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長編小説

【第5節】擽園開発日記序章 ~悪い神さまの創る世界~

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目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》

 

第5節 神さまと滅びる定めの種

やあ、愚かな人間諸君。お初目にかかる。

私は『名もなき魔族』という。……何? 『名前がないのが名前だなんておかしいじゃないか』だと? フン、これだから頭の悪い人間どもめ。私を呼ぶ者など誰もいないというのに、どうして固有の名前が必要なのだろうか。

魔族は人間と明らかに違う種族である。その差異はさまざまだが、まず見た目の個体差が大きい。人間と近しい者もいれば、触手の塊のような者もいる。私は肌が翠色のことを除けば前者寄り、老年期の人間の男に近い姿だと言えるだろう。

大地に住まう者、地底に潜る者、海を漂う者――その生態もさまざまだ。しかしその全ての魔族に共通しているのが、人間と比較してあらゆる能力が秀でていることである。豊富な魔力、強靭な肉体、鋭敏たる第六感、長寿、何より頭が良い!

私は他の魔族と同様、劣等種たる人間どもを見下していた。最初はな。

 

しかし、聡明たる私はやがて現実に気付く。魔族とは、人間の上位種ではなかった。強すぎるが故に、反対に奴らによって討たれる定めにある存在であるらしい。

湧き上がる衝動に従って、世界を滅ぼそうとした魔族がいた。そいつは千を越える人間どもによって、タコ殴りにされて死んだ。国を作って徒党を組んだ魔族もいた。そいつらは魔族よりもさらに強い《規格外》の人間によって、全員殺された。

人間よりもはるかに優れた能力を持ちながら、魔族が永きに渡って栄えることは、1度たりともなかったのだ。しょせん、《世界》の賑やかしに過ぎないということ。我々がそのから逃れることはできないのだ。

私はこの悲しき定めに納得できなかった。《神》を憎んだ。どうして私がこんな目に遭わなければならないのだ! 頭が良いのに!

しかし、だ。

今から百数年前、私が人間どもとの戦いで深手を負い死の境界線を覗いたとき、《世界》の根底にあるに気付く。生きとし生けるもの全てに狂宴を強いる、いわば《毒》だ。愚かな人間どもは、これに気付かない。しかし明敏たる私には、その異常さを明確に感じられた。

その存在に気付いた時、私は最初にばからしく思った。次に、歓喜した。

これが《神》のしでかしたことだとしたら、とんだ色気違いだ。彼の者は魔族と人間の戦いには、さらさら興味がないらしい。彼奴の興味は色事だけだ。

なればこそ、私は下らぬ定めに従わず、愉しく生きてみせようと決意したのだ。頭が良いからな!

 

然して、私の生は《世界》の贄となるためではなく、己が知的好奇心を満たすためのものとなった。利発たる私にはぴったりの生き方だ。

政治、戦、魔術、薬草。その対象は何でもよかったのだが、とくに《世界》の根底に潜む《毒》――つまり《神》が執心した行為に興味を惹かれた。明哲たる私は人間どもに見つからないことを最大限配慮しながら、美しい女を攫ってをすることにした。

最初の実験は、まずというものを知ることだった。

「い、嫌……!? お願い、どうか命だけは……っ」
「貴様は阿呆か? わざわざ手間を掛けて攫ったというのに、すぐに殺す意味は一体どこにある」

最初の被検体は、近くの村から攫った娘だった。亜麻色の長い髪で、鼻が少し大きい。素地は悪くないが、華やかさが足りないか。まぁ、ぜいたくは言うまい。

私は娘を裸に剥いた上で、天井から伸ばした鎖で拘束した。

「さて、貴様の仕事は私の質問に答えることだ。人間の女はどうすれば性的快感を得られる?」
「な、何を……!? っぎぃぃぃっ!!?」

私が娘の女性器に指を入れると、こいつはうめき声を上げた。それが快楽によるものではないことは、容易に察せた。

「苦痛を避けたいのなら、正直でいることだな」
「ひっ、嫌、おねが、ぃ゛ぃぃぃ……っ!!」

私のこの言葉は本心である。人間なんぞを甚振る趣味はないし、時間の浪費に過ぎない。

しかし、私のことが恐ろしいのか、なかなか口を開かない。合理的に物を考えられんのか、愚かしい――私はいら立ちを感じた。

「股から血を流したいか?」
「ひッ……!?」

「嫌なら答えよ。人間の女はどうすれば性的快感を得られる?」
「……さ、最初は、指を挿れないで。入り口を優しくなでて…………」

「フム、こうか?」
「ん……っ。そ、そうです、ぁっ……。あと、クリトリス、ぽつんとしてるところを、優しく、くにくにって」

「ほう。また妙な器官があるものだ。それで、膣と呼ばれる器官はどうすればよいのだ」
「あっ、んっ、あぁ……っ。ま、まだ……。アソコが濡れてきたら、中も、気持ちよくなります、から……」

私が脅しをかけて、ようやく実験が進展する。最初は苦痛に歪めていた女も、少しずつ艶のある吐息が漏れてゆくのが分かった。

性感とは、つまりそういうことだ。身体を的確に刺激すれば、快楽を覚えることができる。子を残すことに対する見返り、当然の仕組みだ。

 

「あ、あの、私は、いつ解放してもらえ……」

その時、娘は何かを問おうとしていたような気がする。それも少し気が緩んだような声音でだ。もしも私の行為を友好の証とでも受け取っていたのなら、それは愚かしいにも程があるのだが。

あいにく、深く思考している私には、娘の浅はかさをとがめる暇はなかった。

「問題はよ」
「――っひゃはぁぁぁぁっ!!?」

私は、娘の腋の下をくすぐり始める。すると娘は両手首の鎖に自分の体重を掛けるように飛び跳ねながら、無様な顔で笑い出した。

「ぅひゃぁっはっはははははははははははははははぁぁ!! な、なにをぉぉほぉぉぁっひゃっはっはははははははははははははははははぁぁぁあ!!?」
「生殖するなら、ただ性感を刺激し、膣の中で射精すればよいだけの話ではないか。貴様ら人間は、何故をする?」

「し、しらなひぃぃぃっひひひひひひひひひひぃぃっ!!? 知らないからやめてぇぇぇっへっへへへへへへへへひゃぁぁっははははははははははははははぁぁあっ!!」

私は娘の腋の下を刺激しながら思考する。

快楽という報酬がなければ子孫を残そうともしない人間の非合理さにも辟易するが、このくすぐりという行為は一層愚にも付かぬ話だ。

くすぐったいという感覚は、性感とは似て非なるものである。まさに目の前の個体がそうであるように、中には苦痛に感じる個体もいる。異種による敵対行為ならまだしも、どうして自ら苦痛を強いるのか? それが分からない。

しかし怜悧たる私は、性感とくすぐったさを同時に与えることを思い付く。右手で娘の腋の下をくすぐりながら、左手で性器を弄り始めた。

「ひゃぁぁぁぁっっははははははははははははぁぁ!!? ぁんっ、んんっ♡♡♡ んぎゅっはっはっはははははははははははははははははははははは!!!」

すると娘は、性感を覚えているとも、くすぐったさを感じているとも取れる反応を示す。二つの感覚を与えれば、二つの異なる反応を――それは極めて単純明快だ。

しかしそのまま性器と腋の下をいじり続けていると、娘にも次第に変化が訪れるのだ。

「んひぃぅぁっはははははははははははひぃぃぃっ!!!? お、お願、い――!!? と、とめ、止め――♡♡♡ 止めぇぇっへっひひひひひひひひはははははははははははぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡」
「止めてほしいのなら相応の理由を述べよ。まさかこの程度で死んでしまうのではあるまいな?」

「ちがっ、違うっ、ちがううぅぅぅぅぅぅっ♡♡♡ ぅひぁひゃっ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!? ひゃはぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
「フム、ほう。この反応は」

娘は息を詰まらせたかと思いきや、声帯の震わせ方を忘れてしまったのか、空気の塊のような悲鳴を漏らす。体をのけ反らせながら痙攣させる。愛液の分泌量が目に見えて増える。今までにない反応――これは性的絶頂だ。

少なくとも、この行為、私の動きには、人間の女を絶頂に至らしめるだけの刺激が存在するらしい。

「とはいえ、たったこれだけの試行で分かることなど、たかが知れているな」
「ひきっ、ひぃぃ……っ♡♡♡ も、もぉ、やめ……♡♡♡」

「ばかなことを言うな。貴様ら人間を拐かすのも楽ではないのだ、向こう数年は研究に付き合ってもらうぞ」
「ぃひゃぁぁあっははははははははははははははぁぁぁぁあっ!!!? す、すうね――♡♡♡♡ むりっ、無理、無理だってへぇぇぇぇっへへへへへへへへへへへぇぇぇぇぇ♡♡♡♡ ぇひゃぁひぁーーっはははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああ!!!?」

私は引き続き、娘の腋の下と性器を同時にいじくり回すことにする。すると一度絶頂したことが原因なのか、明確な変化が見て取れた。

「ひひゃぁぅぁぁぁぁぁあああああっ♡♡♡♡ はひっ、はひーーっひひひひひひひひひひひひひぃぃぃぃいっ!!!? しょれっ、それだめっ♡♡♡♡ ひゃはぁぁぁあっはははははははははははははははははははぁぁぁぁあっ♡♡♡♡」
「……貴様、よもや腋の下をくすぐられて性感を覚えているのか?」

「そ、そんなわけっ、そんなことなひぃぃぃぃいっ♡♡♡♡ ひひゃはっ、はひっ、はひっひひひひひひひひひひひひゃぁぁあっはははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁあ♡♡♡♡」

娘は先ほどよりも大きな反応を示すばかりか、くすぐりに対して性感を覚えた時と近しい反応を見せたのだ。1度絶頂したことによって、感覚が変化したと見るべきか。

私は一つの仮説を立てる。そして性器をいじることをやめ、両手で娘の腋の下をくすぐることにした。

「なんでっ、なんで腋の下だけぇぇぇぇっひっひゃっはははははははははははははははははは!!!?  だめっだめぇぇっへへへへへへへへへへへぇぇぇぇぇぇえっ♡♡♡♡」
「仮説の実証だ。腋の下で性感を得ていないというのであれば、これを耐えてみよ」

「むり、むりっ、むりぃぃぃぃい――♡♡♡♡ ひぐっ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ひきッ♡♡♡♡♡ ひゃは~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「見たことか。頭の悪い人間の欺瞞が、私に通ずると思うなよ」

「わかっ、分かっっ♡♡♡♡♡ ごめんなひゃっはははははぁぁぁあっ♡♡♡♡♡ やめっ、ごめん、だからっ、くしゅぐるのやめへぇぇぇぇぅぁあっひゃっははははははははははははははははははははははぁ゛ぁぁぁぁぁああああああっ♡♡♡♡♡」

思った通り、娘は腋の下をくすぐられるだけで絶頂した。その反応は、紛れもなく性感を覚えているものと判断して間違いないだろう。

これはつまるところ、だ。人間の女にとって、くすぐられるというのは、本来苦痛を伴う行為である。なればこそ、苦痛を快楽に転化することで負担を和らげる。単純明快な理屈だ。

しかし、問題はそのだ。そもそも、なぜ人間の女をくすぐるのか? 人も、魔族も、この《世界》のありとあらゆる存在が、だ

「きひっ、ぎひっ、ひーーっ♡♡♡♡♡ っひ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ひゃはっ、は♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

そうこう思考している内に、女は笑いながらまた絶頂していた。絶頂の感覚が短くなっていることから、女の神経がより過敏になっていることが分かった。

「おねが――♡♡♡♡♡ もっ、もお――♡♡♡♡♡」
「まぁ、研究を続けていけば分かるだろうよ」

「っっっもぉいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっはっはっははははははははははははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁあああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」

それから私はこの娘の体を使って、効果的なくすぐり方を調べ尽くすことにする。賢慮たる私でも、技術の習得には最低限の訓練が必要となるのだ。

「腋のくすぐり方は分かった。では腹はどうだ?」
「ぃぎぃぃぃぃっひひひひひひひひひひひひぃぃぃぃぃいっ♡♡♡♡♡ もまにゃっ、お腹ぐにぐにもまにゃいでぇぇぇぇぇっへへへへへへへへへへぇぇぇぇぇえええええええっ♡♡♡♡♡」

「む。足の裏は弱い触れ方だと刺激すら感じないことがあるのか」
「ふぎゃぁぁぁっははははははははははははははははっ♡♡♡♡♡ つめっ♡♡♡♡♡ 爪でかりかりするのは効くがらぁぁぁぁぁぁぁっははははははははははははぁぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡」

「時には性器をくすぐることもあろう? これはどちらの感覚になるのだ?」
「んぉ゛ぉぉぉおっほほほほほぉぉぉおっ♡♡♡♡♡ どっちもっ、どっちもぉ――♡♡♡♡♡ くしゅぐったくへっ、気持ひよくへっ♡♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ほっ、ぉぉおお~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

頭の先からつま先まで、納得の行くまでくすぐり尽くすのだ。

 

――――
――

 

しかしを始めてから幾数日。

「ひ……っ! あへ、ひ、へ……!? ひゃ……!」

女は全身を弛緩させながら、虚ろな笑い声しかあげなくなった。体のどこをどう刺激しても、大した反応をせずただ潮を噴き散らかすのみ。これでは使い物にならぬ。何と脆弱な生き物か!

あいにく、私の研究所に家畜小屋を置く余裕はない。使えなくなった個体は、旧知の仲である魔族の花妖魔アルルーナにくれてやることにした。その見返りに、やつのをもらうとしよう。それには、人が生きるのに必要な栄養が全て詰まっていると聞く。女どもの生命維持に一役買ってくれるだろう。

 

しかし、研究が少々非効率的であることが気に掛かった。くすぐる手段は腕2本しかないし、拘束具もな鎖しかない。より良い研究のためには、設備を充実させる必要があるだろう。

うかつに外に出られない以上、物資は限られる。もっとも安全かつ効果が見込めるのはか。本来、屈強たる魔族は魔術の研究などしない。そんなことをせずともが魔術を行使するのだから、隼が空の飛び方を学ぶようなものだ。しかし、本能を超えた領域であれば、我々でも新たな知識を得なければいかんともし難い。

正しく描けば均一的な魔術の行使を可能とする、想像を本能の領域にまで刷り込み魔族と同等の魔術行使を可能とする。これらは脆弱たる人間どもが、強大たる魔族に対抗すべく創り上げた賜物だといえよう。

よって、魔術の研究を並行して進めることにする。

 

――――
――

 

また別の日。今回は都合良く2人の娘を捕らえることができた。

早速、陣魔術で構築した拘束具を使うことにした。魔力を硬質化した枷は娘共の細い両手足にはまり、動くことを許さない。姿勢は、仰向けに寝かせたまま身体を大きく開いて、全身を曝け出した状態だ。娘らを置いた大理石の台座は、このために用意したものである。表面は滑らかに磨かれ、裸でも肌を傷つける恐れはない。

「放しなさいよ! 赦さないわよ、この魔族っ!!」
「お姉ちゃん……。私、怖い。これからどうなっちゃうの……!?」

「大丈夫よ、すぐに誰か助けに来てくれるわ」
「う、うん……!」

その娘たちは姉妹だった。

黒の短髪、小さな身体。姉は生命力を感じさせるが粗暴であり、妹は淑やかだが気弱が過ぎる。部位ごとの特徴は同じだが、性格が変わるとこうも全体の印象も変わるものか。

さて、手始めにこいつらの性感を調べることから始める。

「生成と操作――34番、四つ」

詠唱魔術によって生み出されるのは、四つの白い手である。四つの手は私の意思に従って、姉妹どもの身体に張り付いた。1人につき二つずつだ。

「きゃはぁっ!? な、何すんのよぉ……っ!! くひひひひっ、変態っ、へんたひぃぃっ!?」
「んくぅっふふふふふふ……!? くふっ、ふぅぅ……っ!! んんーーっ!?」

性格が変われば、笑い方も変わる。姉はこちらを罵倒しながら、口を開けて笑う。妹は何も言わず、口を閉じて笑う。

私がその気になれば、一度に100を超える手を生み出して操ることもたやすい。しかしそうしないことには意味がある。まずは比較的軽度なくすぐりで、個体による特徴を見極めるのだ。

それは例えば、特に反応の良い場所も含まれる。研究により、人によってくすぐったい部位とくすぐり方が違うことを知っていた。

「いやぁぁぁぁっはっはははははははははははははははははぁぁぁぁ!!!? わきっ!!? やめっ!! くすぐらなひでよぉぉぉっほほほほほほっひっははははははぁぁぁ!!!」
「なるほど、貴様は腋の下が弱点か」

「きゃぁあぁぁぁっはっはははははははははははははははぁぁ!!! くしゅぐったひぃぃぃぃぃ!!? あしのうらくしゅぐったひぃぃぃぃゃっはっはっはははははははぁぁぁぁ!!?」
「貴様は足の裏か。姉妹でも違うものだな」

余裕がなくなれば、笑い方に差などなくなってくるものだ。皆一様に、大口を開けて無様に笑い転げる。

姉のほうは、腋の下にあるくぼみの縁を軽く触れるようになでるのが効く。妹のほうは、足の裏にある土踏まずを爪で激しく引っかくのが効く。このように、どこがもっともくすぐったいのか知ることは、正しい評価のために必要不可欠なものなのだ。

 

さて、本題に入ろう。

そもそも性欲というものは、我々魔族には共感し得ないものだ。の魔族でなければ子をなす必要はないし、仮にそうだとしても、快感などという報酬がなければ子をなさないなどと愚かでもない。つまりそもそも性欲が存在しないのだ。

人間どもは性欲がなければ子も禄になせないどころか、性欲に翻弄されるばかりだ。果たして、彼奴らの性欲に対する抵抗力とは、どれほどのものだろうか。

今回はそれを検証する。

「生成と操作――97番、14……いや、16にしておくか」

生み出すは、全部で16枚の羽根。羽根は8枚ずつに分かれ、姉妹どもの弱点に貼り付いた。

「んくっ、ふぅっ……! な、何、これぇ……!?」
「きゃふっ、ふふ……!? ひゃっ、ぁぁ……っ!」

宙を浮く羽根は、姉妹どもの身体を本気ではくすぐらない。

姉のほうは腋のくぼみの縁をなぞるように、妹のほうは土踏まずをほじくるように。それは先ほど調べた、娘らのもっともくすぐったさを感じる部位ではあるが、あくまでも耐えられるように、それでも無感覚とならない程度にくすぐり続ける。

「んくっ、ふっ、ぁ……!? っ、な、何なのよ、っあ……!? ぁはっ、は、はぁ……!」
「ふぁっ、くすぐっ、たは……! ぁふっ、んふっ、ふふふ、ふぅ、ふぅぅ……!!」

「さて、私は他の研究でも進めておるかの」

「ちょ、ちょっとほっ、ん……!? ま、待ちなさい、よぉ……!!」
「お、お願……。んくっ、ふ……! た、助け……」

「何だ。飯なら後でくれてやるわ」

「くふっ、ぁは……! 何なの、でも、んくっ……! このまま、耐え続けていれば……」
「っひゃ、お、お姉ちゃん、私、ひぅ……! ま、まだ、大丈夫、だよ……!」

最初こそ、姉妹どもは弱いくすぐり責めであることに安堵している様子だった。それも当然の反応ではあるだろう。くすぐりを苦痛に感じるならば、それが和らげば安堵するに決まっていよう。しかし彼奴らが愚かなのは、そのを深く考えないことにある。

私が今回用いた魔術の所感を研究書に書き留め、次の魔術の構築を思案し、いつの間にか半日がたとうとしていた時、改めて娘を見ると明確な変化が見て取れた。

「くふっ、ぁ、っ……♡ っ、あっ、くぅっ、ぅぅ……!」
「ふぁ、ぁ、ひゃん……!? ぁふっ、ひゃ、ぁぁ……♡」

「フム」

荒立った息、上気した頬。何より、全身に力が入っている。内股を擦り合わせたいのだろう、太ももが筋張り、その付け根にある女性器から愛液が垂れているのが分かった。

「っ、く……! な、何見てんの、よぉ……♡ さっさと、っ、くぅぅ……♡」
「ぁ、あの、ぁ、ひぅ、ぁ……♡ ぁの、あ、ぁぁ……♡」

「用があるなら言わぬか」

「っ! い、いつまで、こ、こんな触り方を……! ぉぉ……♡」
「そ、その、もっと、強く、触っても……! ひぅぅ……♡」

「何だ、そのことか」

研究の成果があって、愚かな人間どもは性感とくすぐったさを誤認することがあると分かっていた。それは優しくくすぐる場合でも同じだ。この娘たちは、羽根によるくすぐりに対して、まるで愛撫されているかのような性感を覚えているのだ。

こいつらの表情を見れば明らかだ。もっと明確な刺激が欲しい、激しくくすぐって欲しい――まるで目がそう言葉を発しているかのようだ。

それでは、私がこいつらの望みを叶えることはあるか? 答えは否だ。

「いつまでもだ」
「……へ? いつまでも、いや、いつまで……? え、え……っ?」

「貴様らに強い刺激を与えることはない。少なくとも、向こう数か月はな」
「数、か……? ど、どうして……? だって、こちょこちょって、もっとくすぐったくて、だって……っ?」

「貴様らに答えてそれが理解できるのか? フン、まあよい、それが私の研究だからだ」
「そんな、ずっと、このまま、だって……」
「こんな、優しいこちょこちょ、され続けたら、私……」

人も魔族も、同じことがある。自らのを知ると、絶望することだ。

欲求は決して満たされることがない――それを知った姉妹の口から一滴、二滴とこぼれた言葉が呼び水となって、とうとう決壊する。

「やだっ、やだぁぁあっ!!? ずっとなんてやだっ、こんなのずっとは嫌だぁぁぁ!!!」
「強くしてっ!!! するならもっと強くこちょこちょしてよぉぉぉぉぉおおおお!!?」

姉妹どもは大声で喚き始めた。

先ほどまで、私が触れようものなら唾を飛ばしながら罵倒してきた姉と、どれだけ問い掛けてもうんともすんとも言わなかった妹が、だ。今では、私に拘束された腰を目一杯振って媚びる。

先ほどの『人も魔族も同じ』という言葉は撤回しよう。私はこうも卑しくはなかったはずだ。

「ええい、この部屋は喧しくてかなわん」

「待ってっ、この羽根止めてよっ!!? ぁ、ぁ、ぁあ……♡ ぁぁぁぁぁあ、ぁぁぁぁあああ……♡」
「切ないのっ、ひぅっ、ぅぁぁぁぁああ……♡ この羽根、優しすぎて嫌なのぉぉぉお……♡」

羽根を生成して操作する魔術は、私が離れていようと動く。私は知性なき姉妹どもの嘆願にうんざりしながら、耳を塞いで部屋を出るのだった。

 

――――
――

 

私は、この姉妹のことをいかなる時でも、16枚の羽根でくすぐり続けることにした。朝も、昼も、夜も。花妖魔の果実で栄養を摂取させる時、寝ている時ですらくすぐり続ける。

「ひぁ、ぁあ……♡ ぁっ、やめっ、ぁぁ、ぁぁぁぁ……♡」
「ひゃはっ、はぁぁ……♡ もっと、ちゃんとくすぐってよぉ……♡」

どうやら人間にとって、くすぐられながら眠るというのは困難らしい。しかし結局は疲労によって気絶するように眠るから問題はないようだ。もっとも、眠っている最中でも笑い声を漏らし続けてはいるのだが。

しかし朝に彼奴らの経過を観察すると、明らかに反応が鈍くなっていることに気付いた。

「ぅぁ、ぁ、ぁ……♡ ぁは、ひゃぁ……♡」
「ひっ、ぃぃ……♡ ぃひ、ひぃぃ……♡」

食事・睡眠ともにとっている。体力に問題はないだろう。単調な刺激故に、身体が飽いたのだろうと推察する。英明たる私は、早速原因に対処することにした。

「生成と操作――34番、まあ32ぐらいにしておいてやろう」

16枚の羽根が動き続けるさなか、生まれ出ずるは新たな32の手。

それらは姉妹の全身に飛び散り、全身を余すことなくくすぐり始めた。

「ッ~~~~~~~~!!!? 何っ、なにぃぃぃっひっひゃっはははははははははははははははぁぁぁぁあ~~~~~~~~♡♡♡♡ ひゃは~~~~っはっはははははははははははははははは♡♡♡♡」
「でもっ、でもっ、くしゅぐったぁぁぁっはははははははははははははははははっ♡♡♡♡ くしゅぐったいのっ、くしゅぐったいのぉぉぁぁぁあっひゃっはははははははははははははははははは♡♡♡♡」

絶望の中、目の前で私が行っていることをまともに見ていなかったのだろう。姉妹たちは驚くように飛び跳ねてから、笑い狂い始めた。

しかし、姉妹どもの身体が悦んでいるのは明らかだった。無様に笑いながら、全身を痙攣させ、愛液を垂らす。それもそうだろう。全身をくすぐりながらも、弱点は殊更激しくくすぐっているのだから当然だ。

姉は腋の下が弱い。腋のくぼみから縁、背中や二の腕まで隙間なく手で埋め尽くす。

「くしゅぐったいぃぃぃっひっひゃははははははははははははははははっ!!!? わきっ、腋ぃぃぃいっひひひひひひひひひひゃーーーーっはっははははははははははははは♡♡♡♡」

妹は足の裏が弱い。指先から踵までを手で埋め尽くすのはもちろん、足の甲すらくすぐる。

「足の裏すごいぃぃぃっ♡♡♡♡ ひゃはっ、ぁっ♡♡♡♡♡ 足の裏くしゅぐったいのすごいよぉぉぉぁぁぁっはっははははははははははははははははぁぁ~~~~~~~~っ♡♡♡♡」

性器に触れてすらいないというのに、その膣口は餌を食む魚のようにうごめいている。このままくすぐり続けていれば、姉妹どもはあっけなく絶頂に達するだろう。

「ぁはぁぁっはははははははははははぁぁぁあっ♡♡♡♡ これいじょっ、これ以上はぁぁっ♡♡♡♡ ぁはっ、ぁはぁぁっ、ぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」
「もっとくしゅぐってへぇぇっへへへへへへへへへへへへ♡♡♡♡ くるっ、来るのっ、きひゃうのぉぉぁぁっははははははははははぁぁぁぁぁあああっ♡♡♡♡」

しかし、絶頂させる気などさらさらない。私は先ほど生み出した32の手を、一つ残らず消し去った。

「ひぐ――!!!? ぁ、ぇ、ぁ……! と、止まって……」
「へ、ぇ――!!? 嫌、ぁ、いかないで……!!」

間抜けな表情を浮かべる姉妹どもに、親切な私は答えてやる。

はそれで終いだ」

そして、また羽根によるくすぐり責めを始めた。

「ひぅっ♡♡♡ ぁはひひひひっ、や、やだっ、これもう嫌だよぉぉぉおおっ♡♡♡」
「さっき、さっきのちょうだいっひひひっ♡♡♡ 思いっ切りこちょこちょしてよぉおおっ♡♡♡」

姉妹どもは絶望の表情を浮かべ、また羽根の動きに翻弄される。激しいくすぐり責めによって神経を一度昂ぶらせたことで、その反応は先ほどよりも良好なものだった。

 

今回の実験における手順は確定した。

絶頂に至らない強度で、羽根によるくすぐり責めを続ける。そして反応が鈍くなったところで、手によるくすぐり責めで神経に活を入れてやる。それでも絶頂に至ることは決してない。

一日に一度あるかどうかの激しいくすぐり責めが訪れると、姉妹どもはよだれを垂らして悦んだ。しかしほんの数呼吸でそれが終わると、退行でもしたかのように泣き叫ぶ。

「お願いしますぅぅぅぅ!!! くすぐってっ! 腋の下思いっきりこちょこちょしてくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
「切ないのっ、足の裏切ないのぉぉぉぉ!!? こちょこちょされたいのっ、くすぐられたいのぉぉぉぉぉ!!!」

当初、姉は生意気だった、妹は慎ましやかだった。しかし今となればこの有様、敵意も羞恥もなくして、ただ快楽を欲する。これでは獣と変わらん。

種の存続のために男の精液を欲するのならまだ理解できよう。しかし、己が欲求を満たすためにここまで狂おうとは、何と浅ましい生き物か!

「もうよい。研究は済んだ」

私は、気が狂ったこの姉妹たちを処分することにした。別に、このまま一度も絶頂させぬまま放逐しても何ら問題はない。しかしそれは私にとってもどこか気持ちの悪いことだった。

自分でも理解ができない感覚。魔族である私にというものが芽生えた――いや、違うな。あるいは、『女をくすぐり犯すべし』という衝動は、魔族という種族がその根底に孕ませたなのかもしれない。

一度、この疑念を捨て置くことにしよう。今は阿呆の人間どもと同じように、この衝動に従って愉しませてもらうとしよう――私は32の手を生み出し、姉妹どもの全身をくすぐり姦させたのだ。

「ひゃぁぁぁぁああっはっはははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁっ!!!? くしゅぐったっ、くしゅぐったいぃぃぃっひひひひひひひひひひひひひひひゃぁぁ~~~~っははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」
「ひゃはーーっはははははははははははははははははははははっ♡♡♡♡ 終わらないでっ、こちょこちょ終わらないでぇぇぇぇぇぇぇひゃっ、ひゃーーーーっははははははははははははははははははははははははははははははぁぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」

この姉妹の感度は全て把握している。姉は上半身を中心にくすぐり、妹は下半身を中心にくすぐるのだ。

「ひぃぃぃぃぃぃぃいいっ♡♡♡♡ くしゅぐったいのっ、ずっとっ、ずっと続いてぇぅぇぇぇぇえっ♡♡♡♡ これっ、これぇぇぇぇっへっひひひひひひゃははははははははははははぁぁぁぁぁぁああっ♡♡♡♡」
「すごいっ、強いっ♡♡♡♡ こちょこちょ強いぃぃぃぃっひっひひひひひひひひひひひひっ♡♡♡♡ やっとっ、やっと来てぇぇっへへへへへへっひゃっはっはははははははははぁぁぁぁぁぁあっ♡♡♡♡」

いつもであれば、この時間は姉妹どもにとって至福でもあり、苦痛でもあった。無理やり神経を昂ぶらせられて、それでも絶頂できない――こいつらはいつも苦悶の表情で悦んでいた。

しかし今回のくすぐり責めが、数呼吸で終わらないことを悟ると、姉妹どもの表情はみるみるうちに歓喜に満たされる。そして顎が外れんばかりに口を大きく開き、笑い、そしてあっという間に、絶頂に達するのだ。

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁはっ、ひゃ――♡♡♡♡ 何、これ――♡♡♡♡ ぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「ひゃは~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ すごいっ、気持ちいい――♡♡♡♡♡ 気持ちいいっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡」

その絶頂反応は、過去に見た女どものそれよりも激しい。手足を傷つけかねん強さで枷を引きながら、運動神経の異常を疑うほどに全身を痙攣させる。股からはクジラのように潮を吹き散らかしている。

どうやら人間の女というのは、絶頂を我慢すればするほど、後の快感も大きくなるらしい。私が絶頂の我慢を強いたのは数十日。長寿の私にとってはまばたきとそう大差ない時間ではあるが、短命の人間にとってはそれなりに大きな時間であったようだ。

その時間で溜め込んだ欲望というのは、たかだか一回の絶頂では解消されないらしい。

「ぁは~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁはっ、ぁははははははははっ♡♡♡♡♡ イッてっ、ずっと、イッてっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「くしゅぐってへぇぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ もっとっ、もっと、たくさんっ、こちょこちょしへっ♡♡♡♡♡ へひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

姉妹どもは一度絶頂した後も、くすぐり責めを悦んで受け入れ続ける。

姉は拘束されながらも弱点の腋をより大きく開き、妹は足の裏を反らせて指の動きを妨げないように奮闘する始末だ。

「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ すごっ♡♡♡♡♡ ほ、ぉぉおッ♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「しあわへっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁはっ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

2度、3度、4度と絶頂してゆく姉妹ども。

しかし私は過去の観察でとうに知っている。人間というものは、快感を受け入れる器としてはあまりに小さい。どれだけ絶頂を我慢していたとしても、限界はすぐに見えてくるものだ。

「これ、いつまで、くすぐ――♡♡♡♡♡ つら、いぎ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「も、い゛い――♡♡♡♡♡ くしゅぐっだいの、いい、がら――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

やがて当然のごとく、姉妹どもは拒絶の声を上げ始める。しかもこいつらは、体の制御ができなくなっていた。体が絶頂を受け入れ続ける一方で、心が先に根を上げている。

それでも私は構うことなく、姉妹が壊れるまでくすぐり続けるのだ。

「やだ、これ、ずっと――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ やだ、ずっと、やだぁ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぉ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
「くしゅぐら、なひ、で――♡♡♡♡♡ も、くしゅぐっだいの、やだ――♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

さて、また新しい実験体を攫ってこなければ。

 

――――
――

 

幾度の研究、実験を経て、少しだけ分かってきたことがある。くすぐりとは、つまるところ快楽を増幅させる術である。

人間の性感帯というものは、存外に少ない。ある程度万人に共通しているのは、胸と性器ぐらいである。体のごく僅かな部位でしか快楽を得られないのであれば、その強度にも限度があるということだ。

より多くの快楽を得るためにはどうすればよい? 素朴にして明瞭な思想の一つが、性感帯を増やすということだ。腋や腹、腿、足の裏など、全身で感ずることができれば、快楽は増える。その方法こそが、くすぐりということだ。無能で脆弱な人間にしては、比較的合理的な手段といえるだろう。

理屈は通る。だが、腑には落ちない。

この行為を欲しているのが、ではないからだ。《神》だ。《神》こそが自ら創りし存在に対して、自ら気に入らないとして、《世界》を《毒》に冒してまで手を加える――はっきり言って、頭が悪いどころの話ではない。狂っているとすら言えよう。

「――《神》とは一体、だ?」

その結論はすぐには出せず、私の研究における永遠たる課題となろう。

 

私は実験を続けた。

ある時は、魔術によって擬似的にを再現した。魔物は魔族と比較的同じ生態でありながら、滅びる定めに捕らわれていないものどもである。

私が再現したワーム種は巨大なみみずのような姿で、先端に口があり、獲物を丸呑みにすると内部の触手で全身を余すことなくくすぐり責めにする。

相手は少々肉付きのだらしがない女だった。どうやら子を1人産んだことがあるらしい。

「出してっ、ここから出してぇぇぇっへへへへへへへへへへへへぇぇぇぇぇええっ!!!? 私っ、相手っ、相手するからッ、貴女の相手してあげるがらぁぁぁっはっはははははははははははははははぁ゛ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」
「愚かもここまで極まると恐ろしいな。貴様のような品性のない女を、魔族である私が欲すると思うのか?」

「助けでぇぇぇっへへへへへへへへへへへへぇぇぇえっ♡♡♡♡♡ あなたっ、あなたぁ゛ぁぁぁぁっははははははははははぁぁぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ んぎひぃぃい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡♡♡」

ワームの体内で、無数の触手が女をくすぐり責めにする。

女は体液を噴き散らかし白目をむくほどに絶頂していたが、これが快楽の限界かといえば、それは疑問だ。やはり魔物は、魔族とは違う。こいつらごときに私の飽くなき探究心を満たされては堪らんな。

 

またある時は、生命魔術に手を出した。脆弱な女どもの体力を補強することで、より強く長いくすぐり責めを耐えられるようにするのだ。

くすぐる手段は、魔術で生み出した手だ。単純な方法ではあるが、これが最も扱いやすい。粘液体を生み出して全身に塗ってやれば、強力なくすぐり責めも可能だ。

相手はどこぞの国の騎士だった。女を見繕っていた時、生意気にも楯突いてきたから、代わりに攫ってきてやった。

「いつまでっ、こんなこと――♡♡♡♡♡ ぉほぉっほほほほほほぉぉぉぁああああっははははははははははははははははぁぁ゛ぁぁああ~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ しぬっ、死ぬっ、しんじゃうからぁぁぁあっはははははははははははぁ゛ぁぁあああぁぁぁあああっ♡♡♡♡♡」
「今日で一か月か。この調子なら、あと半年は外部からの補給なしに続けられるか」

「半年――ッ!!!? うそっ、うそぉぉっほほほほほぉぉぉおおおッ!!!!? やめっ、ごめ――♡♡♡♡♡ 謝るっ、謝るからぁぁぁぁぁっははははははははははっはッ♡♡♡♡♡ ごめんなっ、ごめんなさいぃぃぃぃぃっひぃぃぃぃぃっひゃっははははははははははははぁ゛ぁぁぁあああッ♡♡♡♡♡」

寝食の必要がなくなり、一呼吸も休む間もなく数か月くすぐり続ける。

私に刃を向けた時は威勢のよいことをほざいておったが、体をくすぐられるだけでこうも屈服してしまうとは。やはり人間の精神力は脆弱だ。

 

そしてある時は、人間の神経と脳そのものに手を加えて、感度と快楽の許容量を引き上げた。脆弱な人間の体を弄くり回すというのは少々難しいことではあるが、大賢たる私の術式は何とか成功した。

しかし発想そのものに問題があった。感度を引き上げるということは、痛覚や熱に対しても過敏になってしまうということだ。少し肌を引っかけるだけで泣き叫ぶようでは、何一つ実験もできない。

仕方ないので、そいつはそのまま花妖魔にくれてやった。今までで最も若い女――というよりは少女だ。

「貴方、本当にいいプレゼントしてくれたわね。私好みのツルペタで、感度もすっごい敏感♡」
「構わん。扱いにくくて持て余していたところだ」

「貴方は乱暴だからいけないのよ。ほら、私のかわいいの中にしまってあげれば大丈夫。もうずっと気持ちいいだけよ」

「ッ゛ッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡♡ ぇへっ、へ――♡♡♡♡♡ ぇへへへへへへへへへへぇぇぇぇえッ♡♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡ ッ゛ッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」

少女は巨大な食虫植物ハエトリグサの中に大切にしまわれることになった。二枚の柔らかな葉に体を挟まれ、もはや動くこともできない状態で全身をくすぐられる。少女は幸福そうに笑い、絶頂し続けていた。

元とはいえ被検体を私よりもうまく扱っているという事実に、私はこの花妖魔に嫉妬した。

 

――――
――

 

私は得られた知識を禄に活用することもなく、分かち合うこともなく、研究に没頭し続ける。女を攫って狂うまで犯し、放逐する毎日。私の人生は充実していた。時間を忘れるほどだった。研究を始めてから、十数年か、百数年か――。

しかしそんな日々は、突如終わりを告げる。私の研究所に、招かれざる客が現れたからだ。

「貴方が、町の人を攫っている魔族ですか」

そいつは人間の女だった。身をまとう修道服がぼろぼろなのは、美的観点から言えばやや減点か。それでも、神聖さを感じさせる白銀の髪、刃のごとき鋭い目、長身ながら細くしなやかな体――どこをどう切り取っても、今まで見た女の中で最も美しい。

しかし、夥しい殺気を発しながら短剣を抜いているのだから、私の研究に協力する気は更々ないらしい。非常に惜しいことだが、はさて置くとしよう。

「……フム、どうしてここが分かった?」

幾重もの隠蔽魔術の先にあるこの研究室は、人間どもに見つかるはずがないと考えていた。現に百数年の間、一度たりとも見つからなかったのだ。

この女は見つけた。一体どうやって? 私の優秀な頭脳をもってしてもさっぱり分からない。

しかしどうやら、そのことについて思考している暇はないようだ。

「魔族よ、貴方を赦すわけにはいきません」
「正義感か? それとも金か? 名誉か? 下らぬな。気取りの阿呆が、死に急ぎよって」

「……答える義理はありません。ご覚悟を」

女が黒い短剣を構える。その細き全身と刃に魔力の高まりを感じる。

戦うのは幾十年ぶりか。たまにはこういうのもよかろう! 面白い! あぁ滾る!

「クァッハハハ! やってみるがよい!!」

私は魔族としての本能を爆発させて、女へと襲い掛かるのだった。

 

――――
――

 

――――
――

 

――――
――

 

――戦いの後、私はを思い出していた。

魔族はいずれ、人間に討たれるものであると。

「これが、か……」

無傷の女が、私の胸に深々と突き刺さっている短剣を引き抜く。血も、魔力も失った私は、あっけなく地に伏した。

「恨まないでください」
「……フン」

どころの話ではない、《規格外》の強さを持つ女が言う。

私は血の混じった唾を吐いて応えた。

「下らん」

この女は、頭が悪いから分からないらしい。

魔族とは、そもそもが滅びる定めの種である。誰かに殺される未来が既に決定しているならば、この女を恨む意味はないのだ。この女が私を殺さなくとも、他の誰かがいずれ私を殺す。たまたま、この女だったというだけの話だ。

どうせ恨むなら、その相手はだろう。それはすなわち――。

「――彼女を恨む必要はない」
「……貴様は?」

突然、女とは別の方向から、別の声が響く。目の前の女よりもさらに幼く、しかし、年らしからぬ泰然たる声だ。

物陰から出てきたのは、黒髪の少女だった。

「君たち魔族が恨むのは、のほうだろう」
「貴様は……? 貴様、は……。おお……、おぉ、おおッ!! は!!? はッ!!!?」

人間とは僅かに違う力の流れ。を発見されたという事実。そして『自分を恨め』という言葉――私の聡慧なる頭脳が導き出した結論は、驚くべきものだった。

は、私を中心に広がる血溜まりの中で膝を付く。自身が血で汚れるのも気にせずに。

「《世界》は既にしている。僕は《天秤》に触れられない。……だから、君たちを今更ことはできない」
「クク、ッハハ……! ハハハハハ!! クハハハハハハハハハハッ!!!」

その表情は冷たい。だが、その瞳の奥に宿る感情は手に取るように分かった。

だから、私は僅かな命の続く限り嗤った。ああ、おかしくて堪らない。が、が! こんな下らぬことをのか!

恨むだと!? こんなを!? ばかな!!

「下らん、実に下らんな」
「…………」

「生きるは自分で決めた、なぞ知ったことか。貴様など、恨む価値もないわ」
「……言葉もないよ」

「フン」

あぁ、ばからしい。に踊らされて生きる者の、何と哀れなことか。

暗闇を拓くがごとく己が生を、私は今完全に肯定した。やはり、私の生き方は正しかった。私はやはり頭が良い!

「愉快な一生だったぞ、《神》よ。それだけは感謝しよう」

命が大地に溶けてゆくのを感じながら、私はただひたすらに、最期まで笑うのだった――。

 

 *

 

 *

 

 *

 

「アレリナ、けがは」
「特には。問題ありません」

「そう、良かった」

は短剣に付いた血を払う。血溜まりの中で、アバターが呟いた。

「彼らはだ」
「いべ、は……?」

「世界を彩るための、単なるイベント。魔族が人間を襲うのは、恨みだとか、食物連鎖だとか、そんな難しい話ではない。単に『そういう風にできている』というだけ。そういうなんだ。だから、こんななことをしている」

私はその言葉の大部分を言語として理解できても、意味までを理解することは全くできなかった。ただ、そう呟くアバターの表情が嫌に引っ掛かる。蔑むわけでもなく、哀れむわけでもなく、それらとは違う感情が見て取れたからだ。

《神》とは、罪を裁く存在のはずだ。そんなばかな――私は首を横に振って、話題を変えた。

「なぜ貴女は、この場所を私に教えたのですか」

町で行方不明者が続出していると聞いたとき、ここを教えたのはアバターだった。幼女が自分の姉を探して泣いているのを見た直後、彼の者は私に『お願いがある』と言って教えた。その上で、探索から戦いまで、全てを私に任せた。彼の者が手を下せば、もっと早く事態を解決できたであろうに。

私が断ることもできただろう。『私には関係ない』『貴女がやればいいではないですか』と。しかし幼女が泣く姿を見て、胸を痛めないでいられるほど、私は冷酷ではない。何より、アバターが頭を下げたからだ。……今と同じ、に駆られた表情で。

「アバター。貴女は矛盾に満ちている」

それが、私の率直な感想だった。

思えば、今回に限らずいつもそうだった。強大な力を持っているのに、やることはどこか卑小だ。各地の惨劇には見向きもしないのに、1人1人の人間に対する接し方は優しい。

二面性? いや、違う。もっと何か、ひどくを感じる。

「そう思う?」
「ええ」

「僕も、そう思うよ」

そこで、アバターは何かをつぶやいた。天上から声が堕ちてくる。

《神託》。次の瞬間、彼の者の眼前に夥しい数のが現れた。指先程度の大きさしかない光の、幾何学的模様。それが視界を覆うほどの大きさに集まって、下から上へと無限に流れていく。不思議な光景だ。

「アバター、それは一体?」
「……《天秤》」

「天秤……?」
「そう。僕がこの《世界》で、2に嫌いなものだ」

私の問い掛けに対して、アバターは小さく呟いて答えた。

「あまりにも複雑化した、幾億、幾兆、幾京……あるいはそれ以上存在する、の集合体。僕にはもう、この《世界》がどう動いているのか、ちっとも分からない」
「…………」

「ばかみたいだよね。見ても分からないのに、何もできないのに。それでも見なきゃ、正気ではいられないんだ」
「アバター。貴女は、何を、言って……?」

「――きっと、

アバターはそう言ってから、光の集合体を消し去って歩き出す。

背中を向けている彼の者の表情は、私には分からない。だけど最後の言葉を呟いた瞬間、私は心臓を思い切り締め付けられるような息苦しさを覚えた。

私はその場に立ち尽くしたまま、アバターの後ろ姿をぼうっと見つめ続ける。

「行くよ、アレリナ」
「あ、はい」

彼の者が振り返って初めて、私は『どうして背中を刺さなかったのだろう?』と思った。

刺したところで、どうせ殺せはしない。しかし刺さなかったのは、それだけが理由ではなかったはずだ。

私は……。

 

目次

表紙(簡単なご案内など)
第1節 わるい神さまの創る世界
第2節 神さまに犯される神殺し
第3節 神さまとポンコツ盗賊娘
第4節 神さまが楽しく犯す基準
第5節 神さまと滅びる定めの種
第6節 教会と神殺しと神さまの怒り
第7節 貴女は悪い神さまですか?
最終節 悪い神さまの創る世界
付録1 渡り鳥の気ままな旅模様
付録2 幼き神殺しと小瓶の部屋
おまけイラスト 《擽園》