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長編小説

【第6節】擽園開発日記序章 ~悪い神さまの創る世界~

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目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》

 

第6節 教会と神殺しと神さまの怒り

《神》――アバターと出会ってから、数か月が過ぎた。

殺す手立てはまだ見つかっていない。ただ付いていき、とりとめのない話をして、時折女性との狂宴を眺めるだけ。

アバターが女性を犯しているのを見ると、いつもいら立ちを覚えた。ミントやノマ、他にも犯された女性たちは、彼の者を恨まないのだろうか? 命を賭してでも殺そうとは思わないのだろうか?

だけど、彼女たちの別れ際の表情を見れば分かり切っていた。彼の者に出会って、憎しみの炎を燃やし続けていたのは、私だけだった。

……本当だろうか?

少し前、居眠りをした。町の広間の木陰に座っていた時のことだ。いつ犯されるか、いつ殺されるか分からない人生の中で、無防備に寝入るなんて初めての経験だった。

私が飛び起きると、隣に座っていたアバターが何の気なしに『おはよう』と言った。静かで冷たい声がそよ風に乗って、頬にかいた冷や汗を乾かしていく。

不思議なぐらい平和だった。逃亡の日々と比べても、はるかに。あの時の私は、どんな表情をしていただろうか?

 

しかしそんな平和な日々は、小さな村で終わりを告げる。

舗装されていない土の道を歩いていたら、真っ白な鎧を着た者たちが、私たちを取り囲んだ。

「見つけたぞ。逃亡者アレリナ・エルバーエンス」
「アレリナ、彼らは……?」

「……『翼』。空の教国の騎士たちです」

『翼』――出会ったことがなくとも、聞いたことは幾度となくあった。空の教国が抱える騎士団であり最高戦力、いわばどもの集団だ。

卓越した戦闘技術。乱れることなき統率。硬き魔合金の大剣と鎧。その数はたったの40人しかいないが、1人で他国の兵士100人にも匹敵するといわれ、それらが一塊となって戦場を駆ければ戦況を引っくり返すことも難しくない。その戦闘力の高さから、防衛や侵略、ありとあらゆる戦場に投入される。重要な役割を担うだけに、よほどのことがない限り表に出ることはないとも聞く。

しかし彼らは明確に、私の名を呼んでいた。

「なるほど。君をご指名みたいだね」
「ええ」

私は賞金首だ。追われるのは当たり前のことだった。

しかしまさか賞金稼ぎのみならず、彼らとまで相対することになろうとは。しかもその数を一見したところ、騎士団の全員がお集まりだ。まったく、教会の執着はよほどのものらしい。

騎士たちは剣を抜き、そろって唱え始めた。

「空を舞う羽根――」

は彼らだけが唱える魔術の詠唱であり、開戦の儀式であり、そして宣言だ。早い話が、『殺す』と。

「軟かな羽根、白き羽根。山羊を裂き、蠅を貫く真なる刃。尊き鐘の音に集いて、硬き鏃と化せ――」

反吐が出るような詠唱が終わると、諸手に構えた大剣と真っ白な鎧が、魔力によって輝きを帯びていく。ばらばらに向けられていた殺気が収束し、1本のやじりのように鋭くなる。

爆発的な筋力の増強、思考の加速、武具の硬質化、痛覚遮断、意思の統率、その他もろもろ――戦闘に必要なありとあらゆる処置を施す統合強化魔術。

もはや逃げることは叶わなかった。

「アバター。あれは私の敵です、手出しは無用」
「……そう。僕のことは気にしなくていい。適当によ」

私はアバターに告げ、そして駆けた。

 

アバターが私に一つ、この《世界》の理を教えたことがある。勇者や魔王としてうたわれる者たちは、ある種の突然変異を果たした《規格外》の存在であると。そして私も、その1人であると。

必死に生き長らえてきた今までは実感が持てなかったが、なるほど、確かにこの男たちに負ける気はしない。

「ぁがぁあぁぁぁぁっ!!?」
「くそ!! また1人やられたぞ!!」
「囲め、囲めぇぇっ!!」

「……ふん」

私は一国の最高戦力を軽くあしらう。彼らの白く輝く刃はことごとく空を切り、私の黒く淀んだ刃は彼らの分厚い鎧を布のように切り裂いた。

10人は殺し、騎士たちの動きにためらいが見え始めたところで、怒声が響き渡った。若く、それでも貫禄を感じさせる女の声だ。

「――貴様らッ!! それでも空の教国が誇る『翼』の騎士どもか!!!」
「……ウェルヴェルグ家か。国の中枢にいる者が、わざわざ出張ってくるとは」

屈強な騎士たちに守られた安全地帯でほえている女に、私は見覚えがある。あれは確か、司祭テーゼ・レン・ウェルヴェルグ。

切れ長の目と鋭い表情。植物の油で手入れされたであろう艷やかな黄金の長い髪。土煙で汚すのを惜しく思ってしまうほど上質な布でできた衣服。齢30に満たない美しい女ともなれば、男どもの食い物にされることも珍しくはない。しかし彼女は恵まれた生まれのおかげか、私とは正反対に教会の甘い汁を吸い続ける立場にある、希有な例だった。確かに、彼女ほどの権力者でなければ、騎士団を動かせはしないだろう。

テーゼはあくまでも、私との距離を保ったまま嗤った。

「誇りなさい、アレリナ・エルバーエンス。わざわざ私が出るほどのだということよ、貴女は」
「強欲な女め、私の首でさらなる地位を欲するか。しかしまぁ、残念ながら徒労だったようですね」

「さあ、どうかしら? ……、行きなさい」

テーゼの横に立っていた男が前に出る。どうやら『腕狩り』と呼ばれているらしい。

この男のことは、騎士どもと戦っている最中も、ずっと気になっていた。戦闘には参加せず、確かに祭服を着てはいるが、どこか禍々しい雰囲気を感じさせていたからだ。私が抱いた印象は、細身である一方で不気味なぐらい背が高い。そしてその背丈よりも長い剣がさらに不気味だ。

大きな組織ほど、の最高戦力とは別に、こういった駒を持っているものだった。

 

戦闘が始まる。

私は一足飛びで腕狩りとやらの懐に潜り込んで、その心臓に短剣を突き立てる――つもりだった。

「――ぅ゛ぅぅぅる゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「ッ!!? っちィッ!!」

眼前に急接近する刃。いつの間にか腕狩りが、咆哮と共に長剣を振り下ろしていた。

私が横っ飛びでそれを避けると、切っ先の触れた大地が真っ二つにる。視界の外で、私たちを取り囲んでいた騎士たちが2~3人、地面に飲み込まれた。

「っ~~~~!? なんて腕力……!?」
「ばぁぁぁぁぅあ゛ぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

「調子に、乗るなァッ!!」

腕狩りは奇怪な雄叫びを上げながら、まるで小枝を持つかのように長剣を振り回し続ける。

私は体をひねって避ける。避ける。避ける。攻撃の隙間を縫って短剣を振るう。防がれる。避ける。避ける。避ける。

数手で理解した。この男もまた、私と同じにいる。時代が違えば、勇者あるいは魔王となり得る、《規格外》の存在。互角以上の相手と初めてまともに戦って、短剣の軽さと射程の短さを恨んだ。

時間にしてほんの数呼吸、手数にして100から200ほど刃を交わしたところで、私たちは弾かれるように距離を取った。

「っふー……! ふぅー……!」
「……いーい腕だなぁ」

腕狩りが小さく呟く。口の中が膿んでいるような、ねっとりとしていて不快感を覚える声だ。

「当然です。貴方ごときに負けるわけが――」

「――違ぁう」
「……?」

だ、。細くって、柔らかそうで。あ゛ぁ、きれいな女の……」
「それが何だと……!」

「早くなぁ……ッ」
「……? っ!? ~~~~ッ!!?」

――その名前の意味をやっと理解して、私は全身の毛が逆立つほどの嫌悪感を覚えた。

視界の隅から、テーゼの笑い声が聞こえる。

「そいつは結構な実力なのだけど、たまにをやらないと暴れてしまうのよ。……ああ、ちょうど良かったわぁ……!」
「フシュルルルウぅぅぁあ゛あ゛ああぁぁ!!!」

「異常者がッ!!」

それからまた、刃が幾百回、幾千回交差する。

腕狩りと呼ばれたこの男、強いが決して勝てない相手ではなかった。腕力は異常だが、動きは私よりも僅かに遅く、何より雑だ。私なら攻撃の隙間を縫って懐に潜り込み、首を落とせる。長い逃亡生活で、殺すべきか、逃げるべきかの判断は極限まで研ぎ澄まされていた。

はずだった。

 

結果は私の判断と真逆になる。私は地に伏し、腕狩りが傍に立つ。

「はぁ……っ!! は……ッ!!」

全身の切り傷、打撲はどれも致命傷には至らない。しかし疲労が私の体を雁字搦めにする。息ができない。体が重い。手足が痺れる。

判断が鈍い。敵の攻撃を見切れない。踏み込むべき瞬間が分からない。そのせいで無理な回避を強いられる。それで体力を削られる。思考に靄がかかっているかのようだ。私はこんなに鈍かっただろうか……?

「鈍いなぁ……」
「ぐ……ッ!」

「殺意が鈍い。煤が被った刃みてぇだ……」
「っ……」

私の無様な姿を見て、遠くでテーゼが嗤った。

「悪く思わないで頂戴。これは我らが主のご意志、裁きよ」
「……貴様らに…………ッ」

貴様らに《神》の何が分かる? 教会にいる奴らの口癖が、今の私を妙にいら立たせた。しかし、何を言っても負け犬の遠ぼえでしかない。

悦に入ったテーゼは追い打ちかけ、それはとうとう私の逆鱗に触れた。

「ばかなことをしたものよ。エルバーエンスの名まで与えられて、あーんなにもらっていたというのに」
「っ……!!」

「貴女のも心配しているわよ?」
「ッ~~~~!!!」

その言葉とともに、全身が鳥肌立つ寒気と、頭が沸き立つ熱気が同時に私を襲った。食いしばった奥歯が割れんばかりに軋む。

やめろ! あれをと呼ぶな!!

「ふざけるなぁぁッッ!!!」

憎悪が身体を動かす。私は一直線に、たじろぐテーゼめがけて駆けた。

しかし、私があの女に辿り着くことはなかった。

「させねぇよ」
「っ」

腕狩りが剣を振る。薪を割る鉈のように、その狙いはまっすぐ私の肩に。

あまりに粗雑なその動きは、もはや攻撃ではなくだ。しかし、そんな一振りすら避けられないほど、消耗した私の身体はあまりに鈍すぎた。

ああ、負けた。全てが終わった。

刃が私の肩に触れる、その瞬間だった。

 

突然、腕狩りの動きが止まった。

「――ぁ゛?」

腕狩りが間抜けな声を上げる。奴が自らの意思で動きを止めたわけではなかった。今もなお、奴の筋肉は収縮を繰り返している。

私はこの現象に覚えがあった。止めたのではなく、のだ。

「アバ、ター……?」
「ん……? おい小娘。何の用だ、失せろ。……チッ、おい、腕狩り! さっさとその背教者を……!!」

いつの間にか騎士たちの輪の外にぽつんと立っていたアバターが、テーゼのドス黒い声を無視して、ゆっくりと歩いてくる。

鎧を着た大柄の男たちで作られた輪の中に入っていくその歩みは、あまりに無防備だった。それだけに、誰も彼の者を止めることなく、ただ見ていた。まるで時間が止まったかのようだ。

そしてアバターは、硬直している腕狩りの背中にそっと触れた。

「D■#ete▲bj$c■(*) /* 不愉快だ */」
「ぉヒゅ――」

次の瞬間、腕狩りがした。

ヒュオンという、空気が流れて衝突する音が不気味に響く。一呼吸置いて、一国支える戦力である騎士団たちが恐慌に包まれた。

 

「……は? おい、待て……!? 腕狩り、腕狩り……!!? 何だ……!!? 何なんだ貴様はッ!!?」

テーゼが吠える。しかしアバターはその問いに答えることなく、ただ冷たい目だけを彼女に向けて小さくつぶやいた。

「A#%rib▲te(*, “醜く集え”) /* 僕は、お前が嫌いだ */」

その瞬間、テーゼの周囲にいた騎士たちの身体が弛緩する。次々に剣を落とし、膝を付き、兜の奥で虚ろな表情を浮かべ始める。

「お、おい……!? な、何が……」

今この場で立っていられるのは、アバターとテーゼのみ。異常な事態に、テーゼが騎士たちの1人の肩をつかもうとした瞬間、彼女は反対にその騎士に手首をつかまれた。

「きゃぁあっ!!? っ……、おい貴様、放せッ!! 私に許可なく触れようなど……!!」

一瞬だけ漏れ出るの声。テーゼは即座に気を持ち直し喚くも、抵抗はままらない。一度は膝を付いた騎士たちが再び立ち上がり、おぼつかない足取りで歩いていく。私にではなく、アバターにでもなく、テーゼに向かって。

大勢の鎧を着た屈強な男たちが、よろよろと自分の元へと近付いてくる――それは普通であれば恐怖の光景だろう。

「お、おい、貴様らどういうつもりだ!!? 標的はそこの死にかけの女だぞ!! 放せ、貴様ら1人残らず処刑されたいのかッ!!?」

大層な権力を持つも結局はひ弱な女に過ぎないテーゼは、手首につかまれた男の手を振りほどくこともできなければ、新たに体をつかんでくる手を避けることもできない。

そして男たちの手によって、彼女の高価そうな衣服が、びりびりと音を立てて破かれていく。

「やめろ……!! ぁぁ、ぁぁぁぁぁぁぁああ……!!?」

その悲鳴は、羞恥をはるかに上回る恐怖をふんだんに含んだ声だった。

あれだけ偉そうにほえていた者が上げるには滑稽な悲鳴だが、それが許されるほどには、テーゼは美しい女性だった。白い肌にはしみ一つなく、背の高さは私と同じぐらいなのに、私とは対照的に胸も尻も大きい。栄養をふんだんに蓄え、しかし入念な手入れもされた、見るからに金の掛かった体だ。

「ちょっと、待て!! 貴様ら、私に何をするつもりだ……!!? そんな、まさか、そんな……!!?」

服を破くだけでは終わらない。男たちは手甲を地面に投げ捨てると、また一斉に手を伸ばし、そして思いもよらない狂宴が始まる。

男たちが、テーゼの全身をなで姦し始めのだ。

「ひぐぅっ!!? んぐっ、ぅ……!!? くっ、ふ、ぅ゛ぅう~~~~~~~~!!!?」

ただ手のひらで、美しい肢体をなで回すだけではない。指を立てて、腋の下や脇腹、太もも、両脚を持ち上げて足の裏まで――特定の部位を入念に刺激する。それはどう見ても、こんな青空の下で、しかも戦闘のさなかに行うようなことではない。

全てはアバターが仕向けたものだった。

「や゛め……!!? っ!!! ぐふ、ぅ……!!! 貴様ら、殺す、殺す……ッ!!? っぐっ、ぅ゛ぐぅぅぅぅ!!?」

あまりに常軌を逸した事態に、テーゼも最初こそ、嫌悪感から来るうめき声を上げながら、顔をゆがめるだけだった。

もしもこれがベッドの上で行われる夜伽であれば、彼女も人並みの笑い声を上げたことだろう。指先が皮膚を引っかく時に見せる体のびくつきを見れば、彼女の感度がであることは容易に分かる。明らかに経験している者の反応だ。

そして男たちが彼女の体をしつこくまさぐっていると、段々とそのがにじみ出てくるのだ。

「くはっ、は、ぁ……!!? ぁはっ、ぁ……!! やめ、ぁは、は、ぁ゛ぁあ……!!?」

口から漏れるのは、明らかな笑い声。口端が持ち上がり、美しい顔が歪み、腹筋が痙攣する。しかし、まだ大きく笑い出すには至らない。高潔なる司祭という誇りと、女としての羞恥心があるのだろうか。

しかし、私は長年の経験で知っている。どれだけ耐えようと、その刺激から逃れることはできない。

「っっひぁぁぁぁぁあああっ!!? ぁはっ、ぁ――!!?」

その瞬間、テーゼはひときわ大きな悲鳴を上げながら、全身を飛び上がらせた。全身をまさぐる男たち誰か1人の指が、彼女の弱点に触れたらしい。

もっとも、あまりにたくさんの手が這い回りすぎていて、端から見ればどこがくすぐったいのか分からない。腋の下のさらに少し下、皮膚が薄い胸の横辺りか。それとも、柔らかな肉に包まれたへその中か。足の裏の土踏まずか。

しかしどこが正解にせよ、変わらない事実がある。これも、私の経験則だ――一度弱点に触れられれば、もう耐えることはできない。

「ぁはっ、ぁ゛、ぁ゛ぁぁぁあっ!!!? ぁ゛ーーっはっはははははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁあっ!!!? ぃぎっ、ぎゃぁっはははははははははははははははははははぁぶっははははははははぁ゛ぁぁあああ!!!?」

大きな笑い声が、青空の下で響き始めた。

汚い笑い声だ。まるで『こんなにくすぐったい目に遭ったのは初めて』と言わんばかりであり、あまりに強烈な感覚をやり過ごす術を知らないのであろう、喉と顎に力が入った声。数十人の男たちに囲まれて、そのうち手が届く十数人の指で、全身を隙間なくくすぐられるなんてこと、権力者たるテーゼには経験し得なかったことなのだろう。

彼女を取り囲む男たちは、正気こそ失っているものの、意思はあった。指を皮膚にめり込ませたときの筋肉のうごめきから、彼女の弱点を探り当てる。そして弱点が見つかると、そこを執拗にくすぐり続ける。

破れかけの衣服は一欠片も残さず取り払われ、彼女はもう一糸まとわぬ姿だ。

「ぎゃっははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁあ!!!? やめっ、きざまらっ、やめろ゛ぉぉぉっほほほほほほほほおぉぁぁぁぁあっはははははははははははははははぁ゛ぁぁぁあ!!!?」

「な、何の騒ぎだこいつぁ……!?」
「わ、分からないの、お父さん。ただ、きれいな女の人が……」
「お主ら、関わらんほうがええ。あの武装、あの美しさ、どう考えても只事ではなかろうて」
「そ、そうだけどよ、長老。あんな別嬪さん、見るなってほうが無理な話さ……」

「見るなぁ゛ぁぁっぎゃっはははははははははははははははははははははっ!!!? きさまらッ、全員、殺され――ッ!!! ぇ゛ひぃ――!!? ぃぎっひっひゃっはははははははははははははははははははははははははははははぁぁぁッ!!!!」

こんな青空の下、見知らぬ村で、美女が大勢に囲まれて辱めを受けている。それはなんてひどい光景なのだろうか。いつの間にか、村の者たちが騎士たちの輪の外から、遠巻きにその痴態を眺めていた。

誰も目が離せない。そして誰も邪魔できない。逃避でも妨害でもなく、ただ傍観するだけ。アバターがそうさせたのだろうか。

そして、誰にも邪魔されないことを良いことに、男たちの行動はさらに過激なものになる。

「やめッ、貴様、を出してッ!!!? ぇぎっ、ひぎゃっはははははは――ぁぶふぅぅッ!!!?」

くすぐったさによって大きく開かされたテーゼの口に、男の一物が突っ込まれたのだ。屈強な体にふさわしい大きさの、しかしおそらく汗まみれの一物だ。

一人が彼女に口淫を強いたのを皮切りに、膣と尻穴にも一物が突っ込まれる。予想はしていたし驚きもしないが、も、彼女は初めてではないらしい。露出された一物の数はあまりに多く、しなやかな両手に握らされても全く足りていない。

当然、全身のくすぐり責めが衰えることはない。むしろ、男たちの欲望に呼応するように、より激しくなっていくぐらいだ。

「んぐぶふぅぅっふふふふふふふぅ゛ぅぅぅうーーーーーーーーッ!!!? んぶふっ、ぶはっはははははははんぐッ!!!? んぶぐぅ゛ーーーーーーーー!!!?」

テーゼはさぞ、男たちに思い付く限りの罵詈雑言を浴びせたかったことだろう。生まれながらの勝ち組が、こんな汚らわしい一物に穴という穴を犯されることになるなんて――。

しかし口を塞がれていれば、それもできない。ただ、時折咳込みながら、くぐもった笑い声を上げるだけだ。

「ふぐっ、ぅ゛……!!? ぅ゛、ぅ、ぐぅ……!!?」

酸欠か、諦観か。次第に、テーゼの抵抗が衰え、反応が小さくなっていく。

そして、ろうそくが燃え尽きる瞬間のように、身体がひときわ大きく痙攣した。

「ッぐっ、ぅ――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ んぐ――!!!! っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ぅ゛ぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

テーゼは全身という全身を犯されながら、不名誉な絶頂を迎えたのだ。

 

彼女が快楽に身を任せることを選択したのは、誇りを失ったか、それとも一時をやり過ごすための処世術か。それは私には分からない。

ただどちらにせよ、アバターは、テーゼのその反応が気に食わなかったらしい。

「Ch#n!ePa♭$et▲r(*, “お前に快楽は許さない”) /* 苦しめ、永遠に */」

《神託》。その瞬間、テーゼの様子が一変した。

「っ――――!!!!? んぶっは、ぁ゛ぁぁぁあッ!!!? ぁ゛ぁぁあああぁぁぁああっはっはっははははははははははははははははははははははははははははははははははは、ぁ゛っはははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁあああああああああああああああッ!!!!?」

テーゼは咥えさせられ一物を吐き出しながら、狂ったように笑い出したのだ。

アバターの《神託》は、さまざまな効果を齎す。相手の感度を無限に引き上げて、息を吹きかけるだけでくすぐったさの余り連続的に絶頂させることも可能だ。それは以前、ノマとの情事でも見たことがある。

しかし今のこれは、明らかに違う。悲痛な笑い声、不自然な全身の痙攣。もっとおぞましい――。

「くすぐっだひぃぃぃぎゃっはははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああッ!!!!? なんで――ッ!!!!? 私は、今犯ざれ゛ッ!!!!? ぃぎゃぁぁぁぁあああっはっははははははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁああ~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!?」

テーゼの死に物狂いの言葉で、私はようやく察する。彼女は今、快感という快感を全て奪われていた。いや、それだけではない。快感を全て、くすぐったさにされていたのだ。

「ぁ゛ぁぁぁあっはははははははははははははははははははぎゃぁぁぁぁぁあああああっ!!!!! おがしっ、おがずなぁぁぁぁぁあああッ!!!!? 全部っ、全部ッ!!!!? ぁ゛ぁぁぁぁぁあああ!!!!? ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁあっははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁぁああ!!!!?」

一物を喉の奥に突っ込まれて笑い、胸をつままれて笑い、陰核をこねられて笑い、膣に挿入されて笑い、尻に突っ込まれても笑う。けっして絶頂に至ることはない。快楽を一切排除された、闇よりも黒きくすぐり責め。

テーゼは私にとって、100回殺しても足りない怨敵だ。今更彼女がどのような末路を迎えようと、同情はしない。しかし、ぞっとした。

「やめろ゛ぉぉぉぉおぉぁっははははははははははははははははははは!!!!? やめ、や――ッ!!!!? やめでよぉぉぉぉぉぉぉぁぁっははははははははははははははは、ぃぎっひっひゃっははははははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁぁあああああッ!!!!?」

「……それにしても、すごい光景だな。ちょっとぐらい、おこぼれを貰えねぇものかな?」
「しかしこの鎧さんたちは、一体どうしちまったんだい。まるで魂が抜けちまったみたいだ」
「だけどそのおかげで、へへっ。こんなお上品な女に触れるのなんて、生まれて初めてだ」

「おねがっ、お願いだかぁ゛ぁぁははははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁああッ!!!!! くすぐらな゛ッ、犯ざなッ!!!!? 謝る、あやまるがらッ!!!!? ぁ゛ぁぁぁぁああ゛っはははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁぁぁあ、ぁ゛ぁぁぁあーーーーっはははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁあああ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

誇り高き『翼』たちの狂宴は終わらない。それどころか、村の者たちがどさくさに紛れて混ざっていく始末だ。もう、テーゼがいつこの地獄から解放されるのか、私には想像も付かない。

アバターは、よろよろと立ち上がった私の手をそっと引いて、小さく呟いた。

「苛ついた」
「アバター……?」

「どうしてだろうね。1番好き勝手やってるのは、僕のはずなのに」

顔を背けたアバターの表情は分からない。そしてその声はあまりに小さくて、耳に残り続けるによってかき消されてしまう。

――殺意が鈍い。煤が被った刃みてぇだ。

「っ、私は……!」
「うん」

「……いえ、何でもありません」

私はずっと、《神》を殺さんと誓ってきたはずだった。それなのに今、私は一体何をしているのだろう。

私は助けられた礼を言うこともなく、ただアバターに手を引かれて歩き続ける。

「アレリナ、治療する」
「……いえ」

「でも」
「……要りません」

「……そう」
「…………」

心が冷えていく一方で、指先だけが、彼の者の手のひらでじんわりと温められていくのだった。

 

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表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》