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◆あらすじ
自分の知らない内に性奴隷として調教対象にされていた『みつき』、その手法は催眠術を用いたものでした。既に催眠にかけられていた彼女は下校中、無意識の内に調教士の元へと赴いてしまいます。その後は、自分の意思に反して興奮させられたり、体の感度を変えられたり、体を無理やり動かされたり……。みつきはさまざまな催眠術を駆使して、性奴隷として調教されてゆくのです。
一般に、性奴隷の調教というのは長い期間をかけて行われる。
短くて数週間、長くて1年以上。感度、性技、精神――性奴隷に身に付けさせるべきことは多い。
しかし少々治安の良すぎる現代の日本においては、実際的な問題もある。調教の期間中、まだ屈服し切っていない奴隷に1度でも警察に駆け込まれてしまったらそれまで。それを防ごうと安易に誘拐・監禁などしようものなら、行方不明だと騒ぎになるのは避けられない。
調教師には、調教の腕以上に、そうしたことに対するリスクマネジメント能力が求められる。故に『彼』のような調教師が求められるのは、必然だったと言えるだろう。
――――
――
夕方時、美月は見慣れた商店街を歩いていた。
ようやく最近、化粧というものを覚え始めた彼女。しかし化粧を落としたところで、その整った容姿にさほど変わり映えはない。元々シミのない肌、潤った唇、長いまつげ、少々つり目のせいか強気そうに見えるのは玉に瑕だろうか。
肩にかかる程度の髪におしゃれをする程の知識はまだなく、制服に包まれた体付きも、ようやく『女性』と呼ばれるレベルに……なるかもしれないと言ったところ。
一見すれば、みつきは性というものにまだ疎い、純朴な美少女だった。
何てことのない、学校からの帰り道。何も言うことなく、鼻歌を歌うことすらなく、無心で歩き続けるみつき。
「…………」
誰も異変には気付かない。
というより、第三者がそれに気付くはずがない。たとえ彼女が家とは全く違う方向に歩き始めたとしても、彼女の帰り道なんて誰も知るはずがないのだから。
しかし問題は、そのことに彼女自身も気付いていないということだった。
「…………」
ひたすら歩き続けるみつきは、やがて何もない川辺へと辿り着く。
堤防の上でゆったりとした水の流れを見つめるみつき。そして右を向き、左を向き、また正面を向いてから、不意に声を上げるのだ。
「ここ、どこ……?」
彼女の一連の行動を見ている者がいたなら、それは異様な言動だっただろう。しかしそれを嗤う者も、疑問に答える者もいない。
周囲には誰もいないのだから。彼女を除いて、その2人以外は。
「待ってたよ。みつきさん」
「おっつかれさまでーっす♪」
「え……?」
みつきが背後を振り返ると、そこに立っていたのは見知らぬ男女の2人組だった。いや、男女……? ――みつきは彼の性をすぐには判別できなかった。
「時間が惜しいから移動しよう。向こうに車を停めてある」
「だ、誰……? な、何なんですか、いきなり……」
静かな口調でそう言う男――みつきは彼の声が女性にしてはやや低いことから、そう判断することにした――背は高いが線は細く、何より女性と見間違うほど整った容姿。肩より少し短い、セミショートの黒髪。肩の凝りそうな固い黒スーツ姿。
そんな男が突然『車に乗れ』と指図してくるのだから、みつきの反応は至って普通だろう。
「やっほー、みつきちゃん。久しぶりだねー♪」
「な、何なんですか……! あなたたちは、だ、誰……!?」
みつきの肩に手を置く女性。彼女の性別は疑いようもない。
茶髪のショート。夜の仕事を連想させるような、少し露出の多い薄黄色のワンピース姿。容姿だけで言うなら、みつきよりも一回りだけ年上だ。みつきよりも背がほんの少し高く、体付きもほんの少しだけ肉感的。しかし顔立ちと口調に愛嬌があって、そこだけ若干の幼さを感じさせる。
しかしみつきにとって、2人の容姿なんてどうでも良いことだった。重要なのは、見知らぬ場所で、見知らぬ2人が、まるで当然のように自分に話しかけているということだ。
「うっわぁ、私たちのこと本当に覚えてないんですね。エフさん」
「そうだよ。だからあまり混乱させないであげて。ツナギ」
みつきにとって訳の分からない会話をする2人。
どうやら男のほうは『エフ』、女のほうは『ツナギ』と言うらしい。エフ、『F』……? どう聞いても本名ではない。怪しさが増す。
「質問に答えてください! 何なんですか、あなたたちはいきなり……!? け、警察を呼びますよ……!」
突然目の前に現れて、自分のことをどこかに連れ出そうとして、訳の分からないことを話し出して……。みつきの頭に血が上ってゆく。
彼女は思わず語気を強めたが、エフは涼しげな表情で返すのだ。
「そうだね。こうして車に乗ったことだし、そろそろ説明しようか」
「え――」
その言葉に、みつきの背筋がゾッと凍った。
――自分は確か、川辺で2人に話しかけられていたはず。狭い視界、お尻に感じるクッションの感覚、揺れる床。自分はいつの間に、この男の指示する車の後部座席に乗っていた……?
「君は性奴隷として調教されるために、ここにいる」
いつの間にか右隣に座っていたエフの言葉は、みつきをさらに怖気立たせるのに十分なものだった。
「何故かと言われたら、そう言う依頼があったからとしか言えない。どこかの誰かが町中で見かけた君を性奴隷にしたいと思って、大金を叩いて僕たちに調教を依頼した。……可哀想だとは思うけど、僕たちもそれが仕事だから。諦めて」
「あ、今回のオーダーは純粋な性奴隷ですから、痛いのとか苦しいのとかはナシです。ただ気持ちいいだけですよぉ♡」
エフが説明し、左隣に座っていたツナギが補足する。ドライバーはどんな人物か分からないが、うんともすんとも言わない。
あまりにふざけている――みつきの感想は至極当然のものだろう。
「――ふざけないでっ!! いきなり目の前に現れて、せ、性……!? 今すぐ車から降ろして、さぁ早くっ!!」
みつきは車の中で喚き立てる。
隣に座っていたツナギが彼女のことをどうどうと宥めようとするが、『これから貴女を性奴隷として調教します』と言われて落ち着ける訳がなかった。いっそのこと、走り続ける車から飛び降りてしまいたいと思うぐらい、一触即発の状況。
しかしそんな状況にあってなお、エフは冷静だった。
「ここから事務所までは少し遠い。今の内に眠っておくと良いよ」
「だから私は!! あなたたちなんか、に……! ぁ……?」
しかしエフがそう言った途端、みつきの視界がぐるりと回る。急激な睡魔。あまりに強烈で、我慢だとか気合だとかいう言葉が意味を為さない、強制的とも言える意識のシャットダウン。
先ほどいろいろとおかしい。一体自分の身に何が起きた? ――みつきは頭を抱えながら呻くが、そんな思考も長くは保たない。
「ぁぐ、な、これ、ぁぁ……!? ぐ……」
「調教は長丁場だ。それに、暗示もかけ直しておきたいしね」
エフのその言葉を最後に、みつきは泥水に沈むように、ゆっくりと眠りに付くのだった。
――――
――
みつきが車の中で眠ってからしばらく後、彼女は見知らぬ場所で目を覚ます。
どこかの建物の中。狭く、あまりに殺風景な部屋だ。床、壁、天井、全てが灰色のコンクリート。大した家具はなく、窓すらなく、通気口がゴウゴウと鳴ってやかましい。
「っ、ぅ……? ……はっ!? こ、ここ、は……!?」
みつきは最初こそ微睡んでいたが、自分の身に何が起きたかを思い出して、飛跳ねるように起きる。
しかし体が動かない。そこで彼女は、自分が拘束されていることに気付いた。バンテージテープのようなもので、両手は後ろ手に、両足首は束ねて。眠らされていたのは床――ヨガで使うような小さなマットの上だった。
「おはよう」
「おはよーございまーす♪」
「あ、あなたたちは……!」
目の前にはエフとツナギの2人が立っていた。
「今日の目標は、自分の意思で、あの椅子に座ってもらうこと」
「っ……」
みつきが何か喚き立てるよりも早く、エフは部屋の隅に軽く目線をやる。
それに釣られてみつきがそちらを見ると、そこには椅子があった。一般家庭にあるような平凡な木の椅子では断じてない。全体が金属でできていて、肘掛と足元に枷のようなものが付いた、見るからに危険な椅子だ。
「当然のことだけど、ただの椅子じゃない。アレは座った者に性拷問を施す機械だ」
「1度座ったらいろいろなおもちゃが出て来て3時間はイキっぱなしの、すっごい気持ちいいマッサージチェアですよぉ♡」
「…………」
ふざけている――みつきは胃の中のものを吐き出しそうな気分になった。思い付く限りの罵詈雑言を浴びせたいところだったが、思いとどまる。
みつきはこの2人に遭ってから、いや、遭う前から、自分の身におかしなことが起きているのに気付いていた。……特に怪しいのは、男のほうだ。
「……説明が必要かい?」
「当然でしょう」
みつきの視線に気付いたのか、エフは問う。
「『催眠術』という言葉は聞いたことぐらいあるだろう。それが回答だ」
「催眠、術……? 何を、馬鹿なことを言って……」
「君がここで調教を受けるのは、今回が初めてじゃない」
「……は?」
勿体ぶることもなく何てことのない口調でありながら、あまりに突拍子もない話。そのギャップも相まって、みつきの思考がフリーズする。まるで異世界の言葉を聞いているかのようだ。
「君は今まで、3回程ここに訪れている。もちろん調教目的でね」
「そ、そんな馬鹿なことを……。私はこんな場所、あなたたちのことだって、知らな……!?」
「僕が君の記憶を消しているからさ。それと同時に、調教の時には自動的に集合場所に来てもらうように仕向けている。今日だって、気付いたら川辺にいたはずだろう?」
「…………」
『ちなみに、この説明も毎回行っている』――エフは最後にそう付け加えた。
催眠術。それはあまりに荒唐無稽な話だ。しかし否定するには心当たりが多すぎた。
『催眠術など本当に存在するのか?』『どのような原理で?』『具体的な手法は?』……みつきの頭にさまざまな疑問が浮かぶが、今の状況においては意味がない。今彼女にとって大切なのは、『これから性奴隷として調教を受ける』ということなのだから。
そして『話を切り替えよう』と言わんばかりに、エフが軽く手を叩いた。しっかりと耳に残る、しかしやかましくはない、まるで楽器の音色ような拍手だ。
「さて、それじゃあ調教に移るけど……。君が自分の意思で、あの椅子に座ってくれればお終いだ。どうかな?」
「……お断りします」
みつきは精一杯の怒気を込めて答える。
事の経緯は、少しだけ腑に落ちた。しかしだからと言って、この2人の好きなようにされる筋合いはない。
おまけにあれに座れだって? ――みつきは部屋の隅に置かれた椅子を見る。彼らの話を鵜呑みにするなら、あれは性拷問用の機械。座った者のことを性的に犯す類のもの。そんなものに自分の意志で座るだなんて、イカれているとしか思えない。
しかしエフの態度はあくまでも冷静。まるで『そうだろうな』と言わんばかりの表情で、平然と言うのだ。
「君はこれから発情する」
静かな、しかし脳にまでよく響く声で紡がれる、おぞましい言葉。
「体が疼いて止まらなくなる。誰かに抱かれたくて仕方なくなる。自分の意思に反して、ね」
「……? いきなり、何を言って……」
みつきは、最初こそ彼が言っている言葉の意味が分かっても、意図が分からなかった。
馬鹿らしい。口で言ったからと言って、本当にそうなる訳でもあるまいし――しかし彼女はそこでハッとした。耳を塞ごうとしたが、既に遅かった。
「ぇ、ぁ……? そんな……、くっ、ぁ……!?」
それはまさに、エフが言った通りだった。
体が疼く。全身が熱いような、寒いような気持ちの悪い感覚に包まれて、膣が濡れ始め、子宮がクルクルと鳴いているかのよう。もしも目の前の人物に抱き締められたら、さぞ心地良いだろうと思ってしまう。
あぁ、そうか、これが催眠術というものか――みつきは自分の愚かさを呪った。先ほど説明されたばかりではないか、と。しかし仕掛けを知ったところで、対処する術はない。
「一応、最後にもう1度聞いておこう。座る気は?」
「そんなこと、する訳……!!」
「そう」
みつきの反発心は意味を為さない。エフのその短い返事が引き金になったかのように、次の瞬間、みつきの意識がストンと変わるのだった。
「ぅぁ……っ」
みつきは短い悲鳴の後、途端に項垂れ、黙り込む。
それを見届けるエフとツナギ。通気口のゴウゴウとした音と、3人の呼吸だけが部屋の中に響き続ける。十数秒ほどの沈黙を破ったのは、みつきの吐息混じりの声だった。
「はぁ……♡」
「……気分はどうかな」
「っ……、ふー……♡」
「うん、大丈夫そうだね」
それは先ほどまでのみつきとはまるで違う何かだった。
全身から力が抜けて、息は荒く、視線はどこか虚ろ。その表情は緩みきっていて、散々憎んでいるはずの2人に物欲しげな笑顔を浮かべている。本来の彼女では絶対に考えられない姿。
そしてみつきが豹変すると、ずっとエフの側に控えていたツナギが前に出た。
「さーて、脱ぎ脱ぎしましょうねー」
「んっ……♡ んー……♡」
ツナギはみつきの背後に膝を付くと、制服のボタンを1つ1つ外してゆく。
衣服を脱がされているというのに、みつきは抵抗しない。それどころか、『早くして、早くして』と言わんばかりに、嬉しそうに背中をツナギに擦り付けてくるのだ。その態度は、飼い主に懐いた子犬に近い。
「かぁいいなー♡ いやぁ、いつ見てもすごいですね、エフさんの催眠術」
「それなりに準備してきているからね。これぐらいの効果は出てくれないと困る」
「またまたー。謙遜しちゃってー♡」
そんな会話をしている間に、みつきの衣服は全て剥ぎ取られる。衣服越しでも分かっていたようにまだ未成熟な体だが、その分だけ肌にも劣化が見られない。秘所の陰毛は薄く、その奥のピンク色も幼い。性奴隷としては有望だ。
そしてツナギも、みつきの衣服を脱がせ終わると、自ら全裸になる。みつきよりも一回り成熟した体、肌も美しく、陰毛もきれいに整えられている。
「これ、もう外してあげますねー」
ツナギは、みつきの手足に巻き付いていたテープを剥がす。拘束を外しても、みつきが暴れることはもうなかった。
小さなマットの上で、裸で密着するみつきとツナギ。
ツナギはみつきを背後から抱き締めたまま、体の前面に手を伸ばして、みつきの小さな乳房を下から支えるように持ち上げた。
「んぅっ♡」
「まずはおっぱいの感度を診ましょうねー」
小さく上がる悲鳴。ツナギはそのまま、みつきの胸の付け根をふにふにと揉み続ける。
「っ、ふぁっ♡ ぁっ、んっ、ぁー♡」
「うんうん、良好良好♡」
胸の付け根に指が食い込む度に、みつきの背筋が跳ねる。そして嬉しそうな表情を浮べながら、全身を弛緩させる。
そしてピンク色の乳首を摘まむと、彼女の反応はさらに敏感なものとなる。
「ひぅぅっ♡♡ っあっ♡ ふぁぁっ♡♡」
「みつきちゃんは、乳首の先をすりすりされるのが弱いんですよねぇ♡」
「それ、すきっ、好きぃぃっ♡♡」
親指と人差し指の腹で、乳首の先端をすりすりと擦る。するとゾクゾクした感覚が止まらないのだろうか、うっとりとした表情を浮かべながらも声が震えてゆく。
「だけどぉ、性奴隷になるなら、ちょーっと強いやつも気持ちよくならなきゃ、ねっ」
「んひぃぅっ!? ぃ゛っ♡♡ ぅぁっ、ぁ゛ぁぁぁぁぁっ♡♡」
優しい愛撫から一転して、ツナギはみつきの乳首をつねるように少し強めにつまむ。するとみつきは一瞬悲鳴を漏らすものの、その後は呻き声にも似た喘ぎ声を上げるようになる。
その反応は『性を知らない』とはとても言いがたいものだ。
ツナギはみつきの乳首を弄びながら、エフに話しかけた。
「というか、こんなに素直でエッチな子になってるんですから、そのまま納品しちゃえば良いんじゃないですかぁ?」
「催眠が解けたら元の状態に戻るよ」
「そうなんですか?」
「催眠が解ける度に、顧客のところに赴いてかけ直す……これで商売になるかい?」
「それは……なりませんねー」
「所詮は期限付きの効果。何かと制約も多いし、周囲から言われている程便利なものじゃないよ。催眠術っていうのは」
エフは簡素なパイプ椅子に座って、2人の様子を見届けていた。彼自身は、みつきとツナギの淫らな行いに加わるつもりはなさそうだ。
「だけど催眠が解けて精神が戻っても、肉体のほうは戻らない。だからこうして、君に性感開発を任せている訳だ」
「えっへへー、お任せくださぁい♡ それはそうと、エフさんもどうです? こっちに混ざりませんかぁ♡」
「遠慮しておく」
「はー。ホント生真面目と言うか、ウブと言うか。……じゃあ~♡ 調教が終わったら私と遊びま――」
「仕事して、ツナギ」
「ちぇー」
それは彼らの奴隷調教の全容だ。
エフの催眠術で対象者を連れ出しさまざまなサポートを行いながら、ツナギが実際の調教を行ってゆく。
こうした催眠術の効果は一時的なものであり、奴隷を調教する上で必要となる工程は、結局のところ省けない。超常的な手段を用いている割には慎ましやかな効果かもしれない。
しかし暗示をかけてしまえば、いくらでも対象を連れ出して調教を施すことができる。それは治安の良すぎる現代の日本において、実に都合が良い。
故に、たとえ調教師としての腕が平凡でも、たとえ設備が貧相でも、たとえ組織の人数がたった2人でも、エフとツナギの仕事は絶えなかった。
「ふっ、んぅっ♡ ぉぉ、ぉ゛ぉぅ~っ♡♡」
乳房を揉まれ、乳首を摘ままれ、みつきの体が温まってゆく。
そもそも催眠術をかけた時から発情は止まらなかったが。乳首は硬く勃起して、秘所もじっとりと濡れて、体本来の反応が見て取れる。
「そろそろ、みつきさんと会話しておこうか」
エフがパイプ椅子に座ったままそう言うと、みつきがまばたきした瞬間、彼女の意識はぐるりと反転した。
「ぁ、ぇ……?」
一瞬にしてスンとした真顔に戻るみつき。『発情』の催眠が解かれたのだ。
全裸でツナギに体を預けたまま呆然とする姿は、端から見ればシュールな絵面だが、本人としては至って真面目だ。その表情は『信じられない』という驚愕から、徐々に絶望へと染まっていった。
「ぃ、嫌……! う、嘘、わ、私、そんなこと……!?」
みつきの人格が変わる程の催眠術。しかしその癖、催眠術をかけられている間の記憶はしっかり残るようで。
『性奴隷にする』なんて言われた相手に体を預け、弄ばれ、悦ぶ――それはみつきにとって、体と同時に心すらも犯されているような気がした。自尊心にヒビが入り、ぽろぽろと剥がれ落ちるような心地がする。催眠術には、こういう効果もあった。
「まだ元気みたいだね。続けようか」
目尻から涙を垂らすみつきに注がれるのは、エフの残酷な言葉。
「嫌、お願い、待――」
みつきの制止の言葉は、最後まで続かない。それからまた、彼女の態度は急変するのだ。
「……♡」
スイッチを切り替えるように、またガクリと頭を傾かせて虚ろな表情を浮かべるみつき。一瞬前まで抱いていた嫌悪感だとか恐怖だとかは、すっかり蒸発していた。
そんな彼女を、ツナギは背後から抱き締め直す。
「それじゃあ、次はこっち行きましょうかぁ♡」
そう言ってツナギが手を伸ばしたのは、みつきの幼い秘所だった。
「ふぅぅんっ!? ひゃっ、ぁっ♡ ぅぅん~っ♡♡」
ツナギの指先が割れ目の入り口を撫でた瞬間、みつきは鼻歌のような喘ぎ声を上げながら腰を前に突き出した。そのまま入り口を撫で続けると、歓喜に満ちた声が溢れて止まらない。
「それにしても面倒ですよねー、エフさん。処女のまま納品して欲しいなんて」
「そういう顧客は多い。割り切るしかないね」
今回のオーダーの都合上、割れ目の中に何かを挿入するのは禁止されていた。中を開発できないのは、性奴隷としてやや不安な要素もある。
故に、ツナギは他の部位で補うべく開発を進めていた。割れ目の入り口を撫でるだけでもなかなかの反応。そしてクリトリスに触れると反応はさらに激しいものになる。
「んぁぅっ!!? んぁっ、あっぁっぁぁっ♡♡♡」
「うーん、やっぱりクリちゃんは良い出来♡ ほらほら、どんなのが気持ちいいかなぁ?」
「ぜ、ぜんぶ、全部気持ちいぃぃぃっ♡♡♡」
女性の性的快感の象徴とも言える部位。小豆程度の小さなクリトリスだが、みつきはたった数回の調教で、どんな刺激でも快感を覚えるように開発されていた。
包皮越しに優しく揉み込む。包皮を剥いて中身を直接磨く、親指と人差し指で挟んで激しくしごく。どれもこれも、腰が抜けてしまう程の気持ちよさだ。
「だめっ、イッちゃっ♡♡♡ いっちゃぁぁぁぁっ♡♡♡ ――っひゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡」
みつきはクリトリスを弄くられてあっと言う間に絶頂した。
太ももが筋張る程に、脚をM字に思いっきり開いて、一方で両腕をピンと下に伸ばす。その体の強張りや震え具合を見れば、快感の度合いは一目瞭然だ。
ややあってから、割れ目から愛液の大きな雫がドロリと零れてきた。
「ふぁー……っ♡ ひっ、ぁぁ……♡」
しばらく恍惚の声を上げるみつき。しかし絶頂の余韻から覚める前に、ツナギの手が再び動き出す。
「んぁぅ゛ぅっ!!? ぅあっ♡♡♡ だめっ、激しっ、きついぃぃぃぃっ♡♡♡」
「だめですよぉ、みつきちゃん。1回イッたぐらいで満足してたら、立派な性奴隷になれませんよぉ♡」
「んぐぅっ♡♡ だっ、てへぇぇぇっ♡♡ イッたあとっ、くりとりしゅっ、きつい゛ぃぃぃぃぃぃっ♡♡♡」
「ふふふっ、本当にみつきちゃんのクリちゃんは敏感ですねー♡」
これは一般的なカップルの愛の営みではなく、調教だ。奴隷に配慮は要らない。散々敏感になった体がさらに敏感になるまで、愛撫と絶頂は止まることがないのだ。
「でも、ここだけ敏感っていうのもちょっと考えものですよねー」
「何か考えでも? ツナギ」
「んふぃっ♡♡ ひぃぃっ!!? とめっ、止めてぇぇぇぇっ♡♡♡」
ツナギはみつきのクリトリスを捏ねながら物思いに耽る。
彼女のクリトリスは確かに敏感だが、調教師をやっていればこれぐらいの感度の女性はさほど珍しいものではない。そして今回は依頼主の意向によって膣内を開発することができない。ただクリトリスと乳首を開発するだけでは、性奴隷として『パンチが足りない』と感じたのだ。
みつきは元より、他ではなかなか見られない絶世の美少女。それだけで性奴隷としての価値は十分にあるのだが、それに甘えては調教師として如何なものだろうか。
膣内が無理なら、いっそのことそれ以外の全身が性感帯になるような調教を……。
「――そうだ」
ツナギはそこまで考えて手を止めた。
「エフさぁん。ちょっとリクエストがあるんですけど♡」
「……道楽のためならお断りだよ」
「違いますよぉ! ちゃんと調教のためですー!」
ツナギは、こちらに近付いてきたエフに耳打ちする。
「……そんな感じの催眠をですねー」
「そんなことを? ……まぁ、良いよ」
エフは少し納得していない表情のまま、みつきにそっと囁いて、新たな催眠をかけた。
「はい、大丈夫だよ」
「ありがとうございまーす♡」
「ふー……♡ は、ふーー……♡」
絶頂直後の激しいクリ責めが一時的にでも止まって、少しばかりほっとした表情を浮べるみつき。一見すれば、その様子は何も変わっていない。
しかしエフの新たな催眠術は、間違いなく効いていた。
「うっふふふふー♡ みつきちゃんがどんな反応するか楽しみだなぁ♡」
「は、はひぃ……?」
ツナギは、ぐったりするみつきの体を後ろから支えると、無防備だった腋の下を思いっきりくすぐり回し始めたのだ。
「こちょこちょこちょこちょーーっ♡」
「ッ~~~~~~~~~~!!!?」
飛び上がるみつき。ツナギの動きは止まらない。10本の指をわしゃわしゃと蠢かせて、みつきの腋の下をくすぐり続ける。
それは普通であれば、笑い転げて当然の責め苦だっただろう。しかし。
「ふぁぅぉぉぉぉっ♡♡♡ ひゃぁぅぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」
その声は笑い声とはかけ離れたものだった。驚きが多分に含まれてはいるが、明らかな喘ぎ声。乳首が尖り、秘所からはどろり、どろりと愛液が滲み出てゆく。
みつきがくすぐり責めで性的快感を得ていることは明らかだった。
「うわぁ、すっごぉい……♡ 全身性感帯ってこういうことを言うんですねぇ……♡」
エフが行った催眠術は『感覚の操作』だった。くすぐったさを性的快感と認識するように。その結果、彼女の全身が性感帯となる。
「せっかくですから、全身試してみましょうねー♡ まずは腋の下を念入りにぃ♡」
「んひっひひひぃぃぃぃっ♡♡ ひゃぅんっ♡♡ ひゃぅぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」
「次はお腹ー♡」
「んぎぃぃぃっ♡♡♡ 揉まれる、の゛っ♡♡♡ すごっ、すごひいぃぃぃぃっ♡♡♡」
「もしかしてぇ♡ 足の裏でも感じちゃう~?」
「ぉ゛ぉおぉぉぉぉぉっ♡♡♡ あしっ、カリカリしひっひひっ♡♡ ぃ゛いぃぃぃぃぃぃ♡♡♡」
腋の下、脇腹、足の裏。体の至るところをくすぐられるが、みつきの口から上がるのは全て喘ぎ声。
みつきは自分の体が変わってしまったことに驚く一方で、歓喜に満たされた。今までのように胸と秘所だけでしか感じられなかったのとは違う。それこそ、触れられる部位全てが性感帯なのだ。
「んひひひぃぃぃぃっ♡♡♡ ひっ、ひーーっ♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡」
やがてみつきは、秘所に触れられることなく、全身をくすぐられるだけで絶頂を迎える。
全身を使った絶頂は、クリトリス一点でイクよりも衝撃が強い。全身の筋肉が激しく収縮し、愛液がドロドロと溢れ、潮がブシリと音を立てて噴き出す。全身から襲ってくる全てのくすぐったさが快感となって、子宮に集まってゆくのだ。
「どうです、エフさん! すごいでしょう♡」
「……うーん。僕としては、やっぱり効果には疑問だね」
その激しい絶頂の様子を見て、エフはあくまでも吝かだった。
「催眠が解ければ感度は戻るよ? 調教した分もね」
感度を操作する類の催眠術はあくまでも、一時的な効果しか得られない。今でこそ全身をくすぐられて感じてはいるが、催眠が解ければ元通り。それどころか催眠中に与えた刺激ですらリセットされてしまう。故に意味がない――それがエフの考えだったのだが。
「エフさん、ちょっと催眠解いてみてください。あ、ついでに意識も元通りにして欲しいなぁ」
ツナギに促されて、エフはみつきの催眠を解く。
「な、何……!? 何なの……!! 私っ、どうしてっ、今、くすぐっ、どうしてぇぇ……!?」
意識が戻るとみつきはヒーヒー言いながら驚愕の表情を浮かべる。全身をくすぐられただけでイッてしまったことが信じられないらしい。
しかしツナギは間髪入れずに、みつきの腋の下をくすぐり始めた。
「ふゃはぁぁっはっはっははははははははははははははっ!!!? ちょほぉっ!!? やめっ、くすぐったいっ、くすぐったいからぁぁぁっはっははははははははは!!!!」
催眠が解けた今、くすぐられて感じるのは性的快感ではなく、紛れもなくくすぐったさ。口から出たのは当然のごとく笑い声。
しかし。
「ほぉらみつきちゃん♡ 指くすぐったそうでしょー? わきわきわきー♡」
「ぅあぁぁぁ……♡♡ ぁぁ……♡ やめっ、来ないで……♡」
「あれあれー? みつきちゃん、顔、すっごいニヤけてるよぉ? 今は催眠が解けてるはずなんだけどなぁー?」
「っ~~~~!!? そ、そんなこと――」
「隙ありっ♡ こちょこちょこちょー♡」
「ぅあぁぁぁあああっ!!!? ぁ♡♡♡ ひ――!!? ぁーーっはっはははははははははははははははは!!!? くしゅぐったひっ、やっぱりくしゅぐったひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
催眠が解けて感度が元通りになったにも関わらず、みつきの乳首は尖り、秘所からは愛液が止めどなく零れ続ける。それどころか、ツナギがみつきの目の前で指をワキワキと動かすと、彼女はすごく期待するような表情を浮かべるのだ。
それは、みつきがくすぐり責めで確かに興奮していることの証左だった。
「エフさん、さっき言ったじゃないですか、『精神が戻っても、肉体のほうは戻らない』って。それじゃあ逆もあるってことです。『肉体が戻っても、精神のほうは戻らない』って♡」
「ふゃぁぁっはっはははははははははははっ!!! やだっ、くすぐったいのやだっ!!? せめ、てっ!!? 気持ちいいくすぐり方してよぉぉぉぉぉぉぁぁあっはっははははひぃぃぃぃぃ!!!?」
「くすぐったいだけのはずのに、内心は期待しちゃってるんですよぉ♡ 全身をこちょこちょされて、もしかしたらイケるかもなんて。このまま開発を続けたら、腋の下や足の裏でイケるようになるかもしれませんよぉ♡」
ツナギの言葉は正しかった。
くすぐり責めで絶頂したという事実は、たとえ記憶を消されたとしても、心の奥深くに残り続ける。これから先、みつきは腋の下や脇腹、足の裏を撫でられるだけで、不思議と膣を湿らせることになるだろう。
エフは珍しくも、少し目を見開いて『へぇ』と声を漏らした。
「それじゃあ、僕も微力ながら協力しようかな。……みつきさん、動かないで」
「ぁ、ぇ――!!? ぁ゛、体、がぁぁぁ……!!?」
エフがそう言うと、みつきの全身がギシリと硬直する。まるで骨や関節に頑強な芯を埋め込まれたかのよう。筋肉にどれだけ力を込めても、関節がビクともしないのだ。
「そうだな。両手は真上に、両脚もピンと伸ばして。ちょうど全身が『I』の字になるようにして」
「ぅぁ゛、あ……!!? 嫌、いやぁ……!!?」
「あっ、エフさん助かりまーす♪」
エフの手にかかれば、拘束具すら必要ない。
無防備になったみつきの腋の下に、ツナギの10本の指が殺到した。
「うはー♡ すっごいくすぐりやすーい♡」
「ふや゛ぁぁぁあっはっははははははははははははは!!! 腕っ、腕下ろせないぃぃぃぃぃゃっはっはははははははははははははははははははは!!!?」
「さぁみつきちゃん、頑張って全身でイケるようにしましょうねー♡」
「いや゛ぁぁぁっはっはははははははははは!!! だったらっ!!? だったら気持ちよくしてよぉぉぉっひぃぃーーっはっははははははははははははははは!!!?」
――――
――
それから長い時間が経つ。
全身をくすぐられたり、胸を秘所を弄くられたり。みつきはその間に数え切れない程の絶頂を迎えた。
「ふぐっ、ぅぅぅ……!? ひっ、ぁぐっ、ぅぁぁ……!」
今、みつきには催眠がかけられていない。
しかしもはや、ここから走って逃げ出そうと考えることも、2人に暴言を浴びせることもできない。散々辱められて、イカされて、心身共にボロボロになっていた。
彼女は絶頂を迎える度に、自分の体が作り替えられているのを感じた。性奴隷になるに相応しい、打てば響くような敏感な体に。
「改めて聞こうか」
エフが告げる。みつきも、最後まで言われずとも理解していた。その言葉の意味は、『椅子に座る気はあるか』だ。
みつきはもう、この男に服従してでも楽になりたいと思った。しかし彼らの言葉を信じるなら、あの椅子に座っても、楽にはなれない。
『座った者に性拷問を施す機械』『1度座ったら3時間はイキっぱなしの、すっごい気持ちいいマッサージチェア』――2人の言葉が、一言一句脳にこびり付いている。
「嫌だ……、やだ、よぉ……!」
あの椅子に座るのは、むしろ地獄の始まりだ。最後の一歩が踏み出せないのは当然のことだった。
「……駄目みたいだね」
俯くみつきに、エフの声が落ちる。
静かなその声は、もはや恐怖だった。彼に逆らったら、一体どんな仕打ちが待っているか――みつきは俯いたまま、体を震えさせる。
しかし彼の次の言葉は、みつきにとって少し意外なものだった。
「諦めるか」
少し落胆したような声。ここに来て、初めてエフという男から感情が読み取れる。『諦める』――その言葉の意味を想像して、みつきの顔が思わず上がった。
しかし彼女の想像と、真の含意は、あまりにニュアンスがかけ離れていた。次の瞬間、彼が紡いだのは絶望の言葉だった。
「みつきさん、座りな」
少し強めの口調。エフがそう言った瞬間、みつきがすくっと立ち上がる。
その動きは、明らかに自分の意思によるものではなかった。みつきは自分の視線が突然高くなって、最初何が起きたか理解できなかったぐらいだ。
「向こうに歩いて、あの椅子に座るんだ」
「ぁ、ぇ――?」
(あれ、え……? あ、声、出な……?)
みつきがゆっくり、しかし確実に、一歩、また一歩と勝手に動き出す。全身は疲労困憊で、膝はガクガクと震えているのに、その歩みは止まることはない。
みつきは自分の身に何が起きているか理解して、背筋が凍る思いをした。――自分の意思なんて関係ない。自分は今、あの椅子に無理やり座ろうとしている。
思わず悲鳴を出したくなる。
「ぁ――、ぁ――」
しかし声が出ない。表情すらうつろだ。エフの催眠は、みつきの全ての自由を封じていた。
「いいんですか、エフさん」
背後でツナギとエフが会話する
「今回の調教って、『自分で性拷問を望んでしまうぐらい、快楽でどっぷり堕とし込む』っていうのがゴールですよね? あの椅子に自分の意思で座ってもらうのは、それが達成されているかの確認な訳で。それなのに催眠術で無理やり座らせるのは……」
「まぁ、良くはないよ」
それは今日の調教の目的だった。
『快楽堕ち』。卑猥な玩具が転がっていれば脊髄反射で自分の秘所に当てたくなり、肉棒を見れば涎を垂らしながら跨がりたくなる――そんな快楽にどっぷりハマってしまったみつきという少女こそ、クライアントの望むもののはずだった。
しかしみつきという少女は、案外強情だった。続く調教に疲弊することはあっても、快楽に堕ちるまでには至らない。エフとツナギの調教は、思いの外上手く行っていなかったのだ。
「あの椅子は、つまるところ快楽を教え込むための道具だろう?」
「ええ、そうですね」
「結局、出来上がりが同じなら良いんじゃないかな」
「……エフさん、ずるいですねー」
自分にどのような思惑を抱かれているか垣間見えて、本来のみつきであれば嫌悪感のあまり泣き叫びたいところ。しかし今、そんなことはどうでも良かった。
それよりも、差し迫る脅威のほうがずっと重要だ。
「っ――、ぅ――」
(嫌、嘘、やだ、止めて、やだ、やだ――)
体が歩みを止めない。ゆっくり、しかし確実に。そして普通ならほんの数秒で辿り着くような距離を、数十秒かけてとうとう辿り着く。
椅子の前に立ち、背を向けて、ゆっくりと腰を下ろしてゆく。
(従う。従うから。胸も触ってもいいです。アソコも触っていいです。全身くすぐってもいいです。あなたたちとエッチもします。だから。これだけは――)
座面にお尻が乗り、肘掛に両腕がそっと乗せられたとき――ガシャン! 椅子から飛び出た金属の枷が、彼女の手首と足首、腰を固定した。
(あ――。私、もう、駄目なんだ――)
次の瞬間、まさに性拷問と呼ばれるに相応しい責め苦が始まったのだ。
「ぉぐふ――!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
最初の反応は、空気が圧縮されて弾けるような、間抜けな悲鳴。椅子が動き出したその瞬間から、みつきの連続絶頂は始まった。
彼女の股間を責め立てていたのは、自転車の『車輪』のようなものだった。その車輪の表面はシリコンのように柔らかく、しかし不規則な凹凸があって、おまけにローションのような液体に濡れている。
そんな車輪が椅子の座面から突然飛び出し、彼女の股間に食い込み回転することで、割れ目とクリトリスをまとめて摩擦する。ツナギの柔らかくて繊細な指なんて比較にならない程、粗野で、激しい快感だ。
「づひ――!!? ッ~~~~~~~~~~~、ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!! ヒュ――!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
みつきのその声はもはや、『発声』という表現すら怪しい。快楽に従って収縮する肺が不規則な空気の流れを作りだし、時折気まぐれのように声帯を震わせているだけ。
無表情ではあるが、その顔は真っ赤で、僅かに突き出された唇とハートの浮かんだ瞳からは隠しきれない程の快楽が見て取れる。何より体は殊更に正直だ。全身がガクガクと痙攣し、愛液と潮がビシャビシャと噴き出して車輪に弾かれてゆく。
(やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!? 気持ちいい、キモチイイ、きもちいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?)
内心では、声帯が千切れる程に泣き叫びたい気分だった。
「エフさーん♡ あのー、ですね?」
「……はぁ。『調教』の範疇なら、遊んで良いよ」
「やったー♡ さあみつきちゃーん、気持ちいいの追加ですよぉ♡」
ツナギの指が、みつきに襲いかかる。胸を揉み、乳首をつまみ、腋の下と脇腹をくすぐる。
「ほひゅ――ぅっ!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!! きひ――、ぎ――!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
(やだぁぁぁっ、乳首っ、きゅってしないでぇぇぇぇ!!! 腋もっ、お腹もっ、くすぐらなひ――!!? 何これっ、気持ちよくて、くすぐったくてぇぇぇぇぇぇっ!!?)
ぽかんと開かれた口から湯気のような熱い呼吸が漏れ、虚空をぼんやり見つめる目から涙がぼろぼろと零れる。これほど表情豊かな無表情は、他にないだろう。
蝋燭の火は、燃え尽きる寸前に一際強くなると言う。みつきの理性は、まさに蝋燭の火のようだった。
(どうしてどうしてどうしてぇぇぇっ!!? どうして私がこんな目にぃぃぃ!!? 性奴隷って!? 誰が私を!? 逃げ、られない!!? どうして、催眠術!? 何、何、どうして、なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?)
今、拷問のような快楽責めを受けていること、自分を性奴隷にしたいという彼らの顧客について、超常的な能力である催眠術……。今まで抱えてきた疑問が燃料となって、みつきの思考を加速させる。
しかし意味はなかった。思考自体はちぐはぐ、そもそも今更何か分かったところで、彼女にはもうどうしようもない。
そんななけなしの理性も、押し寄せる快楽によってフッと消え去るのだ。
(――あぁ、もう、どうでもいいや)
みつきは抵抗することを放棄して、快楽に身を委ねることにした。快楽を忌避することすら諦めて、ただ快楽を『快楽』として享受するだけ。
すると、身も心も驚くほど楽になったような気がした。
「っ~~~~~~~~~~♡♡♡♡ ひっ♡♡♡ ぉ゛――♡♡♡ ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡ っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡♡♡♡♡」
(っ――♡ ――♡ っ――――♡♡)
「みつきちゃん、段々イイ貌になってきましたねー♡」
「そうだね。こんな風になるなら、最初から無理やり座らせれば良かったかな」
調教は終わらない。椅子は動き続け、『車輪』がみつきの秘所を抉り続ける。それでも彼女は大丈夫だと思った。だって、全然辛くないから。
今の彼女なら、自分の意思でこの椅子に座ることも可能だろう。まさにエフが言う通り、『出来上がりが同じ』状態だ。
(あぁ、私、壊れていってる……♡)
みつきはほんの僅かに残る理性の片隅で、自分の心と体が根本から作り替えられているのを感じるのだった。
――――
――
「ひ――♡ きひっ、ひ――……♡」
「今日はこんな所だね」
「はーい、お疲れ様でしたー♪」
椅子による性拷問は、みつきが座ってからきっかり3時間行われた。
それが終わる頃には、みつきの意識は完全にトんでいた。体液がそこら中に飛び散り、通気口の排気が間に合わないぐらい、部屋に濃厚な雌の匂いを充満させている。
「家に帰す準備をしよう。僕は車の手配、ツナギは彼女の体を拭いて、服を着せてあげて」
「了解でっす。家族が心配してないと良いですねー」
「彼女のスマートフォンで、『友達の家に遊びに行くから、帰りは遅くなる』って送っておいたから問題ないよ。理解があるご家族で助かる」
「わぁお、用意周到」
その後、みつきは何食わぬ顔で帰宅することになる。
彼女自身は何も覚えていない。自分のスマートフォンを見ると、親に『友達の家に遊びに行く』と送ってあったから、『じゃあそうだったんだろう』と結論付ける。不思議なことに、どれだけ異様でも彼女はそのことについて深く考えられなかった。
そして未熟で綺麗な体には、人には絶対に言えない疼きが残り続けている。
独り遊びに興じると自分の体が驚く程敏感であることに気付き、自分の指で秘所を弄くることで悦びを得るも、どこか物足りなさを覚える。そして悶々とした気持ちを抱く日々を過ごした後、彼女はまた無意識の内に河原へと辿り着く。
「こんにちは、みつきさん。今回は、ええと、5回目かな」
「おっつかれさまでーっす♪」
「え……? ぁ……」
突然目の前に現れた男女のことを、みつきは知らない。
知らないはずなのに、どうしてだろう、彼らを見るだけでみつきの秘所はしっとりと湿り気を帯び始めるのだ。
一般に、性奴隷の調教というのは長い期間をかけて行われる。
短くて数週間、長くて1年以上。感度、性技、精神――性奴隷に身に付けさせるべきことは多い。そしてそれが、催眠術によって記憶をリセットしながらでは尚更のこと。
彼女の調教はまだまだ続くのだった。
コメント
素敵
レズ 催眠 洗脳 調教のいろいろなパターンみたいです