⏱このページは18分ぐらいで読めます
◆あらすじ
ある名家に奉公に出た少女が、女主の戯れに付き合わされます。命令に逆らえない少女が跨がることを強制されたのは、電マの取り付けられた低背の三角木馬。腰を下ろす度に、強烈な振動が少女の股間を刺激してイカせてゆきます。それで少女がとうとう動けなくなってしまうと、女主は少女の体を抱きかかえて、体を無理やり押し下げてきて……。
私が聞いた話によると、この屋敷に住む女中たちは皆『訳あり』らしい。
曰く、弱みを握られた子。曰く、借金のかたに売られた子。曰く、身寄りがなく拾われた子。……曰く、例えば私のように、強大な家系に媚びへつらうための奉公に出た子。
だけど私がこの屋敷に入ってすぐ、どうやらそれだけではないことに気付く。
女中たちの精気のなさ、私が来たときに向けられた哀れみの視線が異常だったから。まるで『あぁ貴女も』と言われているような気がした。それに、ここにいる女中たちは皆が皆、年が均一的に若く、少しばかり美しすぎる。
そもそも人数が不釣り合いだ。家の者がたった1人しかいないのに、女中は十数人。そこそこの屋敷に、こんなに多くの女中は必要ないだろう。
これはそう。偶発的な集合体ではなく、そうなるように集められたもの。その目的は――。
そう思った矢先だ。私がここの主に呼び出されたのは。
――――
――
仄かな照明、赤い絨毯、装飾が散りばめられた家具の数々。
私――一条 久遠は夜に彼女の寝室へと赴く。
黒のショートヘア。ややつり目、顔立ちは年の割に少し大人びたほう、しかし体付きは年相応。衣服はゴシック調のメイド服。
私の家はそれなりの家系だった。名家の政争に巻き込まれて、私のような一人娘がこうして奉公に出て、権力者に媚びへつらわなければならない程度には。端的に言って、私は同年代よりは少しマシな人間だ。成績は良く、知性も教養もあり、大人の機敏を多少は理解している。
そんな私でも、或いはそんな私だからこそか、目の前の女性が酷く恐ろしい。
「失礼いたします。ご主人様」
「くおんちゃん、待ってたよぉ♪」
天蓋付きの大きなベッドの縁に腰掛けるのは、この屋敷の女主――白鳥 彩。彼女は私よりも一回り年上の女性だった。
柔らかくウェーブを描いたブラウンの髪、やや垂れ目気味、少し厚めの唇。背は高く、バストやヒップのサイズも相応。本当に年の差は一回りだけなのかと疑ってしまうぐらい、恵まれた体型の女性。それに反して顔付きや口調は愛嬌を感じさせる。
もっとも、そんなうわべの表情に騙される者などいない。彼女には黒い噂が絶えないのだから。
この若さにして家の主。家族はなぜいないのか――不幸に遭ったのか、それとも彼女が不幸に遭わせたのか――その理由・過程はどれだけ調べても分からないままだが、1つだけ確かなのは、彼女が紛れもなく傑物だということだ。
「このような夜分に私のような新参者をお呼びになるなど……。どのような御用向きで?」
私は部屋の入り口で直立したまま伺う。それからすぐ後に、自分の笑顔と声音が硬いことを自覚して、警戒心が言動に出てしまったことを反省する。
しかし白鳥はそんなことに気付く様子もなく……いや違うな。私がどんな感情を抱いていようなど歯牙にもかけず、明るく笑うのだ。
「面白い遊びを思い付いたから。くおんちゃんに遊んでもらおうと思ってねー」
まるで花が咲くかのような表情。もしもこんな表情で言い寄られたら、男はどれだけ頬を緩ませて、鼻の下を伸ばすことだろう。
しかし私はその言葉を聞いて、頬を引き攣らせることしかできなかった。この女が発する『遊び』という言葉が、碌なものであるはずがなかった。
だって、その存在を無視できなかったから。彼女の隣に、何か、ある――。
「そ。これ♪」
私の視線に気付いて、白鳥が両腕を広げて示すもの。それは三角木馬だった。私の貧相な性知識でも理解できる、SMプレイなどで使うとされる木造りの三角木馬。こんなものが名家の寝室にあれば、嫌でも目に付く。
しかしその木馬にはおかしな点が2つほどあった。1つは、大人が跨がるには些か低すぎるということ。こういうのは普通、背が高いものではなかっただろうか。これは、てっぺんが膝よりもほんの少し高い程度か。
そしてもう1つが、木馬の背にこぶが2つあるということだ。灰色の、こぶしぐらいの大きさのこぶ。しかもそこから何か音が聞こえる。これは振動音。まさか、これは。
「うん。木馬に電マを付けちゃった♪」
そう。それは紛れもなく電動マッサージ器だった。
絶句するとは、まさにこのことなのだろう。名家の主がこんな日曜大工に精を出していると知ったら、何とも言えない気持ちになって当然だ。思考らしい思考ができず、ただ呆れとも嘲笑とも似た感情が私の中を渦巻く。どうして私はこんな女に媚びを売らなければならないのだろう。
「そ、それで。私を呼んだのは……」
私は首を横に振って、努めて冷静に問う。
その瞬間だった。部屋の空気が変わったのは。
「跨がって」
「っ――!?」
声音は変わらず、表情は笑顔のまま。しかし得体の知れない圧が、私の心臓を鷲づかみにした。私の頬を冷や汗が流れる。目の前の女主の底知れなさに怯んで、やや後になってからようやく、私は何を言われたのか気付いて彼女を睨み付けた。
「こんなものに、跨がれ、と……?」
2つの電動マッサージ器が振動音を鳴らし続ける三角木馬。これに、跨がれと。
いくら主と女中の関係だとしても、いくら私が目の前の女に媚びへつらうために来たのだとしても、その命令は正気の沙汰ではない。憎悪すら湧く。
しかし私が反抗的な表情を浮かべると、白鳥が笑いながら短く問うのだ。
「――逆らう?」
「っ……」
たった一言。そのたった一言で、私は全身を雁字搦めにされたような気分になった。
再三。私は彼女に奉公するために、この屋敷に来た。私が彼女の機嫌を損なえば、家はどうなるか。お家断絶ならまだ良いほう。彼女の力を持ってすれば、翌日には家族全員が行方不明になっても不思議ではない。それだけ彼女はたった1人にも関わらず強大で、真っ黒だった。
きっと私だけでなく、この屋敷に住む女中たちは皆が皆そうなのだろう。曰く、弱みを握られた子。曰く、借金のかたに売られた子。曰く、身寄りがなく拾われた子。曰く、強大な家系に媚びへつらうための奉公に出た子。『訳あり』の私たちは、目の前の女性に逆らえないのだ。
「跨がれば、良いんですね……?」
「そ♪ あ、スカートを捲ってね。くおんちゃんのパンツ見たいなぁ♪」
「……かしこまりました」
私はスカートの裾を捲って、真っ白な下着を彼女に晒す。もう憎悪の表情を隠すことすらできなかったが、それでも目の前の怪物は楽しそうだ。
三角木馬を跨ぐように直立する。木馬はあまりに背が低く、私の体に触れることはない。……当然、これで彼女が満足する訳はないだろう。『跨がる』というのは、そういうことではない。
私は意を決して、両手で裾を握ったまま、ゆっくりと腰を下ろしていった。
「――ふぁぅぅっ!!?」
電動マッサージ器の振動が私の股間を撫でた瞬間、間抜けな悲鳴と共に腰が浮き上がった。
「どうしたのかなぁ?」
「っ……!」
白鳥の柔らかな視線が、私に突き刺さる。『どうしたのかな』――これは即ち『続けろ』だ。私は歯を食い縛って、再び腰を下ろしてゆく。
「っあっ、ぐ……!? ぅっ、ぁぁぁ……!」
振動が私の股間を抉ってゆく。
私だって年頃の女性だ。処女であろうとも、独りで事に及ぶことはあるし、『性感』というものぐらい十分理解しているつもりでいた。それでもこの振動は、私の知るそれとは大きくかけ離れていた。
振動の激しさ? きっとそれもあるが、質も問題なのだろう。強力なトルクによって齎される、重く、肉の抵抗をことごとく無視する問答無用の刺激。女性器の入り口にそっと当てているだけなのに、膣内はおろか子宮や陰核にまで響いてくる。薄い生地の下着なんてなんの守りにもなりはしない。
それに電動マッサージ器が2つというのも、底意地が悪い。私の股間を前後から挟み込んで、体がずり落ちることを許さない。そして1つは女性器に当たり、もう1つはお尻に当たる。お尻の穴の中を振動がビリビリと通って、変なむず痒さを覚える。
電動マッサージ器のおかげで木馬の角が股間に当たることはない。そのおかげで痛みはないが……これはこれで大した責め苦だ。
「ほら、腰を上げちゃだめだよぉ♪」
「くっ……、ぁぐっ!? ぅぁっ、ひっ、ぁあぁぁぁぁぁ……!?」
あまりの性的快感に私は腰を浮かしてしまうが、その度に白鳥が急かし、その度に私は再び腰を下ろしてゆく。
こんなにも自分で膝を開いてがに股になって、腰を下ろして振動に股間を押し当てなければならないなんて、屈辱の極みだ。どうしてこの木馬はこんなにも背が低いのだろう。いっそのこと、私が逃げられないような状況で嫌が応でも抉ってくれたほうが、まだ気が楽なのに。
そこで白鳥の楽しそうな表情が視界に入り、私はようやく理解した。そうか、これは敢えてそうしているのか。彼女は私が快楽に悶える姿ではなくて、屈辱に顔を歪める姿が見たかったのだ。あまりに腸が煮えくりかえって、胃の中のものを全て吐き出したくなるような気分だ。
それでも私は逆らえない。
腰を下ろして、木馬に股間を押し当て、振動に耐えきれなくなったら腰を上げて、目の前の女に咎められ、また腰を下ろして……。
「ふっ、ぅぁ、ぅぅぅ……! ひゃっ、ぁっ、ぁぁぁ……!?」
こんなにも憎悪の中にあって、どうして性的快感というのは高まってしまうのか不思議でならない。段々と振動が全身に馴染んでゆき、頭がぼうっとしてくる。いつの間にか、私の声が低い呻き声から、甲高い喘ぎ声に変わっている。
だけどそれは嫌だった。それを晒すのは、今まで以上の屈辱だ。
「ご、ご主人様、もうっ、だめっ、です……!?」
「いいからいいから、続けて♪」
「本当に、だめ……!? ダメ、なんです……!? ぁっ、ぁっあっ、ああああっ!!?」
私がどれだけ懇願しても、白鳥からの赦しは得られない。私はその視線と言葉に縛られ続ける。そして訪れて欲しくなかった時が訪れるのだ。
「っっっふぅっ!!? っ~~~~~~~~~~~~~~~~!!! ぅあぐっ!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?」
私は三角木馬に跨がり、振動で股間を抉られながら絶頂した。
白い下着に灰色のシミが広がってゆく。膝がガクガク震えて、そのせいで股間と電動マッサージ器が不規則にぶつかる。振動音に紛れて、グジュリという愛液の音が聞こえた気がした。
「っ、ぅぐ……!? ぅぅ……!」
何度か膝を痙攣させた後、ようやく絶頂の波が収まってゆく。私は腰を上げて股間を木馬から遠ざけながら、両手に掴んでいたスカートの裾で顔を覆い隠した。
こんな状況で、こんな玩具に、こんな相手に見られながら絶頂してしまうなんて。今まで胸の中を埋め尽くしていた憎悪はすっかりなくなって、恥ずかしさと情けなさが膨らんでゆく。今まで気丈に振る舞っていたのに、涙が零れそうだった。
――だけど私の心が折れかけたとき、白鳥は笑うのだ。
「止めて良いなんて言ったっけ?」
にこやかな表情、柔らかな声音、残酷な言葉。
熱くなったはずの体が、ゾッと冷えるような心地だった。
「え……? だって、私、もうイッて……」
「うん、イッたね。それで、だから何?」
自分の体を鑑みるまでもなく、全身が怖気立つ。
絶頂した直後で敏感になった体。下着の擦れですら、寒気立つような快感を生んでいる。股間の下には、相も変わらず激しく重い振動を続ける2つの電動マッサージ器。何だったら、その振動音すら空気の震えとなって股間にまで響いてくるような心地がする。これ以上こんなものに股間を押し当てたら、体が壊れてしまうのは明白だった。
しかし私が呆けていると、また圧が私の心臓を鷲づかみにする。
「――できないの?」
「ひ――!?」
不思議だ。私は立場上彼女に逆らえないだけだと思っていたのに、今では彼女に対して生物としての圧倒的な劣位性を感じる。強者と弱者、或いは捕食者と被捕食者、或いは神と人……まるでそんな関係性。
私の体は、頭で考えるよりも先に反応する。ガクガクした膝がゆっくりと下りてゆく。
「ぅぁぁぁぁぁ……!!? ぁぁぁぁ!! ぁあ゛ぁぁあああああああっ!!!?」
逆らえない。『もう家の存続なんてどうだって良い』――そう思っても、逆らえない。
私は彼女に支配され、痴態を晒し続けるのだ。
――――
――
「おねがっ、もっ、赦してっ!! またっ、イッちゃうからぁ゛ぁぁぁぁっ!!?」
「えー? まだまだ大丈夫だよぉ♪ ほら、腰浮いてるよ?」
「ふぐっ!? ぅ、ぁ、ぁぁあああっ!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
「あーあ。床の絨毯がシミだらけになっちゃったぁ」
「ぅぐっ、ぅぅ……! それ、なら、もう、止め……!!?」
「洗濯してもらうから大丈夫だよぉ。それとほら、休まない休まない♪」
「んくっ、ぅ゛ぅぅぅ……!! ぅあ゛っ、ぁ゛、ぁああああああああああっ!!?」
それから私は彼女に射竦められて、木馬に股間を押し当て続ける。
振動が股間を抉る度に、私の腰は脊髄反射で跳ね上がってしまう。しかしその後すぐに、私はとうに服従した理性で以て再び腰を下ろす。
体がどんどん敏感になって、それでも電動マッサージ器の振動は変わらなくて。そのせいで私の絶頂する間隔は短くなってゆく。
片手で足りるか足りないか――それぐらいの回数果てて、私の体が限界を迎えた。
「ぁぐっ、ぁ――!!? ぁ゛ー……、ぁ゛、ぁぁぁぁ……!!?」
私は床に倒れ、涙をぽろぽろ流しながら、呻き声を上げた。
脚がもう動かない、腰は変な痙攣を繰り返している。股間はおろかもう全身が気持ちよすぎて気持ちよすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
だけど心の中は死にたくなるほどの恐怖で埋め尽くされていた。目の前の女の言うことを守れない――そのことが、ただただ怖いのだ。
「もう無理?」
「すみま゛せ……!? だけど、もっ、む゛り……!! すみ゛ま、せ……!!」
その問いに圧はなく、私はされど怯えたまま、ただ素直に答えた。
すると彼女はにっこりと笑いながら近付いてくるのだ。
「……それじゃあ、手伝ってあげるね♡」
「え……」
最初、私は自分の身に何が起こったのか理解できなかった。
白鳥が私の背後に回って、私の体を抱き締める。柔らかな肉と温かな肌、質の良いシルクの寝間着の感触。持ち上げられる全身、彼女は見た目に反して力が強かった。私の両足の裏が床に付いて、無理やり立たされる形になる。
――次の瞬間、私の全身からどっと汗が噴き出した。
体が急に重くなる。白鳥が私の体を抱えたまま押し下げ始めたのだ。ガクンと落ちて行く腰、その先には、木馬に付いた2つの電動マッサージ器が――。
「――ぃや゛ぁぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああッッッ!!!!?」
強烈な振動が私の股間を襲う。
きっと私のその叫び声は、屋敷中に響き渡ったことだろう。自分でもそれが恥ずかしいことであるなんて、重々承知している。
だけど声が止まらない。止められない。白鳥が私の体を木馬に押し当て続ける。
「ぁぐ――!!? ぁ゛ッ!!!? ッッあ゛ぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
「うっわぁ、すっごい暴れる♡ 本物のお馬さんより凄いんじゃない?」
自分の意思で恐る恐る腰を下ろしていた先ほどまでとは、まるで刺激が違う。激しく重い振動が、より深く体内に響いてゆく。もはや股間どころか、内股やお腹すら気持ちいい。
私はあっという間にイッてしまうけれど、白鳥が私を放す様子はなかった。
「やだッ!!!? や゛だ!!! や゛だぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!」
私はとにかく逃げ出したくて、泣き叫びながら暴れるけれど、背後にいる白鳥がそれを許さない。腕ごと私のことを抱き締めているから、振り払うことができない。散々イッたせいで膝に力が入らないから、立ち上がることもできない。それでも何とかしたくて足をバタバタと暴れさせるけれど、片足が浮く度に振動がより深く私の股間を抉ってゆく。まるで逆効果だ。
それどころか、白鳥は私の抵抗を戒めるがごとく、私の体を揺すってくる。
「ほら、ダメだよぉ♡ そんなに暴れたら電マがズレちゃう♡」
「やめ゛っ!!!? 喰い込ませないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!? クリトリス壊れぢゃゃう゛っ!!!? お尻も変に゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
電マがより深く股間に食い込む。しかも電マの振動がちょうど陰核を押し潰す角度だ。ただただ強く、激しく、うっとり浸ることを許さない、責め苦の快感。
お尻にも2つ目の電マが食い込んでゆく。お尻の穴が広げられて、振動がその中をくすぐってゆく。むずむずして落ち着かないはずなのに、これもまた紛れもない快感だった。
「ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ぁ゛――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ヒ――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
私は何度も絶頂を繰り返す。
視界がチカチカと瞬く。声帯が千切れそうな程震える。全身に異常な生体電流が流されて、筋肉が硬直したまま痙攣する。いつの間にか潮か尿かをビチャビチャと漏らして、服と、木馬と、絨毯ごと、下半身を濡らす。
それでも快感は止まらない。白鳥は私の体を押さえ付けて、股間を木馬に食い込ませ続けるのだ。
「ごめんなざいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!? あやまるっ、あや゛まるがらッ!!!!? も゛、ゆるしでッ!!!? ごめんなさい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」
「あはは、変なこと言うなぁ。くおんちゃん、別に悪いことしてないじゃない♪」
「なんでっ!!!? じゃあなんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」
「え? 理由、いる?」
「そんな゛のやだぁぁぁぁっ!!!! 帰りだい、お家に帰しでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?」
私の反骨心などというものは、とっくに消え失せていた。
ただひたすらに、目の前の女主に怯えていた。殴ることもせず、暴言を浴びせることもせず、快楽だけでここまで苦痛を与えてくる彼女のことが怖かった。
もしかしたら、これは彼女なりの『歓迎会』だったのかもしれない。新人女中に身の程を教えるための。一方でそんな打算的なものではなく、単に新しいおもちゃで遊びたかっただけなのかもしれない。
……どちらでも構わない。どちらにせよ彼女は私を喜んで犯し、私は快楽に泣き叫ぶのだ。
「ぁ゛――!!!? ぎ――!! ぁ――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
その時間は永遠のようにも思えた。
彼女は私を背後から抱きかかえ、体を押し下げて私の股間を電マにねじ込み続ける。そして私はイキ続ける。
もう下半身の感覚はない。感覚がないはずなのに、理不尽なことに陰核を振動に潰される鋭い甘さだけは鮮明。体力はとっくに尽きて、全身はぐったりしているのに、それでも筋肉は快感に従って痙攣を繰り返す。
もうダメ、もうイヤだ、赦して、ごめんなさい、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい――もう声が出ないから、代わりに心の中でずっと叫び続ける。
そして『やっと』と言うべきか、私の中で何かがブツンと切れる音が聞こえたのだ。
「ヒ――ッ!!!? ――――――――――」
「……あれ?」
その断末魔は、何て間抜けなものだっただろう。まるでしゃっくりのような声。
快楽の果ての気絶。意識が現実から離れてゆき、テレビの電源を切るように全身の神経が閉じる。待ち望んでいた安らぎが、ようやく訪れた瞬間だった。
「あーあ、寝ちゃったかー」
「――――」
意識のずっと隅のほうで、白鳥の声が聞こえる気がする。
そのすぐ直後、僅かに感じていた股間の振動が止まった。緩やかな浮遊感、その後に来る、全身を支えられる安定感。どうやら木馬から抱き下ろされ、床に転がされたらしい。水分を多分に含んではいるが、表面は柔らかく、底に床の硬さを感じる絨毯が、何て心地良いのだろう。
どうかこのまま眠らせて――しかし白鳥は笑うのだ。
「……イイこと思い付いちゃった♡」
それからまた、私の体は持ち上げられる。
……どうやらこの安らぎは、ほんのひとときに過ぎないようだ。
――――
――
それから本当に、本当に、僅かな時間の後だ。
「ぉぐ――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! がっ、ご――!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
私はまた木馬に跨がり、股間を振動で押し潰されてイキ狂っていた。
先ほどまでと違うのは、全身を拘束されているということだった。そのせいで彼女が直接手を下さずとも、私はもう快楽から逃げることはできない。
しかもそれは計算され尽くした拘束だった。木馬から生えた革具が足首、膝、太ももを縛り、私の体重を程良く支える。そして支えきれずに残った体重が絶妙な力具合で以て、股間を電動マッサージ器の振動に喰い込ませてゆくのだ。
まさに痛みを及ぼす1歩前の、もっとも気持ちよくて、もっとも苦しい力加減。快感で気絶していた私は、快感で覚醒させられていた。
「ぉぐぅぅぅぅっ!!!? ふごっ、ぉ゛ぉぉぉぉぉぉッ!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
そして両手は後ろ手。目にはアイマスク。口にはギャグボール。
何も見えず、助けを呼ぶこともできない。もっとも、彼女は私が何を言っても助けてはくれないだろうが……。それでも藁にすら縋ることができないというのは、本当に、本当に、絶望だ。
「うん。良い出来♪」
「ぉごぉぉぉぉぉぉぉっ!!!? ぉぇがっ、あぐっ、ぅ゛うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?」
「せっかくだから、明日皆に見てもらおっかなー♪」
「っっっ――!!!? あぐっ、ごっ、ッ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
「んー、見えないの嫌? 聞こえないの嫌? ……大丈夫、明日皆の前で取ってあげるよ♡」
こんな痴態を、屋敷にいる大勢に見られる――それは普通なら、真っ当な人生を諦める程の恥辱なのかもしれない。だけど私は、他人に見られることなんかよりも、他のことが嫌だった。
『明日皆に』、『明日皆の前で』――私は一体、いつまでこのまま……?
そして白鳥は私の耳元で囁いた。
「……それじゃ、おやすみ♡」
「ぁぐぅぉぉぉぉぉっ!!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
タチの悪い冗談だと思いたかった。こんな状況で放置されたら、気持ちよさで死んでしまう。
だけどそれから先、私は暗闇の中で独りになる。アイマスクのせいで何も見えない。彼女の声も、寝息も、衣擦れすらも聞こえない。耳を澄まそうとするけれど、電動マッサージ器の振動音と、何より自分の声が邪魔で何も聞こえない。何も分からない。
こんなにうるさい状況で彼女は寝るつもりなのだろうか? だけどあぁ、私を苛めるためなら、彼女は何でもやりそうだ。
「おぇがっ、起ぎでっ!!!? 放ぎでっ!!!? おぎでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!? ッ~~~~~~~~~~~~~~~!!!! ッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!?」
終わりの見えない闇の中で、私は独り泣き叫び続けるのだ。
それから私はきっと、朝になるまで木馬に跨がったままなのだろう。
この痴態をお披露目するのは朝食の時辺りだろうか。彼女が食堂で朝食を楽しんでいて、その周囲に大勢の女中達が集まっている時に、このままの姿の私が運ばれてくるのだ。
それから私はアイマスクとギャグボールを剥ぎ取られる。痴態を見られるのはきっと死ぬほど恥ずかしい。だけどそれ以上に、私はもう気持ちよくなりたくなくて泣き叫ぶ。
『もう嫌だ』『昨晩からずっとイキっぱなしなんです』『もう気持ちよくしないで』――そんなことを、涙をボロボロ流しながら叫び続けるのだ。
それを白鳥は楽しそうに眺める。周りの女中たちは私を見て、……きっとほとんどが真っ青な顔を浮かべるのだろう。恐らく、全員が通ってきた道だから。そして何度も通ってきた道であり、これから何度も通ってゆく道だから。女中たちの表情はまるで私に告げているかのようだ。『1回酷い目に遭っても、安心できないんですよ』『こんなこと、これから何度でも起きますよ』って。
私はこの屋敷で、何度も死ぬたくなるほどイキ、泣き叫ぶ日々を過ごすのだろう。
それは暗澹たる日々の幕開けだった。