お知らせ(2024/06/07)

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長編小説

【最終節】擽園開発日記序章 ~悪い神さまの創る世界~

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目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》

 

最終節 悪い神さまの創る世界

苦悶の笑い声に包まれた石の広間の中央で、中年の男ども2人による茶番が行われている。

「デグロ・エルバーエンス。此度の働き、誠に大義でした」
「はっ! ありがたき御言葉。しかし元はと言えば、エルバーエンス家が起こした不始末」

「よい、よい。エルバーエンスの名は、永遠に主の元に」
「ははっ!」

これから、当代最悪の背教者アレリナ・エルバーエンスの処刑が行われる。

当の本人であるアレリナは、一糸まとわぬ姿で、儀礼服を着た男たちに囲まれていた。

大聖堂の者だけではない。町々の教会を管理する者、兵を率いる立場の者、友好を築いている国の王族貴族まで。かの背教者の処刑を見届けんと、突然のことにも関わらず遠くから駆け付けた者も少なくなかった。

アレリナは両手を後ろ手に縛られ、足も鎖で繋がれており、思うように動くことができない。それ以前に、彼女にはもう抵抗する気力が残っていなかった。ただ、血という血を抜いたような青白い顔で、全ての成り行きを見守るだけ。

 

アレリナ捕獲の功労者にして養父のデグロ・エルバーエンスは、彼女の髪をつかんで上を向かせた。

「我らが主に祈ってみたらどうだ? もっとも、貴様のような背教者がご慈悲を賜るとは思えないがな」

デグロの視線の先にあるのは、巨大な広間の中央にそびえる神の巨像だった。威厳を感じさせる老年の男の姿、左手には神が唯一食すとされたナシの果実。

アレリナは思わず笑ってしまう――これは一体誰だろう? 本当の《神》はもっと小さく、人間臭くて、何より臆病者だというのに。それに、彼の者が好きなのはナシではなく、羊肉の串焼きだ。

アレリナは、自分が行儀悪く食べて叱られたのを思い出す。親子か姉妹か、家族のように叱られるのなんて生まれて初めてだった。思い出すだけで、涙が溢れる。

「……ああ、《神》よ。貴女はやはり、に殺しておくべきでした」

アレリナが震える声で吐き出したのは、怨嗟の言葉だった。

最初に彼の者と出会った時。さもあれば、彼の者を理解するしることはなかったであろうに。

「こッ、の背教者が!!」

デグロは額に青筋を浮かべながら、アレリナの顔を石床に叩きつける。彼女の口端から血が漏れた。

「枢機卿よ。この女はやはり、すぐにしなければなりません……!」
「うむ。すぐにでも始めましょう」

そうして、枢機卿の口から訳の分からないご高説が紡がれる。それが終わると、幾十もの男がアレリナへと近付いていく。真面目な風を装っておきながら、デグロも、枢機卿も、どの男も、上質な衣服の下で汚れた一物を勃起させていた。『もう待ちきれない、早く犯したい』――そう言っているかのようだ。

名誉も尊厳もない、ただ男どもの玩具にされるだけの儀式。女として、人として、考え得る最悪の結末。それでも、彼女の体はぴくりとも動かなかった。

枢機卿が合図を出す。

「罪人に神の裁きを」

男たちの手が近付いてくる。アレリナは欲望に塗れた男たちの指を、まるで傍観者のように静かに見つめていた。

アレリナは思った――こんな絶望の中でも、人は触れられるだけで狂うほどに笑ってしまう。不思議なものだ。自分は無様に笑い、そしていつか死んでいくのだろう。

数十の指が、彼女の柔肌に触れようとする。全てを諦めたその瞬間、彼女は空から堕ちてくるを聞いた。

 

――M%#eO▲$?t――

それは《神託》だった。

 

「――な、何だ貴様はッ!!? ど、どうやって、いつからにいたッ!!?」

大広間にいた誰か1人が咆哮する。アレリナを犯そうとしていた全員の動きが止まった。

デグロも、枢機卿も、男たちも、女たちも、そしてアレリナも。全員の視線は、大広間の中央にそびえ立つ神像の、さらに上。

そこに浮かぶのは、1人の黒髪の少女だった。

「…………」

少女はまるで全力で走った直後のように息を切らせたまま、辺りを見渡し始める。

そしてを向くと、無表情のままゆっくり、ゆっくりと地面に降り立つ。 その頃にはもう、荒立った呼吸は落ち着いていた。

1人の僧兵が、剣を構えたまま少女に近付く。

「き、貴様、何者だ……!?」
「僕? 僕はね――」

次の瞬間、問うた男の身体が真っ二つに千切れ、少女は嗤うのだった。

「――《悪い神さま》だよ」

 

それから先は、今までとは別の地獄絵図だった。

僧兵たちは一瞬置いた後、半狂乱になって少女に刃を突き立て、破壊の魔術を浴びせ始める。死なない。傷つかない。表情一つ変わらない。少女が嗤いながら僧兵一人一人を見つめささやく。砕ける。ひしゃげる。捻じ切れる。

甘い汁を啜っていた男たちが、絶叫しながら逃げ惑う。外に通じる扉が開かない、斧を突き立てても扉にはひび一つ入らない。代わりに、太った醜い身体が真っ二つに割れる。その中には英雄もいた、《規格外》の強さを持つ者もいた。等しく己が無力を悟って、後悔と絶望の中で息絶える。

嬌声と笑い声が、悲鳴と怒号に転化する。白かったはずの部屋が、赤く塗りつぶされていく。部屋の中央にあった神の虚像が、もろく崩れ去る。

もはや彼の者がであることを疑う者は、誰一人いなかった。《神》……否、それ以上の《最悪の何か》――。

 

アレリナの養父デグロは、広間の中央で尻もちを付くように座り込んでいた。

「ぁ……、ぁ゛、あ゛ぁ……ッ!!?」

峻烈たる外面など、もはやかけらほども残ってはいない。腰が抜けて逃げることすらできない。惨めに漏らした糞尿が悪臭をまき散らす。

少女はそんなデグロにゆっくりと近付いて、キスができそうな距離でささやいた。

「D#!■ge※b$■c%(*, “苦しみながら死ね”) /* 僕はお前のことが1番気に入らない */」
「――ぁあ゛ぁぁぁぁッ!!? ぁぎぁあ゛ぁぁあぁぁぁぁぁッ!!!?」

デグロの身体が痙攣する。倒れる。転げ回る。全身の神経を一本一本すり潰されるような痛みが襲い続ける。絶対的な痛みは思考を焼き尽くし、自分の行いを省みることすら許さない。デグロは喉が裂けるまで叫び、床との摩擦によって全身が血で染まるまで転げ回った後、誰にも看取られることなく絶命した。

虐げられていた女性たちは逃げることすらできなかった。拘束されていたから、腰が抜けていたから、諦めていたから。

「ごめんね。少しの間、眠っていて」

そんな彼女たちは、少女によって一人一人丁寧にされる。女性たちは訳が分からないまま穏やかな眠りに付き、ひとときの間だけその存在を《世界》から消し去った。

 

千はいたはずの人々が、瞬く間に消えていく。巨大な広間に残るのは、少女とアレリナ、枢機卿のみ。

そして少女は枢機卿に正対する。

「ここにいた子たちは、全員僕がもらう。お前は何も心配しなくていい」
「しゅ、《主》よ……ッ!!? どうして、こんな……!?」

「『どうして』? それを聞かなければ納得できないかな。これだけ好き勝手しておいて、自分は何の報いを受けることもないと?」
「そ、それは……」

「だけどまあ、その点は気にしなくていい。僕だって好き勝手やっている。だから、お前たちがしてきたことに対して、僕から審判を下す筋合いはない」
「な、ならば、何故……ッ!!?」

「言っただろう? 僕も好き勝手やっているって」

枢機卿の問いに対して、少女は歪んだ笑みを浮かべた。

次の瞬間、枢機卿の身体が弾け飛ぶ。肉片と骨、血液が大地に落ちる音に混じって、少女は答えるのだった。

「僕は、ここが気に入らない。それだけだよ」

 

静寂――永きに渡り響き続けていた笑い声は全て消え失せて、空気の漂う音だけが鳴る。

少女は真っ赤に染まった静かな広間を見渡して、狂ったように嗤い始めた。

「この国はもう駄目だね」

少女の簡潔な言葉に、否定の余地はない。国の中枢たる者どもが、あまりにも多く死んだ。周囲の国々の人間をも巻き込んだ。これから空の教国は、瓦解の一途を辿ることになる。

それだけではない。

「《天秤》は傾く。それも大きく。《世界》が壊れるかもしれない。もうどんな屁理屈を並べても否定のしようがない。僕がのさ」

大国――それも宗教という、《世界》全体に大きな影響を与え続けてきた組織の急速な凋落。どうあっても、混沌の時代が訪れることは避けられない。

それでも、少女は嗤い続けた。

「アバ、ター……」

アレリナは広間の中央で座り込んだまま、そんな少女のことをじっと見つめていた。彼の者の、全てを見下す貌を見ても、耳障りな嗤い声を聞いても、怒りも、恐れも、抱くことはなかった。

少女はひとしきり笑うと、最後にアレリナに視線を向けた。

「君は、《神さま》を殺したいんだろう?」
「っ」

「……んじゃなかったのかな」

アレリナが少女の瞳にある感情を見た瞬間、自身の感情をも溢れて止まらなくなる心地がした。

――ああ、本当に滑稽な表情だ。嗤っているはずなのに、どうしてそんなに罪悪感に苦しんだ表情を浮かべているのだろう? どうしてそんなに恥ずかしそうで、どこかほっとした表情を浮かべているのだろう?

小さく、人間臭くて、何より臆病者。そして彼の者は本当に、本当に、嘘が下手だった。

「そう、ですね。私から離れていたら、世話ないですよね」

アレリナは目から涙を零し、嗚咽を漏らしながら応える。

「ほんとだよ、まったく」
「……アバター。私は、《神》が憎いんです、殺したいんです」

少女はゆっくりとアレリナに近付く。

そしてアレリナが、彼の者の細い身体に抱き締められた瞬間、抗いがたい眠気がやってきた。まるで自分そのものが《世界》から消えてしまいそうなぐらい、強烈で強制的な感覚。

「だから、《貴女》は、傍にいてください」
「大丈夫。《僕》はずっと、ここにいるよ」

会話はそこで終わる。だけど不安はない、彼の者が傍にいてくれるのなら――アレリナはぬくもりの中、静かに眠るのだった。

 

――――
――

 

「ここ、は……」

アレリナが目を覚ますと、そこは見覚えのない場所だった。

天井があまり質の良くない木材で作られていて、そして低い。彼女はややあって、どこかの宿のベッドの上にいることを悟った。

あんなに精気を失っていた体が、今では不思議と活力に満ちている。裸にむかれていたはずなのに、いつの間にかぼろぼろの修道服に元通りだ。

「おはよう」

小さな声が、アレリナに落とされる。

アレリナが横になったまま声のするほうを振り向くと、アバターがベッドの側の椅子に腰掛けていた。静かで、冷たく、素っ気ないあいさつで、アレリナは自分のこわばった心が和らいでいくのを感じた。

 

アバターが宿の女将から貰ってきたシチューを、アレリナが飲む。

そのさなか、アバターがせきを切ったように『ごめんね』を何度も言う。今度は、アレリナが『済みませんでした』と『ありがとうございます』を1回ずつ言う。

そうして、2人はベッドの縁に腰掛ける。

「ねえ、アレリナ」
「はい」

「僕は《悪い神さま》だ」
「はい」

「だから、もう躊躇しないよ」
「……はい」

アバターはそれでも結局少しだけ躊躇してから、アレリナのことを優しく抱きしめた。

 

アバターがアレリナの服を脱がす。こともなく、こともなく、脱がし慣れない修道服を丁寧に脱がしていく。

少し時間が掛かってはいるが、アレリナは彼の者を急かせることもなければ、自身が焦れることもなかった。ある種の儀式のように、静かに待ち続けるだけ。

長い時間を掛けて、芸術家が生み出す彫像よりもはるかに美しい裸体が曝け出された。

「失礼なことを言うようだけど」
「はい?」

「少し、肉が付いたかな。安心したよ」

アレリナは自分の身体を見下ろす。

彼女自身、身体はまだ細いものの、確かに女性的な丸みが増しているように思えた。心なしか乳房も少し膨らんでいる。彼の者との旅で、自然と食事の量が増えたためだった。

「だけど、前よりまた少し細くなったかな」
「貴女と別れてからは、あまり物を食べていませんでしたから。醜い、でしょうか」

「そんなことないよ。僕は好きだ」
「そう、ですか」

好き――その言葉を聞いて、アレリナは思わずはにかんだ。

「アバターは、脱がないのですか」
「む?」

アレリナのその問いは、彼の者にとって予想外だったらしい。

彼の者はしばらくその言葉の意味を考えるように黙り込み、『ああそうか』とつぶやいてから、真っ黒な衣服を脱ぎ始めた。

彼の者の裸体は、本当にただの少女のようだ。細い四肢、膨らみかけの胸、毛のない秘所。

「その。アバターの身体もきれい、ですよ?」
「ありがとう」
「むぅ」

お世辞なのか何なのかよく分からないアレリナの言葉に、アバターは噴き出しそうになりながら応える。

アバターが裸になっても平然としているのが、アレリナには何だか少し悔しかった。

 

「それじゃあ、触るね」
「っ……! す、少し待ってください。まだ心の準備が」

「駄目、待てない」

ベッドの上で、お互いに向き合うように座ったまま。アレリナの心の準備が済む前に、アバターは彼女のお腹に両手を伸ばした。

「ふぅっ!? あはっ、ひふふふふふふふふぅっ!?」

アバターの小さく温かな手が、アレリナの脇腹をなぞる。その手つきはすべすべの肌の感触を楽しむようでいながら、どこか慈しむようでもある。

「ぁはっ、ふ……!? ふぁっははははははははっ、これ――!!? これぇ――!!?」
「…………」

アバターは女性をくすぐる時、必ずしも相手を言葉で辱めるようなことをしない。しかし、手を触れている腹部と、表情の崩れた顔を交互に見るその視線にはがあり、アレリナに羞恥心を覚えさせるには十分なものだった。そして何より――。

「くぅっふふふふふふふふぅっ!? まって、待ってぇ!」

アレリナは自分を襲う感覚に耐えられなくなって、思わずアバターを制止した。

アバターは彼女の呼び掛けに応じて、すぐにくすぐる手を止めた。

「苦しかった?」
「はぁ……、はっ……。い、いえ。くすぐられているのですから苦しいには苦しいのですが、それは問題ではなく」

アレリナの言葉は、どこか歯切れが悪い。

アバターがアレリナの顔をのぞき込むと、彼女はかえって顔を背けた。アバターは、何か彼女に拒絶されることをしてしまっただろうかと、少し不安になる。

「貴女のくすぐり方は、その、優しい」
「……それで?」

「そのくすぐり方は、頭がふやけて、どうにかなりそうな気がします」

その返答の後、2人が沈黙することほんの数呼吸。アバターはまた、アレリナのお腹をくすぐり始めた。

「きゃぁっはっははははははははははぁっ!? ぁはっ、あ、アバターぁっ!? あはっ、ぁっはははははははははははぁ!」
「いいよ。どうにかなっても」

アバターは今度こそ、くすぐる手を止めはしなかった。むしろ、その手付きは先ほどよりも明らかに熱を帯びているぐらいだ。

「腋の下、くすぐるね」
「そ、そんなっ! あぅぅんっ!? そ、そこはっ! くすぐったひっひゃっはっはははははははははははははははっ!!?」

手がお腹から腋の下に移っていくと、さらにくすぐったくなる。だけどアレリナは、それが嫌ではないことに、自分で驚いた。

アバターには、出会った時にもくすぐられた。だけどあの時は、どこをどうくすぐられても、指先が肌をすべるたびに憎しみの感情が際限なく湧き出してくるような心地だった。

それが今はどうだろう。アレリナが自分で口にしたように、くすぐったいのに、優しくて、頭がふやけてどうにかなりそうだ。

「ふぅっ、ん……っ!? んんっ、ぁはっ、はぁ……!」
「これはそうでもないんだね。じゃあ、こっちは?」

「んふぅぅっ!? ぁはっ、あぁっはっはははははははははははははっ!! それはっ、くすぐたひぃぃっひひひひひひひひひひぐっ!!? げほっ!? んぐぅ、けほっ、げほ……っ!?」
「大丈夫? 少し休もうか」

「は、ぁぁ……! は、はい――んぅっ!? うふふふふ……!? く、くすぐるのは、止めないんですね……っ! ぁはぅ、あはは、はぅぅ……」
「そりゃもちろん」

アバターは、感度が悪いところを無理にくすぐろうとはしなかった。本当にくすぐったいところを、丁寧に探してくすぐっていく。そして、アレリナが咳込んでしまったら、優しいくすぐりがさらに優しくなる。

無理に手を速めたり、指を食い込ませたりしないからこそ、痛みや不快感なくただ優しいくすぐったさだけがやってくる。今まで何百、何千、何万とくすぐり犯されてきたアレリナでも、蕩けるような心地だった。

 

「はぁっ、はぁ……」

しばらく腋の下をくすぐっていたアバターは、手を止めて、アレリナの姿勢をうつ伏せに変えさせた。

、弱かったよね」
「ぁ……」

アバターが手を添えたのは、アレリナの足の裏だった。

彼女の1番の弱点。くすぐったいところとか、くすぐったくないところとか。効くくすぐり方とか、効かないくすぐり方とか。足の裏にそんなややこしい話はない。どこをどうくすぐられても、とんでもなくくすぐったくなる場所――彼女にとって足の裏とは、そういう場所なのだ。

「抵抗しないの?」

アバターはそう笑いながら、うつ伏せになったアレリナのふくらはぎに伸し掛かる。

言う機会こそなかったが、アバターはアレリナの足を美しいと思っていた。あれだけ戦いの人生を歩んでいながら、傷はおろかしみ一つない。その細さは女性的で、薄らと浮かんだ骨や血管は装飾のよう。体の細い彼女ではあるが、足の裏にはしっかりと肉の丸みがあって、指先の立て甲斐を感じさせる。

「ぅ――」

アバターに伸し掛かられたアレリナは、ぶるっと身体を震わせる。しかしそれ以上の抵抗はなく、背中越しに彼の者をじっと見つめるだけ。

ささやかな嗜虐心を持つアバターは、正直なところ『少し張り合いがないな』と思った――もう少し、『そこは駄目!』なんて言ってくれたら、いじめるのも張り切るのだけど。

しかしアレリナの反応は、彼の者の予想とは大きく違っていた。

「そこをくすぐられるのは、確かに怖いです。ですが……」
「ですが?」

「それ以上に、貴女にくすぐられると思うと、その、すごく……どきどきします」

アレリナ自身、自分の感情が不思議で堪らなかった。

――今まで散々忌避してきた部位への、散々忌避してきた行為。確かに今でもまだ怖い。きっと、自分はこれから耐え難い感覚に襲われて、みっともない顔をしながら笑ってしまうのだろう。それなのに、それがこんなに楽しみに思えるなんて。彼の者の指で乱れたい、悶えたい。

それは、過去の彼女からは、まるで想像できない感情だった。

「…………」
「…………」

「…………」
「……あ、あの、アバター?」

また数呼吸分の沈黙が訪れて、アレリナは困惑した。

もっとこう、自分の恥ずかしい言葉に気の利いた返しをするとかないのだろうか――彼女がそう思っていたら、アバターはアレリナの言葉に応えることなく、彼女の足の裏を激しくくすぐり始めるのだ。

「っっひゃぁあぁぁぁぁっはっはっはははははははははははははははははははぁぁっ!!? あ、あばたはぁっ!!? つよひっ!!? つよふぎぃぃぃっひゃっはっはっははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

アバターの指先が、アレリナの足の裏を無秩序に滑る。今までの、慈しむようなくすぐり方とはまるで違う。強く、激しく、有り余るほどのをただ我武者羅にぶちまけるようなくすぐり方だ。

「ひぃっひひひひひひひゃぁっっははははははははははははははははは!! くすぐったひっ!! くすぐったひぃぃぃぃっひゃっはっはははははははははははははははぁぁぁあ!!!」
「君は、何というか、本当にかわいいね」

アバターは顔を背けながら、アレリナの笑い声に埋もれるように、そっとつぶやいた。

 

「そう言えば、ずっと前からやってみたいことがあったんだ」

アバターがそう言うと、ただただ激しかった照れ隠しの責めが、次第に変化していく。

「んぁ……! ぁっひひひひひひ……っ!? ぁはっ、ひゃっはははははははははははははぁ!」

彼の者がくすぐり始めたのは、右足の親指だった。両手の人差し指と中指で、右足の親指の先から根元までを、かりかりとくすぐっていく。

それはアレリナにとって、少し慣れない刺激だった。もしかしたら、今までも散々くすぐられてきたことのある部位なのかもしれない。だけど親指だけをこんなにも丁寧にくすぐられたことなんて、彼女の記憶の限り、一度もない。教会の聖水に冒された影響か、親指ですら笑い声を我慢できないぐらいくすぐったかった。

彼女はそれでも、『ああ、悪くない』と思った。アバターが自分の足の裏をくすぐるということ自体、今の彼女にとってはこの上ない悦びだった。それこそ、親指をくすぐられるのが、好きになってしまうぐらい。

「んひゃはっ!? ひゃはっ、はははははははははははぁぁっ♡♡ ぁはっ、はっ、はぁぁ……♡♡」
「少し、慣れてきたかな」

「んくっふぅっ♡ そ、そうです、ね……♡ んひゃはっ! ずっと同じところだと、いくら私でも多少は、んはっ!? はっ、ひゃははは、ひゃはぁぁ……♡♡」

親指などという極めて狭い部位だけをくすぐられていたら、いかに敏感なアレリナといえど、さすがに刺激に慣れてくる。しかし右親指に残るのは、倦厭や嫌悪ではなく、幸福な余韻だ。

そしたらアバターは右足の親指をくすぐるのを止めて、今度は隣にある人差し指をくすぐり始めるのだ。

「んぅぅっ、ぁ! んっ、ぁふふ♡ ぁ、そこは、何だか……! ひゃっ、ひゃぁぁぁ……♡♡」

刺激が隣の指に移るだけで、まったく別の部位をくすぐられ始めるような敏感具合だ。アレリナはまた笑う。指の膨らんだ部分に爪を立てられるとくすぐったいけれど、指の側面、股辺りはなんだかぞくぞくする。『人差し指をくすぐられるのも、何だか好きかもしれない』と思う。

やがて右足の人差し指が夢見心地な余韻に包まれると、アバターは右中指に手を添えた。そこでアレリナは、背筋をぎくりとさせた。アバターがをしようとしているのか気付いたのだ。

「そ、その、アバター……? 何をして、ま、まさか……っ」
「前は、ゆっくり触っている時間がなかったからね」

「だからって、そんな……! んっ、くふふっ♡♡ ひゃっ、んぅぅ……っ!?」

アレリナの想像は間違っていなかった。アバターは、中指、薬指、小指と、右足の指を順番にくすぐっていく。それは、足の裏を文字通りくすぐる行為だったのだ。

「あ、アバター!? そ、それはやめてくだ――!? ひゃぁぁぁっ♡♡♡ くひゃっ、ひゃぅぁぁぁあっ!!?」
「優しくくすぐってるだけだよ? そんなにきつくないと思うけど」

「ち、違うんですぅっ!? つ、つらいとか、つらくないとかではなくて、それは、何だか恥ずかし――!!? ひぅんっ♡♡♡ ぅひゃっ、ひゃはははははぁぁっ♡♡♡」

自分の1番弱いところをじっくりと見られ、触られる。それも、ただの一点も逃さず、ひたすら丁寧に。

そんなアバターの行為は、アレリナにとって恥ずかしかった。彼女は今までいろいろな辱めを散々受けてきたはずなのに。このやり方は無性に全身が熱くなって、真っ赤な顔を手で覆い隠したくて仕方なかった。

そしてアバターは、右足の指5本を全てくすぐり終えると、今度は足の裏のをなぞり始める。アレリナのくすぐったさが一気に強くなった。

「ぁはぁっ♡♡♡ んぁっ、ぁっははははははははははははぁぁぁぁ!! くすぐったっ、ひゃぁぁぁっ!!?」
「そんなに足首ひねって暴れると、ちゃんと触れないよ」

「だってへぇぇっ♡♡♡ 足っ、勝手に動いて――!!? んひゃはっ、ひゃぅぁっ、ひゃっはははははははぁぁあっ♡♡♡」

親指の根元から始まって、土踏まずの外側、かかと、土踏まずの内側、そして小指の根元へ。人差し指と中指の2本だけで、かりかり、かりかりと、ゆっくり移動していく。

足の裏の側面は、ぞくぞくとした感覚が強かった。神経を直接触られているように、指が勝手にぴくぴくと震えてしまう。笑い声の中に、間抜けな喘ぎ声が混ざる。

指が足の裏の側面を一周したら、今度はかかとをくすぐられる。

「んぁ゛はぁっ♡♡♡ 強゛、くないぃぃっ♡♡♡ ぁ、ぁぁぁぁあ~~~~っ!!? ぁっははははははははぁぁぁぁぁあああっ♡♡♡」
「爪立ててるから、痛かったら言ってね」

「痛く――!! ない、ですぅぅ!!? すごく、気持ちい――♡♡♡ って、恥ずかしいこと言わせないでくださひゃぁっははははははははははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡」
「僕、そこまでは聞いてなかったんだけど」

かかとをくすぐる時は、少し強く指を立てられる。他の部位であったら、痛みを及ぼしていたかもしれない強さだ。

その強さはアレリナにとって絶妙だった。強すぎる圧力がかかとの厚い皮膚で和らいで、神経に届くときにはぞくぞくと甘い感覚になっている。

「っくぅぅぅぅぅっ♡♡♡♡ はっ、っはっ♡♡♡ はひゃっ、ひゃっははははははははははっ♡♡♡♡ っ~~~~~~~~!!!?」

アレリナは、自分の秘所が急速にうずくのを感じた。

アバターの目の前で自分の股間を押さえ付けるわけにはいかないと思ったから、彼女はこっそりと秘所に意識を集中させる。しかしその時にはもう、太ももに愛液の滴が垂れるぐらいに濡れていて、余計に恥ずかしい気分になった。

アバターのくすぐる手が少しずつ上っていって、土踏まずに。

「ひゃぁ~~~~っはっはっははははははははははははははははははははっ♡♡♡♡ くすぐったいですっ、そこはくしゅぐったひですぅぅぅぁっはっははははははははははははぁぁぁぁあっ!!!? ぁはっ、ぁはっ、ぁぁぁあっはっはははははははははははぁぁぁぁあああああっ!!!!」

足の裏の中でも、さらに敏感な部位だ。そして皮膚が薄い。

アバターの手付きは、優しくも素早かった。爪でがりがりと削って傷つけてしまわないように、指先がそりそりとこすれるような力加減。しかしその限りで、とにかく素早く、10本の指を総動員して。それはアレリナにとって、自分の性器を優しくくすぐられているかのような、甘く蕩ける衝撃だった。

あまりに足の裏が敏感なアレリナとて、人並みの性感も持ち合わせていた。陰核をしごかれれば愛液が止めどなく溢れるし、膣を満たされれば性感と共に息が詰まるような充足感もやってくる。

そんな性感と足の裏が、今ひとつなぎにされる心地だった。土踏まずを指先で優しくくすぐられると、陰核と膣を同時に優しくくすぐられているような気がしてしまうのだ。

「あばたーぁぁっははははははははははははははははっ!!!? もうっ、もぉっ♡♡♡♡ これ以上はっ、やめ――♡♡♡♡ へっひひひひひひひひひゃはっははははははははははははぁぁぁあっ♡♡♡♡」
「駄目、やめない」

「どうしてっ、どうしてへぇぇぇっへへへへへへへへへへぇぇぇぇぇぇええっ♡♡♡♡ どうしてでふかぁぁぁあっひゃっははははははははははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡」
「分かってるでしょ? 君のイクところが見たいからだよ」

「っ~~~~!!!? ど、どうして分か――!!!? ひゃぁぁぁっははははははははははははははははぁぁぁぁあああっ♡♡♡♡ ひゃはぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」

性感は昂ぶり、もういつ絶頂してもおかしくない。彼女にとっては最悪で、どこか最高にも思えるタイミングで、アバターの指先はとうとう、足の指の付け根にたどり着くのだ。

「あ゛ぁぁーーっはっはっはははははははははははははははははははっ!!!!? ぁはっ、ぁ゛ーーーーっはっははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ♡♡♡♡♡」

指の付け根のふっくらと盛り上がっている部分は、アレリナの体のあらゆる部位の中でも、最もくすぐったい部分だった。アバターは爪を立ててこそぐように、そこをくすぐり始める。

それはアレリナにとって、1番くすぐったい部位に対する、1番くすぐったいくすぐり方だ。

「どうしてっ、いきなり――♡♡♡♡♡ ぁ゛はっ、ぁ゛ぁぁぁあっはっはははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁああっ!!!!? ぁはっ、ぁはっ、ぁっはっはははははははははははははははははははははははぁあぁぁぁぁぁあああっ♡♡♡♡♡」
(どうしていきなりっ、1番くすぐったいくすぐり方を――!!!? くすぐったいっ、くすぐったいっ、気持ちいいぃぃぃぃぃぃい!!!?)

『どうやってくすぐると一番効くのか』なんて、今更確かめるまでもなかった。過去ので既に知っていたのだから。

アレリナは『まさか、あんなに昔のことを覚えているなんて』と思った。2人が出会ったのは数か月前。『昔』と呼ぶにはまだまだ短い仲だが、そう思わせるぐらいには凝縮された時間だ。

そんな過去の痴態を覚えているということが、アレリナを無性に恥ずかしく、そしてどこかうれしくさせた。

「ぁはっ、あっ、ひ――ッ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!? ぁは――♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」

昂ぶりに昂ぶった状態での、最も気持ちいいくすぐり責め。どこか感極まったこともあって、アレリナは深く絶頂してしまう。

くすぐられている右足がぴんと伸び、体とシーツの間で潮がぷしりと噴き出す。とっさに枕を抱き締めて口を押さえ付けていなかったら、背筋を大きくのけ反らせながら甘い悲鳴を上げていたぐらいだ。

アレリナが絶頂したことを確かめると、アバターは少し名残惜しそうに、右足の指の付け根をくすぐるのを止めた。

「はっ、ぁぅ……! ふ……っ♡ ひ、ぁぁぁぁ……♡」

アレリナはゆっくりと息を整える。ぞくぞくとしたくすぐったさの余韻と、彼の者に触られたという幸福感が、右足の裏を余すことなく包み込んでいる。

彼女にとってこんなに満たされる絶頂なんて、生まれて初めてだった。過去には一晩で何十回もイかされたこともあったが、今の1回はそれをはるかに上回る充足感があった。

だからだろうか。彼女はもう気でいたのだ。

「休憩はもう大丈夫かな?」
「はぇ」

「まだが残ってるよ?」
「っ~~~~!!?」

先ほどの行為は、だけ。アバターがアレリナのをつかみながら、少し意地悪な笑顔を浮かべている。

アレリナは彼の者の表情を見て、これから起こることを想像して、自分の下腹部がものすごくうずいた気がした。

「大丈夫だよ。さっきと同じだから。もう1回耐えるだけさ」
「まって、待ってへぇぇっへへへへへへへへへへっ!!!? さっきと同じじゃな――!!!? イッたから、さっきより敏感に――♡♡♡♡ ひひゃっ、ひゃはぁぁっははははははははははははははははひゃぅぁぁぁぁぁあああっ♡♡♡♡」

それからアレリナは、先ほどとまったく同じ流れで、今度は左足の裏を隈なくくすぐられていく。親指から始まって、小指まで順番に。そして足の裏の側面、かかと、土踏まず、指の付け根。

それは彼女にとって、気が遠くなるぐらい時間の掛かる行為だった。まるで大きな大きな真っ黒なキャンバスを、先の細い筆だけで隈なく彩色に染めるかのようだ。

「ふぐっ、ぅ――♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ひひゃは――♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
「……すごいな。小指をくすぐられてイッちゃうんだ」

「きひっ、ひひひひゃはははははははははははははぁぁあ゛っ♡♡♡♡ イッてるときに、くすぐらな゛――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
(これ、何も考えられなくなる――ッ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡)

あんなにだったはずなのに。に変わっていく。こころのなかのまっくろが一つ残らず、彩色に塗り替えられていく。

長い長い時間をかけて左足の裏を全てくすぐられ終えた時には、アレリナの表情はもはやとろとろと言うよりも、どろどろに蕩け切っていた。

「はぁー……っ! はぁ……っ!! はぁ……!」
(っ――♡♡♡ っ――♡♡♡)

ただ左足の裏をくすぐられるだけで、何度絶頂したか分からない。口の端からよだれを垂らしていながら、拭うこともできない。

それでも、行為はまだ終わらなかった。

 

「……もう少しだけ、付き合って。だけは、しておきたいんだ」

アレリナの体が、自分の意思に反してひとりでに動き始める。否、まるで手首と足首に見えない枷を取り付けられて、優しく引っ張られているようだ。首は動く、腰も少しだけなら動く。自由を奪われてなお、アレリナに焦りはなかった。

ベッドの上で仰向けになって、軽く脚を広げさせられる。アバターが両脚の間に座って、覆いかぶさってくる。アレリナの腕がひとりでに、アバターの背中に回された。

もしも彼の者にが生えていたら、性行為における正常位になり得る体勢だ。いつの日か、彼の者は『いざとなったら生やせる』と言っていた。結局その機会は今日を含めついぞ現れなかったが。それでもアレリナは確信した――これから行われるのは、『犯す』とはまた違う、本当の『交わり』だ。

しかしアバターは、何の変哲もない行為を行うつもりは更々ないらしい。目の前の光景に、アレリナは喉の奥でひっそりと悲鳴を上げた。

「っ――」

虚空から無数のが現れる。

彼女には見覚えがあった。初めて彼の者に出会った時、自分を犯すために使った手だ。あの時は惨めに絶頂を繰り返し、見知らぬ男性の顔に潮をまき散らした。苦い思い出だ。

アレリナはその手の数を数えようとして、10を超えてから数えるのを諦めた。『もしもこの手が自分だけをくすぐるのなら、体が隙間なく包まれてしまう』――それだけ分かれば十分な気がする。

そしてその手を見ていると、一つ気付いたことがある。この手の大きさ、形は、全てアバターの手と同じだった。

「……また、それですか」

アレリナは呆れたようにため息を付く。

アバターはそんなアレリナに覆いかぶさったまま、素知らぬ顔で彼女に体重を掛けて、至近距離で顔をのぞき込むのだ。

「僕だって、それなりに君のことを見ているつもりだ」
「何を」

「期待しているでしょ?」

アレリナは自分の心の中を見透かされて、赤く染まっていた顔がさらに赤くなった。

 

幾十ある手のうちどれか一つが、アレリナの脇腹を軽くなでる。

「ひぁぅ――!!?」

甲高い悲鳴。息つく暇もなく、他の手のどれかが、今度は腋の下に触れる。

「くひぁっ、あ――!!!! あは――!!!?」

脇腹、腋の下、太もも、首筋、そして足の裏。まるで『心の準備を』と言わんばかりの、何の役にも立たないほんの僅かな時間差の後、無数の白い手がアレリナの体を余すことなくくすぐり始めた。

「っ゛~~~~~~~~!!!!? ぁ゛ーーーーっはっはっははははははははははははははははははははぁぁぁあっ!!!!? ぁ、ぁば、た――!!!! これは、あまりにも――!!!? ぁはっ、ぁっははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁああああああっ!!!!?」

今日で一番強いくすぐったさに、アレリナは目を見開いて笑った。

大勢の手にくすぐられることなんて、この《世界》における歴史で見たらそう珍しいことではない。彼女もそれを経験したことは幾度もある。

しかしその快感は紛れもなく人の許容量をはるかに超えたものであり、そして今彼女が味わっている幸福感は、その半生の中でも類を見ないものだった。

「ひゃぁぅぁっはっはははははははははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ♡♡♡♡♡」

「止めないでいいよね?」
「っくっぁ――♡♡♡♡♡ 聞かないで、くださ――!!!? ぁっはははははははははははははぁぁぁぁぁぁあああああっ♡♡♡♡♡」

こんなにもくすぐったいというのに、抵抗しようと思ったのは最初の一瞬だけ。すぐにくすぐったさが体になじんで、頭の中で無数の花が開くような気分になった。全身の筋肉が痙攣するが、アレリナが自分の意思でくすぐったさから逃れようとしていたわけではなかった。ただくすぐったくて、そして気持ちよくて、体が勝手に動いてしまうだけだ。

抱きしめることを強要されながらくすぐられる――実はアレリナには、このようなを以前にも故郷で味わわされた経験があった。脂ぎった男の身体は気持ち悪い。顔を至近距離で見られるのは屈辱だ。それなのにくすぐったさが、抱きしめる力を強めてしまう。そんな屈辱的な責め苦だった。

それなのに、今はどうしてだろう。

「……アレリナ。その、腕、いや、全身の力、もしかして僕のほうに向けてる?」
「ぁはっ、ぁははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ だからっ、聞かないでくださいってぇぇぇぇぇぁあっははははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

細く温かな身体が心地よい。顔を見られると、恥ずかしさと一緒にうれしさまで込み上げてくる。くすぐられていなかったとしても、抱きしめる力を強めてしまっていただろう。

「ぁはっ、ぁぁぁぁぁぁああああ――♡♡♡♡♡ は、ぁ゛――!!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁは、ぁ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

足の裏をくすぐられるだけで何度も絶頂を迎えてしまうアレリナにかかれば、全身をくすぐられて絶頂に至ることなど訳なかった。

しかも足の裏のくすぐったさは先ほどよりも強烈だ。一番くすぐったい指の付け根を引っかかれるだけでなく、土踏まずも、踵も、足の裏の側面も、足の甲もくすぐられている。一体どれだけの手が、体のほんの一部に過ぎない足首から先に集中しているのだろう。

「あばたぁぁっはっはははははははははははぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡ くすぐったいっ、全部くすぐったいですぅぅぅっふふふふふふぁっはっははははははははははははははぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡」

もちろん、くすぐったいのは足の裏だけではない。

腋のくぼみをほじくられ、脇腹を優しくもまれ、太ももを引っかかれ、首筋も、背中も、腰も、膝も、ふくらはぎも――全身のあらゆる部位に、優しくて、だけど熱を感じさせる、実にアバターらしいくすぐり責めが行われている。

その作り物のは、彼の者の手と同じ形をしていた。それを思い出すたびに、アレリナは自分の全身にまとわりついて犯してくる手の全てが、愛おしく感じられるのだ。

 

そして当の本人――アバターの行為が、さらにアレリナを昂ぶらせることになる。

「……嫌なら、言ってね」
「な――♡♡♡♡ です、か――♡♡♡♡ ぁ゛――♡♡♡♡」

アバターはアレリナの体を強く抱き締めたまま、その小さな体を揺すり始めたのだ。お互いの乳首が、陰核が、膣口がこすれ合っていく。

「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っ――!!!? っ!!!?」

今まで秘所を激しく犯されたことなど、幾度となくあったろう。乳首を捥げそうなほどに引っ張られ、陰核を削れるほどにこすられ、血管が浮き出るほどに怒張した不潔な一物に膣内をこねくり姦される――それに比べれば、アバターの行為など本当に慎ましやかものだ。

それなのにどうしてだろうか。アレリナは今まで経験がないほどの、言い知れぬ興奮を覚えたのだ。

「っ……! ん……、っ……」
「あば――♡♡♡♡♡ たはっ♡♡♡♡♡ っはっははははははははははぁぁっ♡♡♡♡♡ あばたは――っ♡♡♡♡♡ ぁぁぁっはははははははははははぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡」

アレリナは笑い声を精いっぱい我慢して、アバターに呼び掛けた。肺に空気が溜まり、圧縮されて、胸が破裂してしまいそうだ。

「……やっぱり、少し抵抗があったかな? ごめん、君を不快にさせるつもりは――」

アバターが少し遠慮がちに、不安そうにアレリナの顔をのぞき込む。アレリナはその時を見計らって、ただ自分の衝動の赴くままに、アバターに口付けをした。

「っ!?」
「んぐ――♡♡♡♡ くふっ、ふぅ゛――♡♡♡♡♡ っ、っ~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぷはっ、ぁっははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ はっ、ぁぁぁぁっははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

笑い声を我慢するのはもう限界だった。アバターから顔を背けながら肺の中の酸素を全て吐き出すように笑い、生存本能に従って肺が勝手に膨らんでいくと、またアバターに顔ごと押し付けるように必死に口付けをする。

「んぐっ♡♡♡♡ ちゅ――♡♡♡♡ んむ――♡♡♡♡♡ ぷはひゃっはははははははははぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡♡ ぁぐっ、ぅ゛♡♡♡♡♡ ちゅっ、ちゅ――♡♡♡♡ んむっ、ぅぅぅぅぅぅうっ♡♡♡♡♡」

この行為はアレリナにとって、はっきり言って苦しい。全身を襲うくすぐったさのせいで呼吸が制限されているのに、さらに自分から呼吸を止めるようなことをするのだから当然だ。しかし、それでも、アレリナはこの行為をしないわけにはいかなかった。

その時のアバターの、すごく恥ずかしそうで、すごくうれしそうな表情を、アレリナは一生忘れないだろう。

 

「はぁっ、はぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁははははははははははっ♡♡♡♡♡ ぁっははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

段々と、アレリナが消耗してくる。

くすぐられるというのは、それだけで体力を大きく消耗する行為だ。それに加えて続けざまに口付けをしているのだから、なおさら。呼吸はもう止められず、ただ力なく、大きな笑い声を上げるのみ。

アバターは少し心配そうに、彼女をのぞき込んだ。

「今日は、これぐらいにしておこうか」
「ぁっははははははぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡ や――っ♡♡♡♡♡ ぁはっ♡♡♡♡♡ いや、です――っ♡♡♡♡♡ もっと――♡♡♡♡♡ ぁははははっ、ぁあっははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

「でも」
「私は、だいじょうぶ、ですから――♡♡♡♡♡ あなたは、《貴女》は――♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁっははははははははははははぁぁあっ♡♡♡♡♡ ぁはぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡♡」

「……分かった。そうだね、そうだったね」

情事の最後。

アバターはアレリナを強く抱き締めて、互いの陰核がつぶれるぐらい強く押し付ける。そして彼女を見上げるように、首を伸ばす。これ以上アレリナの呼吸が苦しくならないよう、ほんの一瞬だけ、唇に口付けをした。

「ふぁ――♡♡♡♡♡ ぁぁぁぁぁぁあああああ――っ♡♡♡♡♡ ぁぁぁぁぁぁああああああああああっ♡♡♡♡♡」

口付けをする拍子に、陰核の圧迫が強くなったのか。それとも口付けそのものが、今のアレリナに効いたのか。

性感は加速して、大きな、大きな絶頂がやってくる。

「――ッ゛ッッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁは――♡♡♡♡♡ ぁ゛――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っぁ゛ぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ♡♡♡♡♡」

人の体には限度というものがある。それは絶頂反応とて然りだ。体の痙攣も、潮吹きも、喘ぎ声も、幾度となく絶頂を繰り返してきた今となっては、端から見れば何の変哲もない1回に見えるかもしれない。

しかしアレリナは、この1回こそが、今までで、この《世界》に生まれて幾百幾千幾万と犯されてきた人生の中で、一番好きな絶頂だと思った。心の中にある悲哀、憎悪、絶望が全て洗い流されていくほどに。

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛――♡♡♡♡♡ ぁぁ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

絶頂のさなか、アレリナは心の隅で『すごく恥ずかしい』と思った。

――こんなにも体を触れられて、身も心も悦んで、あまつさえ自分からキスをしたりおねだりをしてしまうだなんて。だけどああ、悪くない。こんなにもは、生まれて初めてだ。

「ぁは――♡♡♡♡♡ ぁ゛――♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~……♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~……♡♡♡♡♡」

アレリナの意識が遠のく。

――あまりにも絶頂しすぎて、少し疲れた。眠るほどではない、少しぼうっとしたいだけだ。

「あば、たー」
「な、何っ?」

「へへ、えへへへへ……♡」
「……もしかして、意識ない?」

「えへへへ、へへへへへへへへ……♡」
「はぁ……」

アバターが、アレリナの頭を優しくなでる。アレリナは心地よさに目を細めながら、先ほどの大笑いとは違う、緩みきった静かな笑みを深くした。

「……人前でイクのって、思ってた以上に恥ずかしいな」

アレリナの細めた目から、涙がまた一滴あふれる。アレリナは涙で滲む視界の向こうで、アバターが顔を真っ赤にしながら小さな体を震えさせている気がした。

 

――――
――

 

今までの苦悩に比べたらほんの一瞬にも等しい情事の後。アバターとアレリナは裸のまま、ベッドの上で抱き合っていた。

「今日は、たのしかった」

アバターがたどたどしく口を開いた。

アレリナは、最初に犯されて『つまらなかった』と言われたことを思い出した。そして気付いた――ああ、そうか。愉しまない女を抱いても愉しくはない。それだけのことだったのか、と。

小さく、人間臭くて、臆病者で、何より優しい、彼の者らしい理由だった。

「今度、また、していいかな」
「……それは、私が決めることではないでしょう」

恥ずかしそうに顔を背けているアバターに、アレリナはこっそりとはにかむのだった。

「《悪い神さま》、全ては貴女の望むがままに」

 

――――
――

 

――――
――

 

――――
――

 

それから幾数日。

を創ろう」
、ですか? アバター」

「うん。この《世界》に、僕の住むが欲しくてね。それに、大聖堂にいた子たちをしたままだから。どこかで面倒を見なくちゃ」
「なるほど」

「あと、かわいい子を集めてハーレムでも作ろうかなって。ミントやノマも誘おうかな」
「…………」

「そんな冷たい目をしても、これは譲れないなぁ」
「……はぁ。こんな《世界》の、どこに創るというのです?」

「どこかの島。たくさんあるから、一つぐらい空いてるでしょ? 貰っちゃおうよ」
「まあ、貴女ならそれが可能ですか。それで? 具体的にこれから、どこで、何をするつもりなのですか」

「ノープラン」
「……つまり特に決めていない、と」

「まあいいじゃない。時間はいくらでもあるんだ。のんびり決めていくよ」
「貴女はあまりにも無計画的すぎます。せめて村の名前ぐらいは決めてもいいのでは?」

「それこそ後でいいじゃない。だけどね、そうだなぁ……」

 

剣と魔法、そして色欲に満たされた《世界》は廻る。

たくさん生まれ、たくさん死に、それでも滅びることなく、進むこともなく。ただ同じところをぐるぐると廻り続ける。

風車のようなその《世界》には、《悪い神さま》の住まう地があった。おいしい食べ物、美しい衣服、暖かな家、全てがそろう楽園だった。

しかし、そこに入ることを許されたのは美しい女性だけ。女性だけが、彼の者の摂理によって負わされた傷を、彼の者の御許で笑いながら癒やすことを許される。

その歪な楽園を、人々は《擽園》と呼んだらしい。

 

擽園開発日記序章 終

 

目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》