞いておいて何だけど、あまりに突飛で、はっきり言って信じるに値しない話だった。年頃の女の子の妄想か、幻覚か。どう反応すればいいのか困るところだ。

だけど、彼女は説明を続けた。

「あ、そう。女の人といっしょにいた」
「女の人?」

「たしか……修道服の女の人、ぼろぼろだったけど。背が高くて、髪の毛も長くて、真っ白、銀色? だった」
「……へぇ?」

その特徴には心当たりがある、というより、1人しか思い浮かばない。背教者アレリナ・エルバーエンス。空の教国が直々に、だけど秘密裏に懸賞金をかけている賞金首だ。

彼女は最初こそ、罪状不明の下級賞金首だった。だけど、その後教会の関係者および賞金稼ぎを殺し続けること幾数年、いつの間にかこの東大陸における一番の賞金額を誇るほどになっていた。

この女の子が、そんな裏の大物を知っているとは思えない。めちゃくちゃな話に、めちゃくちゃな話が掛け合わさる。私の直感が、一周回ってある種の信ぴょう性を感じ取っていた。

「し、信じてくれる?」
「そうだねぇ……」

信じてもいい。だけど、一つを確かめておく必要がある。

 

私はミントに質問した。

?」
「え? ……え……?」

私は表情を変えないまま、だけど声を鋭くして問うた。

「その《神さま》を、だよ。だって、ひどいことされたんでしょ?」
「そ、それは、そ……。だ、だけど……!」

『何を言っているのか分からない』という風だったミントの表情が、少しずつ青ざめていく。その感情の変化は、手に取るように分かった。

だけど私は軟化しない。むしろ明確な意図を持って、追い打ちを掛けていく。

「助けてほしくて、みんなに話してたんでしょ?」
「ち、違……!?」

「憎いんでしょ? 殺したいんでしょ? その《神さま》のことがさ。だから――」
「――そんなことないッ!!!」

ミントが叫び、通りを行く人々の視線が一斉に私たちを向いた。

ミントはそんな周囲の視線を全く気にすることなく、ただ真っ赤な顔をこちらに向け続ける。私はその鏡のような表情を見つめ、ぎらぎらと輝く瞳に宿る感情を観た。

――うん、だ。私は、彼女の頭をなでた。

「冗談だよ。私、弱っちいもん」
「…………」

「ごめんってー」

私はミントの頭をなでくり回して、しっかり『ありがとね』とお礼を言ってから、彼女と別れることにした。彼女は最後まで仏頂面だったけど、まあ、もう二度と会うことはないだろうから、あまり気にしないことにしよう。

 

それでようやく独りになってから、私は得た情報を頭の中で整理し始めた。

《神さま》じゃなさそうだね」

珍しいもの好きの私としては、《神さま》なんてへんてこな存在以上に、面白そうなものはそうそうない。だけど、もしもミントに『殺してほしい』とお願いされていたら、それだけの憎悪と殺意をあの少女に抱かせるような存在なら……私は絶対に、彼の者に近付かなかっただろう。

結果、そうはならなかった。だから、次のは決まった。

「さて、《神さま》探しなんて初めての経験だなぁ」

私としては、こんな《世界》に《神さま》が実在していたこと自体が驚きだ。どんな歴史書でも、実在が証明されていない存在なのだから。
(空の教国の聖典は読むに値しないから、考慮しない方向で)

簡単に見つかる気はしない。それこそ、偉い聖職者サマが宣うようにでもない限り、直接的に接触するのは不可能に近いだろう。しかし、最適解に至るのはそう難しい話ではなかった。

「探すなら、のほうでしょうね」

アレリナ・エルバーエンス――背教者とされる人物が、なぜ《神さま》と行動を共にしているのかは分からない。しかし彼女の動機なんてどうでもいい。大切なのは、彼女の居場所が分かれば、自然と《神さま》の居場所も分かるということだ。

どれだけ情報が秘匿されていようが、たかが一人の人間を探し出すなんて、私には訳ない。ミントが彼の者たちに出会った日を考えれば、数週間のうちに見つかるだろう。

「……ふふっ、愉しみだなぁ♡」

まずは行きつけの情報屋だ。

私は歩きながら、先ほどのミントの話を思い出して、一層いくのを感じるのだった。

 

目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》